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書籍詳細

眼でみる実践心臓リハビリテーション 3版

眼でみる実践心臓リハビリテーション 3版

安達 仁 編著

B5判 330頁

定価5,940円(本体5,400円 + 税)

ISBN978-4-498-06712-7

2013年10月発行

在庫なし

プランの設定から入院リハ,外来リハ,運動処方,運動療法,栄養指導,疾患別の指導ポイントまで新しい心臓リハビリテーションをわかりやすく解説したテキスト.近年進歩著しい心不全治療と糖代謝異常に対する管理を踏まえ,すべての記述を見なおして一新した全面改訂版.

改訂3版の序

 早いもので2007年に本書が世に出て以来,もう6年が経過しました.当時は少なかった心臓リハビリテーション関連の本も,最近は種類が増え,それぞれ充実した内容の書となっています.どの本も,著者あるいは編者の個性が色濃く出ており,手に取って読んでみると,耳元でその先生が読んでくれているかのように感じます.
 本書は,言うまでもなく群馬県立心臓血管センターのスタッフが作成しました.群馬県立心臓血管センターの心臓リハビリテーションの本です.東京から100 km,車で1時間の微妙な場所にある群馬県の方々が利用している心臓リハビリテーションです.日本にはいろいろな地域がありますから,この本の内容が皆さんの施設でそのまま応用できるところもあるでしょうし,全く変えなければならないところもあると思います.各項目のエッセンスを嗅ぎ取って,軸を外さずに自分流にアレンジして心臓リハビリテーションを実施して頂ければ良いと思います.
 この6年の間に,循環器領域はまた大きく変わりました.最も変わったことは心不全の増加と,糖代謝異常の管理法の変化です.CRT-Dが普及し,β-ブロッカーなどの使用法が確立し,確実に以前よりも長生きできるようになっています.でも,多くの心不全の方は,ただ死なずに生きているだけです.心臓リハビリテーションの恩恵に授かっている方は10%程度なのではないでしょうか.心不全に対しては,運動療法,患者教育,チーム医療,どれをとっても心臓リハビリテーションが治療の主役です.是非,心不全を積極的に受け入れて心不全患者の表情を明るくしてやってください.糖代謝異常の管理も大きく変わりました.DPP4阻害薬の出現によって「質の良い血糖コントロール」が実現可能となってきました.心臓リハビリテーションスタッフは,循環器疾患の70%近くに存在する糖代謝異常を避けて通ることはできません.このため,今回の改訂では,この2点の内容を大幅に充実させました.心不全に対するレジスタンストレーニング,心不全の新しいガイドラインの解説とともに,食事や運動と血糖・脂質についても充実させました.おまけに,フレンチパラドックスについても異常に充実させました.この章は赤ワインを飲みながらでも読んでください.
 初版から一貫して,この本は,現場に持ちこんですぐに役立つ本を目指しています.本棚にしまうのではなく,心臓リハビリテーションの現場に持っていって,患者さんに見せながら役立てて頂ければ幸甚です.
2013年8月
群馬県立心臓血管センター
安達 仁


初版の序

 私が大好きな本に「村上信夫のおそうざいフランス料理」というものがあります.昭和53年に発刊されすでに絶版となってしまった本ですが,帝国ホテルの総料理長にまでなった村上信夫氏が一般家庭向けにフランス料理の作り方を書いたものです.フランス料理と聞くと,ソースから素材から作ったり見つけたりするのが大変でとても自分ではできないと思いがちですが,この本はそれを簡単にしかも決して妥協することなく本格的に作れるようにしております.そして,氏はその序文の中で,この本は絵本として大切に本棚に飾っておくのではなく,表紙が油のはねでよごれ,ページにおつゆのしみがつく,そんな本になってほしい,と述べております.
 この本も,そういう思いで書きました.もちろん,心臓リハビリテーションはフランス料理とはまったく異なるものですが,とっつきにくくあまり普及していない心臓リハビリテーションが,簡単にだれでも実施できるものになって欲しいと思って書いたものです.ですから,この本は本棚に飾っておくのではなく,臨床の現場に持っていって,中に書いてある図表を患者さんに示しながら,ぼろぼろになるまで使いこなして頂きたいと願っています.そのために,そのままコピーして患者教育に使えるような図表を多くしました.また,ひとつの章だけを読んでも内容がわかるように,必要だと思う時には同じ図表が各章ごとにくりかえし出てくるようにしてあります.200ページくらいの本でも,全部通して読む時間はなかかないものですから.
 この本の特徴は,多施設の有名人が集まって書いたものではなく,群馬県立心臓血管センターのスタッフだけが書いたということです.ですから心臓リハビリテーションのひとつの形がこの本を通して透かして見えると思います.この本のやり方を参考にすれば群馬型の心臓リハビリテーションができますし,各施設で工夫すればさらに良い独自の心臓リハビリテーションができると思います.また,患者教育関連の項目にかなりページを割いたのも特徴です.これは,現在の心臓リハビリテーションにおいて,運動療法とともに患者教育が極めて重要であると考えているからです.是非,この本を踏み台にして自分の施設の心臓リハビリテーションをブラッシュアップしていってください.
 この本が,わが国の心臓リハビリテーション普及の一石となり,心臓病で悩む患者様の正しい治療の一助となれば幸いです.

2007年2月
群馬県立心臓血管センター
安達 仁


改訂2版の序
 本書の初版が発刊されてからわずか1年あまりで完売となり,これを機に,増刷するか,内容を改訂して執筆しなおすか考えなければならなくなりました.わずか1年とはいえ,この間に健康保険が改訂されて心臓リハビリテーションを取り巻く環境が大きく変化するとともに,心疾患の治療法や検査法も大きく変化しました.そのため,筆者は,迷わず改訂版を出して,最新の知識を世に出すべきだと考えました.
 この2年間で変わったのは,心臓リハビリテーション施設認定要件が緩和されたこと,退院時心臓リハビリテーション指導管理料が復活したこと,心臓リハビリテーション実施計画書の書式が日本循環器学会のガイドラインによって実践的になったこと,positive remodelingの概念の周知によって有意狭窄のみを治療することは意味を成さないことが徐々に知れ渡ってきたことなどです.
 改訂版では,これらの事項を第1章の心臓リハビリテーションプランや第4章のカテラボと心臓リハビリテーションなどの項に追記いたしました.また,一次・二次予防,三次予防の項には,今後主流になると思われるカーボカウンティングについても若干記載しました.
 生活習慣改善に関する取り組みは,医師よりもコメディカル,コメディカルよりも非医療者が熱心な感があります.これは,運動や食事が大変に身近なものであるためと思われます.しかし,生活習慣の改善というものは,さまざまなダイエット法が話題になっては消えてゆくのを見てもわかるように,一見,取り組みやすく見えますが,誰もが簡単に第一人者になれるものではありません.その基礎をしっかりと押さえておかないと,アレンジが効かず,わずかな状況の変化にも対応できない浅薄なものになってしまいます.また,時には危険ですらあります.患者や非医療者が喧伝する治療法の中に潜む誤解をしっかりと見抜き,正しい方向へ説得できる力を蓄えておくことが心臓リハビリテーションスタッフには必要です.
 初版本同様,この改訂版が,正しい心臓リハビリテーション実践のための良きガイドブックになることを祈念いたします.
 最後に,今まで筆者のことをご指導頂きました,長谷川昭先生,村田和彦教授,井藤英喜先生,大島茂先生,小池朗先生,伊東春樹先生,Karlman Wasserman教授,谷口興一先生に感謝申し上げます.また,この本は共著者のみならず,病院検査課の方々,および他の循環器内科医師たち,さらに妻秀子の協力の下,完成したものと思っております.感謝申し上げます.

2009年2月
群馬県立心臓血管センター 心臓リハビリテーション部長
東京医科大学茨城医療センター リハビリテーション部兼任教授
安達 仁

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目 次

1 心臓リハビリテーションプラン 〈安達 仁〉 
 A. 心臓リハビリテーションの考え方
 B. 心臓リハビリテーションプラン―いつ,誰に,どのように―
   1. 実施期間・スタッフ・保険点数
   2. 対象疾患と心臓リハビリテーションの目的・効果
   3. 入院心臓リハビリテーションか,外来心臓リハビリテーションか?

2 入院中の心臓リハビリテーション―離床と患者教育
 a. 疾患別の離床プログラム…〈田屋雅信〉 
  A. 心筋梗塞
   1. 離床プログラム
   2. 離床プログラム遅延例
  B. 開心術後
   1. 離床プログラム
   2. 起こりうる合併症
   3. 運動療法を実施する基準
   4. 開心術前の準備
   5. 呼吸理学療法
  C. 大血管
    離床プログラム
  D. 心不全
   1. 離床の流れ
   2. レジスタンストレーニングの重要性
 b. 患者教育・生活指導プログラム…〈吉田知香子〉
  A. いつ誰がデータを記録し,教育するのか?
  B. どの看護師でも教育できるようにする工夫
  C. 経皮的冠動脈形成術(PCI)による血流改善はACS(急性冠症候群)発症予防にはならない
  D. 今まで一度も胸痛がなくてもACSが発症しうることの説明
  E. 入院中の患者教育
   1. 心筋梗塞
   2. 開心術
   3. 大血管・末梢血管疾患
   4. 心不全
 c. CRT-D患者のリハビリテーション…〈生須義久〉
  A. 手術後早期から動かすことの意義
  B. 早期に動くことの危険性
   1. 手術後出血やポケット内血腫
   2. 手術創部の離開
   3. リードの移動や脱落,損傷
   4. 心不全の悪化
  C. いつから何を目安にしてリハビリテーションを始めるか?
   1. 植込み側上肢の運動
   2. 離床〜ADL拡大
   3. 運動療法
   4. 生活指導
   5. CRT-Dの設定
  D. CRT-D手術後のリハビリテーション

3 外来心臓リハビリテーションの骨格 〈安達 仁〉 
  A. 外来心臓リハビリテーションの考え方
  B. 外来心臓リハビリテーションの流れ
  C. 外来心臓リハビリテーションに必要なもの,ひと
   1. 心臓リハビリテーション実施場所
   2. 外来ブース,看護師
   3. 心リハスタッフ
   4. 医師
   5. 患者教育ツール
   6. 運動器具
   7. その他の一般的なもの
  D. 循環器医もコメディカルスタッフも少ない場合の外来心臓リハビリテーション
の始め方
  E. 心筋梗塞患者数が年間100人の施設における心臓リハビリテーションモデルと
収入

4 運動処方 〈安達 仁〉 
  A. 心疾患患者と有酸素運動
  B. 心肺運動負荷試験
   1. ATの理論的背景
   2. AT決定法
   3. 実際のAT決定法
   4. AT決定から運動処方へ
   5. 心肺運動負荷試験の実際
   6. AT処方は常に安全か?―呼吸数に注目
  C. その他の運動処方
   1. 心拍数を用いた運動処方(心拍処方)
   2. 自覚症状による処方
   3. トークテスト
  D. 重症心不全に対する骨格筋トレーニング
  E. レジスタンストレーニング
  F. 低強度インターバルトレーニング
  G. 高強度インターバルトレーニング
  H. 疾患別の運動処方
   1. 虚血性心疾患
   2. 心不全
   3. 開心術後
   4. 大血管疾患
   5. 糖尿病・肥満・メタボリックシンドローム

5 運動療法
  A. 虚血性心疾患…〈田屋雅信〉 
   1. 運動療法の導入,評価
   2. 運動療法の実際
  B. 開心術後…〈田屋雅信〉 
   1. 運動療法の導入,評価
   2. 運動療法の実際
  C. 心不全…〈田屋雅信〉 
   1. 運動療法の導入,評価
   2. 運動療法の実際
  D. LVAS植込み患者…〈田屋雅信〉 
   1. 離床プログラム
   2. 運動療法
   3. 退院後のフォローアップ
  E. 種々のモダリティを用いた運動療法(加圧トレーニング,電気刺激療法)…〈田屋雅信〉
   1. 加圧トレーニング
   2. 電気刺激療法
  F. レジスタンストレーニング…〈田屋雅信〉
    レジスタンストレーニングの実際
  G. 運動療法の合併症・危険性…〈安達 仁〉
   1. 虚血性心疾患
   2. 不整脈
   3. 低血糖
   4. 動脈瘤破裂
   5. 対策

6 患者教育 〈吉田知香子〉 
 A. 情報収集と初期評価
 B. 理解度チェック表
 C. セルフモニタリング用紙
 D. 心臓病教室
 E. ストレスと精神的サポート
 F. どのくらいの頻度で面談するか?
 G. 担当者が変わっても同じ質の面談をするための工夫
 H. 患者の性格・行動を変容させるコツ
 I. 外来心臓リハビリテーションからの離脱を防ぐ
 J. 多職種とのかかわり
 K. 社会資源の活用
 L. 疾患別の指導ポイント
   1. 心筋梗塞・狭心症
   2. 閉塞性動脈硬化症(ASO)
   3. 解離性大動脈瘤
   4. 心不全
   5. 冠危険因子の教育内容

7 栄養指導 〈五十嵐美絵〉 
  A. エネルギーのコントロール
   1. 必要エネルギー量の計算方法
   2. 摂取エネルギー量の算出
   3. 肥満の場合の栄養指導
   4. 糖尿病食品交換表の使い方
  B. 栄養補充
   1. 心不全患者の「るいそう」への栄養介入
   2. 血清電解質異常(低Na血症)がある場合の食事
  C. 糖質のコントロール
   1. 具体例
   2. 糖質を多く含む食品
  D. 脂質のコントロール
   1. 具体例
   2. 外食と脂質
  E. 塩分のコントロール
    具体的な指導方法,食事内容
  F. タンパク質のコントロール
    腎機能低下とタンパク質
  G. 栄養指導の現場
   1. 栄養指導を行う場所,時間,患者の負担額
   2. 栄養食事指導に必要な媒体
   3. 個別指導と集団指導

8 虚血性心疾患 〈安達 仁〉 
  A. 心臓リハビリテーションの見地からみた虚血性心疾患の考え方
   1. 狭心症と心筋梗塞の違い―動脈硬化と血栓
   2. 冠動脈狭窄症への効果
   3. 動脈硬化予防効果
   4. PCIが成功した症例の心臓リハビリテーションの必要性
   5. ACS発症予防効果
   6. 予後改善効果
  B. インターベンショナルカルディオロジストとの協調
  C. カテーテル治療(PCI)実施法
  D. バルーン,ステントそれぞれの注意点
  E. 心臓カテーテル検査所見の見方
  F. 心臓リハビリテーションの実際
  G. 実験的動脈硬化作成法とPCIの関係

9 開心術後 〈安達 仁〉 
  A. 心臓リハビリテーションに必要な開心術の基礎知識
  B. 心臓リハビリテーションのステージ
  C. 心臓リハビリテーションの方法
  D. 心臓リハビリテーションの効果

10 心不全 〈安達 仁〉 
  A. 心臓リハビリテーションの観点からみた心不全の基礎知識
   1. 自律神経活性
   2. 血管拡張能・血管内皮細胞機能
   3. 骨格筋機能
   4. 換気応答
   5. 心機能
   6. 慢性心不全の発症様式
   7. 心不全患者の体重変化
  B. 心臓リハビリテーションの方法
   1. 運動療法
   2. 食事療法
   3. 生活指導
   4. 薬物療法
   5. 心不全の重症度評価法
  C. CRT-D植込み患者の運動療法
   1. CRT-Dの効果と問題点
   2. CRT-Dに対する心臓リハビリテーションの効果
   3. 運動療法実施法
  D. 患者に対する説明のポイントのまとめ
   1. 心臓リハビリテーションの必要性
   2. 運動の安全性について
   3. 再入院を避けるための生活習慣

11 大血管術後 〈安達 仁〉 
  A. 解離性大動脈瘤,胸腹部大動脈瘤
  B. 末梢動脈疾患(PAD),閉塞性動脈硬化症(ASO)

12 冠危険因子 〈安達 仁〉 
  A. 心疾患予防の重要性
  B. 冠危険因子総論
  C. メタボリックシンドローム
  D. 肥満
   1. 目標体重
   2. 食事療法
   3. 行動修正療法,レコーディングダイエット
   4. 運動療法
  E. 糖代謝異常
   1. 糖代謝異常の時期別分類と心疾患に及ぼす影響
   2. 糖尿病のコントロール目標
   3. 75 g OGTTの読み方
   4. CGMからわかること
   5. 食事療法
   6. 運動療法
  F. 脂質異常症
   1. 脂質代謝異常評価法
   2. 食事療法
   3. 運動療法
   4. 生活習慣改善のまとめ
   5. 動脈硬化ガイドライン2012年版による脂質目標値の設定法
  G. 高血圧
   1. 減塩
   2. 減量
   3. 運動療法
  H. フレンチパラドックス

13 健康増進と運動 〈斉藤智子〉 
  A. 疾病予防・重症化予防・再発予防への視点
  B. 1次予防の特定健診・保健指導における積極的運動支援
  C. 2次〜3次医療へ
  D. 運動は継続へ
  E. 今後の課題

心臓リハビリテーション手帳

索引

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執筆者一覧

安達 仁 群馬県立心臓血管センター心臓リハビリテーション部長 編著
田屋雅信 群馬県立心臓血管センターリハビリテ−ション課 
吉田知香子 群馬県立心臓血管センター看護部 
生須義久 群馬県立心臓血管センターリハビリテーション課 
五十嵐美絵 高崎健康福祉大学健康福祉学部健康栄養学科准教授 
斉藤智子 群馬県立心臓血管センターリハビリテーション課 

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