序
チーム医療とはよく聞かれる言葉ですが,医師同士だけではなく看護師や薬剤師,栄養士,臨床検査技師,臨床工学技士,作業療法士らが協力して,患者さんの治癒・社会復帰に向け安心で安全な医療を行うことです.私が医師になりたての頃は,医師が医療の中心でありピラミッド型で一方方向の指示系統で医療がなされていました.また,患者さんや家族に対する病態や治療方針などについてのインフォームド・コンセント(IC)も十分ではなかったと思います.しかし,現在患者さんは医療の中心にあり,チーム医療のリーダーは医師ですが,各医療スタッフは互いの役割や立場を尊重し患者さん本位の医療がなされています.また,医師も診療科の壁をなくし医療に参加しています.
最近,看護師や薬剤師,栄養士,臨床検査技師に腎臓内科領域の疾患について理解を深めてもらいたいとの想いから「メディカルスタッフのための腎臓病学」(中外医学社)を刊行しました.特に,職種ごとに知ってもらいたいポイントもコンパクトにまとめましたので,活用していただきたいと願っています.これまで私は,医薬情報を正しく速やかに知らせてくれている医薬情報担当者(Medical Representative:MR)の諸君もメディカルスタッフの一員だと思っており,関連学会での“よくわかる教育セミナー”や市民公開講座などへの積極的出席を勧めてきました.MR諸君にとっては自社製品の特徴と副作用等を正しく理解し,私たちに紹介してくれるとともに,他社の同種製薬の知識を得ることも大変重要だと思っています.
今回,「メディカルスタッフのための腎臓病学」の姉妹本として「MRのためのCKDハンドブック」を上梓することに致しました.最近,国内外ともに注目されている慢性腎臓病(CKD)についての基礎知識を学び,現在私たちが行っている集学的治療の概要を知っていただきたいと願っています.
各ポイントにSelf Checkのコーナーを設けてありますので,CKDについての簡単な予習・復習にご活用ください.また,CKD症例に対する薬物療法の治療のポイントを私の経験も含めまとめました.総論のはじめに,医薬情報担当者(Medical Representative:MR)の役割―医師からみたMRへの期待―を私なりに述べましたので,最初に読んでいただきたいと思います.
本書が少しでもMR諸君のお役にたてれば大変嬉しく思います.しかし,物足りない解説もあろうかと思いますので,皆さんの忌憚のないご意見をいただければ幸いです.
最後に,本書の刊行にあたり薬剤の資料収集等にご理解・ご協力いただきました関連製薬会社のMRの方々並びに中外医学社の皆さまに厚くお礼申し上げます.
2013年夏
神田川のほとりにて 富野康日己