今日からできるホルモン補充療法
水沼英樹 編著
B5判 240頁
定価6,820円(本体6,200円 + 税)
ISBN978-4-498-06066-1
2013年07月発行
在庫あり
今日からできるホルモン補充療法
水沼英樹 編著
B5判 240頁
定価6,820円(本体6,200円 + 税)
ISBN978-4-498-06066-1
2013年07月発行
在庫あり
更年期障害のホルモン補充療法において,その使用法,効果,注意点,合併症の場合での対応などを簡潔かつ分かりやすく解説した.2012年に発行されたHRTの指針やガイドラインを踏まえ,それらを実際の臨床現場で活用できるようにするため,ガイドラインのように堅苦しくなく,よりプラクティカルな知識を紹介している.具体的な薬剤の使用方法や,具体的な施行上のアドバイスなどもあり,現場ですぐに役立つ書である.
発刊に寄せて
ホルモン補充療法(HRT)は閉経後の女性の健康維持や増進を目的に開発された療法で,1980年頃から急速に普及し欧米では今世紀初頭には50歳以降の女性の半数近い女性が本療法を受けていました.HRTがこれほど期待されたのは,高齢化社会の到来に加え,閉経後女性に特有な疾患の発生にエストロゲン欠乏が深く関与していることが明らかになり,加えてHRTは失われたホルモンを補うものであるとの認識が定着し,さらにはその効果を実証した多くの臨床データが蓄積し,HRTの有用性に対する意識が高まっていためと考えられます.
ところが,2002年に米国で行われていた大規模臨床試験,いわゆるWomen’s Health Initiative(WHI)が,HRT施行者において乳癌,心疾患,脳卒中,静脈血栓症などのリスクが高かったという中間報告を発表して以来,HRTに対する不安は一挙に高まり,HRTに対する期待は萎縮し,HRTは大きな後退を余儀なくされてしまいました.このWHIの中間報告がもたらした影響は少なくなく,特に医療者にとっては,副作用の発生を必要以上に恐れるあまり,HRTを本当に必要としている女性に対してもその使用を忌避するなどの悪弊まで出てしまいました.しかしながら,WHIで得られた結果がHRTを消滅させるほどのインパクトとなり得たかどうかは,その後のHRTの回復状況をみれば明らかで,HRTを受ける症例数は年々回復傾向にあります.これはWHI報告を契機として,より安全なHRTを行うための詳細な検討が行われ,HRTの副作用の発現は対象者の臨床背景,使用するエストロゲンの種類,量,投与方法を考慮することで回避可能であることが明らかとされたことが背景にあります.
これらのエビデンスを盛り込んでHRTの指針やガイドラインが各国で作成され,我が国でも2009年に日本産科婦人科学会と日本女性医学学会の共同事業として「ホルモン補充療法ガイドライン」が作成され,2012年にはその改訂版が発行されました.本書はこのガイドラインに記された内容を受けて,それらを臨床の現場において実施していくため手引書としてまとめたものです.本書が,先生方の座右にあって,日常診療の手助けとなり,閉経後女性の健康管理,ひいては女性医学のさらなる発展に寄与できることを祈念致しております.
2013年6月
水沼英樹
高松 潔
目 次
I HRTガイドライン2012年度版からの抜粋
1.HRTの禁忌症例と慎重投与症例は?
2.HRTの適応と管理のアルゴリズムは?
3.更年期女性における以下の状態におけるHRTの有用性
II 適 応
1.血栓症リスクはどこまで許容できるのか? 〈河野宏明〉
A●2つの肺血栓症
B●深部静脈血栓症
C●動脈血栓症(心筋梗塞を含む)
2.冠攣縮および微小血管狭心症の既往とは? 〈秋下雅弘〉
A●冠攣縮および微小血管狭心症の病態と特徴
B●冠攣縮および微小血管狭心症の診断
C●冠攣縮および微小血管狭心症の治療
D●エストロゲンと冠攣縮および微小血管狭心症
3.コントロール不良な糖尿病とは? 〈秋下雅弘〉
A●糖尿病コントロールの指標と考え方
B●閉経後女性の糖尿病リスクとHRTの影響
4.コントロール不良な高血圧とは? 〈角野博之 市川秀一〉
A●コントロール不良な高血圧
B●HRTと血圧
C●エストロゲンと降圧薬
5.膠原病合併者の扱い 〈宮地清光 渡辺 敦〉
A●更年期の関節症状
B●ACR/EULARの早期関節リウマチ診断基準(2010)
C●膠原病のHRT
D●文献報告による膠原病患者へのHRT
6.子宮筋腫・子宮内膜症・子宮腺筋症の既往者の扱い 〈高松 潔 小川真里子〉
A●子宮筋腫
B●子宮内膜症・子宮腺筋症
7.骨盤臓器脱に対してHRTは有効か? 〈五十嵐智博 高橋 悟〉
A●骨盤臓器脱とは?
B●発生のメカニズム
C●骨盤臓器脱の症状
D●骨盤臓器脱の治療
E●骨盤臓器脱に対してHRTは有効か?
F●その他の泌尿生殖器症状
8.更年期障害に対するHRTと漢方療法の使い分けは? 〈樋口 毅 三崎直子 水沼英樹〉
A●HRTの効果
B●漢方療法の効果
C●HRTと漢方製剤の比較などの報告
9.骨粗鬆症に対してHRT,SERM,ビスホスホネート製剤の使い分けは? 〈五來逸雄 堀 裕雅〉
A●骨粗鬆症発症の機序
B●骨粗鬆症の診断
C●FRAXとは?
D●骨粗鬆症の治療開始基準(ガイドライン)について
E●骨粗鬆症治療薬剤の分類
F●治療薬剤選択の考え方
G●実際の処方例
10.HRTと併用しない方がよい薬剤はあるか? 〈宮原富士子〉
A●薬物相互作用とは?
B●エストロゲン製剤
C●黄体ホルモン製剤
11.悪性腫瘍治療後のHRTは不可か? 〈横山良仁〉
A●子宮体癌術後のHRT
B●卵巣癌術後のHRT
C●子宮頸癌治療後のHRT
D●乳癌治療後のHRT
E●薬物介入の基準・頻度
12.アンチエイジングとしてのHRTは? 〈大藏慶憲 久保田俊郎〉
A●皮膚の加齢性変化とHRTの効果
B●筋骨格系の加齢性変化とHRT
C●泌尿生殖器の加齢とHRT
D●眼の加齢性変化とHRTの効果
E●口腔の加齢性変化とHRTの効果
III レジメンの選択
1.HRTのレジメンの実際 〈水沼英樹〉
A●どのような症例を対象とするか?
B●局所投与か全身投与か?
C●ETかEPTか?
D●間欠的投与か,持続的投与か?
E●エストロゲン製剤の選択,また投与量をどう決めるか?
F●投与を継続する場合に注意することは何か?
2.CEEと17βエストラジオールはどちらがよいか? どう使い分けるか? 〈若槻明彦〉
A●更年期障害
B●骨量,骨折
C●脂質代謝
D●静脈血栓・塞栓症
E●冠動脈疾患
3.経皮と経口はどちらがよいか? どう使い分けるか? 〈尾林 聡〉
A●経口剤,経皮剤に使用されるホルモン剤
B●HRTの効果あるいは副作用と投与ルート
4.投与量はどうやって決めるか? 〈安井敏之〉
A●エストロゲン製剤
B●黄体ホルモン製剤
5.エストリオールの使い方は? 〈藤野敬史 小林範子〉
A●HRTにおけるエストリオールの位置づけ
B●E3の特性に関する基礎知識
C●E3の効果
D●E3の安全性
6.黄体ホルモンは何をどれくらい投与するか? 〈岡野浩哉〉
A●黄体ホルモン併用の目的
B●黄体ホルモンを投与しなかった場合のリスク
C●黄体ホルモンの投与期間
D●レジメンと内膜保護効果
E●黄体ホルモンの投与量
F●黄体ホルモンの種類で何が異なるのか?
G●黄体ホルモンの種類と乳癌リスク
H●黄体ホルモンの種類と心血管系疾患リスク
I●SERMは黄体ホルモンの代用となりうるか?
J●現実的な流れと実際
7.周期的投与法と持続的投与法はどちらがよいか? どう使い分けるか? 〈寺内公一〉
A●EPTの投与方法に関する用語
B●周期的投与法と持続的投与法の使い分け
C●周期的投与法で使用するPの種類,量と期間
D●周期的投与と持続的投与の子宮内膜以外への作用
8.OCはHRTの代用となりうるか? 〈大藏健義 市村三紀男〉
A●HRT製剤とOCとの違い
B●OCはHRTの代用となりうるか?
9.その他のホルモン含有薬剤の効果は?
(ボセルモン,イソフラボン,男性ホルモンなど) 〈望月善子〉
A●エストラジオール誘導体
B●エストロゲン・アンドロゲン合剤
C●男性ホルモン
D●イソフラボン
IV 施行前検査
1.採血の項目は? 〈倉林 工〉
A●HRT投与前・中の必須採血項目の意義
B●肝機能検査
C●脂質検査
D●血糖
E●骨代謝
F●血栓症の予知マーカー
2.婦人科検診は何をすればよいか? 〈小川真里子 高松 潔〉
A●HRT施行前後に推奨される婦人科検診
B●子宮頸部細胞診
C●子宮内膜癌検診
D●超音波検査
V 施行中の検査とトラブルの対応
1.どれくらいの間隔で外来受診していただくか? 〈岩佐弘一 北脇 城〉
A●HRT開始時の検査
B●HRTが有効な症状
C●HRTによる有害事象
D●HRTのレジメン
2.出血時の対応 〈大石 元 矢野 哲〉
A●出血の頻度
B●HRTの方法と子宮出血のパターン
C●子宮出血に対する対応
3.マイナートラブルとその対応 〈岩元一朗〉
A●消化器症状(悪心,嘔吐,下腹部痛など)
B●皮膚症状(かぶれ,発赤,湿疹など)
C●乳房症状(乳房痛・乳房緊満感など)
D●精神神経系(頭痛,片頭痛,めまい)
E●生殖器の異常
F●臨床検査の異常(血液,肝機能障害,凝固異常など)
VI 施行継続と中止に関する諸問題
1.長期間HRTを行う上での留意点 〈茶木 修〉
A●HRTの目的からみた長期投与
B●HRTの有害事象・リスクからみた長期投与
2.HRTは何歳まで施行可能か? 〈堂地 勉〉
A●HRTの禁忌症例と慎重投与症例
B●新規にHRTを開始する場合,何歳まで施行可能か?
C●以前からHRTを投与していた場合,何歳まで施行可能か?
3.どのような場合に中止を考慮すべきか? 〈篠原康一〉
A●子宮体癌が判明した場合
B●子宮体癌治療後
C●卵巣癌が判明した場合
D●卵巣癌治療後
E●乳癌が判明した場合
F●冠動脈疾患が判明した場合
G●良性の器質性疾患の場合
H●静脈血栓塞栓症・肺塞栓症またはその既往
I●重症の高トリグリセリド血症
J●術前・長期臥床
K●中止方法
4.中止する場合の実際の注意点は? 〈牧田和也〉
A●HRTの中止を考慮すべき状況とは?
B●医療者側から中止を考慮すべき状況
C●患者側から中止を考慮すべき状況
VII インフォームド・コンセント
1.乳癌リスクについてどのように説明するか? 〈高松 潔 小川真里子〉
A●はじめに−HRTと乳癌リスクに関する考え方の変遷
B●HRTと乳癌リスクに対するWHI中間報告までの考え方の変遷
C●WHI中間報告以降,HRTガイドライン2009年度版発刊ごろまでの考え方の変遷
D●その後の考え方の変化とHRTガイドライン2012年度版におけるHRTと乳癌リスクの考え方
E●乳癌リスクを修飾する諸因子
F●おわりに
2.WHI研究とサブグループ解析の結果はどのようになっているのか? 〈林 邦彦〉
A●WHI研究とは?
B●各研究の集団特性と中間解析結果
C●冠動脈疾患発症におけるサブグループ解析
D●浸潤性乳癌発症におけるサブグループ解析
E●HRT使用者の生命予後
VIII 実際に使うIC用紙の案
HRTを考慮している女性への説明文の一例 〈高松 潔 小川真里子 牧田和也〉
索 引
執筆者一覧
水沼英樹 弘前大学大学院医学研究科産科婦人科学講座教授 編著
高松 潔 東京歯科大学市川総合病院産婦人科教授 編著
河野宏明 熊本大学医学部保健学科教授
秋下雅弘 東京大学大学院医学系研究科加齢医学准教授
角野博之 群馬大学医学部附属病院検査部講師
市川秀一 北関東循環器病院内科,理事長
宮地清光 慶宮医院院長,保健科学研究所顧問
渡辺 敦 東尾第2 クリニック,あすなろ薬局
小川真里子 東京歯科大学市川総合病院産婦人科講師
五十嵐智博 日本大学医学部泌尿器科学系泌尿器科学分野
高橋 悟 日本大学医学部泌尿器科学系泌尿器科学分野教授
樋口 毅 弘前大学医学部附属病院周産母子センター教授
三崎直子 弘前大学医学部保健学科講師
五來逸雄 産育会堀病院産婦人科
堀 裕雅 産育会堀病院産婦人科院長
宮原富士子 ?ジェンダーメディカルリサーチ代表取締役
横山良仁 弘前大学大学院医学研究科産科婦人科学講座准教授
大藏慶憲 東京医科歯科大学大学院生殖機能協関学
久保田俊郎 東京医科歯科大学大学院生殖機能協関学教授
若槻明彦 愛知医科大学医学部産婦人科教授
尾林 聡 東京医科歯科大学医学部産婦人科准教授
安井敏之 徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部保健科学部門生殖補助医療学分野教授
藤野敬史 手稲渓仁会病院産婦人科部長
小林範子 北海道大学生殖内分泌・腫瘍学講座
岡野浩哉 飯田橋レディースクリニック院長
寺内公一 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科女性健康医学講座准教授
大藏健義 千葉愛友会記念病院産婦人科顧問
市村三紀男 千葉愛友会記念病院院長
望月善子 獨協医科大学医学部産科婦人科教授
倉林 工 新潟市民病院産科部長,地域医療部長
岩佐弘一 京都府立医科大学大学院女性生涯医科学講師
北脇 城 京都府立医科大学大学院女性生涯医科学教授
大石 元 国立国際医療研究センター産婦人科医長
矢野 哲 国立国際医療研究センター産婦人科科長
岩元一朗 鹿児島大学医学部産婦人科
茶木 修 横浜労災病院分娩部部長
堂地 勉 鹿児島大学医学部産婦人科教授
篠原康一 愛知医科大学医学部産婦人科准教授
牧田和也 牧田産婦人科医院院長,慶應義塾大学医学部産婦人科非常勤講師
林 邦彦 群馬大学医学部保健学研究科教授
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