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書籍詳細

認知症治療のベストアンサー

認知症治療のベストアンサー

コウノメソッドによる王道処方

河野和彦 著

A5判 152頁

定価3,740円(本体3,400円 + 税)

ISBN978-4-498-12962-7

2013年05月発行

在庫なし

四半世紀以上にわたって認知症患者を見てきた著者の経験から編み出された「コウノメソッド(認知症薬物療法マニュアル)」の決定版.認知症に不慣れなプライマリケア医に向けて,本当に結果の出る治療法を単純明快に解説した.一読すれば,おおまかに認知症の病型鑑別を行い,患者のキャラや性質に合った処方が素早くできるようになるだろう.患者と患者家族の日々の生活を楽にする,王道処方のエッセンスが詰まった一冊だ.

はじめに


精神医学には統合失調症,神経内科学にはパーキンソン病の長い治療の歴史があります.しかし,認知症はどうでしょうか.13年前にわが国で介護保険が導入され,一般の医師も意見書を書かなくてはならなくなり,改訂長谷川式スケールやミニメンタルステート検査といった記憶検査を行うことで,認知症はどのような疾患であるかという感触はつかめるようになったと思います.
同じころからアリセプトというわが国初の認知症の中核症状(記憶,見当識,判断力など)に効果が期待できる薬が処方できるようになり,認知症がいよいよ医療の舞台に上がるようになったことは,ここに説明するまでもありません.しかし,私は医師生活31年間のうち29年間は大勢の認知症患者を診察し,そのうち最近の22年間は認知症外来を続けてきました.つまりアリセプトのない時代にも何らかの処方をして家族に喜ばれてきたのです.
その何らかとは,どういった薬であるのかおわかりでしょうか.向精神薬(私が抑制系と呼ぶ薬)です.その代表がグラマリールであり,多くの家族に「介護が楽になりました」と評価されてきたのです.認知症には,中核症状と周辺症状に分かれるのですが,統合失調症の処方には,現時点で周辺症状薬(幻聴や妄想を消す作用)しか存在しません.それでも立派な治療と認められています.
アリセプトの登場以来,認知症は中核症状を治せるようになり,それを「本格的治療」と称して医学会は盛り上がりました.これでアルツハイマー型認知症の制圧は癌の制圧より早くなったと色めきたったことでしょう.ところが,アリセプト発売から1カ月間で約200人に処方した私は,アリセプトに秘められた厄介な副作用に眉をひそめたのです.患者が怒りっぽくなるのです.
脳内にはいろいろな神経伝達物質があり,それぞれがバランスを保っているのに,記憶に関係しているアセチルコリンだけを増やすように設計されたアリセプトが患者の脳を不自然な状態にすることは,いまから考えると当たり前のことだったのです.私がそれに気づいたのは,レミニールやリバスタッチパッチ・イクセロンパッチ(以下リバスタッチと略す),メマリーの登場がきっかけでした.
とくにレミニールは,自然界に存在した化学構造物ですからいろいろな神経伝達物質を増やす作用があります.リバスタッチ,メマリーもそうです.この3成分は,逆にドパミンを揺さぶることでアリセプトにない副作用(傾眠)をおこすのですが,いずれも患者に合った用量を選べば大きな問題にはなりません.
アリセプトで怒りっぽくなった患者を診て,私はすぐにアリセプトの副作用とわかりましたが,13年たった今でもそれは認知症が進行したからだと思っている医師がいるようです.中核症状改善薬(中核薬と略す)4成分が出そろったのはいいことですが,どうやって使いこなせばよいかわからない,4成分ともに設けられた「増量規定」をどの程度遵守しなければならないのかという疑問の声が湧きあがっています.早く,現場に一発回答を出してやらないといけません.
結局私が家族から圧倒的に支持されてきた「家族を楽にさせる」処方とはどうあるべきか,せっかく開発された中核薬のよいところを最大限に引き出すためにどのような処方をすればよいのか,抑制系薬剤はアメリカでは患者の生命予後を短くさせるなどの警告が出ているが処方してよいのか,などあらゆる疑問に明快に答えることができます.
認知症患者が急増し,いわゆる専門医だけでは診きれない状態にすでになっています.私が2007年からインターネット上で公表してきたコウノメソッド(認知症薬物療法マニュアル)は,認知症に不慣れなプライマリケア医が,おおまかに認知症の病型鑑別をし,患者のキャラクター,体質に合った処方がすぐにできるように指導しています.中核薬こそが認知症治療の王道だという考え自体が間違っています.家族に評価される処方こそが王道だと確信しています.
2013年5月
著 者

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目次

1 序論
 A 認知症における誤った認識
  1.医師は介護者の苦労を知らない
  2.医師は薬で認知症が改善できると思っていない
  3.認知症の薬は規定どおり処方してはならない
  4.睡眠薬を飲んでも認知症は悪化しない
  5.薬より効く健康補助食品がある
  6.臨床医は病理学の奴隷ではない
 B 認知症の種類
 C せん妄
 D コウノメソッドの処方哲学
 E 中核症状と陽性症状,陽証と陰証,興奮系と抑制系薬剤
 F 抗うつ薬の禁止

2 初診編
 A 初診セット
 B 加齢と認知症の鑑別における鉄則
 C 認知症との診断を確定する
 D 初診セット2
  1.改訂長谷川式スケール
  2.改訂長谷川式スケールの中身
  3.バランス8
  4.うつ鑑別
  5.時計描画テスト(CDT)
  6.定量評価(CDスコア)
  7.定性評価
  8.幻覚
  9.レビースコア,歯車現象
  10.ピックスコア
  11.治療希望(コミュニケーションシート2013)
  12.レビータイプ判定
  13.食欲不振判定(食欲不振チェック表)
  14.病識欠如

3 鑑別診断の鉄則
 A 症状優先主義であるべし
 B 診断が難しい症例

4 病型別診断と対策
 A 脳血管性認知症
  1.疾患の背景
  2.脳血管性認知症
  3.血管因子
  4.脳血管性うつ状態
  5.脳血管性パーキンソニズム
  6.失語症候群
  7.VD処方術
 B アルツハイマー型認知症
  1.診断基準の限界
  2.最低限やってほしいこと
  3.ATDの雰囲気
  4.改訂長谷川式スケール(HDS-R)での特徴
  5.CDTでの特徴
  6.どうしても鑑別診断できないとき
  7.ATD処方術
 C 神経原線維変化型老年期認知症(SD-NFT)
 D 嗜銀顆粒性認知症(AGD)
 E レビー小体型認知症
  1.プロフィール
  2.診断基準の限界
  3.レビー小体型認知症の雰囲気
  4.レビースコア
  5.DLB処方術
  6.レビー化について
  7.レビー小体型認知症のタイプ別処方術
 F 前頭側頭葉変性症(FTLD)
  1.認知症症候群
  2.失語症候群
 G 進行性非流暢性失語
  1.前頭側頭葉変性症(FTLD)診断の道筋
  2.失語症候群のピック化
 H パーキンソン病類縁疾患との境界にあるFTLD
  1.大脳皮質基底核変性症(CBD)
  2.進行性核上性麻痺(PSP)
 I その他の認知症
  1.筋緊張性ジストロフィーにおける認知症
  2.古典的混合型認知症
  3.多重認知症
  4.石灰沈着を伴うびまん性神経原線維変化病(DNTC)
  5.甲状腺機能低下
  6.ビタミンB12欠乏症
  7.正常圧水頭症
  8.硬膜下血腫
  9.クロイツフェルト・ヤコブ病
  10.脳炎後認知症
  11.小脳脊髄変性症に合併した認知症
  12.レビー・ピック複合(LPC)
 J 実践的診療のまとめ

5 処方禁忌チェック

6 再診編
 ■再診セット
  1.副作用チェック
  2.中核薬の効果判定

7 急速悪化時対応マニュアル
  1.認知症本体の変容
  2.改訂長谷川式スケールの悪化
  3.認知症であるがゆえのストレス不耐からくるもの
  4.老人にありがちなこと
  5.食欲低下への対応
8 用語集

おわりに
索引

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執筆者一覧

河野和彦 名古屋フォレストクリニック院長 著

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