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書籍詳細

電解質輸液塾

電解質輸液塾

門川俊明 著

A5判 174頁

定価3,520円(本体3,200円 + 税)

ISBN978-4-498-12350-2

2013年05月発行

在庫なし(2020年9月中旬 改訂2版刊行予定)

水電解質が苦手になる大きな要因の一つに,原理原則に反する例外やまれな事項があまりに多い,というものがある.本書ではそれを踏まえ,「まずは原理原則を徹底的にたたき込む」ことを優先し,覚える内容を必要最低限に大胆にクリアカットした.同時に,実際の現場で治療の方向性を定められるよう,今すぐ臨床に活かせるような解説がなされている.初学者のみならず,もう一度勉強し直したいと思っている人にとっても最適な書と言える.

まえがき

 水電解質がわからないと言っている人は,専門書に扱われる内容に,原理原則に反する例外的な事項や,まれな事項があまりに多く,頭が混乱してしまっていることが多いように思います.初学者や,水電解質が苦手と思っている人は,ある程度例外には目をつぶって,まずは,原理原則を徹底的にたたき込むことが,最優先だと思います.だから,この本でも,原理原則に矛盾する例外やまれなことには,あえて目をつぶりクリアカットな記述を心がけています.そういう意味では,学術書としては正しくない記述もあるかもしれませんが,プラクティカルであることに重点をおいています.
 また,水・電解質の教科書というと,いきなり生理学の記述がたくさん続き,そのあと,ようやく,臨床に使える電解質異常症の解説が始まります.今すぐ,臨床に役立つ知識を求める人は,ずいぶん遠回りしなければいけません.学問的には,生理→病態生理→治療と進んだ方が良いのですが,本書では,なるべく,電解質異常症の症例について考えながら,必要に応じて,生理学に立ち返るという構成にしてあります.
 輸液や電解質の治療において重要なことは,ベクトルの方向は間違わない,でも,ベクトルの大きさにはこだわりすぎないと言うことです.人間の体にはホメオスタシス機構があります.したがって,治療の方向性(例えば,ここはNaを補充すべきか,制限すべきか)を間違わなければ,大きな失敗はありません.具体的に,何g入れるかは,その次のステップです.様々な推算式がありますが,所詮推算式ですから,それにこだわり過ぎるのは意味がありません.むしろ,方向性さえ間違えなければ,日々の状況判断をして(データや身体所見を見て),少し足りないとか,少し多いといった評価をおこなって,修正していければよい思います.本書では,治療の方向性を間違わないという部分にしっかりと力を入れていきたいと思います.
 私も,20年以上にわたって,この分野に興味を持って勉強をしてきました.しかし,この分野は学べば学ぶほど,そう簡単にクリアカットに考えられるような学問分野ではないことがわかってきました.しかし,原則となる1本の幹をしっかり持っていなければ,いくら枝葉を覚えても仕方がありません.木の幹をしっかり本書で身につけて下さい.
 本書では,5つのテーマを扱いました.どこから読んでいただいても良いようにしてあります.また,最後のQuick Referenceは,病棟ですぐに役立つものにしてあります.読者は,医学生,研修医あたりを想定していますが,臨床経験が長い方が,電解質,輸液をもう一度勉強しなおしたいという場合にも満足してもらえると思います.この本で水電解質に興味を持たれた方は,是非,柴垣有吾先生の『より理解を深める! 体液電解質異常と輸液』を読んでみて下さい.本書では,十分に書けなかったことにも,言及していますので,知識を深めることが出来ると思います.
 なお,本書を書くに当たって,和田孝雄先生の『輸液を学ぶ人のために』『臨床家のための水と電解質』,柴垣有吾先生の『より理解を深める!体液電解質異常と輸液』には,多大な影響をいただきました.この場を借りて感謝申し上げたいと思います.また,2012年に,慶應義塾大学医学部93回生に年間を通しておこなった「電解質輸液塾」が,この本のベースになっています.たくさんのフィードバックをくれた学生達に感謝したいと思います.

2013年3月
門川俊明

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目次

テーマ01●Naと水の異常
第1限 低Na血症の考え方
 1-1 低Na血症の考え方
 1-2 細胞外液量の推定
第2限 低Na血症の治療
 2-1 低Na血症の症状
 2-2 低Na血症の治療
 2-3 体液量減少型の低Na血症へのアプローチ
第3限 SIADH
 3-1 SIADHとは
 3-2 ADHの作用メカニズム
 3-3 血漿浸透圧の調整機構
 3-4 SIADHの原因
 3-5 SIADHの診断
 3-6 SIADHの治療
 3-7 バソプレシン受容体拮抗薬
第4限 高浸透圧性低Na血症と偽性低Na血症
 4-1 高浸透圧性低Na血症
 4-2 偽性低Na血症
第5限 低Na血症の診断アプローチ
 5-1 低Na血症の診断アプローチ
 5-2 水とNaの関係
第6限 高Na血症
 6-1 高Na血症を防ぐメカニズム
 6-2 高Na血症の症状
 6-3 高Na血症の診断アプローチ
 6-4 高Na血症の治療
第7限 尿崩症
 7-1 尿崩症とは
 7-2 尿崩症の治療
 7-3 多尿の診断アプローチ

テーマ02●Kの異常
第1限 K代謝異常症の病態生理
 1-1 Kの体内動態
 1-2 Kは細胞内の主要なイオン
 1-3 Kの調整機構
 1-4 細胞内外のK移動を調節する因子
 1-5 腎臓でのK再吸収と分泌
第2限 高K血症
 2-1 高K血症の症状
 2-2 K濃度異常と心電図変化
 2-3 高K血症の診断アプローチ
 2-4 高K血症の緊急治療
 2-5 高K血症の慢性期の治療
第3限 低K血症 1
 3-1 低K血症の症状
 3-2 低K血症の診断アプローチ
 3-3 TTKG
第4限 低K血症 2
 4-1 低K血症の治療
 4-2 Bartter症候群/Gitelman症候群

テーマ03●Ca・P・Mgの異常
第1限 Ca,P代謝の基本
 1-1 Ca代謝
 1-2 P代謝
 1-3 Ca・Pを調節する因子
第2限 高Ca血症
 2-1 高Ca血症とは
 2-2 高Ca血症の診断
 2-3 高Ca血症の治療
第3限 低Ca血症
 3-1 低Ca血症とは
 3-2 低Ca血症の原因疾患
 3-3 低Ca血症の診断アプローチ
 3-4 低Ca血症の治療
第4限 高P血症
 4-1 高P血症とは
 4-2 高P血症の診断
 4-3 高P血症の治療
第5限 低P血症
 5-1 低P血症とは
 5-2 低P血症の診断
 5-3 低P血症の治療
第6限 Mg代謝異常症
 6-1 Mg代謝の基本
 6-2 高Mg血症
 6-3 低Mg血症

テーマ04●酸塩基平衡異常
第1限 酸塩基平衡の基本
 1-1 酸の産生と排泄
 1-2 pHは肺と腎臓が決める
 1-3 代償作用
 1-4 アシデミア,アルカレミアとアシドーシス,アルカローシスの違い
 1-5 血液ガスのステップ分析
第2限 代謝性アシドーシス 1
 2-1 アニオンギャップ
 2-2 AG増加型代謝性アシドーシス
 2-3 糖尿病性ケトアシドーシス
第3限 代謝性アシドーシス 2
 3-1 乳酸アシドーシス
第4限 代謝性アシドーシス 3
 4-1 AGが減少するのは
第5限 代謝性アシドーシス 4
 5-1 AG正常の代謝性アシドーシス
 5-2 尿アニオンギャップ
第6限 代謝性アシドーシス 5
 6-1 尿細管性アシドーシス
 6-2 慢性腎不全のときのアシドーシス
第7限 代謝性アルカローシス
 7-1 代謝性アルカローシスの病態
 7-2 代謝性アルカローシスの診断
 7-3 代謝性アルカローシスの治療
第8限 混合性酸塩基平衡異常 1
第9限 混合性酸塩基平衡異常 2
 9-1 アスピリン中毒
 9-2 補正重炭酸イオン濃度

テーマ05●輸液の考え方
第1限 輸液療法の基本
 1-1 輸液は難しい?
 1-2 2+3の輸液製剤を覚える
第2限 基本輸液製剤を理解する
 2-1 輸液の基本製剤は生食と5%ブドウ糖液
 2-2 輸液はどこに行くか?
第3限 その他の輸液製剤を理解する
 3-1 イントロ
 3-2 血漿増量剤
 3-3 細胞外液補充液
 3-4 1号液−4号液
 3-5 3号液がなぜ維持液とよばれるのか
 3-6 1号液と4号液の使い方
 3-7 輸液製剤何を覚えるか
第4限 輸液の量とスピードの考え方
 4-1 補充輸液
 4-2 脱水時の輸液量の目安
 4-3 維持輸液
 4-4 水と電解質のバランスシート
 4-5 フィードバック

●クイック・レファレンス
 低Na血症の診断アプローチ
 低Na血症の治療
 高Na血症の診断アプローチ
 多尿の診断アプローチ
 高K血症の診断アプローチ
 高K血症の緊急治療
 低K血症の診断アプローチ
 高Ca血症の診断アプローチ
 低Ca血症の診断アプローチ
 高P血症の診断アプローチ
 低P血症の診断アプローチ
 血液ガスのステップ分析
 覚えるべき輸液製剤の組成

索引

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執筆者一覧

門川俊明 慶應義塾大学医学部医学教育統轄センター 教授 著

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