改訂2版の序
「心臓カテーテル室スタッフマニュアル」が出版されてはや2年が経過した.この間,多くのカテーテル検査室で仕事をされる方々から意見をいただき,今回改訂版を出版することになった.これは,作成にかかわった我々にも大いに学ぶことが多い作業であったが,ようやく出版することができた.この間,変化したことは「腎障害患者におけるヨード造影剤使用に関するガイドライン」が作成され数多くのエビデンスをもとに予防法,治療法における標準化がなされたことであろう.カテーテル検査を受ける冠動脈疾患患者の多くが,腎機能障害を持っていることは広く知られ,造影剤腎症の発症は予後を悪化させることも知られている.併存疾患を考え,造影することのリスク・ベネフィットを理解して予防を念頭に検査を勧めることが必要である.また,CABGとPCIの比較試験でCABGの長期予後改善効果が示され,カテーテル検査室で冠動脈造影に引き続いて狭窄があるだけでインターベンションをするのではなく,虚血の部位,範囲さらには患者の全体像を考えて治療戦略をたてることが必要になった.今後は,カテーテル検査室に内科医だけでなく外科医も積極的に参加したHEART TEAMのあることが常識となるであろう.チーム作りには,これまで治療のゲートキーパーであったInterventional Cardiologistより広い知識を持ったGeneral Cardiologistをゲートキーパーとして育成する必要があろう.また,医師だけでなくカテーテル検査室で働くメディカルスタッフもチームとして参加できるシステム作りが必要である.というのも,冠動脈のインターベンションだけでなくアブレーションも,より難治性不整脈に対する治療が必要とされ,高度な技術と知識が必要とされている.この克服には,医師のみでは対処できなくなり,専門的なメディカルスタッフの養成が必要になる.また,大動脈弁狭窄症に対するカテーテルによる弁形成術(TAVR)もほどなく認可され広く多くの施設で行われるようになる.TAVRには,内科医・外科医の緊密な連携とメディカルスタッフの協力がなければ良好なアウトカムを得ることはできない.今回の改訂には間に合わなかったが,今後TAVRを含めた弁膜症に対するカテーテル治療についてもカテ室で働くスタッフでいかにして良い結果をえるかを考えてゆく必要がある.
このマニュアルでは,最新のことばかりではなく,必要な基礎知識も多く含まれ,いろいろな場面で参考になると思う.カテ室で働くすべてのスタッフに役立つことになれば幸いである.
2013年2月
平山篤志