目次
Part 1 プロローグ
A.ドパミンとの再会
B.構造生物学は進歩したが,ドパミン受容体の動的立体構造は解明されていない
Part 2 只者ではないドパミンの仕事ぶり─ドパミンはサリエンスを媒介する─
A.生命を救うドパミン
B.次なる一手─冷や汗が出る場面では「直観」に助けられる
C.忘れられないバナナの味
D.ドパミン神経細胞は意外と少ない
E.ドパミンの原始的な役割
F.恋は盲目?
G.A10をインチキして自分で刺激すれば依存が形成される
H.危険察知と不安の中枢である扁桃体はドパミン神経系で制御されている
I.幸福感には2つあり,A10のドパミンはオキシトシンを分泌する
J.ドパミンはプロラクチンを制御する
K.夢に関するHobsonの立方体モデルとドパミン
L.ドパミンはさまざまなサリエント機能を媒介する
Part 3 意思決定での神経回路とドパミン
A.意思決定の基本は何か
B.個のレベルの意思決定(1)─基礎的意思決定
C.個のレベルの意思決定(2)─反転学習
D.人間はなぜ強いのか─社会脳の発達
E.種のレベルの意思決定(1)─心の理論
F.種のレベルの意思決定(2)─利他的行動
G.うつ病とドパミン
H.社会の中での人間の行動を決定する脳機構
I.空の旅は社会の縮図
J.言語と地域社会
K.SNSがなぜもてはやされるのか─人は自分について語るとき幸せである─
Part 4 もっとも売れている薬は何?
A.薬の開発には労力がかかる
B.抗精神病薬はもっとも売れている薬だが,不適切な使用も多い
C.抗精神病薬の作用点としての神経遮断受容体
D.抗精神病薬の主たる薬理作用はドパミンを遮断することである
Part 5 脳内の4つのドパミン神経系と統合失調症の病態仮説
A.4つのドパミン神経系
B.血液脳関門
C.ドパミンと統合失調症の病態仮説
Part 6 抗精神病薬の副作用を概括する
A.薬の種類で抗精神病薬の効果はほぼ同等
B.薬の種類で抗精神病薬の副作用のパターンは異なる
C.抗精神病薬の副作用にはどのようなものがあるのか
D.コインの表と裏
E.「質」に関する副作用は「臨床的受容体プロフィール」で予測できる
F.抗精神病薬は減薬するときも副作用に注意する必要がある
G.離脱では臨床的に3つの症状群に注意する必要がある
H.Aripiprazoleと過敏性精神病
I.抗精神病薬の効果を最大にするには─「用量反応関係」という土俵で検討するとよい─
J.至適最小用量はわかりにくいので変動幅を考える
K.徐放化製剤の利点
L.持続的にドパミンを遮断すると脳容積は低下する
M.抗精神病薬の副作用回避の重要性
Part 7 非定型抗精神病薬は一部ドパミン伝達を行う?─アゴニストとは何かを再考する─
A.抗精神病薬は精神疾患患者に福音をもたらす
B.非定型抗精神病薬の薬理学的根拠のあいまいさ
C.「鍵と鍵穴」モデルの誤解
D.鍵穴はいい加減である
E.ドパミンと抗精神病薬の違い
F.薬理学ではアゴニストの反対はアンタゴニストではない
G.抗精神病薬の共通の性質はドパミンブロッカーである
H.定型抗精神病薬と非定型抗精神病薬の線引きは何か
I.アゴニスト作用はサッカーゴールにボールを蹴り入れるようなもの
J.Blonanserinの非定型性はG蛋白の微弱な活性化ではないか
K.純粋なアゴニストは創薬では危険である
L.グルタミン酸仮説とドパミンの関係
Part 8 精神疾患の意味論
Part 9 エピローグ
謝辞
索引