はじめに
私が内科研修をさせて頂いた施設は救命救急センターではありませんでしたが,多くの救急患者が受診する市中病院で,当直や週に3〜4回割り当てられる救急外来当番にとても魅力を感じ,救急医の道を志しました.
内科救急の重要性が今日ほど認識されていなかった当時にどのように勉強していたのか思い返してみると,遭遇した症例で判断に困ったら先輩医師に相談しアドバイスを仰ぐこと,判断を誤った場合は次にどのような点を注意したら同じ過ちを繰り返さないですむのか自分なりの教訓を見つけ出すことの繰り返しで,このときに学んだ「臨床医としての考え方」の蓄積は非常に大切な財産となっています.
救命救急センターで研修医の先生方と一緒に軽症から重症まで様々な救急診療を担当する立場となって,時代や場所は変わっても内科救急診療の現場で若い医師が悩むことはさほど変わらず,自分なりの蓄積を後輩に伝えることは非常に大切なことだと確信しました.忙しい救急外来で一緒に働いた研修医の先生方が内科医となり,適切に内科救急診療を行う姿を見ることができるのはもう1つの貴重な財産です.
この度中外医学社より,研修医の先生方を対象に行ってきた内科救急に関するレクチャーを書籍にまとめる機会を頂きました.内容は基本的なことばかりで目新しいことはありませんが,救急診療ではできないことをやろうとして焦るよりも自分にできることを確実に行うことが大切です.これから救急診療を始められる皆さんには入門書として,後輩に内科救急の指導をしなければならない指導医の先生方には,指導資料の参考になれば幸いです.
最後になりましたが,1年の長きにわたり私のレクチャーを聴いてくださった名古屋掖済会病院と名古屋医療センターの臨床研修医の皆さん,毎回録音し書き起こしてくださった中外医学社の岩松さんに深く感謝の意を表したいと思います.
不惑の年を前に,日々迷いながら 亡き父の偉大さを再認識し働く,新天地 豊明より
2012年10月
藤田保健衛生大学病院総合救急内科 岩田充永