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書籍詳細

EBMを飼いならす

EBMを飼いならす

山本和利 編著

B5判 184頁

定価(本体3,800円 + 税)

ISBN978-4-498-00976-9

2002年04月発行

在庫なし

EBMの本質を理解し,臨床の場で実践するためにまとめられた全く新しい手引き書である.EBMに至る医学の流れとその限界を概説したのち,EBMのステップを紹介,確率,決断分析,頻度,二群比較,相関・多変量解析と用いる統計学の難易度にあわせて章立てし,適宜臨床例による問題を織り込んで理解の助けとなるようまとめた.タイトル通りEBMを「飼い慣らす」ために必読の書である.


 私は,初期研修の2年間を除いてしっかりした研修や修練を受ける機会がないまま,約10年間を地域医療の現場で過ごした.その間に,患者・住民のおかれている状況が必ずしも当人たちにとって満足のゆくものではないという現実に何度も遭遇した.そのような状況を打破したいと思っても試行錯誤を繰り返すしかなく,悪戦苦闘の日々であった.しっかりとした指針がなく,また私自身も未熟であったため,患者・住民を心ならずも傷つけたかもしれないという危惧に今更ながら襲われる.それまで「よい医者」と思い込んでいた像に次第に疑問をもち始め,解決されることのないまま胸の中で燻り続けていた.その後,出身大学へ戻って,10年遅れて研修を行っているうちに,Sackettの『Clinical epidemiology』という1冊の本に出会った.そこには,これまで誰も教えてくれなかった,臨床を科学的に実践するための理論が書かれていた.いままでもち続けていた疑問が一つずつ氷解していくのを感じ,それからは独学で様々な本を読みあさった.医師として20数年間過ごした今やっと,患者・住民にとっての「よい医師」像というものを朧気ながらつかむことができたと思っている.それはありきたりであるが,一言でいってしまえば「患者にとってよい医師であるためには2つの領域の知識・技能が必要である」ということである.1つは本書で扱う「科学的なもの」であり,もう1つは「人間的なもの」である.今,流行のいい方をすると,evidence-based medicine(EBM)であり,narrative-based medicine(NBM)である(本書は題名のごとく,EBMにのみ焦点を当てている).現在,大学という比較的時間に恵まれた環境にあって,私が学んだものを学生や現場の医師に伝えることができたらと思い,本書を書き始めた次第である.約10年前に,私が読んで感動したこれらの本は現在に至っても大部分翻訳されないままである.Feinsteinの,臨床を学問にしようとした情熱や彼のもつ数学力・統計能力,Sackettの,科学性と人間性を統合しようとした先見性やユーモア,Soxの,決断分析を明解に教授するすばらしさ,Kleinbaumの,臨床に関わる科学を教える教科書のユニークさを,本書を書くことによって伝えたい.著者の工夫も盛り込んでみた.本書を紐解くことによって読者が科学的に臨床に向き合うための労を減らすことができればと願っている.
 この本の章立ては,Fletcherの著書『Clinical epidemiology/The essentials』と,今では廃刊となったFeinsteinの著書『Clinical Epidemiology/The Architecture of Clinical Research』にヒントを得て作成した.第1章ではEBMに至る医学の流れとその限界について言及した.この部分は,EBMの実践手引書のつもりで購入された読者には奇異に感じるかもしれない.EBMは医療が果たすべき役割の一部であって,それ以上でも以下でもない.著者はEBMを推進する立場にあるが,ここではあえてEBMをもてはやす風潮に対して問題点を提示した.それ以降はEBMの実践について次のように記載した.第2章にEBMのステップ,第3章に確率,第4章に決断分析,第5章に頻度,第6章に2群比較,第7章に相関・多変量解析,と用いる統計学の難易度にあわせて章立てをした.第1〜5章は日常臨床に必須レベル,第6章は臨床論文を書くレベル,第7章は臨床疫学大学院レベルに対応する.各章には,まず症例を示した.そして,簡潔にEBMのステップ1〜4の結果を示し,次に,必要となる数学レベルをAに示し,統計学の解説をBに,臨床疫学のポイントをCに述べた.さらに,必要に応じて臨床例による問題を配置した.各章の終わりに参考文献を載せ,さらに推薦図書を載せて図書についての解説を加えた.また,内容の充実と最新の情報を盛り込むため,当教室から宮田靖志,川畑秀伸の両名,地域医療の現場でEBMの実践と普及に努めている八森敦,吉村学両氏に執筆に加わってもらった.その結果統計学や臨床疫学の解説について重複する部分が生じたが,何回も読むことにより読者の理解が深まると考えあえてそのままにした.
 本書によって多くの読者が「EBMを飼いならす」ようになることを期待したい.

2002年1月
山本和利

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目 次

第1章 EBMを飼いならす
 1.1.EBMの実践とその限界
 1.A.必要となる数学レベル
  1.A.1.生物学への数学の適用
  1.A.2.ブール代数
 1.B.統計学の解説
  1.B.1.記述統計学
   1.B.1.1.代表値と散らばり
 1.C.臨床疫学のポイント
  1.C.1.仮説形成研究
  1.C.2.仮説検証研究
   1.C.2.1.観察研究
   1.C.2.2.実験研究
   1.C.2.3.両方にまたがる研究

第2章 EBMの4つのステップ
 2.1.2型糖尿病患者の治療
  2.1.1.第1段階
  2.1.2.第2段階
  2.1.3.第3段階
  2.1.4.第4段階
 2.A.必要となる数学レベル
  2.A.1.確 率
 2.B.統計学の解説
  2.B.1.偶 然
  2.B.2.2群間の統計的な有意差
 2.C.臨床疫学: 臨床研究への入門
  2.C.1.臨床疫学の学問性
  2.C.2.臨床疫学の大前提
  2.C.3.バイアス
  2.C.4.偶然とバイアスの関係
  2.C.5.バイアスを制御する方法
   2.C.5.1.ランダム化
   2.C.5.2.限 定
   2.C.5.3.マッチング
   2.C.5.4.層 化
   2.C.5.5.標準化
   2.C.5.6.多変量補正
   2.C.5.7.感受性分析
  2.C.6.内的妥当性と外的妥当性

第3章 確 率
 3.1.診断: 狭心症
  3.1.1.第1段階
  3.1.2.第2段階
  3.1.3.第3段階
   3.1.3.1.妥当性
   3.1.3.2.結 果
  3.1.4.第4段階
   3.1.4.1.検査法の利用,経費,精度
   3.1.4.2.検査前確率の推定
   3.1.4.3.検査後確率の決断に与える影響
 3.A.必要となる数学レベル
  3.A.1.確率の計算
 3.B.統計学の解説
  3.B.1.2×2表
  3.B.2.Bayesの定理
  3.B.3.変 数
  3.B.4.不確実の表現
 3.C.臨床疫学のポイント
  3.C.1.診断のプロセス
  3.C.2.診断の手順
  3.C.3.検査前確率
  3.C.4.感度(真陽性率)
  3.C.5.特異度または(1−偽陽性率)
  3.C.6.検査後確率
   3.C.6.1.検査後確率の求め方(1): 2×2表の利用
   3.C.6.2.検査前確率の影響(1): 診療の場
   3.C.6.3.検査前確率の影響(2): 検査前確率の間違った設定
   3.C.6.4.カットオフ値
   3.C.6.5.検査後確率の求め方(2): オッズと尤度比の利用
   3.C.6.6.感度・特異度から求めた検査後確率の問題点
  3.C.7.ROCカーブ
  3.C.8.複数検査の評価
   3.C.8.1.同時並行検査
   3.C.8.2.連続検査
   3.C.8.3.検査の選択順
  3.C.9.連続検査による検査後確率の求め方
 3.D.症 例

第4章 決断分析
 4.1.決断分析: 血管外科手術の前に心臓カテーテル検査をすべきか?
  4.1.1.第1段階
  4.1.2.第2段階
  4.1.3.第3段階
   4.1.3.1.妥当性
   4.1.3.2.結 果
  4.1.4.第4段階
   4.1.4.1.確率の決め方は自分の患者でも妥当か?
   4.1.4.2.効用値の決め方(価値観)に自分の患者と差がないか?
 4.A.必要となる数学レベル
  4.A.1.期待値
  4.A.2.一次方程式
  4.A.3.相似形
  4.A.4.比 例
  4.A.5.ベイズ的アプローチと実際の人間の決定行動の違い
   4.A.5.1.フレーミング効果
   4.A.5.2.資産効果
   4.A.5.3.損失忌避
   4.A.5.4.準拠点効果
   4.A.5.5.近道思考(heuristic rule)
 4.B.統計学の解説
  4.B.1.推 定
   4.B.1.1.母集団と標本
   4.B.1.2.正規分布
   4.B.1.3.標準正規分布
   4.B.1.4.標準偏差と標準誤差
   4.B.1.5.信頼区間の推定
   4.B.1.6.統計的有意差と臨床上の重要性
 4.C.臨床疫学のポイント
  4.C.1.Wait or Treat
   4.C.1.1.治療閾値
   4.C.1.2.決断分岐図
   4.C.1.3.効用値
   4.C.1.4.検査を用いないときの決断分岐図
   4.C.1.5.治療閾値の式
   4.C.1.6.一次関数グラフによるアプローチ
   4.C.1.7.十二指腸穿孔の治療閾値
   4.C.1.8.肺塞栓症の治療閾値
  4.C.2.Wait,Exam,or Treat
   4.C.2.1.検査方略を加えた決断
   4.C.2.2.検査閾値と検査・治療閾値
   4.C.2.3.一次関数グラフによるアプローチ
   4.C.2.4.尤度比からのアプローチ
  4.C.3.Wait,2 Exams,or Treat
   4.C.3.1.2つの検査法を用いたときは,10の選択肢
   4.C.3.2.2つの検査法を用いたときの選択肢
   4.C.3.3.必ずしも2つの検査法が1つの検査に優るとは限らない
   4.C.3.4.検査前確率を考慮した5つの選択肢
 4.D.症 例

第5章 頻 度
 5.1.予防: 外傷後てんかん予防
  5.1.1.第1段階
  5.1.2.第2段階
  5.1.3.第3段階
   5.1.3.1.妥当性
   5.1.3.2.結 果
  5.1.4.第4段階
   5.1.4.1.この結論は自分の患者に適用できるか
   5.1.4.2.実際の適用
 5.2.予防: 肺癌検診
  5.2.1.第1段階
  5.2.2.第2段階
  5.2.3.第3段階
   5.2.3.1.研究デザインは適切か(ランダムに割付けられているか,背景因子は同じか)
   5.2.3.2.経過観察は完全か,脱落はどの程度か
   5.2.3.3.観察期間と追跡期間は適切か
   5.2.3.4.全ての参加者が最初に割付けられた群の一員として分析されているか
   5.2.3.5.被験者や医療者,判定者に対してブラインド化されているか
   5.2.3.6.肺癌の診断基準はどうであったか
   5.2.3.7.結果はどうであったか
   5.2.3.8.罹患率の違いをどう考えるか
  5.2.4.第4段階
 5.A.必要となる数学レベル
  5.A.1.散らばりの表現
   5.A.1.1.偏差(d)
   5.A.1.2.偏差平方和(S)
   5.A.1.3.分散(s2)
   5.A.1.4.標準偏差(s)
   5.A.1.5.四分位偏差(Q)
 5.B.統計学の解説
  5.B.1.仮説検定
   5.B.1.1.帰無仮説
   5.B.1.2.αエラーとβエラー
   5.B.1.3.両側検定か片側検定か
  5.B.2.t検定
   5.B.2.1.標本数が小さい2群間比較
   5.B.2.2.1標本(ペア)t検定
  5.B.3.カイ2乗(χ2)検定
   5.B.3.1.2×2分割表
   5.B.3.2.期待値の求め方
   5.B.3.3.カイ2乗検定
   5.B.3.4.カイ2乗を求める
   5.B.3.5.カイ2乗の公式
   5.B.3.6.イェーツの連続修正(χ2c)
   5.B.3.7.フィッシャーの正確検定
   5.B.3.8.McNemarカイ2乗検定
 5.C.臨床疫学のポイント
  5.C.1.頻 度
   5.C.1.1.有病率(prevalence)と発生率(incidence)
   5.C.1.2.母集団とサンプル
  5.C.2.予 防
   5.C.2.1.予防の3段階
   5.C.2.2.スクリーニング
   5.C.2.3.スクリーニングのバイアス

第6章 2群比較
 6.1.治療: 高血圧
  6.1.1.第1段階
  6.1.2.第2段階
  6.1.3.第3段階
   6.1.3.1.妥当性
   6.1.3.2.結果の重要性と信頼区間
  6.1.4.第4段階
   6.1.4.1.自分の個別の患者は,この結果が役立たないほど研究の対象者と大きく違っているか
   6.1.4.2.現在の環境でその治療は可能か
   6.1.4.3.期待される治療の利益は,自分の個別の患者にとってどれほど大きいか
   6.1.4.4.計画の治療とそのアウトカムについての,自分の患者の価値観や選好はどうか
 6.2.治療: 腎不全への降圧療法
  6.2.1.第1段階
  6.2.2.第2段階
  6.2.3.第3段階
   6.2.3.1.妥当性
   6.2.3.2.結 果
   6.2.3.3.結果の解釈
  6.2.4.第4段階
   6.2.4.1.この結論は自分の患者に適用できるか
   6.2.4.2.実際の適用
 6.3.ガイドライン
  6.3.1.第1段階
  6.3.2.第2段階
  6.3.3.第3段階
  6.3.4.第4段階
 6.A.必要となる数学レベル
  6.A.1.モデル
   6.A.1.1.統計学におけるモデル
   6.A.1.2.正規分布をモデルとしたときの前提
 6.B.統計学の解説
  6.B.1.治療効果の指標
   6.B.1.1.RR,オッズ比,RRR,ARR
   6.B.1.2.Number Needed to Treat(NNT)
   6.B.1.3.95%信頼区間
   6.B.1.4.研究結果の表現を変えることによる影響
  6.B.2.多群平均の比較(分散分析)
   6.B.2.1.3つ以上の母平均間の差の検定
   6.B.2.2.分散分析
   6.B.2.3.ニューマン・クルーズの段階法
   6.B.2.4.2つの要因を考慮した分散分析
 6.C.臨床疫学のポイント
  6.C.1.ランダム化臨床試験
   6.C.1.1.ランダム化(ランダム割付け)
    6.C.1.1.1.ランダム割付けの方法
    6.C.1.1.2.ランダム割付けの確認
   6.C.1.2.追跡率
   6.C.1.3.盲検法
   6.C.1.4.治療薬以外の治療が施されていないか
   6.C.1.5.Intention to treat解析
  6.C.2.結果を現す指標
   6.C.2.1.比に基づく指標(有病率に影響を受けない); RR,RRR
   6.C.2.2.差に基づく指標(有病率の影響を受ける); ARR,NNT
  6.C.3.信頼区間とP値
  6.C.4.αエラーとβエラー
  6.C.5.個人に適した治療を選択する研究方法: N-of-1 trial
  6.C.6.ガイドライン
  6.C.7.Level of evidence
  6.C.8.コンセンサス形成過程

第7章 相関・多変量解析
 7.1.治療: うっ血性心不全
  7.1.1.第1段階
  7.1.2.第2段階
  7.1.3.第3段階
   7.1.3.1.妥当性
   7.1.3.2.結果の重要性と信頼区間
  7.1.4.第4段階
 7.2.治療または予後,副作用(Logistic regression解析の文献)
  7.2.1.第1段階
  7.2.2.第2段階
  7.2.3.第3段階
   7.2.3.1.結果は信頼できるか,妥当か?
   7.2.3.2.結果はどのようなものか?
  7.2.4.第4段階
 7.A.必要となる数学レベル
  7.A.1.対 数
  7.A.2.e
  7.A.3.logistic model
 7.B.統計学の解説
  7.B.1.相関関係
   7.B.1.1.2つの関係
   7.B.1.2.散布図と分割表
   7.B.1.3.相関係数と寄与率
   7.B.1.4.相関関係と因果関係
   7.B.1.5.見かけ上の相関
  7.B.2.重回帰分析
   7.B.2.1.回帰分析
   7.B.2.2.重回帰分析
   7.B.2.3.重回帰の分散分析表
   7.B.2.4.変数選択法
   7.B.2.5.ロジスティック回帰分析
 7.C.臨床疫学のポイント
  7.C.1.費用効果分析
   7.C.1.1.医療資源
   7.C.1.2.医療資源を効率的に分配するためのMedical Decision Makingの手法
   7.C.1.3.費用効果分析の具体的方法
   7.C.1.4.3つの勧告
   7.C.1.5.経済分析に関する医学文献の利用法
   7.C.1.6.費用効果分析の問題点
  7.C.2.生存率の分析法
   7.C.2.1.観察人年
   7.C.2.2.Kaplan-Meier法
  7.C.3.マルコフモデル(Markov Model)
   7.C.3.1.導 入
   7.C.3.2.移行確率
   7.C.3.3.生存期間
  7.C.4.DEALE
   7.C.4.1.計算法
   7.C.4.2.仮 定
   7.C.4.3.分析に用いるデータ
   7.C.4.4.移行確率
   7.C.4.5.感受性分析

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