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書籍詳細

脳卒中の画像診断

脳卒中の画像診断

山口武典 他編著

B5判 286頁

定価15,400円(本体14,000円 + 税)

ISBN978-4-498-02938-5

1998年10月発行

在庫なし

本書は脳卒中の診断に使われる,CT,MRI,MRA,TCD,血管内超音波,SPECT,PET,その他の画像診断法の原理,疾患別の適応,正常像,各疾患での画像上の特徴と読影のポイント,症例として典型例から,珍しい画像,判定の難しい画像などを示して,画像診断の実際を鮮明な写真を中心に,理解しやすく,実践的に役立つよう解説した.神経系,放射線科若手医師から脳卒中専門医まで必ず得るところの大きい書である.



 脳卒中の臨床における画像診断の果す役割は推り知れないものがある.1960年代の脳卒中の診断はほとんどが発症の仕方と症状,および神経学的所見に頼らざるを得なかった.ようやく血管撮影が普及し始めた頃で,それも大部分が頚動脈あるいは椎骨動脈の直接穿刺の1枚撮りであった.今考えると冷や汗ものであるが,硬膜下血腫の診断に不可欠であり,脳出血の局在診断にも唯一の画像診断法として繁用されたものである.脳出血と脳梗塞の鑑別は臨床症候と腰椎穿刺所見のみが頼りであった時代である.
 1971年,Hounsfieldによる実用的コンピュータ断層撮影(CT)の完成によって,脳の画像診断は革命的な飛躍を遂げた.同時に脳卒中の鑑別診断にも衝撃を与えたのである.すなわち,剖検診断との対比でしか検証のしようがなかった脳出血と脳梗塞の鑑別診断が,CTによって即座に可能となったこと,これまで脳梗塞としか考えられなかったような症例で脳出血が見られることがあること,また全く症状を表さない脳梗塞や脳出血がかなりの頻度に存在するということなどである.
 その後のコンピュータ技術の発達に伴う画像診断法の進歩は目を見張るものがある.脳の形態学を主体としたものとして磁気共鳴画像診断装置(MRI)が開発され,より正確かつ詳細に病巣を描出できるようになった.陳旧性の脳出血でさえ診断可能となったのである.血管の形態に関してはMR血管撮影,3次元CT,血管超音波断層検査,カラーフロードプラなど,非侵襲的に,かなり細い動脈まで描出されるようになっている.
 一方,機能的な面でも画像診断の寄与するところは大きい.ポジトロンエミッションCT(PET),シングルフォトンCT(SPECT)などの臨床応用により,脳卒中急性期の病態生理がさらに解明され,治療法選択との関連において大きく貢献している.
 その他,最近ではPETやfunctional MRIによる機能局在の診断,diffusion/perfusion MRIによる超急性期の虚血巣の描出,経頭蓋ドプラ検査(TCD)による流血中の栓子の検出(high intensity signals, HITS)など,新しい画像診断法の種類は枚挙に暇がない.
 本書では脳卒中の診断,病態解明や治療法の開発にも大きな関わりをもつ脳や血管の画像診断法を網羅したつもりである.また,脳梗塞の中で約1/4を占める心原性塞栓症の塞栓源となる心疾患の画像診断についても,かなりのページを割かせて戴いた.
 脳卒中はmultifactorialな疾患であり,循環器学,血液学の知識も必要とし,外科的処置の対象となる病型もある.血液凝固学における分子生物学的診断技術の著しい発展,さらにはt-PAや低体温療法という新たな治療手段の出現などから考えると,脳卒中は発症超早期から「迅速に正確な」病型診断がなされなければならない時代となっている.本書が脳卒中の診断に携わる臨床医の座右の書として利用して頂ければ幸いである.ただし,画像に頼りすぎて患者を診ない医師が増えることだけは防止しなければならないと考えていることを付け加えたい.
 最後に,本書の企画・立案と作成に多大のご尽力を戴いた中外医学社の高橋衛氏に深く感謝する.

1998年8月
山口武典
橋本信夫

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目 次

1 脳卒中に使われる各種画像診断
 A.脳病変の形態診断法
  1.CT〈早川 功〉
   1.原 理
   2.CT値
   3.疾患別の適応
    a.脳梗塞
    b.脳内出血
    c.その他の脳卒中と鑑別を要する疾患
   4.撮像の指示の仕方
    a.ルーチンCT
    b.特殊指示によるCT
    c.造影剤注入によるenhanced CT
   5.正常像
  2.MRI〈星野晴彦,高木 誠〉
   1.原 理
   2.疾患別の適応
    a.脳出血
    b.脳梗塞
    c.くも膜下出血
   3.撮像の指示の仕方
   4.正常像
  3.新しいMRI技術〈長谷川泰弘〉
  A.diffusion MRI
   1.原 理
   2.疾患別対応
   3.実験モデルから示唆される有用性
    a.虚血性ペナンブラ
    b.拡延性抑制
    c.脳 温
    d.その他の病態
  B.perfusion MRI
   1.原 理
   2.疾患別対応
  4.超音波診断法〈黒田清司,小川 彰〉
   1.超音波診断法の種類
   2.術中超音波診断
    a.脳内血腫
    b.脳動静脈奇形
    c.その他
   3.新生児・乳幼児頭蓋内診断
 B.脳血管の形態診断法
  1.脳血管撮影〈奥寺利男〉
   1.脳血管造影法
   2.脳血管造影に伴う神経系の合併症
   3.主要脳血管性病変の脳血管造影による診断
    a.頭蓋外血管(頚部血管)病変に起因する病変
    b.頭蓋内血管病変に起因する閉塞性脳血管障害
  2.MRA〈中川俊男〉
   1.MRA測定法の概略
    a.time-of-flight (TOF) 法
    b.phase contrast (PC) 法
   2.対象疾患
   3.撮像法
   4.脳ドックにおける実際
  3.ヘリカルCT(3D-CT angiography)〈今北 哲,大西義隆,橋本時弘,本杉 伸,高宮 誠〉
   1.原理および特徴
   2.撮像法
   3.適応疾患
    a.脳動脈瘤
    b.閉塞性脳血管障害
    c.その他
  4.頚部頚動脈超音波検査〈半田伸夫,杉谷義憲,松本昌泰〉
   1.検査装置,検査手技,正常値,正常像など
    a.検査装置
    b.検査手技
    c.正常画像
    d.計測方法と正常値
    e.検査の再現性
   2.病的所見
    a.Bモード所見
    b.プラークの性状診断
    c.ドプラ所見
    d.カラードプラ法
    e.超音波造影剤
  5.経頭蓋カラーフローイメージング〈木村和美,橋本洋一郎〉
   1.経頭蓋ドプラ法(TCD)とTC-CFI
   2.正常像
   3.疾患別の適応
    a.新生児期,乳児期
    b.中大脳動脈閉塞診断
    c.奇異性脳塞栓症の診断
    d.その他
   4.今後の展開
    a.急性期虚血性脳血管障害
    b.超音波造影剤
  6.経頭蓋ドプラ法〈長束一行〉
   1.原 理
   2.適 応
    a.形態学的診断
    b.脳循環動態の評価
    c.微小塞栓の検出
   3.TCDの検査手技
    a.transtemporal approach
    b.transorbital approach
    c.transforamenal approach
   4.正常値
   5.適応疾患
    a.虚血性脳血管障害
    b.くも膜下出血
    c.脳動静脈瘤・もやもや病
  7.血管内超音波法〈吉田 清〉
   1.血管内超音波装置の概要
   2.臨床応用
  8.血管内視鏡〈大平貴之〉
   1.種 類
   2.方 法
   3.適 応
    a.閉塞性病変での狭窄部の観察
    b.血管内手術での応用
 C.脳の機能診断法
  1.SPECT〈中川原譲二〉
   1.原理と特徴
   2.脳血流SPECT検査
   3.脳血流SPECT検査の臨床応用
    a.急性期脳虚血の脳血流SPECT
    b.亜急性期脳虚血の脳血流SPECT
    c.血行力学的脳虚血の脳血流SPECT
  2.PET〈北村 伸〉
   1.原 理
   2.static study
    a.正常像
    b.適 応
   3.activation study
  3.MEG〈豊田一則〉
   1.原 理
   2.脳卒中における自発磁界
   3.誘発磁界の脳梗塞への応用 12
  4.MRS(磁気共鳴分光法,スペクトロスコピー法)〈宝金清博〉
   1.原理と適応
   2.診断法の実際
   3.正常像と脳虚血のMRS
    a.虚血の程度による差異
    b.脳梗塞のMRSの経時的変化
    c.脳梗塞のchemical shift imaging(CSI)
  5.functional MRI〈成瀬昭二,古谷誠一,田中忠蔵〉
   1.MRIによる脳機能測定法の種類
    a.脳の血流情報を画像化する方法
    b.脳組織内の水分子の拡散を画像化する方法(拡散強調画像)
    c.脳組織の代謝変化を測定する方法
   2.fMRI測定の実際
    a.測定方法
    b.測定の実例
   3.fMRIの利点と問題点
    a.fMRIの利点
    b.装置の適合性
    c.fMRIの問題点
 D.脳卒中との関連における心臓・大動脈の形態・機能診断法
  1.心エコードプラ法〈豊田一則〉
   1.原 理
   2.脳卒中診療における心エコーの必要性
   3.経胸壁断層法
   4.経食道断層法
   5.ドプラ法
  2.電子ビームCT〈浜田星紀,高宮 誠〉
   1.撮影法
   2.診断のポイント
   3.症 例
  3.MRI〈山田直明〉
   1.原 理
   2.疾患別の適応
   3.撮像の指示の仕方
  4.血小板シンチグラフィー〈森脇 博,松本昌泰〉
   1.原 理
   2.適 応
   3.方 法
   4.応 用
    a.心臓疾患
    b.大動脈病変
    c.頚動脈病変,頭蓋内病変

2 疾患と症例
  1.アテローム血栓性脳梗塞〈大坪亮一,定永史子,岡田 靖〉
   1.疾患のポイント
   2.画像上の特徴
    a.梗塞巣
    b.血管病変
    c.脳循環動態
   3.症 例
  2.心原性脳塞栓症〈峰松一夫〉
   1.疾患のポイント
    a.定義,分類,頻度
    b.原因疾患
    c.臨床的特徴
    d.経過,転帰
    e.再 発
   2.画像上の特徴
    a.CT所見
    b.超早期のCT所見
    c.MRI所見
    d.出血性梗塞のCT所見
    e.出血性脳梗塞のMRI所見
    f.脳血管撮影所見(栓子陰影と再開通)
    g.塞栓源心疾患の検索
    h.その他の画像所見
   3.症 例
  3.ラクナ梗塞〈高尾昌樹,棚橋紀夫〉
   1.ラクナ症候群
   2.ラクナ梗塞の危険因子
    a.性,年齢や生活様式に関連したもの
    b.循環器疾患に関連したもの
    c.代謝性疾患
   3.画像診断
    a.CT,MRI
    b.脳血管造影
    c.SPECT
   4.治 療
   5.ラクナ梗塞に関する問題点
  4.一過性脳虚血発作〈吉永まゆみ,山口武典〉
   1.疾患のポイント
   2.画像上の特徴
    a.微小栓子によるTIA
    b.脳血管不全によるTIA
    c.心原性塞栓によるTIA
    d.鎖骨下動脈盗血症候群
    e.一過性黒内障
    f.TIAとCT・MRI所見
   3.症 例
  5.特殊な脳梗塞〈平田 温〉
  A.小児の脳梗塞
   1.疾患のポイント
   2.画像上の特徴
   3.症 例
  B.片頭痛による脳梗塞
   1.疾患のポイント
   2.画像上の特徴
   3.症 例
  C.血栓性血小板減少性紫斑病
   1.疾患のポイント
   2.画像上の特徴
   3.症 例
  6.脳静脈(洞)血栓症〈平田 温〉
   1.疾患のポイント
   2.画像上の特徴
   3.症 例
  7.高血圧性脳出血,その他の脳内出血〈川村伸悟,安井信之〉
  A.高血圧性脳出血
   1.被殻出血
   2.視床出血
   3.小脳出血
   4.橋出血
   5.皮質下出血
   6.尾状核出血,脳室出血
  B.その他の脳内出血
   1.破裂脳動脈瘤
   2.脳動静脈奇形
   3.アミロイドアンギオパチー
   4.出血性梗塞
   5.腫瘍内出血
   6.頭部外傷
  8.脳動脈瘤
  A.破裂脳動脈瘤〈永田 泉,宮本 享,菊池晴彦〉
   1.CT
   2.脳血管撮影
   3.脳血管攣縮
   4.正常圧水頭症
  B.未破裂脳動脈瘤〈永田 泉,宮本 享,菊池晴彦〉
   1.CT,3D-CTA
   2.MRI,MRA
  C.特殊な脳動脈瘤〈永田 泉,宮本 享,菊池晴彦〉
   1.巨大脳動脈瘤
   2.解離性脳動脈瘤
  D.その他の脳動脈瘤〈森安秀樹〉
   1.inflammatory aneurysm
   2.neoplastic aneurysm
   3.紡錘状動脈瘤および動脈解離(解離性動脈瘤)
  9.動静脈奇形〈岩間 亨,橋本信夫〉
  10.その他の血管奇形〈岩間 亨,橋本信夫〉
   1.硬膜動静脈瘻
   2.海綿状血管腫
   3.静脈血管腫
  11.もやもや病〈岩間 亨,橋本信夫〉
  12.脳血管性痴呆〈小林祥泰〉
   1.疾患のポイント
   2.画像上の特徴
  13.無症候性脳血管障害〈小林祥泰〉
   1.疾患のポイント
   2.画像上の特徴
    a.無症候性脳梗塞
    b.PVH
    c.主幹脳動脈狭窄・閉塞
    d.無症候性脳出血

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