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書籍詳細

今日の高血圧診療

今日の高血圧診療

芦田映直 著

A5変 182頁

定価3,960円(本体3,600円 + 税)

ISBN978-4-498-03464-8

2000年03月発行

在庫なし

代表的な高血圧診療のガイドラインとしてアメリカ高血圧合同委員会によるJNC IVと世界保健機構と国際高血圧学会によるWHO/ISHがあり,後者は1999年に新版が発表された.本書はこれらを踏まえ,第一線で高血圧の診療に当たる医師が今日いかに高血圧を理解し,診断,治療,コントロールすべきかを簡明に解説したものである.特に治療に重点を置いて随所に処方例をあげ,各種降圧薬の特徴と使い分けや,種々の病態時における治療,高齢者における治療などの実践の指針を示した.多忙な臨床医が要点をつかんですぐに役立てられるように,図表や「ポイント」を多用したのも本書の特徴である.


 高血圧は脳血管障害や腎臓病,心臓病などの臓器障害を合併し,わが国の国民死亡原因の半数以上を占める基礎疾患であった.しかし,この20年にわたる食生活を中心としたライフスタイルの改善と降圧療法の進歩と普及により,その中でも重要な位置を占めていた脳卒中がまず著しく減少したことは大変嬉ばしいことである.ところが,わが国においては3000万人以上の方が高血圧であると指摘されている一方,高血圧症として医療機関を受診した患者数は厚生省の1996年度の統計によると749万人と報告されている.つまり,高血圧症は受診患者数として2位の糖尿病患者数(217万人)より3倍を越える多数を占めているが,それでも高血圧患者全体の中で,治療を受けている患者数は4分の1に過ぎないことを示しており,今後は高血圧がそれほど重症でない患者の血圧をコントロールし,臓器障害を予防するあるいは進行を抑制するような診療のすすめ方が,一般の臨床医の取り組むべき課題として社会的にも広く求められている.
 このような状況にあるわが国の高血圧の診療において,この領域で第一線で御活躍されている芦田映直先生が,「今日の高血圧診療」を出版されましたことは,まさに時宜をえたものであるといえる.さらに,芦田先生は高血圧の成因について著名な研究業績をあげられたうえで,東京大学医学部附属病院,三井記念病院,米国Maryland大学医学部,国立循環器病センターを経て,私共の恩師である藤井潤先生が率いられる朝日生命成人病研究所の循環器科部長になられるまで,幅広い視点から豊富な臨床経験を積まれるとともに,得られた知見を科学的に分析する卓越した能力を兼ね備えられた素晴らしい臨床医でもある.先生が長年にわたって蓄えられた経験を基に,高血圧の病態生理から疫学そして臓器障害の起こり方,さらには治療のすすめ方と降圧薬の使い分けなど,系統的にきわめて理解しやすく,しかもお一人で全てを解説された本書は,医学雑誌での特集企画とは異なり,日常臨床に活用できる知識を最も体系的にしかも効率的に習得できる教科書でもあると思う.
 解説書としてはじめから通読されて今日の高血圧診療についての指針をとらえられても,あるいは臨床で疑問を感じられたときに,各項目毎に参照いただく使い方をされても充分にお役に立てるものと確信している.芦田先生の御経験と文献に基づいたエビデンスとしての豊富なデータが先生方の日常臨床に生かされればこの上なく幸甚である.

2000年2月
国立国際医療センター病院長 矢崎義雄

はじめに
 高血圧は非常にありふれた疾患であるが,放置すればさまざまな臓器障害,合併症を引き起こす.近年の患者教育や降圧治療の進歩により,心血管系合併症による死亡率は減少してきた.高血圧の大部分を占める本態性高血圧は,病態解明への研究が進んでいるが,未解決の問題が多数残されている.したがって,現時点では,本態性高血圧の治療は原因療法ではないが,病態に応じた治療を,長期にわたって行う必要がある.
 高血圧はそれ自体が直接の死因になるのではなくて,予後を決定するのは心血管系疾患の合併である.血圧は下がっても,心血管系の疾患が予防できなければ,治療の目的を達したことにはならない.
 最近の我が国の年齢階級別にみた高血圧の受療率をみると,40歳代後半から急激に増加している.また高齢者でも血圧が高いほど心血管系合併症の多いことが明らかになり,高齢者高血圧に対しても積極的に降圧薬療法が行われるようになった.
 高血圧はすべての医師が関わってくる頻度の多い疾患である.また降圧薬は種類が多く,個々の患者の病態,合併症,禁忌などを考慮して選択する必要がある.本書の執筆にあたっては,最近改訂された米国やWHO/ISHの高血圧ガイドライン,老年者高血圧治療ガイドラインなどにそって解説した.またできる限り内外の研究成果を参考にし,論拠を示しながら筆を進めた.本書が,高血圧という最も頻度の高い疾患をもっている多くの患者を診療している人々にとって,興味深くまた診療のお役に立つことを願う次第である.
 この本が出版の運びとなったのは,中外医学社の荻野邦義氏のお陰であり,心から感謝する.

2000年2月
著 者

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目 次

1章 基本的知識
   1.定義
   2.重症度分類

2章 診断
   1.血圧の測定法
   2.診察法
   3.病歴の取り方
   4.身体所見
   5.スクリーニング検査
   6.特殊検査

3章 治療
 A.治療戦略の立て方とフォローアップ
   1.治療戦略の立て方
   2.フォローアップ
 B.降圧の目標とJ型曲線
   1.年齢と降圧目標値
   2.J型曲線現象
   3.J-curve現象の問題点
   4.前向き試験
   5.動脈硬化との関連性
 C.高血圧の治療方針
   1.治療方針の考え方
   2.高血圧緊急症
   3.二次性高血圧
   4.本態性高血圧
   5.中等症・重症本態性高血圧
   6.軽症本態性高血圧
 D.食事療法,一般療法(非薬物療法,ライフスタイルの修正)
   1.一般療法の考え方
   2.食塩制限の進め方
   3.体重と血圧
   4.アルコールと血圧
   5.カリウム摂取と血圧
   6.カルシウム
   7.禁煙
 E.運動療法
 F.薬物療法の考え方
   1.薬物治療を始める前の評価
   2.降圧薬療法
   3.降圧薬の選択指針
   4.降圧薬の併用療法
   5.副作用のチェック
 G.各種降圧薬の特徴と使い方
  1.利尿薬
   1.適応
   2.作用機序
   3.分類
   4.適応となる病態と適応とならない病態
   5.使い方
   6.副作用
   7.利尿薬と糖代謝
   8.利尿薬とQOL
   9.他の薬物との相互作用
  2.カルシウム拮抗薬
   1.特徴と作用機序
   2.種類と使い方
   3.Ca拮抗薬の利点
   4.Ca拮抗薬とQOL
   5.Ca拮抗薬と糖代謝
  3.アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬
   1.特徴と作用機序
   2.種類と使い方
  4.アンジオテンシンII受容体拮抗薬
  5.α遮断薬
   1.特徴と作用機序
   2.種類
   3.適応
   4.血圧日内変動
   5.QOL
   6.降圧療法におけるα1遮断薬の位置付け
   7.各種α1遮断薬の薬物動態と効果・用量
   8.併用療法
   9.α1遮断薬の副作用
  6.β遮断薬
   1.特徴と作用機序
   2.種類と使い方
   3.副作用と禁忌
  7.血管拡張薬
   1.使用前に確認しておくべき事項
   2.患者の疾病や病態に応じた使い方
   3.効果判定の指標
   4.薬が無効と判定する根拠
   5.変更の方針−次にどの薬を選択するか
   6.使用上の注意
   7.副作用のチェックと対策
   8.中止の時期と目安
   9.その他の血管拡張薬
 H.降圧薬の減量と中断
   1.減量
   2.中断(休薬)
   3.老年者における休薬
   4.休薬とレニンおよび精神状態
   5.コンプライアンス
 I.病態に応じた降圧薬選択と治療
   1.心不全を合併する高血圧
   2.冠動脈疾患を伴う高血圧
   3.左室肥大を伴う高血圧
   4.糖尿病を伴う高血圧
   5.高脂血症
   6.痛風を伴う場合
   7.脳血管疾患患者
   8.腎実質性疾患に伴う高血圧
   9.末梢動脈疾患に合併する高血圧
   10.慢性閉塞性肺疾患に伴う高血圧
   11.睡眠時無呼吸をもつ患者
   12.気管支喘息または慢性気道疾患の患者
   13.手術前患者の高血圧
   14.妊娠中の高血圧

4章 高齢者高血圧と軽症高血圧の病態と治療
   1.高齢者高血圧の問題点
   2.高齢者高血圧の治療
   3.軽症高血圧の管理
   4.軽症高血圧の定義とリスクグループ
   5.軽症高血圧の病態と予後に関与する因子
   6.軽症高血圧と高トリグリセリド血症
   7.軽症高血圧の治療の原則
   8.軽症高血圧の薬物治療

5章 降圧薬療法とQOL
   1.高血圧の治療とQOL
   2.QOLの評価
   3.軽微な副作用
   4.各種降圧薬のQOLを考慮した使い方
   5.患者-医療関係とQOL

6章 家庭血圧と白衣高血圧
   1.家庭血圧測定
   2.血圧日内変動の測定と正常値
   3.白衣高血圧
   4.白衣高血圧の予後
   5.白衣現象と心機能
   6.白衣高血圧の治療

付録1 降圧薬の相互作用
   1.利尿薬
   2.β遮断薬
   3.Ca拮抗薬
   4.ACE阻害薬
   5.α1遮断薬
   6.中枢性交感神経抑制薬
   7.血管拡張薬
   8.末梢性交感神経抑制薬
付録2 高血圧治療に用いられる主な薬

文献
索引

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