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書籍詳細

EBM循環器疾患の治療 2001-2002

EBM循環器疾患の治療 2001-2002

三田村秀雄 他編著

A5判 564頁

定価9,460円(本体8,600円 + 税)

ISBN978-4-498-03470-9

2001年10月発行

在庫なし

本書は虚血性心疾患・心不全・不整脈・高血圧の治療の問題点についてを最新のエビデンスをもとにいかに理解し,治療にあたったらよいかを示したものである.
 今日の日常の診療で問題となるテーマ,判断に迷うようなテーマ100余について,概説・指針・エビデンス・根拠となった臨床研究の問題点と限界・本邦の患者に適応する際の注意点・コメント・文献にわたり各々の第一人者が解説にあたった.今日の正しい循環器疾患治療実践のための指標を得ることの出来る貴重な一冊である.


 ほとんど毎日のように,膨大な量の臨床データが次から次へと雑誌に発表されている.診療の片手間に素早く文献に目を通すのがやっとという平均的医者にとって,この速さはとても追いつけるものではない.それに追い打ちをかけるように今度は患者の側からも,インターネットによる医療情報へのアクセスが可能となりつつある.患者が欲しているのはmechanismではなく,効いたとするevidenceに他ならない.昨今の医者へのプレッシャーは並大抵なものではない.
 一方,医者の側は,病気を正確に診断し,その機序を理解した上で適切な治療法を選択する,といったmechanism based medicineの方に興味がある.医者から見れば大規模試験は平気でmechanismを棚上げしておいて,多数決の論理でことを決めてしまうような,そんな雰囲気を持っている.その意味ではあまり玄人好みの研究とは言えず,どちらかというと患者サイドに立った調査に近い.にもかかわらず,とくに循環器領域において大規模試験に向けられる関心度は尋常でない.
 確かに大規模試験のおかげで,多くの人々が恩恵を受けている.患者は長生きし,製薬会社は巨大な利益をあげる,という一石二鳥に加え,医者の側でもこれによって新たな研究テーマが得られる,という笑いの止まらない構図が形成されてきた.しかしときには期待が裏切られることもある.心機能を改善するはずの強心薬が反対に心不全患者の予後を悪化させたPROMISEや,不整脈を十分に減らしたはずの抗不整脈薬が逆に不整脈死を増やしたCASTなどが与えた衝撃は計り知れない.とはいえ,このような大規模試験がなければ,今日の臨床の進歩はあり得なかったし,薬剤のもつ別な側面に気づくこともなかったかもしれない.Evidenceがmechanismの追求を促し,mechanismがevidenceによって支持される,というポジティブフィードバックこそが,医学と医療を正しい方向に導く.
 本書は,心臓病の治療戦略を立てる上での基礎データを提供するものである.単に大規模試験の結果を羅列するのでなく,臨床医が日常診療で感じる様々な疑問に対して,大規模試験がどのような解答を,あるいはevidenceを提供しているか,という立場で書かれている.従って同じ大規模試験が複数の章で,複数の専門医の立場で引用されていることもある.また章によっては十分なevidenceがまだ集まっていないために小規模試験の紹介に留まっている部分や,あるいは例数は少なくても日本独自の成績が記述されている部分もある.至る所にそれぞれの執筆者からみたevidenceの解釈,限界などが述べられている.そこにもevidenceを超えた現実の落とし穴や面白さ,あるいは各執筆者の哲学を垣間見ることができる.
 本書から必要なevidenceを学び取り,十分に咀嚼した上で,日常のpatient oriented cardiologyに役立てていただきたい.

2001年8月
編 者

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目 次

EBM実践にさいして必要な統計学
 --ランダム化比較試験とメタアナリシス論文の読み方を中心に〈折笠秀樹〉
  1.EBMとは何か?
  2.研究デザインと根拠の水準
  3.RCT論文の読み方
  4.MA論文の読み方

I.虚血性心疾患
 A.急性心筋梗塞
  1. 急性期のリスク層別化とは?--救急室,CCUでハイリスク(低リスク)
    と判断される臨床所見(ない所見も)は?〈山本 剛 高山守正〉
  2.再灌流療法をどのように行うか?
   a) どのような症例が適応となり,効果が期待されるか?〈小菅雅美 木村一雄〉
   b) 血栓溶解療法(ICT)vs Primary PTCAあるいはICT plus rescue PTCA
     --どのような状況で,どのような症例に有利となるか?〈猿渡 力 木村一雄〉
   c) Primary PTCA(plus provisional stenting)vs
    Primary Stenting : どちらがよいか?〈奥田 純 木村一雄〉
   d) 後療法としての抗血小板療法をどうするか?--薬剤の選択,
    投与量,投与期間について〈重政朝彦 木村一雄〉
   e) 後療法としての抗凝固薬をどうするか?--適応,開始時期,
    投与量,投与期間,投与中の観察項目は?〈川名正敏〉
  3.薬物療法をどう行うか?〈白鳥健一〉
   a) 欧米ではルーチンになっているβ遮断薬を標準治療の一つに
    するべきか?--日本におけるスパズムの頻度から推定してあまり使用しないほうがよいのか?
   b) 日本人で予後改善効果がみられると推定されるβ遮断薬の
    投与量は?--欧米と日本でのβ遮断薬投与量の違いを考えた上でどう考えるか?
   c) ACE阻害薬をいつからどのくらいの投与量を目標に開始するか?
   d) ACE阻害薬は心機能低下がない例でも予後改善効果を期待できるか?
   e) Ca拮抗薬はスパズムの関与が明らかでない例には使用すべきではないのか?
  4. CCU滞在期間あるいは在院期間をどう決めるか?
    --低リスク例では何日くらいで退院させて大丈夫か?〈久保典史 齋藤宗靖〉
  5.退院前の評価(主に低リスク例)に有用な検査は?
  (超音波検査,運動負荷試験,核医学検査,冠動脈造影など,
  どんな検査が,症例の予後予測や治療選択に有用か)〈久保典史 齋藤宗靖〉
 B.不安定狭心症〈川村 淳 宮崎俊一〉
  1.初期治療はどんな方針で行うか?
   a) 入院の適応 : どのような所見があったら入院を指示するか?
   b) 急性期の薬物治療 : 薬剤の選択,投与量,投与期間は?
   c) 緊急冠動脈造影の適応とタイミング,冠動脈インターベンションの適応は?
 C.安定狭心症
  1.冠動脈疾患診断のための検査の方針は?--どのようなときに
    負荷イメージング(RI,エコー)を行うべきか?〈西 裕太郎 林田憲明〉
  2.リスク層別化のための検査は何を行うか?〈西 裕太郎 林田憲明〉
   a) 負荷心筋血流イメージング(RI法)は有用か?--どのような例に適応するか?
   b) 負荷心エコーは有用か?
   c) 冠動脈造影の適応 : 可能な例は全員施行したほうがよいか?
  3.冠動脈インターベンション--PCIとCABGの適応と選択は?〈岩瀬 孝 中西成元〉
   a) 1枝病変に対する適応,選択は?--PCIは症状改善効果についても薬物療法よりも優れているか?
   b) 薬物療法で狭心症が消失した場合のPCIの予後改善効果は?--どのような場合に効果が期待できるか?
   c) 多枝病変に対する適応,選択は?--初回治療としてPCIかCABGか?
  4.冠攣縮性狭心症の評価法と治療は?〈三羽邦久〉
   a) 予後と重症度評価を推定できる臨床所見,検査は?
   b) 薬物療法により予後は改善されるか?--薬を止めることは可能か?
  5. Ca拮抗薬は冠動脈疾患としての予後を悪くするのかしないのか?
    --冠攣縮の関与がみられる狭心症以外に使用するべきではないのか?
     あるいは薬剤による差があるか?〈三羽邦久〉
 D.無症候性心筋虚血〈阿部豊彦〉
  1.リスク評価 : 無症候性心筋虚血の存在は予後に影響するか?
  2.薬物療法により予後を改善できるか?
  3.冠動脈インターベンションの適応は?
 E.冠動脈疾患のリスクファクター
  1.高脂血症をどう考えるか?〈代田浩之 嶋田一成〉
   a) どの脂質がどのレベルになるとリスクになるのか?
   b) 二次予防効果がみられる薬物とその投与量,あるいは達成脂質値は?
   c) 薬物による一次予防効果の大きさは,長年の服薬に値するか?
  2.糖尿病はどう影響するか?〈瀬川郁夫〉
   a) 糖尿病を合併する冠動脈疾患の予後は,合併のない例に比べて不良か?
   b) 糖尿病をコントロールすることにより冠動脈疾患の予後改善がみられるか?
  3.喫煙 : 禁煙により冠動脈疾患のリスクをいつ頃から減らせるか?〈瀬川郁夫〉

II.心不全
 A.収縮障害による慢性心不全
  1.慢性心不全の予後予測,経過観察に最も有用な指標は何か?〈蔦本尚慶 前田圭子 木之下正彦〉
  2.自覚症状のない心機能低下に有用な治療法はあるか?〈吉川 勉〉
  3.軽症の慢性心不全(NYHA class II)に最も有効な治療は何か?〈吉川 勉〉
  4.慢性心不全の第一選択薬はACE阻害薬か?〈岡本 洋〉
   a) ACE阻害薬の投与量と効果は?
   b) 血圧が低いときの使い方は?
   c) 腎機能障害のあるときの使い方
   d) 咳を発症するときの使い方
   e) 他の抗心不全薬との違い,併用による効果はあるか?
  5.アンジオテンシンII受容体拮抗薬の心保護効果は?〈松原弘明 岩坂壽二〉
  6.ジギタリス剤は洞調律の慢性心不全の予後を改善するか?〈塩谷一成 佐藤秀幸〉
  7.慢性心不全の治療に硝酸薬,ヒドララジン,α受容体拮抗薬は必要か?〈塩谷一成 佐藤秀幸〉
  8.慢性心不全にβ遮断薬はいつ,どう使うのか?〈廣坂 朗〉
   a) どのβ遮断薬をいつ始めるか?
   b) β遮断薬の投与量は,増量の目安は,効果の目安は?
  9.慢性心不全の治療に抗アルドステロン薬は必須薬か?〈蔦本尚慶 前田圭子 木之下正彦〉
  10.うっ血所見のない慢性心不全にループ利尿薬は必要か?〈秋田祐枝 木村玄次郎〉
  11.慢性心不全治療にCa拮抗薬は必要か?〈中込明裕 清野精彦〉
  12.洞調律の慢性心不全に抗凝固療法(ワルファリン)/抗血小板療法は必要か?〈上塚芳郎〉
  13.強心薬(ジギタリスを除く)は慢性心不全の予後を改善するか?〈百村伸一〉
  14.重症慢性心不全の治療に必要なのはQOL改善?長期予後の改善か?〈百村伸一〉
  15.慢性心不全に運動療法は有効か?〈塩谷一成 佐藤秀幸〉
  16.慢性心不全の非薬物療法はいつ行う?
   a) 手術療法(Batista, Dor他)は?〈磯村 正 須磨久善〉
   b) 心移植は?〈布田伸一〉
  17.現時点ですすめられる収縮障害による心不全治療のガイドライン〈近森大志郎 山科 章〉
 B.拡張障害による慢性心不全〈半田俊之介〉
  1.拡張障害による心不全を診断する決め手は何か?
  2.拡張障害に有効な治療法は何か?
 C.急性心不全
  1.急性心不全治療に血行動態モニタリング(Swan-Ganzカテーテル)は必須か?〈佐々木達哉 本多加津雄〉
  2.急性心不全の初期治療 : 利尿薬と血管拡張薬--どちらが先か?〈佐藤直樹 清野精彦〉
  3.急性心不全の治療 : カテコラミンとイノダイレータ--どう使い分ける?〈田中啓治 圷 宏一〉
  4.急性心不全の治療 : 人工呼吸,呼吸管理--いつ始めるか?〈田中啓治 池崎弘之〉
  5.急性心不全における補助循環--いつ始めるか?〈公文啓二〉
  6.現時点ですすめられる急性心不全治療のガイドラインは?〈佐々木達哉〉

III.不整脈
  1.徐脈性不整脈に対するペースメーカー〈西村敬史〉
  2.発作性頻脈性不整脈の停止における抗不整脈薬の第一選択は何か?〈井上 博〉
   a) 発作性上室性頻拍では?
   b) 心房粗動では?
   c) 心房細動では?
   d) 心室頻拍では?
   e) torsade de pointesでは?
  3.心室性不整脈をどう管理するか?
   a) 心室期外収縮・非持続性心室頻拍をどう管理するか?〈大西 哲〉
   b-1) 心室不整脈の治療は予後改善に結びつくか?〈相澤義房〉
   b-2) 持続性心室頻拍・心停止蘇生例〈相澤義房〉
   c) 心不全を対象とした不整脈治療と突然死にどう対処するか?〈栗田隆志〉
  4.心房細動をどう管理するか?
   a) 心房細動における血栓塞栓症予防は?〈安岡良典 是恒之宏〉
   b) 心房細動の除細動は?〈栗田康生 三田村秀雄〉

IV.高血圧
  1.生活習慣是正のエビデンスはどのようなものがあるか?〈築山久一郎 大塚啓子〉
  2.エビデンスに学ぶ降圧薬選択基準--各種降圧薬のメリットとデメリット〈桑島 巌〉
  3.リスク因子を有する高血圧に適した降圧薬と降圧目標値は?〈木村健二郎〉
  4.虚血性心疾患,心不全を合併した高血圧に適した降圧薬と降圧目標値は?〈土持英嗣〉
  5.脳血管障害を合併した高血圧に対する降圧薬と降圧目標は?〈山本康正〉
  6.腎機能障害を合併した高血圧に対する降圧薬と降圧目標値は?〈高田正信〉
  7.高齢者の血圧管理〈桑島 巌〉

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