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書籍詳細

これからの切迫早産管理 長期安静・持続点滴はやめよう

これからの切迫早産管理 長期安静・持続点滴はやめよう

室月 淳 著

A5判 148頁

定価2,860円(本体2,600円 + 税)

ISBN978-4-498-16056-9

2024年02月発行

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切迫早産管理が180度変わるほんとうのEBMをお伝えします

切迫早産に入院安静臥床や持続点滴投与はいらない!
日本で当たり前のように行われているリトドリン塩酸塩の持続投与は欧米ではありえません.妊婦さんにとっては不必要で,場合によっては有害な治療です.妊婦のQOLが上がり,外来でみることができるほんとうのEBMをわかりやすくまとめた,これからの切迫早産標準治療を示す1冊.

推薦文

 本邦では古くから「安静」「子宮収縮抑制剤の長期投与」を行うことで早産の管理と称してきた.特にリトドリン塩酸塩が使用されはじめたのは私が医学生だった頃からだと思う.動悸や頭重感と戦いながら,それでも1日でも永く児を子宮内に留めておきたいと考える母親の献身を当然のこととして受け入れてきた世代である.慚愧の至りである.
 しかし今日海外からの多くのデータによってリトドリン塩酸塩の効果は限定的であることが詳らかになった.FDAからも厳しく制限される薬剤に至っている.それはそうである.周産期心筋症のリスク因子であり,好中球減少や横紋筋融解などの重篤な副作用のみならず長期にわたる点滴をすればinfusion thrombophlebitisになり「血管がボロボロ」になるリスクも高い.効果が限定的であれば“Do No Harm”を旨とする欧米で使用が制限されるのは当たり前だ.
 また本書にもあるように長期臥床の意味も効果もエビデンスがない.むしろ血栓症や尿路感染症のリスクを考慮すべきであるだろう.しかし翻って我が国では早産児を産んだことで「私が仕事をしていたから」とか「上の子を抱っこしたから」などと自責の念に駆られる母親が多いと感じる.何のエビデンスもないのに.子宮収縮を訴える妊婦に子宮収縮抑制剤の経口投与をする医師もいる.あとで「お腹が張っていると言ったのに子宮収縮抑制剤を処方してもらえなかった」と言われるのを忌避するためであろうか.もちろんリトドリン塩酸塩の経口投与は早産予防に有効であるエビデンスはない.
 本書はガラパゴス化しつつある本邦の切迫早産管理に一石を投じる書である.切迫早産管理について我々プロフェッショナルが議論するよすがとなるべき書であり,それはすなわち一般の妊婦さんにとってのパラダイムシフトに寄与しうる書でもあると考える.一般の方にも読みやすい文章で丁寧に書かれているので是非手に取って頂きたいと考える次第である.

2024年1月
りんくう総合医療センター産婦人科
荻田和秀

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序 文

 君たちは,いつの時代でもそうであったように,自己を確立せねばならない.
─自分に厳しく,相手にはやさしく.
という自己を.
司馬遼太郎『二十一世紀に生きる君たちへ』1)
この本は,国内で一般的におこなわれてきた切迫早産治療,すなわち入院安静臥床とリトドリン塩酸塩の長期持続投与を批判することを主旨とするものです.切迫早産の適切な治療を考えるためにこれまで報告されてきたエビデンスをとにかく第一にして論じています.
エビデンス,ないしはエビデンスをもとにした医療(evidence-based medicine:EBM)という考えかたが日本に導入されてすでに30年以上がたちます.もはやこれらの概念を理解していない医療者はほとんどいないと思われますが,しかし実際にEBMは臨床現場にどれだけ根づいているでしょうか?
もちろんEBMは臨床現場における問題解決の一手法であり,その本質は患者さんによりよい医療を提供しようとする基本的姿勢です.エビデンスは医療者が使うためのものですが,もっと正確にいえば個々の患者さんのために利用されるべきものです.多くの医療者に使われて患者さんの利益になったとき,はじめてEBMが医療に根づいたといえるでしょう.
たとえばある治療法がもっとも患者さんの利益になるのは,治療効果が最大で,かつその副作用が最小のときです.そしてメリットが最大でリスクが最小ということだけでなく,患者さんの価値観,人生観といった要素を考慮したとき,患者さんの満足度はもっとも高くなることがしばしばです.
切迫早産妊婦にたいする長期安静および長期持続点滴治療の可否が問題となる場合,医療者側のエビデンスの議論に加えて,「患者参加の医療」を積極的に進めることが望まれるのではないでしょうか.患者参加の医療にEBMをはめこむというのは,知りえたエビデンスをもとに妊婦さん自身に望ましい治療を選択してもらうということです.
インターネットによる高度情報化社会では,専門家であろうと一般市民であろうと,産科医療もEBMもそれなりに習得可能かもしれません.ある程度の科学的なものの考えかたを教育で身につけていれば,自分が治療を受ける側であることや,インターネットを介して専門的な知識をひきだす方法も心得ていることでしょう.
この本は,従来の切迫早産治療に疑問をもっているかもしれない若手産科医とか看護師助産師といった医療者を対象にして書かれました.しかしそれ以上に,いま,現在,切迫早産で治療をうけている妊帰さんにも読んでもらえるように,本の記述は可能なかぎり平易となるように心がけました.従来の旧弊な医療を変えていくのは医療関係者のみならず,妊婦さんご自身ではないかと期待しています.

参考文献
1) 司馬遼太郎.二十一世紀に生きる君たちへ.東京:世界文化社;2001. p.17.

2024年1月室 月 淳

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CONTENTS

 

はじめに

 

Chapter 1

 切迫早産とはどういった病気か

 1. 切迫早産の頻度はどのくらいか

 2. 切迫早産の診断はどのようにおこなうか

 3. 偽陣痛(Braxton Hicks 収縮)について

 4. そもそも「切迫早産」は実在するのか

 

Chapter 2

 リトドリン塩酸塩の歴史と現状

 1. リトドリン塩酸塩の歴史

 2. リトドリン塩酸塩はどのような薬か

 3. 副作用にはなにがあるか

 4. 日本ではいまどうなっているか

 

Chapter 3

 エビデンスはどうなっているだろう

 1. 早産の頻度はどのくらいか

 2. 子宮頚管長の測定の有用性は

 3. 早産予防用ペッサリーの効果は

 4. リトドリン塩酸塩による切迫早産の治療効果は

 5. リトドリン塩酸塩以外のトコライシス薬はどうか

 6. 早産予防のための安静にはエビデンスがあるか

 

Chapter 4

 これまでの経験とめざすべき治療の実際

 1. わたしの個人的な経験

 2. めざすべき切迫早産の治療はどのようなものか

 3. 当院における治療の実際

 

Chapter 5

 リトドリン長期投与をやめるためのステップ

 1. メリットとデメリットを考える

 2. ミーティングや病棟カンファレンスで提案する

 3. チームをつくる

 4. 新生児科側に協力を求める

 5. 患者さんの同意を得る

 6. 実際に治療を変える

 7. よく質問されること

 

Chapter 6

 ひとを変える,組織を変える

 1. 医師や看護スタッフからの抵抗

 2. なぜ効果のない治療をつづけているか

 3. エビデンスは医者の行動を変えるか

 4. ひとの行動を変えるにはどうしたらいいか

 5.「信念対立」を解消する

 6. 組織を変える

 

Chapter 7

 医療倫理の視点から

 1. あいてへの共感

 2. 個別的具体的な妊婦の状況

 3. 妊婦さんと医療者のコミュニケーションのなかから

 4. 臨床の場での合意形成

 5. A さんのケース

 6. 個人の信念と価値観

 

Chapter 8

 切迫早産について最後にもう一度考える

 1. 切迫早産のパラダイム

 2.「過剰診断」という視点

 3. ナラティブからみた切迫早産治療

 4. 心身相関としての「切迫早産」

 おわりに─日々の診療に疑問を感じているかたへのエール

 

索引

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