はじめに
私は以前から「尿は身体からの贈り物」と言ってきました.それは,尿の量や色調,混濁,泡,臭いなどをみるだけで体調や疾患をある程度疑うことができるからです.尿検査は「古くて新しい検査」ですが,尿に含まれている成分を試験紙による定性検査や定量検査,尿沈渣の鏡検などにより確定診断に近づくことができます.一方,腎機能検査は糸球体・尿細管が現在どのような状態で働いているかを知る重要な手掛かりとなります.したがって,尿検査と腎機能検査は,腎・泌尿器領域の診療に欠かすことのできない検査の両輪と言えます.
私は大学の先輩である故 伊藤機一先生(元大東文化大学スポーツ・健康科学部長)に学生時代と東海大学医学部で大変熱心にご指導いただきました.『症例から学ぶ尿検査の見方・考え方』(医歯薬出版)を共著で第3版まで改訂を重ねることができ,大変感謝しております.2018年には,金子一成先生,鈴木祐介先生のご協力をえて『尿検査のみかた,考えかた』(中外医学社)の監修をさせていただきました.また,日ごろ仲良くお付き合いいただいている元日本臨床衛生検査技師会会長の小崎繁昭先生と『尿検査・腎機能検査の実際と臨床的意義』(臨床病理刊行会)を監修させていただきました.これまで尿検査・腎機能検査については優れた成書が数多く出版されていますが,私のこのような経験から今回『必携! よくわかる尿検査・腎機能検査』を上梓することができました.臨床現場で使いやすいように簡潔にまとめ,尿検体や血液検体の採取法や保存法についてもCOLUMNとしてあげました.本書がかかりつけ医や研修医,若手医師の皆さん,学校医や産業医の方々,臨床検査技師の皆さんにご活用いただけることを願っています.また,医学生にとっても有用な解説書になると思います.わかりやすいように心がけ記載しましたが,記載の過不足もあろうかと思いますので,皆さまの忌憚のないご意見をお待ちしています.
最後にこれまで大変ご協力いただきました白𡈽 公先生(現,白𡈽内科院長)ならびに久野 豊先生(順天堂大学医学部附属順天堂越谷病院検査科技師長)に厚くお礼申し上げます.また,出版にいろいろご尽力いただきました中外医学社の小川孝志部長に深謝いたします.
2023年 1月
新型コロナウイルス感染症の一日も早い終息を願って
富野康日己