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書籍詳細

日常生活活動学実習テキスト

日常生活活動学実習テキスト

―基本的・応用的動作の評価と誘導・介助・指導―

佐々木 誠 著

B5判 262頁

定価5,280円(本体4,800円 + 税)

ISBN978-4-498-06742-4

2022年10月発行

在庫あり

日常生活活動は患者にとって維持・向上すべき課題の一つであり,理学療法介入によって実現すべき目標の一つでもある.この目標達成のために,理学療法士は適切な評価を行い,動作を指導したり人的・物的に介助するための知識と技術の修得が不可欠といえる.本書では,運動障害者の基本的動作から疾患別の応用的動作まで日常生活活動の維持・向上を目指すための知識を網羅した新たなテキストである.

序文

 筆者が所属する秋田大学大学院では,理学療法学専攻の学部学生が2年次後半に「日常生活活動学実習」の授業で,運動障害者の基本的・応用的動作の評価と誘導・介助の方法について学ぶ.初回の授業で,教員が基本的動作を理解するための基礎知識と原則を講義したうえで,臥位の保持,寝返り,臥位での移動について説明・実演し学生に実技練習をさせる.それ以降の授業では,カリキュラムの前半で,担当学生グループが調べて作成した配布資料に基づいて動作別に基本的動作を解説・実演し,ほかの学生に知識や技術を伝授する.基本的動作について一通り学習した後,自助具の使用目的と使用方法を理解し,カリキュラムの後半では,代表的な疾患患者ごとに基本的・応用的動作について前半と同様に学生主導で理解する形式で授業を展開している.
 以前の学生作成の配布資料は文章を打ち込み,わかりやすいものとなるように考えて構成されていたものであるが,近年,文章や図表をスキャナーで読み込み貼りつけるにとどまる資料となってきている.また,動作別(カリキュラム前半)と疾患患者別(カリキュラム後半)とで重複を避けて簡略化したり,作業療法士の分野であるのでという理由で省いたりする状況も生じている.筆者は,配布資料の作成過程の重要性に疑問を感じるに至っている.
 本授業を行うにあたって参考となる著書は多くみられるが,運動障害者の日常生活上の動作を広く網羅し,さらに治療的・適応的アプローチの考案にまでつながる著書を見出せない.日常生活活動は患者にとって維持・向上すべき課題の1つであり,理学療法介入によって実現すべき目標の1つである.理学療法士は,患者と目標を共有しつつ問題の解決を図っていかなければならない.これには,適切な評価をし,動作を指導したり人的・物的に介助したりする知識と技術の修得が不可欠である.
 これらのため,新たなテキストを作成する必要性を痛感するようになった.本書では,標準的な基本的・応用的動作について扱い,介入方法の発案のヒントとなる各動作の阻害因子も示した.また,随所で「コラム」を挿入し,学生に考えを深めてもらえるよう工夫した.本書が学生のテキストとなると同時に,教員の授業展開の手引きとなることを期待している.

2022年8月
佐々木 誠

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目 次

第1章 オリエンテーションとデモンストレーション
  I 本書の目的・到達目標
  II 本書の概要と進め方
  III 基本的動作の評価,誘導・介助・指導を理解するための基礎知識
  IV 基本的動作の誘導・介助の基本原則
  V 臥位姿勢・寝返り・背臥位での移動

第2章 基本的動作と自助具
  I 床上動作(起きあがり・四つ這い位・膝立ち位など)
   1■起きあがりの方法と相
   2■四つ這い位・両膝立ち位の役割
  II 座位の保持・座位での移動(いざり動作)・立ちあがり
   3■立 位
  III 移乗動作(トランスファー)
  IV 歩行・階段昇降
  V 自助具

第3章 疾患別の基本的・応用的動作の評価と誘導・介助・指導
  I 片麻痺患者の基本的動作
  II 片麻痺患者の応用的動作
  III 四肢麻痺患者の基本的・応用的動作
  IV 対麻痺患者の基本的・応用的動作
  V 筋ジストロフィー患者の基本的・応用的動作
  VI 関節リウマチ患者の基本的・応用的動作
  VII 骨関節疾患患者の基本的・応用的動作
  VIII 在宅障害者の日常生活活動・関連法規

  索引

コラム一覧
【コラム 1】「上」はどっち?
【コラム 2】介助者の腰痛に下肢疲労が影響する?
【コラム 3】対象者への説明
【コラム 4】立ちあがり動作の重心軌跡は?
【コラム 5】寝返りは上半身から? 下半身から?
【コラム 6】プロフェッショナルっぽい介助とは?
【コラム 7】片肘立ち位の支持性・安定性とは?
【コラム 8】両膝立ち位は運動発達順序に従わない?
【コラム 9】四つ這い位がとれずに三つ這い位になると?
【コラム10】正座が可能な関節可動域
【コラム11】端座位という言葉
【コラム12】仙骨座りでの車椅子駆動
【コラム13】車椅子駆動時の筋活動
【コラム14】独歩の意味するところ
【コラム15】転倒の定義
【コラム16】感知すること
【コラム17】転倒予防のための介助者の立ち位置
【コラム18】歩行介助時に転倒した1例
【コラム19】近位監視って?
【コラム20】階段の昇段と降段の難易度は?
【コラム21】箸での食事
【コラム22】トップダウン評価過程
【コラム23】動機づけと活動
【コラム24】患者に対する用語の使い方についての配慮
【コラム25】片麻痺患者における片肘立ち位の支持性・安定性
【コラム26】片麻痺患者の座位バランスを向上させるには?
【コラム27】床からの立ちあがり動作と筋緊張緩和剤
【コラム28】立位バランスの4つの因子
【コラム29】移乗動作は非麻痺側へ?
【コラム30】片側下肢駆動速度に仙骨座りは影響するか?
【コラム31】靴べら式装具により歩行能力の改善を認めた片麻痺患者
【コラム32】発症早期の回復段階にある片麻痺患者に対する長下肢装具処方
【コラム33】高次脳機能障害・認知症による転倒リスクと歩行練習
【コラム34】利き手が使えないと
【コラム35】シャワー浴
【コラム36】損傷髄節レベル
【コラム37】テノデーシス・アクション
【コラム38】上肢の支持力の指標は必要か?
【コラム39】キャスターあげの学生の練習
【コラム40】対麻痺患者の両松葉杖歩行練習
【コラム41】歩行介助と免荷式トレッドミル歩行練習(body weight supported treadmill training:BWSTT)
【コラム42】両松葉杖使用者の階段昇降の方法は?
【コラム43】自尊心と葛藤
【コラム44】関節リウマチ患者が生きるということ
【コラム45】流れ
【コラム46】疼痛という自覚症状
【コラム47】疲労時の重量物の持ちあげ
【コラム48】移乗動作の際の車椅子配置

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執筆者一覧

佐々木 誠 秋田大学大学院医学系研究科保健学専攻理学療法学講座准教授 著

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