ログアウト中です。

トップページ救急医学・集中治療医学 > エビデンスに基づいた“ゲキアツ”集中治療

トップページ内科学一般 > エビデンスに基づいた“ゲキアツ”集中治療

書籍詳細

エビデンスに基づいた“ゲキアツ”集中治療

エビデンスに基づいた“ゲキアツ”集中治療

〜その熱発どうするん?〜

太田啓介 編著 / 野々木 宏 監修

A5判 216頁

定価3,960円(本体3,600円 + 税)

ISBN978-4-498-16642-4

2022年06月発行

在庫あり

“とりあえず”“なんとなく”から脱却し“less is more”で“患者さん 1st”の発熱管理へ―.救急・集中治療や一般病棟での不明熱の診断がついたのち,その診断に合わせた適切な管理をどのように行うか解説.体温のモニタリング・管理方法,それぞれの疾患の発熱病態や有害事象などを会話形式でレクチャーしながら根拠となる知見やエビデンスを交え,ある程度自信を持って発熱・体温管理できるようになる一冊.

はじめに

「先生,○○さん熱を出してるんですけど,どうしますか?」
コレ,医療スタッフなら言ったor言われたことのあるセリフランキングでトップレベルに君臨する頻出文だと思います.
報告を受ける側の医師において,「バイタル安定してるなら“とりあえず”経過観察で.熱型もみたいし.あ,血液培養でもとっといて.しんどそうなら解熱薬使ってもらって」なんていうワイルドな指示を出していることもあるでしょう.また報告する側である看護師さんはじめとしたメディカルスタッフ側としても「血圧とかバイタル安定していて発熱だけなら“とりあえず”指示簿通り解熱薬使って,病棟で先生に会ったときに報告でいいか」なんていう対応をしていることもあるかと思います.もちろんその対応で今まで大きな問題にならなかったのでそれを続けている,ということもあるかもしれません.そうでなくても,患者さんの重症度や背景疾患を鑑みず,一律に同じ対応をしていませんか.
あえて今まで意識はしていなかったけど,そう言われると気にはなる,でも“たかが熱”でしょ……,そんな風に思う方も多いと思います.昨今,不明熱診断の良書が数多く世に出ており,“されど熱”として熱への意識というのは徐々に高まっているように感じます.一方で診断がついた後の実際の発熱・体温管理についてまとまった書籍は自分が知る限りありませんでした.「根拠のない“とりあえず”での対応を卒業し,ある程度自信を持って発熱・体温管理できる必要があるのではないか」「体温管理自体が強い推奨を打ち出せるほどエビデンスの確立している領域でもないが,だからこそ現時点でのエビデンス/知見を踏まえた一方針を提示することは,有意義ではないだろうか」,そんな経緯の末,本書籍の作成に至りました.加えて総論的な体温のモニタリング・管理方法,それぞれの疾患の発熱病態や有害事象などにも触れることで,有機的に理解できることを目標にしています.
今回,救急・集中治療領域で遭遇しうる疾患に対する発熱・体温管理をテーマとしていますが,一般病棟においても遭遇しうるものもあり,クリティカルケアに携わるスタッフのみならず,発熱に遭遇しうるすべての医療スタッフに御一読頂ければと思っています.そんな願いもあり,本文は“指導医ゲキ男”“研修医アツ子”をはじめとした登場人物による会話形式を取り入れ,比較的読みやすい作りを目指しました.フランクさを求めるがあまり,各分筆者の方々のご協力を頂きつつ小生のさじ加減でくだらないセリフも散在されますが(笑),そこも含めて楽しんで頂ければと存じます.
最後に,このような本が出ると“なんでもかんでもガンガン体温管理しようぜ!”的な印象を与えがちですが,本文を読んで頂くとわかるように,病態によっては解熱させないほうがよいものも存在します.低体温などガチガチな管理ではなく発熱を避けようよ,というようなスタンスのものもあります.すなわち“ガンガンやらない”という推奨もあるわけです.自分自身,core policyとして「less is more」「患者さん1st」を常に掲げているのですが,行おうとしている介入の医学的適応を判断し,不要な介入はせず,適応があれば少ない手数と最短経路で患者さんに利益をもたらすことが理想像です.本書籍を通し,そんな“less is more”で“患者さん1st”な発熱・体温管理が行われることを願っております.

[謝辞]
今回突然のご協力のお願いに対し,大変お忙しいのにもかかわらずご快諾頂き,監修として支えて頂いた野々木宏先生,本当にありがとうございました.先生と共に書籍が作れたことを誇りに思います.
分筆協力頂いた諸先生方,本当にありがとうございました.働いている場所は違えど,このような形で一緒に仕事ができたことを大変嬉しく思います.
主に総論での分筆協力頂いた当院スタッフの皆様,本当にありがとうございました.僕から多少面倒くさい指示が出ても大目にみて下さい(笑).
今回御担当頂いた弘津香奈子様はじめ中外医学社の皆様には企画〜出版まで大変ご迷惑をお掛けしましたが,ご尽力のお陰で良書を作ることができました.本当にありがとうございました.

2022年3月
静岡県立総合病院  集中治療センター集中治療科/急変対応科
太田啓介

-----------------------------

本書の企画・監修にあたり

本企画の相談を受けたときに,多くの集中治療室で勤務し,日夜患者さんにベストを尽くしている方々へ少しでも参考になればと提案させていただきました.というより,まだ解決されていないことを皆で「悩み相談」というのが正しい表現かもしれません.
集中治療室では,多くの重症例が熱発します.このまま解熱薬やクーリングでよいか,転帰に悪い影響を与えないか,集中治療室のラウンドをしているときに,太田先生へ常に投げかけていた疑問でした.その無理な疑問に答えていただき,今回企画担当で素晴らしい執筆者の熱意溢れる原稿をまとめあげていただきました.深謝いたします.日常の診療に役立ち,また何が解決されていないのかが,指導医と研修医とのやりとりでよく理解できます.
わたくしは長年JRC蘇生ガイドラインの編集を担当し,また心拍再開後の低体温療法の臨床研究を行ってまいりました.
心停止の心拍再開後には再灌流障害などの臓器の炎症によりほとんどの症例で熱発します.また外傷や重症脳血管障害でも同様です.体表面や深部体温で熱発しているときに,脳内ではさらに高温にさらされていることを想像すると常にこのまま経過観察でよいのか,あとで後悔しても脳障害は不可逆で社会復帰は困難な症例を多く経験してきました.2000年以降に低体温療法のエビデンスが報告され,臨床的な疑問点を解決するため多施設共同研究“J-PULSE-HYPO”を推進し,その効果を内外に発信してまいりました¹).ただ,脳障害の重症度を把握する方法が確立されていないため,海外からのエビデンスとの相違があり,解釈に難渋することがまれではありません.
皆様方は,2013年と2021年に報告された北欧からのTTM²),TTM-2試験³)の結果はご存じかと思います(本書の70頁以降に詳述).心拍再開後の体温管理で33℃群と36℃群に無作為に分けた北欧の検討で,両群の転帰に差がなく,また新たに実施した33℃と37.5℃群でも差がみられませんでした.この結果,積極的な低体温療法が適用されなくなる懸念が生じ⁴ました.ただ,考慮しておく必要があるのは,北欧が極めて特殊な地域で第一発見者のCPR実施率が8割以上,初期心電図の心室細動の比率が高いことから,心停止による脳障害が軽度である可能性があります.この結果を世界中のreal-worldに適用するにはリスクを伴います.実際,36℃の体温管理のプロトコルを適用した地域から転帰不良の例が増加したという結果も報告されています⁴).したがって,体温管理療法についても個々の症例の病態に基づき目標温度を設定する必要があります.平温(36〜37.5℃)においても質の高い体温管理が必要なのは言うまでもありません.
このように目の前の熱発をみたときに,病態やこれまでのエビデンスに基づいた対応が必要となります.本書は,そのような場合の悩みに一緒に考えてくれる良書と考えます.広く読まれることを願い,解決の糸口を見出していただければ幸いです.

■参考文献
1)Yokoyama H, Nagao K, Hase M, et al. Impact of therapeutic hypothermia in the treatment of patients with out-of-hospital cardiac arrest from the J-PULSE-HYPO study registry. Circ J. 2011; 75: 1063-70. PMID: 21471669
2)Nielsen N, Wetterslev J, Cronberg T, et al. Targeted temperature management at 33℃ versus 36℃ after cardiac arrest. N Engl J Med. 2013; 369: 2197-206. PMID: 24237006
3)Dankiewicz J, Cronberg T, Lilja G, et al. Hypothermia versus normothermia after out-of-hospital cardiac arrest. N Engl J Med. 2021; 384: 2283-94. PMID: 34133859
4)Bray JE, Stub D, Bloom JE, et al. Changing target temperature from 33℃ to 36℃ in the ICU management of out-of-hospital cardiac arrest: a before and after study. Resuscita­tion. 2017; 113: 39-43. PMID: 28159575

日本蘇生協議会代表理事
大阪青山大学健康科学部
野々木 宏

すべて見る

目 次

総論

1 そもそも熱とは(太田啓介)
   はじめに
   人間はどうやって体温を一定に保つ?
   発熱が起こる要因
   熱の有害性

2 モニタリング法(中村祥英)
   はじめに
   体温の測定間隔と測定方法(測定部位と測定原理,測定時の注意点)
   測定間隔以外の測定方法による違い(深部体温と皮膚温)
   体温測定方法に関する推奨
   体温測定方法の違いによる正確性の違いについて(血液温とその他の深部体温との誤差,深部体温と皮膚温との誤差)
   世界のICUにおける体温測定の実際
   深部体温が測定できないときの代替測定方法
   まとめ

3 解熱法(河内 章,中村光伸)
   はじめに
   体温管理方法の総論
   冷却輸液による目標体温への導入
   体温管理デバイスによる目標体温での導入と維持
   病院前診療での体温管理
   最良の体温管理法
   シバリング対策

病態別体温管理

4 心拍再開後(鈴木健人)
   はじめに
   発熱の病態生理
   発熱の有害性
   これまでの報告・エビデンス
   最新のガイドライン
   体温管理の実際
   適応基準・除外基準
   冷却方法・開始時期と維持時間
   鎮痛・鎮静・筋弛緩薬
   復温時間,復温後の管理
   これまでの報告に基づいた体温管理の実際

5 脳卒中(脳梗塞,脳内出血,くも膜下出血)(太田啓介)
   はじめに
   発熱の病態生理
   発熱の有害性
   これまでの体温管理の報告・エビデンス
   脳梗塞
   脳内出血
   くも膜下出血
   脳卒中全体として
   これまでの報告に基づいた体温管理の実際

6 外傷性脳損傷(姉崎大樹,青木善孝)
   はじめに
   外傷性脳損傷の疫学・病態
   外傷性脳損傷に対する体温管理
   外傷性脳損傷と頭蓋内圧管理
   これまでの報告に基づいた体温管理の実際

7 てんかん発作(進藤俊介)
   はじめに
   てんかん発作の定義
   てんかん重積の定義
   てんかん重積の予後
   てんかん重積と高体温
   てんかん重積の治療戦略
   これまでの報告に基づいた体温管理の実際
   ミニコラム てんかん重積とグルタミン酸によるexcitotoxicity(興奮毒性)

8 脊髄損傷(土井賢治)
   はじめに
   脊髄損傷についての一般論
   脊髄損傷の低体温療法について
   これまでの脊髄損傷に対しての体温管理のエビデンス
   低体温療法 総論
   低体温療法 各論
   全身低体温療法についての歴史と現在のエビデンス
   局所低体温療法についての歴史と現在のエビデンス
   各方法における適切な体温設定と期間について
   これまでの報告に基づいた体温管理の実際
   臨床現場での利用について

9 急性心筋梗塞,心原性ショック(田嶋淳哉)
   はじめに
   急性心筋梗塞
   ガイドライン
   過去の研究
   心原性ショック
   これまでの報告に基づいた体温管理の実際

10 感染症(飯尾純一郎)
   はじめに
   ICUで有熱患者がいたら
   ICUの有熱患者の特徴
   その発熱に対してどう動くか
   感染症における発熱のメカニズム
   敗血症の「診断」における体温の意義
   敗血症の「管理」における体温の意義
   これまでの報告に基づいた体温管理の実際

11 高体温症(飯尾純一郎)
   はじめに
   高体温症と発熱の違い
   熱放散とは
   高体温症の鑑別
   熱中症
   薬物誘発性高体温症
   悪性高熱症
   悪性症候群
   セロトニン症候群
   抗コリン薬中毒
   覚醒剤,麻薬中毒
   これまでの報告に基づいた体温管理の実際
   エピローグ

Column
   アークティックサン™ 5000/サーモガードシステム™の取り扱いについて(富田淳哉)
   解熱薬 〜意外と知らないことが多い??〜(神戸宏憲)
   COVID-19を疑う臨床/検査所見,被疑症例に対する診断的検査と感染予防策(渋江 寧)

索引

すべて見る

執筆者一覧

太田啓介 静岡県立総合病院集中治療センター集中治療科/急変対応科 編著
野々木 宏 日本蘇生協議会代表理事/大阪青山大学健康科学部 監修
中村祥英 静岡県立総合病院看護部 
河内 章 前橋赤十字病院集中治療科・救急科 
中村光伸 前橋赤十字病院集中治療科・救急科 
富田淳哉 静岡県立総合病院検査技術・臨床工学室 
神戸宏憲 静岡県立総合病院薬剤部 
鈴木健人 横浜市立みなと赤十字病院救命・集中治療部 
姉崎大樹 浜松医科大学麻酔・蘇生学講座 
青木善孝 浜松医科大学医学部附属病院集中治療部 
進藤俊介 大森赤十字病院救急科 
土井賢治 麻生総合病院救急総合診療科 
田嶋淳哉 済生会新潟病院救急科 
飯尾純一郎 済生会熊本病院救急総合診療センター 
渋江 寧 横浜市立みなと赤十字病院感染症科・感染管理室・医療安全推進室 

すべて見る

電子書籍で購入する

エビデンスに基づいた“ゲキアツ”集中治療
   定価3,960円(本体3,600円 + 税)
   2022年06月発行
(外部のサイトへとびます)
エビデンスに基づいた“ゲキアツ”集中治療
   定価3,960円(本体3,600円 + 税)
   2022年06月発行
(外部のサイトへとびます)
  • テキスト・教科書
  • 考え方・使い方
  • J-IDEO
  • J-IDEO定期購読
  • ClinicalNeuroscience
  • 広告掲載をお考えの方へ
  • 企画応募フォーム
  • 動画閲覧・ファイルダウンロード
  • 採用情報
  • X
  • note小
  • Facebook
  • JIDEOバックナンバー
  • テキスト・教科書
  • グリーンノート
  • 考え方使い方

株式会社中外医学社 〒162-0805 東京都新宿区矢来町62 TEL 03-3268-2701/FAX 03-3268-2722