推 薦 文
長澤先生との出会いは2004年4月のこと,私は留学から帰国後に関連病院へ赴任することになり,先生はその病院の初期研修医でした.赴任前に医局の先輩から,「長澤という腎臓内科志望の優秀な研修医がいるから,行って可愛がってやってくれ」と言われていました.実際に会ってみると,電解質代謝に関する質問を次々にもらい(しかもレベルの高いものばかり),また,そのことを踏まえた上での電解質補正や血圧コンロールについて鋭い問題提起もいただきました.留学中に臨床から離れ,すっかり「基礎研究ボケ」に陥っていた私は,「これは随分と手強いやつに出くわした」と思ったのでした.長澤先生の質問に対して納得してもらえる回答を用意するため,私も随分と勉強することになりました.「基礎研究ボケ」から早く脱することができ,先生にはある意味感謝しています.
当時から長澤先生には実臨床の中で生じる疑問を,そのまま流さずに何とかして解決しようとする姿勢がみえていました.その過程においては,先輩から後輩へと,「何となく」連綿と受け継がれてきた診療「慣習」にも疑問を投げかけ,本当にそれは正当な根拠に基づくものなのかを自問自答していたと思われます.このことは,本書中でも紹介されている,先生が提起したリサーチクエスチョンを検証した臨床研究の成果に表れています.
本文中では様々な診療上の疑問が取り上げられ,それぞれについてていねいな解説がなされています.教科書やガイドラインに記載はないものの,日常診療では大切なポイントが多数挙げられています.また,最近のトピックもきっちり取り上げられており,先生の勉強熱心さが思い出されました.冒頭では,長澤先生が日本腎臓学会「腎生検ガイドブック改訂委員会」 の委員として,『腎生検ガイドブック2020』(東京医学社)の刊行に関わった自負が観てとれると思います.
また,末尾の高カリウム血症や低ナトリウム血症に対する対応についても,非常に実践的で秀逸な解説になっています.
本書は腎臓専門医を目指す医師のみならず,研修医や総合診療医もぜひ手元に置いていただき,自分が診ている患者と照らし合わせながら,折あるごとに見返してもらいたい一冊です.
2022年5月
関西医科大学内科学第二講座 腎臓内科担当診療教授
谷山佳弘
---------------------
はじめに
東北大学の腎臓・高血圧・内分泌科の長澤 将(たすく)です.
前著の『Dr.長澤の腎臓内科外来実況中継』では,ガイドラインなどをベースに標準的な治療を提供できるよう作りましたが,今回の本では一歩突っ込んだ内容を書きました.
「問答」とあるように,よく聞かれる質問で,ガイドラインなどでは答えにくい部分に注目して30の項目を選び出しました(1日一つをしっかり読んでいただければ1カ月楽しめると思います).
この各章のタイトルをご覧になっていただき,皆様はどのような事を考えているでしょうか? 日常臨床でなんとなくルーチンで行っていたり,深く考えたことがなかったりするかもしれません.これらテーマは,私が20年間かけてコツコツと調べた文献などを参考に意見をつけています(論文はできるだけ最新のモノを選ぶようにしました).
本書をオススメする対象としては腎臓内科や透析医療などの専攻医.腎臓内科や透析医療にコミットする看護師,栄養士,臨床工学技士.もっと突っ込んだ話を聞きたい向学心のある方がよろしいかと思います
本書の上梓にあたり,『「論文にしよう!」と指導医に言われた時にまず読む本」,『カニでもわかる水・電解質』『Dr.長澤の腎臓内科外来実況中継』に続いて編集を担当していただいた中外医学社の岩松宏典様,今回も非常に手間のかかる校正を担当していただいた輿石祐輝様,素敵な装丁を担当していただいた大塚千佳子様に感謝申し上げます.
これまでの本のように7回読んでいただければとは申し上げませんが,ここに書いてある私の意見も鵜呑みにせず,批判的に読んでいただき,さらに勉強して日常臨床のレベルを上げていただければと思います.
2022年5月
長澤 将