Cardiology Mania
VT/VFの制圧
致死的不整脈の蘇生からカテーテルアブレーションまで
川上将司 編著 / 木村義隆 編著
B5判 312頁
定価10,780円(本体9,800円 + 税)
ISBN978-4-498-13674-8
2022年05月発行
在庫あり
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Cardiology Mania
VT/VFの制圧
致死的不整脈の蘇生からカテーテルアブレーションまで
川上将司 編著 / 木村義隆 編著
B5判 312頁
定価10,780円(本体9,800円 + 税)
ISBN978-4-498-13674-8
2022年05月発行
在庫あり
循環器疾患のなかでも特に急性期が重要となる急性冠症候群、動脈解離、致死性不整脈の診断や治療,最新デバイスの解説など,循環器救急のフロントラインをお届けする「Cardiology Mania」シリーズが誕生! 第1弾は心室頻脈と心室細動をテーマにした「VT・VFの制圧」.致死性不整脈を制圧するために知っておくべきことを最前線の医師が解説.循環器医だけでなく救急医,集中治療医など循環器救急に携わる医師必読の書.
巻頭言
今回,「VT/VFの制圧─致死的不整脈の蘇生からカテーテルアブレーションまで」の巻頭言を寄稿させていただくことを大変光栄に存じます.VT/VFなどの致死的不整脈は心臓突然死の原因となる大変重要な疾患です.全国の救急現場からのウツタインデータに基づいた報告では,急性冠症候群に対するカテーテルインターベンションの普及,植込み型除細動器(ICD)や自動体外式除細動器(AED)などの非薬物治療の普及,種々の心不全薬の登場が進んでいるにも拘わらず,年間7万人以上が亡くなっており,さらに年々増加していることが報告され,未だ解決できていない分野です.心臓突然死が増加している要因として,1次予防としてのICDの植込みがガイドラインでは勧められているにも拘わらず,その理解が医療者に十分に普及していないこと,AEDの戦略的配置が不十分であることなどが考えられていますが,重症不整脈に対する臨床医の理解が不足していることも一因として挙げられます.ただ,臨床不整脈の理解には,心筋梗塞や心筋症などの器質的な疾患と異なり,機能的な部分が多いため,なかなかイメージしにくく,不整脈の発生を理解し,心疾患を理解し,起こりうる状況の重症度を判断し,その予防や適切な薬物治療・非薬物治療を現場で適切に提供するには,心電図の読み方だけではなく,細胞レベルの基礎的な知識から最新の診断法・治療法を熟知する必要があります.さらに遺伝性の突然死疾患では,個々の特徴や遺伝子カウンセリングに至るまで極めて幅広い知識が要求されるため,その知識の習得に頭を悩ませている臨床医は大変多いと思われます.
本書は,不整脈の中でも,とくに致死的な不整脈であるVT/VFに焦点を当て,必要な知識と最新の情報,緊急対応から予防に関して,臨床医の立場で注意すべき点,疾患別の治療選択を網羅した数少ない書であります.執筆に当たっては,国立循環器病研究センターで勤務している,あるいは勤務していた現在国内外で活躍している多くの医師が参画し,大変充実した内容になっています.特徴として,急性期の治療方針やカテーテルアブレーションの最新のトピックス,年々進化しているデバイスの種類やその選択法,遺伝性不整脈診療に関して注意すべき点など,現在の不整脈診療に必要な知識と情報を,国内外のガイドラインに従って可能な限り網羅されていることなどが挙げられ,初心者から上級者,さらに多職種スタッフにも十分配慮した構成となっています.是非,本書を現場の不整脈診療に十分お役立ていただき,心臓突然死をひとりでも防ぐことに繋がることを願っています.
2022年4月
国立循環器病研究センター 心臓血管内科 部門長
草野研吾
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序文
本書は循環器疾患の中で最も重症度も緊急度も高い病態の一つである,心室頻拍/心室細動(VT/VF)について,初期治療となる蘇生・集学的治療から根治治療となるカテーテルアブレーションまでを一つにまとめた教科書である.現在のVT/VF診療の現状は蘇生・集学的治療については救急医・集中治療医と一部の循環器内科医が請け負い,専門性の高い知識と技術を有するカテーテルアブレーション・心臓デバイス植込みの適応と手技・遺伝性不整脈の診断はそれに特化した不整脈専門医が担うことが多い.しかし,この2つの領域は,両者の専門性があまりに高いために,臨床の現場ではシームレスに診療が行われているとは言い難いのではないか.ましてや,一人の医師が両者をともに極めることは不可能であろう.つまり,VT/VTを制圧していくためには,多くの専門家とコメディカルが一丸となって挑まなければ患者の予後の改善は望めない.この難しい領域を多面的に学ぶためには,それぞれの領域の専門家が集結する必要があった.本書の執筆陣は,日本・米国・欧州で活躍する,現在のVT/VF診療の最先端を担う指導者,新進気鋭の先駆者である.彼らには科学的な根拠に基づく見解に加えて,彼らが挑む臨床への情熱を吹き込んでいただいた.
本書はVT/VF診療の入口(超急性期)から出口(再発・突然死予防)まで幅広い内容を網羅すると同時に,その道の専門家も最新の知見が得られるよう,深みも味わえる構成とした.要所で日米欧のガイドラインに関しても触れている.第1章ではVT/VF診療にかかわるすべての医師が押さえておくべき,不整脈の機序,抗不整脈薬の考え方・使い方を網羅した.次に,第2章はVT/VFの蘇生と集学的治療に焦点を当て,循環器診療と集中治療両方に精通する医師により解説した,本書でも特に強調したい章の一つである.第3章ではVTの治療の考え方の基本を主に非循環器専門医を対象にわかりやすく説明した.第4章では,デバイスの植込みの適応判断から植込み手技,フォローアップの要点を概説すると同時に,新しい抗頻拍デバイスについても触れている.第5章は基礎心疾患別のカテーテルアブレーションに特化した,オリジナリティの高い章となっている.日本では欧米に比べてVTアブレーションの集約化が進んでおらず,不整脈専門医であっても十分な症例数を経験することは難しい.そこで,不整脈医の理解を助けることを目標とし,国内外のハイボリュームセンターで活躍する医師が,不整脈基質の違いやアブレーションストラテジーを説明した,専門性の高い内容とした.第6章では,遺伝性不整脈に焦点を当て,総論から各論までVT/VF診療に携わるすべての医師が知っておくべき内容を網羅すると同時に,最新の研究報告も概説した.また,カテーテルアブレーションに関しては,基礎心疾患別の説明に納まりきらない最新の話題を,「ホットトピック」として個別に詳述している.
本書がVT/VFの制圧に挑む読者に少しでも貢献できることを祈る.
2022年4月
川上将司 木村義隆
目 次
CHAPTER 1 VT/VFの制圧のために最初に知っておくべきこと
[1]臨床の現場で活きる不整脈の発生機序を学ぶ[里見和浩]
1 心筋細胞の活動
2 頻脈性不整脈のメカニズム
3 治療におけるメカニズムの検討
[2]抗不整脈薬の考え方・使い方を学ぶ[井上修二朗]
1 抗不整脈薬の分類
2 心臓の収縮・拡張に関わるイオンチャネル,チャネル遮断の功罪
3 心室不整脈に用いられる主な静注抗不整脈薬─VT/VF急性期
4 心室不整脈に用いられる主な経口抗不整脈薬─VT予防
CHAPTER 2 心停止に強くなる!
[1]心臓突然死・心停止概論[細田勇人]
1 心停止? 突然死? 心臓突然死?
2 心停止時に収集すべき情報
3 心停止の原因疾患
4 心臓突然死の欧米の現状と本邦の現状
[2]心室細動・無脈性心室頻拍に対する蘇生[川上将司]
1 心室細動・無脈性心室頻拍に対する蘇生ガイドライン
2 胸骨圧迫と電気的除細動
3 蘇生で使用されるアドレナリンのエビデンス
4 蘇生で用いられる抗不整脈薬のエビデンス
[3]難治性不整脈に対する集学的治療[真玉英生]
1 Electrical storm
2 鎮静・人工呼吸器管理
3 一時ペーシング
4 機械的循環補助
[4]心停止症例への心疾患精査・心臓突然死の非侵襲的リスク評価[丸目恭平]
1 心停止症例に対する心疾患精査
2 心臓突然死の非侵襲的リスク評価
CHAPTER 3 VTに挑む!
[1]心室頻拍の総論[牧元久樹]
1 定義・分類
2 病態生理・電気生理学的機序
3 治療
[2]Wide QRS tachycardiaの鑑別アルゴリズム[長山友美]
1 Wide QRS tachycardiaに遭遇したら
2 QRS波形からの鑑別
[3]心室頻拍・心室期外収縮の部位診断[丸山将広]
1 特発性PVC・VTの心電図診断
2 単形性VTの診断
[4]心室頻拍の診断と治療に役立つイメージング[木村義隆]
1 基礎心疾患の診断
2 VT・突然死のリスク層別化
3 アブレーションの補助的使用
[5]心室頻拍に対する電気生理学的検査の基本[三嶋 剛]
1 電気生理学的検査の適応となる症例
2 検査の前に─インフォームドコンセント,必要な機材,人員
3 電気生理学的検査の実際─誘発プロトコル,結果の解釈
4 検査のあとに─術後管理,フォロー時の注意点
[6]心室頻拍の3Dマッピングの見方[中須賀公亮]
1 3Dマッピングシステム
2 3Dマッピングの実際
3 VTアブレーションにおける3Dマッピングシステムの使い方
[7]心室頻拍に対するカテーテルアブレーションの基本・実際[中島健三郎]
1 アブレーションの適応
2 心室頻拍アブレーションの実際
[8-1]心室頻拍アブレーションのホットトピック(1)
Microelectrodes・Multielectrodesマッピングカテーテル[木村義隆]
1 背景・これまでの課題
2 適応・治療のポイント
3 課題・今後のポイント
[8-2]心室頻拍アブレーションのホットトピック(2)
新しいアブレーションストラテジー[西村卓郎]
1 背景
2 これまでに報告されたsubstrate modificationの方法(有用性と注意点)
3 治療の課題・今後の展望
[8-3]心室頻拍アブレーションのホットトピック(3)
新しいアブレーションメソッド[中島育太郎]
1 メソッド別解説
[8-4]心室頻拍アブレーションのホットトピック(4)
機械的血行動態補助装置下(左室補助装置を含む)の心室頻拍アブレーション[中島健三郎]
1 一時的機械サポート下心室頻拍アブレーション
2 LVAD下での心室頻拍アブレーション
CHAPTER 4 心臓デバイスに詳しくなる!
[1]植込み型除細動器の概略・機能と適応[林 高大]
1 植込み型除細動器の構造
2 植込み型除細動器の機能
3 植込み型除細動器の適応
[2]植込み型除細動器植込み後の管理・諸問題[上田暢彦]
1 植込み型除細動器の頻拍診断とプログラミング設定
2 心内電位の読み方
3 ICD作動が起こった場合の対応
4 自動車運転
5 MRI撮像における現在の取り決め
6 Recovered EFへのICD交換
7 心不全終末期設定オフに関して
[3]新しい抗頻拍デバイス[若宮輝宜]
1 皮下植込み型除細動器(S-ICD)
2 着用型心臓除細動器(WCD)
[4]心臓再同期療法の原理・適応・効果判定[高麗謙吾]
1 心室内伝導障害と心臓再同期療法
2 CRTの適応
3 電気的dyssynchronyと機械的dyssynchrony
4 ペースメーカ・ICD適応例へのCRT
5 CRT-PとCRT-D
6 レスポンダーとノンレスポンダー
7 CRT以外のペーシング治療
[5]心臓再同期療法の管理[野田 崇]
1 CRT患者の外来フォローアップ
2 適切なペーシングのタイミング
[6]心臓再同期療法の植込み手技[高麗謙吾]
1 術前評価
2 手術手技
3 左室リードの留置位置
4 合併症とその対策
CHAPTER 5 周りと差がつく!一歩進んだVT診療─基礎心疾患別アプローチ─
[1]急性冠症候群と心室不整脈[川上将司]
1 急性冠症候群の病態・疫学
2 急性冠症候群に対する冠血行再建術
3 急性冠症候群における心室不整脈の頻度・予後
4 急性冠症候群における心室不整脈発生のメカニズム
5 急性冠症候群急性期にみられる心室不整脈
6 さいごに
[2]特発性心室頻拍:流出路起源心室期外収縮[上田暢彦]
1 流出路起源心室期外収縮の定義・分類
2 アブレーション治療の有効性・薬物療法
3 心電図波形による鑑別
4 流出路起源心室期外収縮のアブレーション症例(RVOT,LV summit)
5 流出路心室頻拍アブレーションの工夫
6 LV summit起源心室頻拍の特徴,アブレーション困難な理由・工夫
7 肺動脈起源心室頻拍の特徴
8 その他の心室期外収縮に対するアブレーション方法(His束近傍,冠尖起源)
[3]特発性心室頻拍:ベラパミル感受性心室頻拍[川上大志]
1 ベラパミル感受性VTの特徴
2 ベラパミル感受性VTの診断・治療
3 ベラパミル感受性VTの診断・治療に関するtips
[4]虚血性心疾患と心室不整脈[河田 宏]
1 急性虚血性心疾患におけるVT
2 慢性虚血性心疾患におけるVT
[5]心室細動アブレーション[小松雄樹]
1 虚血性心疾患に認めるVFの機序に関して
2 カテーテルアブレーションの適応
3 アブレーションが奏効したVF storm自験例
4 アブレーションの方法と成績
[6]拡張型心筋症と心室不整脈[木村義隆]
1 VTの疫学
2 VTのメカニズム
3 検査
4 治療
5 症例
[7]肥大型心筋症と心室不整脈[渡邉昌也]
1 HCMの疫学と分類
2 HCMにおける心室不整脈のメカニズム
3 検査
4 植込み型除細動器(ICD)
5 カテーテルアブレーション
[8]不整脈原性右室心筋症と心室不整脈[仲村佳典]
1 ARVCの概説
2 ARVCの疫学
3 ARVCの診断基準
4 ARVCの治療
5 ARVCの運動制限
[9]心サルコイドーシスと心室不整脈[成瀬代士久]
1 心サルコイドーシスにおけるデバイスの選択について─PM or ICD
2 心サルコイドーシスに合併した持続性心室頻拍に対する治療戦略
3 心サルコイドーシスに合併した持続性心室頻拍に対するカテーテルアブレーション
4 アブレーション症例提示(瘢痕組織に関連した非リエントリー性頻拍)
[10]先天性心疾患と心室不整脈[木村義隆]
1 突然死と致死性不整脈の疫学
2 CHDにおける心室不整脈のメカニズム
3 検査
4 カテーテルアブレーション概論
5 ICD概論
6 疾患別アプローチ
CHAPTER 6 もう怖くない!遺伝性不整脈の診療
[1]遺伝性不整脈の総論[牧元久樹]
1 定義・分類
2 疫学
3 機序
4 診断
5 治療の概観
[2]QT延長症候群[島本恵子]
1 疫学
2 病態と機序
3 検査・診断
4 リスク層別化
5 治療
[3]Brugada症候群[山形研一郎]
1 診断
2 疫学
3 予後
4 リスク評価およびICD治療
5 薬物治療および非薬物治療
[4]早期再分極症候群[鎌倉 令]
1 概念・定義
2 疫学
3 病因
4 リスク評価
5 治療と予後
[5]カテコラミン誘発性多形性心室頻拍(CPVT)[河田 宏]
1 CPVTの疫学
2 遺伝的背景
3 CPVTと鑑別が必要な疾患
4 臨床像
5 診断と検査
6 治療
索引
執筆者一覧
川上将司 飯塚病院 編著
木村義隆 Leiden University Medical Center 編著
里見和浩 東京医科大学
井上修二朗 飯塚病院
細田勇人 近森病院
真玉英生 国立循環器病研究センター
丸目恭平 国立循環器病研究センター
牧元久樹 Heinrich-Heine-Universität Düsseldorf
長山友美 九州大学病院
丸山将広 近畿大学病院
木村義隆 Leiden University Medical Center
三嶋 剛 国立病院機構大阪医療センター
中須賀公亮 名古屋市立大学
中島健三郎 国立循環器病研究センター
西村卓郎 東京医科歯科大学
中島育太郎 聖マリアンナ医科大学
林 高大 湘南鎌倉総合病院
上田暢彦 国立循環器病研究センター
若宮輝宜 国立循環器病研究センター
高麗謙吾 小倉記念病院
野田 崇 東北大学病院
川上大志 愛媛大学
河田 宏 Peace Health Sacred Heart Medical Center
小松雄樹 筑波大学附属病院
渡邉昌也 北海道大学
仲村佳典 Leiden University Medical Center,イムス東京葛飾総合病院
成瀬代士久 浜松医科大学
島本恵子 国立循環器病研究センター
山形研一郎 国立循環器病研究センター
鎌倉 令 Bordeaux University
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