はじめに
わが国の慢性腎臓病(CKD)患者さんは,1,300万人を超えさらに増加していると言われています.それに対し日本腎臓学会認定の腎臓専門医は5,777人(2021年5月26日現在)であり,腎臓専門医だけでこれらの患者さんを診ることは不可能です.私はこれまで「かかりつけ医のための腎疾患診療ガイド.日常診療のエッセンスと専門医との連携ポイント」(文光堂)と「専門医が伝える腎臓病診療基本レクチャー」(中外医学社)を刊行し,腎臓専門医と非腎臓専門医との病診連携の重要性と「ふたり主治医診療」の活用について述べてきました.多くの皆さんにお読みいただいたことに感謝しています.
2019年の暮れから中国武漢市で発症した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は,現在もパンデミックの状態です.COVID-19患者さんの増加は,それ以外の患者さんにも影響を与え医療逼迫の状況にもなっており,オンライン診療の普及・活用が叫ばれています.
今回,「必携! 外来での腎臓病診療アプローチ」を上梓しました.その内容は,第I章 症状・症候からのアプローチ 主訴をどうとらえるか? 第II章 臨床診断のポイント 外来診療医は,どこに着目すべきか? どんな検査を行うべきか? 第III章 外来診療での臨床診断,第IV章 外来診療で学ぶべき高頻度の腎臓病 第V章 外来診療医が専門医(腎臓,糖尿病,泌尿器)に紹介すべき時期は? 第VI章 腎臓病(特に,CKD)治療のポイント(管理栄養士やトレーナー不在での栄養食事指導・運動サポートは? CKDステージ別薬物療法は? 腎機能低下時に注意すべき薬剤と禁忌薬剤,慢性腎臓病(CKD)ステージ別使用禁忌薬剤)の6分野としました.これらの内容は,「ふたり主治医診療」と「腎臓病におけるオンライン診療」に活かしていただけると思っています.オンライン診療は,初診では検査所見がないだけに難しい面もありますが,再診では症状・症候などの変化から診療に活かすことができると思います.しかし,執筆の過不足があろうかと思われますので,皆さまの忌憚のないご意見をお待ちしています.
最後に,本書の発行にあたりご協力いただいた(医社)松和会管理栄養士 杉村紀子さんと中外医学社の皆さまにお礼申し上げます.
2021年 盛夏 COVID-19の終息を願って
富野康日己