ER診療羅針盤
伊藤敏孝 著
B6判 190頁
定価3,740円(本体3,400円 + 税)
ISBN978-4-498-06681-6
2021年07月発行
在庫あり
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ER診療羅針盤
伊藤敏孝 著
B6判 190頁
定価3,740円(本体3,400円 + 税)
ISBN978-4-498-06681-6
2021年07月発行
在庫あり
『初期研修医のためのER診療マニュアル』改訂改題.約7年ぶりに全面改訂を受け,装いも新たにポケットサイズになって心機一転.救急医療の最前線で活躍し続ける著者が,超多忙な現場で共に戦う後進をいかにして育成するかを考え抜いて執筆しました.ER診療という大海原の中で,進むべき道を間違わないように方向を指し示す「羅針盤」.すべての研修医,救急医療に携わる医療者必携!
推薦の辞
『ER診療羅針盤』の発刊誠におめでとうございます.
ER診療は,新臨床研修制度において初期臨床研修医が学び,習得すべき医師としての技量の根幹となるものであることは疑う余地がありません.またそれは同時に,医師を志した者にとって生涯にわたり身につけておくべき技量でもあります.
本書は,ERという多種多様な疾患に遭遇する,しかも一刻も無駄にできない状況下での診療を体系的,効果的に指導教育する指針として書かれております.
私の個人的な経験では,救急車が年間2,000台から3,000台程度つまり1日当たり10台ぐらいまでであれば,ある程度医師個人ごとの診療技術で対応可能でありますが,5,000台を超えるレベルになると総合的に対応できる救急専門指導医の指導教育がなくては対応できない印象があります.
これからの高齢化社会を取り巻く医療環境,働き方改革のもとにおける医師勤務環境においては,やはり医師になりたての知識の豊富な,何事もスムーズに吸収できる初期臨床研修医時代に正しい指導を受けることが重要であり,そのことが今後の地域社会における医師の使命達成に繋がるものと考えられます.
そして,それを可能にするためのツールが,今回執筆された本書であると確信しております.ぜひ一度本書を手に取り,その記述内容を確認してみてください.必ずやER診療の“羅針盤”となることが実感できます.
今後,本書がER診療の現場に広く行き届くことを祈念して推薦の辞とさせていただきます.
2021年春
新百合ヶ丘総合病院院長 笹沼仁一
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巻頭言
救急外来は重症度や診療科に関係なくあらゆる疾患が来院する.救急外来に搬送される患者を短時間で重症度を見極め,必要な救命処置をしながら,検査の順番を組み立て診断していくのは,臨床医としての醍醐味である.初期研修医が救急外来での診療を経験することは,臨床研修の場として非常に重要である.新臨床研修制度において,救急外来での研修の必修化の流れは,将来どの診療科を選択するかに関係なく基本的な救急疾患を診察し手技を習得することの重要性を一般社会が認識したためと思われる.
著者はER診療を始めて15年以上の歳月がたち,現在でも年間約7000台の救急車が来院する施設で救急診療の第一線に従事している.毎日多くの救急患者を研修医と共に診療する中で,研修医たちは救急外来に押し寄せる多数の傷病者の波に翻弄されながら,試行錯誤しながら診療をしている.研修医たちも救急外来での診療において重要な一員であり,多数の患者が押し寄せる救急外来では,指導医自身も手が回らず,研修医と1例1例丁寧にディスカッションしながら教えられないのも現状である.
指導医であるわれわれも忙しい救急外来で千差万別の救急疾患を相手にどのようにしたら一定の診療手順を踏んで体系的に教育できるか,どのように指導するのが効果的か長年悩み,そのような経験を元に,救急外来での診療手順をまとめて教育できるシステムの構築を試みた.
JATEC(Japanese Advance Trauma for Evaluation and Care)は,外傷初期診療コースとして本邦で広く認識された優れたコースである.われわれは,このJATECをプロトタイプとして,全ての疾患をABCDEアプローチによる診療スタイルで診療できないか模索した.救急で来院する患者を,ABCDEアプローチによるPrimary Surveyで生理学的異常を検索し,その異常に対して「蘇生」を行い,全身を系統的に診療するSecondary Surveyにより解剖学的異常を診断し,その異常を基に治療することは非常に有用であるという結論に達した.この診療スタイルを研修医に教えることは系統的に診断し治療する上で非常に有用と思われる.
本書はこの救急外来での診療スタイルとして,JATECの診療に準拠し,あらゆる疾患に対して重症度に関係なく診療を行う上での指針である.また,随所に臨床をしていてふと疑問に思ったことをQ&Aで示した.
本書がER診療という大海原の中で,進むべき道を間違わないように方向を指し示す「羅針盤」になることを確信して執筆した.
伊藤敏孝
目 次
はじめに―新百合ER 救急診療ガイドについて
CHAPTER 1 ● Primary Survey
1.心肺停止
蘇生/フローチャート/解説
〔Q&A〕
1)蘇生時の大量アドレナリン投与の有効性
2)心肺停止症例に対する蘇生はABC の順番で,気管挿管を優先することでいいですか?
3)蘇生時にバソプレッシンの投与が有効と言われたことがありますがどうですか?
4)蘇生中止後のCT 検査の読影は,通常の読影と一緒ですか?
5)三環系抗うつ薬による心肺停止蘇生時に特別な薬剤を使用するんですか?
2.A の異常
「A の異常」とは/蘇生/解説
〔Q&A〕
1)呼吸困難で来た患者は必ず頻呼吸になりますか?
2)上気道閉塞の指標としてSpO2 の有効性
3)陰圧性肺水腫
4)急性喉頭蓋炎の気管支鏡所見
5)外科的気道確保の適応
6)SpO₂ とSaO₂ の違い
3.B の異常
「B の異常」とは/症状/フローチャート/蘇生/解説
〔Q&A〕
1)経皮的酸素飽和度測定について
2)一酸化中毒とパルスオキシメーター
3)メトヘモグロビン血症とパルスオキシメーター
4)酸素飽和度ギャップとは
5)高二酸化炭素血症と高血圧
6)代謝性アシドーシスと頻呼吸
7)過換気症候群と高乳酸血症
4.C の異常
「C の異常」とは/「切迫するC」とは/症状とチェック項目/フローチャート/解説/RUSH protocol を例示する
〔Q&A〕
1)ショックの認知
2)ショックの時の気管挿管
3)アナフィラキシーショックの治療としての副腎皮質ステロイド
4)ショックの時のCT 検査
5.D の異常
症状とチェックリスト/「切迫するCNS」/フローチャート/蘇生/病態/解説
〔Q&A〕
1)「切迫するCNS」と「切迫するD」の違い
2)片麻痺で注意すること
3)くも膜下出血のCT 所見
4)糖尿病治療中以外の低血糖発作の可能性
5)急性大動脈解離の時の意識障害の原因
6.E の異常
「緊迫するE」/蘇生/病態
〔Q&A〕
1)低体温時の心電図J 波とは
2)低体温時の蘇生の方法
3)低体温時の復温の方法
4)偶発性低体温の時の注意事項
5)熱中症の新分類
CHAPTER 2 ● Secondary Survey のはじめに
1.切迫するC
「切迫するC」とは/「三つの行動」とは/その後の行動/解説
〔Q&A〕
1)D ダイマーとFDP の違いは何ですか?
2)D ダイマーが上昇する意義を教えてください.
3)「切迫するC」を呈する腹部の疾患
4)心筋梗塞を合併する急性大動脈解離の特徴
5)心電図のaVR の意義
6)胸痛のない心筋梗塞
7)De Winter 症候群とは何ですか?
8)Wallens 症候群はどんな病気ですか?
9)Kounis 症候群について教えてください.
10)脚ブロックの時の虚血の判定
2.切迫するCNS
「切迫するCNS」とは/三つの行動/その後の行動/解説
〔Q&A〕
1)「 切迫するCNS」の気道の確認は必ず気管挿管をするべきですか?
2)痙攣時の酸素投与の重要性
3.超急性期血栓溶解療法
〔Q&A〕
1)脳出血の出血量の計算式
2)脳卒中時の血圧管理
3)脳梗塞に伴う遠隔部の遅発性神経細胞障害とは
4)大脳基底核周辺の血管支配について
4.緊迫するE
「緊迫するE」とは/「三つの行動」とは/その後の行動/解説
〔Q&A〕
1)新型コロナ感染症患者との曝露リスク
2)新型コロナウイルス感染症(COVID-19)について
CHAPTER 3 ● Secondary Survey
1.主訴のチェック
2.病歴聴取
AMPLE ヒストリー
3.Secondary Survey について
4.Secondary Survey 後
各種検査/診断・経過観察・転帰
5.循環器異常
フローチャート/問診とチェック項目/解説
〔Q&A〕
1)D ダイマーの大動脈解離での意義
2)甲状腺クリーゼの定義
3)BNP ガイドライン
4)CK-MB の偽高値
6.意識障害
フローチャート/問診とチェック項目/解説
〔Q&A〕
1)脳出血のMRI 所見を教えてください.
2)水中毒を教えてください.
4)ウエルニッケ脳症を教えてください.
5)抗菌薬による意識障害
6)脳梁膨大部のMRI での異常所見
7.腹部症状
フローチャート/問診とチェック項目/解説
〔Q&A〕
1)CT に描出されない胆石は多いですか?
2)CT に描出されない尿管結石は多いですか?
3)くも膜下出血の場合は嘔気以外に必ず頭痛を伴いますか?
4)どのような時に腹部の虚血性血管病変を疑いますか?
5)イレウスは必ず腹部の手術歴がありますか?
6)代謝性疾患でも腹痛を伴いますか?
7)環境因子で腹部症状を伴うことがありますか?
8)脾梗塞を認めた時に注意することがありますか?
9)腹部症状を伴う婦人科疾患にはどのようなものがありますか?
10)前皮神経絞扼症候群について
11)腹膜垂炎について
12)特発性気腹症
13)Smaller SMV sign
14)女性の尿閉(Fowler 症候群)
8.呼吸器症状
フローチャート/問診とチェック項目/解説
〔Q&A〕
1)呼吸数の意味を教えてください.
2)代謝性アシドーシスでなぜ呼吸困難を引き起こすんですか?
3)レジオネラ肺炎の特徴を教えてください.
4)特発性血胸
9.発熱
フローチャート/問診とチェック項目/解説
〔Q&A〕
1)感染性心内膜炎に特徴的な臨床所見を教えてください.
2)Purple urine bag syndrome(PUBS)
3)悪性症候群
4)Crowned dens syndrome と石灰沈着性頸長筋腱炎
10.めまい
フローチャート/問診とチェック項目/解説
〔Q&A〕
1)延髄外側症候群の症状
2)貧血や脱水によるめまいの特徴を教えてください.
3)前庭神経炎・メニエール病に特徴的な所見を教えてください.
4)良性発作性頭位めまい症に特徴的な所見を教えてください.
5)Ramsay-Hunt 症候群
6)AICA 症候群
7)MRI に描出されない脳梗塞
11.痙攣
フローチャート/問診とチェック項目/解説
〔Q&A〕
1)痙攣でなぜアンモニアも測定するのですか?
2)脳卒中と痙攣の関係を教えてください.
3)フェニトイン中毒の特徴的な症状を教えてください.
4)PRES について
12.失神
フローチャート/問診とチェック項目/解説
〔Q&A〕
1)循環血液量減少による失神の原因を教えてください.
2)心臓弁膜症で失神の原因として一番多いのは何ですか?
3)肺塞栓症に特徴的な検査所見を教えてください.
4)頭蓋内疾患で失神の原因となるものはありますか?
5)環境因子が原因となる失神はなんですか?
6)状況失神の反射経路
7)J 波症候群について
13.神経学的異常
フローチャート/問診とチェック項目/解説
〔Q&A〕
1)低血糖でも片麻痺を認めることがありますか?
2)一過性脳虚血発作は症状が消失しているので帰宅でかまわないですか?
3)急性大動脈解離での脳梗塞との関連を教えてください.
4)一過性全健忘はどのような疾患ですか?
5)亜急性連合性脊髄変性症
14.頭痛
フローチャート/問診とチェック項目/解説
〔Q&A〕
1)頭痛をきたす脳梗塞はあるのですか?
2)後頸部痛を主訴に来院する急性心筋梗塞はありますか?
3)くも膜下出血に特徴的な頭痛の所見を教えてください.
4)髄膜炎に特徴的な所見を教えてください.
5)RCVS
15.背部痛
フローチャート/チェック項目/解説
〔Q&A〕
1)泌尿器科領域で背部痛を示す疾患のCT による鑑別と
注意点を教えてください.
2)消化管穿孔で背部痛から発症することはありますか?
3)化膿性脊椎炎の特徴を教えてください.
4)腎梗塞・破裂の特徴を教えてください.
5)運動後急性腎不全について
6)脊髄硬膜下または硬膜外血腫
16.脱力
フローチャート/問診とチェック項目/解説
〔Q&A〕
1)周期性四肢麻痺について教えてください.
2)脱力の主な原因を教えてください.
3)歩行ができる脊髄損傷があるのですか?
4)心筋梗塞と脱力の関係を教えてください.
5)脱力と慢性硬膜下血腫
17.外傷
問診とチェック項目/解説
〔Q&A〕
1)小児の頭部外傷は全てCT 検査が必要ですか?
2)成人頭部外傷で頭部CT 検査の適応を教えてください.
3)外傷と内因性診療の順番はどちらを優先すべきですか?
18.急性薬物中毒
解説
〔Q&A〕
1)Toxidrome とはなんですか?
2)長時間薬物中毒で寝ていた場合の注意事項
3)リチウムの血中濃度に影響する薬剤
4)アセトアミノフェンの血中濃度の予想式
5)有機リン中毒でPAM の使用
6)カフェイン中毒について
7)偽性高クロール血症
8)薬物中毒によるめまい
■ 補足
〔Q&A〕
1)患者死亡時の警察への通報はどんな時にしますか?
2)入院後24 時間以内に死亡した場合,警察への通報は必要ですか?
3)覚醒剤の警察への通報
4)Ai について
5)単位いろいろ
6)ガンマ計算
7)抜けない指輪
8)シリンジ採血と分注の仕方
■ CIECER について
「CIECER コース」の目的/コースの位置づけ/コース内容
謝辞
索引
執筆者一覧
伊藤敏孝 新百合ヶ丘総合病院 救急センター長 著
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