改訂2版の序
このたび,2017年に初版を発刊しました『認知症診療実践ハンドブック』の改訂2版を出版する運びとなりました.本書は認知症診療に関わる基礎知識から,診療の基本,原因疾患ごとの症例呈示・解説まで,ポイントを抑えた実践的なハンドブックとして企画・執筆されました.幸いなことに,初版の発刊時から多くの読者に好評をもって迎えられ,出版社より改訂版作成のご提案をいただき,2020年に改訂作業を進めました.短期間にご執筆をいただいた執筆者の皆様に心より感謝いたします.
この数年の間にも社会の超高齢化は一段と進み,認知症の人は急増しています.それに対応するため,2019年には「認知症施策推進大綱」が関係閣僚会議から出され,その後,「認知症基本法」案が国会で審議されています.さらに,2019年12月以降,中国湖北省武漢市を中心に発生した新型コロナウイルス感染症が短期間で全世界に広がり,現在もパンデミックに歯止めがかからない状態であり,認知症診療・ケアも大きな影響を受けています.私がプロジェクトリーダーをつとめる「北陸認知症プロフェッショナル医養成プラン」(認プロ)で教育を担当する多くの先生方にご執筆いただいておりますが,認プロでは,認知症プロフェッショナルの育成のため,診療科間,施設間,職種間の垣根を越えてウェブ上でeラーニング講義,デメンシアカンファレンス(症例検討会),デメンシアセミナー,メディカルスタッフeラーニング講座などを実施し,まさにウィズコロナの時代にも適合した活動を行ってきております(http://ninpro.jp).
改訂にあたりまして,初版時の基本方針はそのまま踏襲しましたが,内容をアップデートし,項目を統廃合し,新規の項目を設けました.改訂版では,2020年までに発刊された診療ガイドラインや最新の診断・治療法を含む内容にアップデートされました.また,新たに7項目が加わりました.その中には,「ウィズコロナ時代の認知症診療・認知症ケア」といったタイムリーなテーマや,「認知症の嚥下障害に対するリハビリテーション」「一過性てんかん性健忘」といった認知症診療・ケアで非常に重要なテーマが含まれています.
この改訂2版が,認知症診療に日々取り組む皆様のお役に立つことができれば誠に幸いに存じます.
2021年1月
山田正仁