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書籍詳細

ADHDクロストーク

ADHDクロストーク

齊藤万比古 著 / 飯田順三 著 / 宮島祐 著

A5判 206頁

定価3,300円(本体3,000円 + 税)

ISBN978-4-498-22918-1

2020年07月発行

在庫あり

医療の枠を超え様々な領域で関心を持たれるようになったADHD.現実とエビデンスの狭間で悩み迷いながらも,よりよい診療を模索し続けてきた3人の臨床家が「ADHD臨床」について語りつくしました.ADHDの概念から診断・評価,治療・支援まで,確かな知識と臨床経験に基づいた,3人の温かな言葉が飛び交う鼎談.医師のみならず、教育・福祉・心理関係者、保護者の皆様にもぜひ手に取っていただきたい1冊です.

著者略歴
齊藤万比古(さいとう  かずひこ)

現職は恩賜財団母子愛育会愛育研究所児童福祉・精神保健研究部長,同研究所愛育相談所長.1975年千葉大学医学部を卒業し木更津病院勤務を経て,1979年に国立国府台病院精神科に入職,児童精神科部門の専属となる.国府台病院はその後,国立精神・神経センター,国立国際医療センター等と,その所属する機関が換わったものの,一貫して国府台病院の児童精神科医であった.その間,2003年から2006年まで同じセンター内の精神保健研究所児童・思春期精神保健部長を務めた.2013年,精神科部門診療部長を最後に,国立国際医療研究センター国府台病院を退職.同年恩賜財団母子愛育会愛育病院に入職し,2015年より現職にある.この間に日本児童青年精神医学会,日本ADHD学会,日本サイコセラピー学会の理事長を務めた.現在日本ペアレント・トレーニング研究会の顧問を務めている.「注意欠如・多動症―ADHD―の診断・治療ガイドライン  第4版」の編集を担い,現在第5版への改訂を目指している.いま関心を強くよせているのは,発達障害や被虐待体験を持つ子どもたちのメンタライジング不全の理解とその治療への応用という課題である.

飯田順三(いいだ  じゅんぞう)

現職は奈良県立医科大学医学部看護学科人間発達学教授.1981年に奈良県立医科大学を卒業し奈良県立医科大学精神医学講座に入局.当時認知症が社会的に大問題となっている時代であったが,当初より児童精神医学に興味を持っていた.発達障害や不登校に強い関心があり,当時奈良県下にほとんどいなかった児童精神科医を目指すこととした.1996年に同大学助教授となり,2000年より同大看護短期大学部教授,2004年に同大看護学科教授となった.その後2008年〜2014年,2016年〜2018年看護学科長を務めた.現在,日本児童青年精神医学会常任理事,子どものこころ専門医機構副理事長,日本ADHD学会理事,日本精神神経学会代議員を務めている.ADHDの近赤外線スぺクトロスコピィや事象関連電位などの生物学的研究への関心と同時に心理社会的な治療にも重きを置いている.最近は児童精神科医の養成にも力を入れている.

宮島 祐(みやじま  たすく)

現職は東京家政大学子ども学部子ども支援学科教授・同学科長・同大学院教授,東京医科大学医学部小児・思春期学領域兼任教授.1978年東京医科大学医学部卒業し,同大学小児科学教室入局し小児神経領域を専門とし,1983年同大学大学院単位取得,医学博士.1985年国立精神・神経センター武蔵病院小児神経科研修などを経て,1994年東京医科大学小児科学講師,2012年同臨床准教授,2014年4月から現職にある.この間に日本小児科学会学術雑誌和文誌編集委員長,日本小児精神神経学会常務理事および同学会誌編集委員長など歴任し,2019年4月より齊藤万比古先生の後を受け日本ADHD学会第4代理事長を拝命している.小児科医になった当初は難治性てんかんや重度脳性麻痺児などの診療が主体であったが,1998年から日本小児精神神経学会事務局総務を担当し,同時期から厚生労働省科学研究事業およびPMDA等で専門委員として従事し,発達障害(神経発達症群)が診療の主体となっている.現職では医療のことを理解できる保育者養成を担い,地域自治体や教育界との連携を図っている.

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はじめに


『ADHDクロストーク』と題した本書は,様々な職種の臨床家と,わが子や配偶者の注意欠如・多動症(attention-deficit/hyperactivity disorder: ADHD)をより詳しく理解したいと望んでいる当事者の保護者や配偶者,あるいは学校生活を支える教職員などの支援者に,ADHD臨床の生き生きとした息吹や手触りを直に感じ取ってもらえる書となることを目指し,児童精神科医2名と小児科医1名によるクロストーク(鼎談)の形を採ってまとめたものである.まずこのクロストークの発言者がなぜこの3名なのかについて述べておきたい.
飯田順三氏は奈良県立医科大学医学部看護学科の教授として発達障害の診療や神経生理学的研究を通じて子どものADHD臨床に貢献を続けてこられ,ADHDのガイドライン作成を目指す研究にも参加していただいた私の最も信頼する児童精神科医の一人である.また現在,東京家政大学子ども学部子ども支援学科の教授である宮島祐氏は日本ADHD学会の現理事長で,主に小児神経学の観点からADHD研究とその診療に長く取り組んでこられた小児科医である.また宮島氏とは,彼が東京医科大学小児科におられた頃から研究活動や研究会でご一緒させていただき,互いの考えをぶつけ合える関係を続けてきた.このように飯田氏と宮島氏は共にADHD研究においても,そしてその診療においても,さらに言えばその領域の啓発者としても,それぞれの専門領域で研鑽を積まれ,ADHD臨床の全体像を語るにふさわしい人材である.本書の企画を中外医学社から提案された際に迷わず両氏に声をかけさせていただいたのは,このような理由があってのことである.
3人目の私は,本書の編集を担当するという立場で,均衡のとれたADHDの臨床イメージを読者に伝えるために,クロストークが漫然とした雑談に終わらないように,議論の大まかな方向を企画し,機を見てそれを示す司会役を務めさせていただいた.その際に私が意識していたのは「注意欠如・多動症―ADHD―
の診断・治療ガイドライン  第4版」が提案しているADHD臨床の原則について親しみやすい表現で語り合いたいということであった.この私の思いに飯田,宮島両氏の専門性と臨床経験に基づく自由で含蓄深い発言が交差し絡み合うことで,ガイドラインでは示しきれない知識の広がりと,ADHD臨床の繊細さが放つ魅力を二つながら表現しえたことは,当初の想定を超える成果であり,喜びでもある.
クロストークは準備のための回を含め計5回開催され,本書の第1章に関するクロストークが行われた2018年9月末から第4章のための最終回を行った2019年2月中旬まで,おおよそ4カ月間を要した.その後テープ起こしが行われ,発言者による各自の発言の取捨選択や推敲を経て,印刷に回せる水準に至ったのは2020年2月に入ってからであった.結果として最終回のクロストークからさらに1年を超える時間が経過していた.中外医学社の担当者,とりわけ企画部の佐渡眞歩氏と編集部の上村裕也氏には,クロストークの運営に始まり完成に至るまで3人の発言者を一貫して支え続け,手間のかかる編集作業の大半を担ってもらった.両氏への感謝は,発言者一同の率直かつ正直な思いである.
ところで,クロストーク実施時から本書が世に出るまでの期間に,ADHDの薬物療法を取り巻く環境に重大な変化が生じており,その点に触れておかないと読者に混乱を生じさせるおそれがある.第一の変化は,2019年12月に中枢刺激薬であるリスデキサンフェタミンメシル酸塩カプセル(商品名ビバンセ®カプセル)が販売開始となったことである.第二の変化はビバンセ®カプセルの販売開始に合わせコンサータ®錠とビバンセ®カプセルがADHD適正流通管理システムによって患者登録などの厳しい処方管理下に置かれることになったことである.特に第二の環境的な変化はADHD診療に重大な影響を与えるであろうことが予測されるが,それについてクロストークではほんのわずかしか取り上げることができなかった.その理由は,もっぱらクロストーク実施時と現在とのタイム・ラグにあることをご賢察いただければ幸いである.

2020年5月
齊藤万比古

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目次

第1章 ADHDの概念を問う
 1 『ぼうぼうあたま』に描かれたADHD
 2 ADHDの歴史
 3 なぜADHDがこんなに注目されるのか
 4 どうしたらゆとりのある社会になれるのか
 5 現在わが国でADHDはどのように受け止められているのか
 6 ADHD概念の来し方・行く末―ADHDは均質性の高い疾患か異種性の高い疾患か
 7 ADHDとASDの併存について―過剰診断につながっていないか
 8 自尊心(self-esteem)の向上について
 9 ADHDの病因論と病態論
 10 ADHDの症候,特に二次障害の出現過程
 11 ADHDの子どものアタッチメント
 12 生後の環境要因(特に児童虐待)はADHDとどう関連するか
 13 ADHDを持つ子どもはどれくらいいるのか
 参考文献 

第2章 ADHDの診断・評価をめぐって
 1 DSM-5による操作的診断によって診断を行うとはどういうことか
 2 ADHDの主訴,どんな状態像や問題からADHDを疑うか
 3 ADHDの成育歴の注目すべきポイント
 4 ADHDの家族歴聴取で留意すべきポイント
 5 子どもの年代によるADHD診断の配慮ないし留意すべきポイント
 6 ADHDの併存症と鑑別すべき諸疾患(「鑑別か併存か」という問題を含む)
 7 ADHD診断に必要な医学的検査はなにか
 8 生物学的マーカーの可能性をめぐって
 9 心理検査について
 10 診断・評価の結果(見立て)を親,学校とどう共有するか
 参考文献

第3章 ADHDの治療・支援をめぐって
 1 治療・支援の現状について何を感じているか―ポジティブな点,ネガティブな点
 2 治療・支援は何を目指して行うのか
 3 治療・支援の流れ
 4 心理社会的治療・支援について
 5 薬物療法について
 6 入院治療の位置づけ
 7 教育,児童福祉,司法など他領域との連携について
 参考文献

第4章 積み残しの課題とまとめ
 参考文献 

おわりに

索引 




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執筆者一覧

齊藤万比古 恩賜財団母子愛育会愛育相談所所長 著
飯田順三 奈良県立医科大学医学部看護学科人間発達学教授 著
宮島祐 東京家政大学子ども学部子ども支援学科教授 著

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ADHDクロストーク
   定価3,300円(本体3,000円 + 税)
   2020年07月発行
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