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書籍詳細

脳血流量は語る −かくれた謎をひも解く−

脳血流量は語る −かくれた謎をひも解く−

菅野巖 著

A5判 198頁

定価(本体4,000円 + 税)

ISBN978-4-498-32840-2

2020年07月発行

在庫あり

脳の疾患や健康状態を表す脳血流量は,脳機能を支えるインフラである.それゆえ脳疾患の診断ツールにはなりえても,マイナーな存在であった.しかしイメージング技術の発展と共に,脳血流量には「揺らぎ」があることが判明.この揺らぎが,脳の神経細胞の活動領域に対応していることが分かってきた.寡黙と思われていた脳血流量が,実は脳の活動を雄弁に語っていた代弁者であった.本書はその語りから,脳の秘密をひも解いていく.

著者略歴

菅野 巖(かんの いわお)

1970年 東北大学工学部電気工学科卒業
1970年 秋田県立脳血管研究センター放射線医学研究部研究員
1978年 デンマークコペンハーゲンビスペべイ病院へ半年間留学
1982年 英国ロンドンハマースミス病院サイクロトロンユニットへ半年間留学
2000年 秋田県立脳血管研究センター副研究局長
2006年 放射線医学総合研究所分子イメージング研究センターセンター長
2014年 放射線医学総合研究所脳機能イメージング研究部協力研究員

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はじめに

 脳血流量は脳をささえています.安静時は必要な領域に必要な量だけ安定して脳血流量を供給します.脳卒中や認知症にさらされていればその病態は測定された脳血流量に浮かび上がります.同時に脳血流量は時々刻々の脳活動に応じて様々な領域の脳血流量が揺らぎます.あたかも脳がつぶやくように揺らぎます.脳血流量は安静時の需要に対応するコントロールレベルと時々刻々のつぶやきを時間的に空間的に精度よく映し出します.ただし,後者のつぶやきがなぜ正確に脳の時々刻々のはたらきを反映するのかそのメカニズムはまだ明確には分かっていません.
 脳が働けばエネルギーを使うのだから必要な領域の脳血流量が増えるのは当然で,なぜいまさら不思議なのかと驚かれると思います.偉い脳科学者でも同じようにエネルギー供給のためだから当たり前と思い込んでいる研究者もいます.しかし,最新の研究では局所的に脳血流量が増えるのがそこのエネルギー消費に連動していないことが分かってきています.それにもかかわらず,なぜ,脳血流量がそれほど雄弁に時間的に空間的に精度よく脳のはたらきを「つぶやく」のか,本書ではその仕組みを探ります.
 さらに,本書では今ではほぼブラックボックス化しているため,いまさら聞けない脳血流量測定法の原理を紐解きます.同時にケティ・シュミットから現在まで,先人が積み重ねてきたブレークスルーも振り返りたいと思います.

著 者



読者の皆様へのご案内
 本書はできれば一般の方にも脳をささえる脳血流量の役割を分かってもらえるようになるべく平易にしたつもりです.一方で,神経内科や脳外科の臨床の第一線で活躍されている専門の医師にも脳血流量の測定法と脳血流量の調節機序のエッセンスを理解して頂ければと欲張りました.ただし,脳血流量に関する専門的な内容は生理学書やハンドブックのような網羅的な教科書を参考にして下さい.読者によっては表の赤色の章だけ読み,他はスキップして頂いて結構です.

一般学生の皆さん 脳の表と裏を知りたい
1 2 3 4 5 6 7 8 9章
医学生の皆さん 脳血流量の生理学を知りたい
1 2 3 4 5 6 7 8 9章
臨床医の皆さん 脳血流量測定法の原理を知りたい
1 2 3 4 5 6 7 8 9章
社会人の皆さん 脳機能イメージングを知りたい
1 2 3 4 5 6 7 8 9章
中高年の皆さん 脳血管疾患の危険性を知りたい
1 2 3 4 5 6 7 8 9章

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目 次

はじめに
読者の皆様へのご案内 

1 プロローグ
 A 脳血流量から見える世界  
 B 待望される異次元のモデル  
 C 筆者が脳血流量測定を始めた時代  

2 脳血流量の素顔 
 A 酸素の大食漢を養う脳血流量  
 B 脳のゴミを掃除する脳血流量  
 C リモート制御される脳血流量  
 D 疾患や加齢を映す安静時の脳血流量  
 E 神経活動を映す脳血流量のゆらぎ  
 F 偶然に発見された内因性信号  
 G 神経活動の実験には邪魔だった脳血流量 
 H 損傷には過敏な脳血流量 

3 脳血流量の通り道:脳血管 
 A 構造と基本性能 
  a.血管の構造 
  b.血管径と血圧と流速 
 B 脳血管とその周辺組織 
  a.脳を守る血液脳関門(BBB) 
  b.BBBの障害と脳浮腫  
  c.神経細胞と脳血管を連結する神経血管単位(NVU) 
  d.神経細胞を支えるグリア細胞 
  e.微小血管を補佐するペリサイト(周皮細胞) 
 C 脳動脈と脳静脈それぞれの役割  
  a.脳血管ネットワーク 
  b.主幹脳動静脈の役割 
  c.脳表動脈と穿通動脈の役割 
  d.緊急時に作動する側副血行路 
  e.灰白質と白質で異なる毛細血管密度 
 D 赤血球による酸素交換 
  a.ヘモグロビンの酸素化と脱酸素化 
  b.肺循環と体循環の役割  
  c.酸素解離曲線
  d.ヘマトクリット値 

4 脳血流量を測る:歴史
 A 脳血流量測定の黎明期 
  a.脳容積の変化を測定する試み 
  b.脳血流量の数量化の試み 
 B 不活性ガスによる脳血流量の定量化 
  a.笑気ガスによる定量化 
  b.笑気ガスの麻酔効果 
  c.RIトレーサーというブレークスルー 
  d.新しい方法を開発できた背景 
  e.キセノン133脳血流量の日本への導入 
  f.キセノン133の限界 
 C トモグラフィー装置の開発 
  a.トモグラフィーの夜明け 
  b.筆者らの試み 
  c.高速SPECTの盛衰 
 D 非侵襲化は時代の流れ 
  a.RI導入の先見性 
  b.時代と共に変化する「侵襲的」の定義 
  c.PETとSPECTは実用化へ
  d.新時代を開くPET装置 

5 脳血流量を測る:理論 
 A 通路を流れる道流と灌木叢を流れる灌流 
  a.道流と灌流の単位 
  b.通路を流れる道流の測定 
  c.灌木叢を流れる灌流の測定 
  d.道流から灌流へ:ミクロからマクロへの融合 
 B 血流量測定に使用されるトレーサー 
  a.拡散性トレーサー 
  b.非拡散性トレーサー 
  c.マイクロスフェア型トレーサー 
  d.ケミカルマイクロスフェア型トレーサー 
 C 脳血流量を計算する 
  a.脳血液分配係数(p)
  b.初回通過摂取率(E)
  c.トレーサーの平均通過時間から計算する 
  d.トレーサーの分布密度から計算する 
  e.絶対値測定と相対値測定 
  f.集積分布の半定量的評価 
 D 核医学のかなめ:RIトレーサー 
  a.トレーサーアマウント 
  b.比放射能 
  c.トレーサーかプローブか 
  d.核医学の測定感度は高いか 
 E トレーサーをまとめるコンパートメントモデル 
  a.トレーサーが分布する仮想部屋:コンパートメント 
  b.酸素15ガス吸入法のコンパートメントモデル 
  c.神経受容体のコンパートメントモデル 
  d.トレーサーのインプット関数 

 6 脳血流量を測る:方法 
 A SPECTによる脳血流量の測定法  
  a.キセノン133による定量的脳血流測定法 
  b.ヨウ素123標識IMPによる定量的脳血流量測定法  
  c.ケミカルマイクロスフェア型トレーサーによる測定法 
 B PETによる脳循環代謝の測定法 
  a.超小型サイクロトロンの登場 
  b.PET装置の実用化 
  c.酸素15標識ガス定常吸入法測定法 
  d.酸素15標識ガス短時間投与法測定法 
 C RIを使わない脳血流量測定法 
  a.コールドキセノン吸入法 
  b.MRIによる動脈血スピン標識法(ASL) 
  c.CTやMRIの血管造影剤による測定法 
  d.近赤外線スペクトロスコピー(NIRS)による脳血液量測定法
  e.超音波による道流の測定法 
 D 動物実験での脳血流量測定法 
  a.水素クリアランス法 
  b.オートラジオグラフィ(ARG)法 
 c.透過光の平均通過時間による脳血流量測定法 
  d.レーザードプラー血流計(LDF) 
  e.レーザースペックルイメージング(LSI) 
  f.共焦点顕微鏡と二光子励起顕微鏡 

7 脳を守る脳血流量
 A 脳血流量を調節するメカニズム 
  a.頭蓋内の脳血流量調節 
  b.微小循環での脳血流量調節 
 B 健康脳の脳血流量調節 
  a.灌流圧調節(自動調節機序) 
 b.化学性調節 
  c.神経原性調節 
  d.代謝性調節 
 C 脳血管障害時の脳血流量 
  a.貧困灌流と贅沢灌流 
  b.循環予備能と代謝予備能 
  c.脳梗塞の脳血管閉塞のタイプ 
  d.脳血流量の再灌流治療 
 D 脳組織が異常時の脳血流量 
  a.ノーリフロー現象 
  b.脳神経変性疾患における脳血流量 
  c.異常たんぱく質集積による認知症の脳血流量 
  d.血管性認知症の脳血流量 

8 脳を写す脳血流量 
 A 神経活動と連動する脳血流量 
  a.フィードバック機序 
  b.フィードバック機序のほころび 
  c.神経活動時の好気的解糖について 
  d.フィードフォワード機序の台頭とフィードバック機序との統合
 B BOLDコントラストという新大陸の出現  
  a.BOLDコントラストの発見  
  b.BOLDコントラストの本質 
  c.BOLD信号は天からの贈り物 
  d.BOLD信号によるパラダイムシフト 
  e.BOLD信号のダイナミックレンジ 
 C 神経活動と脳血流量を結ぶミッシングリンク 
  a.脳血流量は神経活動を代弁するか 
  b.脳血流量信号と神経活動の比較 
  c.脳血流量信号の時空間分布 
  d.脳血流量信号の加算法則 
 D 安静状態が厄介者から新鉱脈へ 
  a.頭痛のタネだった安静状態
  b.安静状態が切り開く新世界 

9 エピローグ 
 A 熱気のシフト 
 B 脳活動の表現形 
 C 残る疑問点 
 D 氷山の一角 
 E 未知の鉱脈 
 F おわりに  

参考文献  
引用文献  
基本用語  
脳血流量測定に深く関わった人物  
索 引  

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執筆者一覧

菅野巖 量子科学技術研究開発機構放射線医学総合研究所脳機能イメージング研究部 著

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