はじめに
脳血流量は脳をささえています.安静時は必要な領域に必要な量だけ安定して脳血流量を供給します.脳卒中や認知症にさらされていればその病態は測定された脳血流量に浮かび上がります.同時に脳血流量は時々刻々の脳活動に応じて様々な領域の脳血流量が揺らぎます.あたかも脳がつぶやくように揺らぎます.脳血流量は安静時の需要に対応するコントロールレベルと時々刻々のつぶやきを時間的に空間的に精度よく映し出します.ただし,後者のつぶやきがなぜ正確に脳の時々刻々のはたらきを反映するのかそのメカニズムはまだ明確には分かっていません.
脳が働けばエネルギーを使うのだから必要な領域の脳血流量が増えるのは当然で,なぜいまさら不思議なのかと驚かれると思います.偉い脳科学者でも同じようにエネルギー供給のためだから当たり前と思い込んでいる研究者もいます.しかし,最新の研究では局所的に脳血流量が増えるのがそこのエネルギー消費に連動していないことが分かってきています.それにもかかわらず,なぜ,脳血流量がそれほど雄弁に時間的に空間的に精度よく脳のはたらきを「つぶやく」のか,本書ではその仕組みを探ります.
さらに,本書では今ではほぼブラックボックス化しているため,いまさら聞けない脳血流量測定法の原理を紐解きます.同時にケティ・シュミットから現在まで,先人が積み重ねてきたブレークスルーも振り返りたいと思います.
著 者
読者の皆様へのご案内
本書はできれば一般の方にも脳をささえる脳血流量の役割を分かってもらえるようになるべく平易にしたつもりです.一方で,神経内科や脳外科の臨床の第一線で活躍されている専門の医師にも脳血流量の測定法と脳血流量の調節機序のエッセンスを理解して頂ければと欲張りました.ただし,脳血流量に関する専門的な内容は生理学書やハンドブックのような網羅的な教科書を参考にして下さい.読者によっては表の赤色の章だけ読み,他はスキップして頂いて結構です.
一般学生の皆さん 脳の表と裏を知りたい
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医学生の皆さん 脳血流量の生理学を知りたい
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臨床医の皆さん 脳血流量測定法の原理を知りたい
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社会人の皆さん 脳機能イメージングを知りたい
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中高年の皆さん 脳血管疾患の危険性を知りたい
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