はじめに
近年,とくに21世紀以後において,医学の進歩は目覚ましく発展しました.病態解明とともに,様々な疾患に対する治療薬や治療方針が確立され,従来と比べると生命予後に良好な効果が見られるようになりました.
一方で高齢化や健康寿命はあらたな社会問題になりつつあり,疾病構造にも変化が生じております.特に腎臓は全身の影響を受けやすく,また全身に影響を及ぼしうる臓器です.このため,腎臓病に関わることは腎臓専門医だけでなく全ての医療者にとってその重要性が増している分野といっても過言ではないのではないでしょうか?
しかし,腎臓病・腎臓学となると「とっつきにくい」「難しい」などという言葉,「多岐にわたる」という言葉もしばしば耳にします.
このような中で,「ここが知りたい!」シリーズの姉妹書として「腎臓病診療」の執筆編集の機会を頂きました.すでに「腎疾患」を対象としたマニュアル本も各社より複数出版されておりますが,より実践に即した内容とすべく,また主要な疾患・病態を調べられるような構成としました.また従来のマニュアル本などでは取り上げられていない腎疾患に対する新たな視点のヒントとなるべく,「次世代の腎臓病診療」の項目を追加しました.この実現のために,主に実臨床に従事している腎臓専門医や各事項のエキスパートの先生を中心に執筆を依頼させて頂きました.姉妹書同様に各項目とも症例提示の後,最近のガイドラインもふまえ臨床に欠かせない知識・診療ノウハウを理解できるようにまとめました.
主な対象に,腎臓病を専門としないかかりつけ医・総合診療医,研修医,コメディカルを中心としましたが,腎臓専門医にも日常診療のヒントとなるべく前述した「次世代の腎臓病診療」の項目を取り上げました.読者の方のみならず,全ての腎臓病患者さんにとってより良い結果につながることを心より願っております.
最後になりますが,岩岡秀明先生には中外医学社を通じて今回の執筆編集の機会と,校正過程での多大なご助言に加え,直接の執筆も行って頂きました.また,日々ご支援を頂いている,要伸也教授,淺沼克彦教授,横尾隆教授,寺脇博之教授,三瀬直文先生,石橋由孝先生を含め,多くの先生方にも分担執筆を頂きました.さらに中外医学社の皆様には企画から刊行まで関わって頂きました.本書作成にご尽力を頂きました皆様方に厚く御礼申し上げたいと思います.
2020年2月
船橋市立医療センター 腎臓内科・リウマチ膠原病内科
清水英樹