はじめに

　腎疾患は自覚症状が現れにくいため，症状が出現した際にはすでに病期がかなり進行していることが多くみられました．しかし今日では，慢性腎臓病（CKD）の概念導入やさまざまな取り組みによって，より早期での発見がなされるようになってきており，集学的な治療により進行の抑制や寛解も目指せるようになりました．そのうえで，治療を成功に導くには患者さん自身が疾患を理解して主体的に治療に取り組むことが必要不可欠で，この点でCKD教育入院が大きな役割を果たしています．
　本書の原型は，川崎市立多摩病院で腎センターを立ち上げ，早くからCKD教育入院を実施された故・佐藤武夫先生が中心となり，当時のメンバーとともにまとめた「慢性腎臓病ハンドブック」です．その後も医師・看護師・薬剤師・管理栄養士・理学療法士・社会福祉士からなるCKD教育入院ワーキンググループにより，数年毎に改定を重ねて現在の形になりました．
　本書が，広く全国のCKD患者さんの診療に役立つことを心から願ってやみません．

2020年2月
今野雄介
冨永直人

目　次

第1章　腎臓のつくりとはたらき　〔瀧　康洋　横山　健〕
第2章　慢性腎臓病（CKD）とは　〔韓　蔚　久道三佳子〕
第3章　CKDのステージ　〔韓　蔚　久道三佳子〕
第4章　CKDの検査　〔角　浩史　谷澤雅彦〕
第5章　CKDの合併症　〔角　浩史　谷澤雅彦〕
第6章　CKDの治療　〔蜂須賀里菜　金城永幸〕
第7章　日常生活　〔西根博恵　岡田みちよ〕
第8章　食事療法　〔宮下　実〕
第9章　CKDで使われる薬と注意すべき薬・健康食品　〔石川春奈　工藤真弓〕
第10章　検査値の意味と考え方　〔冨永直人　今野雄介〕
第11章　運動療法　〔音部雄平　大成悟志〕
第12章　腎代替療法　〔石渡希恵　本鍋田由美子　大原節子　野崎美穂　圓　直美　寺下真帆〕

　資料1　CKD看護外来　〔山寺邦子　松浦千絵〕
　資料2　透析療法を支える社会保障制度　〔宮川惠子　川上加奈〕

執筆者一覧

冨永直人　　　川崎市立多摩病院腎臓・高血圧内科　部長　監修
今野雄介　　　社会医療法人頌徳会日野クリニック　院長　監修
川崎市立多摩病院CKD教育入院ワーキンググループ　　　編集
瀧　康洋　　　川崎市立多摩病院腎臓・高血圧内科　
横山　健　　　国際医療福祉大学熱海病院腎臓内科　
韓　蔚　　　　川崎市立多摩病院腎臓・高血圧内科　
久道三佳子　　稲城市立病院腎臓内科　
角　浩史　　　川崎市立多摩病院腎臓・高血圧内科　
谷澤雅彦　　　テネシー大学ヘルスサイエンスセンター外科学、聖マリアンナ医科大学腎臓・高血圧内科　
蜂須賀里菜　　川崎市立多摩病院腎臓・高血圧内科　
金城永幸　　　聖マリアンナ医科大学腎臓・高血圧内科　
西根博恵　　　川崎市立多摩病院4階東病棟　
岡田みちよ　　川崎市立多摩病院4階東病棟　
宮下　実　　　川崎市立多摩病院栄養部　
石川春奈　　　川崎市立多摩病院薬剤部　
工藤真弓　　　川崎市立多摩病院薬剤部　
冨永直人　　　川崎市立多摩病院腎臓・高血圧内科　
今野雄介　　　社会医療法人頌徳会日野クリニック　
音部雄平　　　川崎市立多摩病院リハビリテーション科　
大成悟志　　　川崎市立多摩病院リハビリテーション科　
石渡希恵　　　川崎市立多摩病院腎センター　
本鍋田由美子　川崎市立多摩病院医療安全管理室　
大原節子　　　川崎市立多摩病院看護相談　
野崎美穂　　　川崎市立多摩病院救急災害医療センター　
圓　直美　　　川崎市立多摩病院腎センター　
寺下真帆　　　聖マリアンナ医科大学腎臓・高血圧内科　
山寺邦子　　　川崎市立多摩病院内科外来　
松浦千絵　　　川崎市立多摩病院内科外来　
宮川惠子　　　川崎市立多摩病院医療相談センター　
川上加奈　　　川崎市立多摩病院医療相談センター