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書籍詳細

ブラッシュアップ敗血症

ブラッシュアップ敗血症

近藤 豊 著

A5判 216頁

定価(本体3,200円 + 税)

ISBN978-4-498-16614-1

2019年09月発行

予約受付

敗血症について1冊で広く深く概観できる待望の書がついに登場! 救急・集中治療における最重要疾患の1つであるにもかかわらず,敗血症はその定義にすら,いまだ流動的な側面を残し,治療・管理においても不分明な点が多い.そのテーマに気鋭の救急救命医が挑んだ.ハーバード大学で敗血症をはじめとする救急臨床・研究に研鑽を積んだ著者がおくる,類いまれなる1冊.敗血症と闘うすべての医療者のために.

序 文

 “救急医になりたい!”と思って医学生を過ごしていたが,当時の日本は救急科が診療スタイルや学問体系として確立しているとは言えなかった.そのため上級医の先生から救急をやりたければ最初は外科に行ったほうがよいとアドバイスされ,沖縄県立中部病院の外科の門を叩いた.幸いなことに沖縄県立中部病院では多くの優秀な同僚や仲間に恵まれて,日々切磋琢磨して自身の腕を磨いた.
 Common disease を広く勉強し外科系の一般的な診療ができるようになったので充実感はあったものの,当時は頭で考えるよりも身体で覚えようという安易な考えがあったため,次第に自身のアカデミックな意識が薄れていった.これではいけないと思い,後期研修では聖路加国際病院に勤務することにした.豊富な症例と体系だった教育スタイルが魅力的で,救急外来,ICU,病棟に毎日通い詰めた.そこで色々な“敗血症”に遭遇した.敗血症の集中治療をやり始めたのだが,担当医によってとっている治療方針は千差万別であった.“敗血症治療には正解がないんだよ”というセリフをしばしば耳にし,正解がないというのはエビデンスに乏しいということであり,治療が個人の考えに大きく左右されているという状況を知った.そのことは自分の興味をさらに深めるとともに強い探求心が芽生え,より研究ができる大学病院に行くことに決めた.
 出身の琉球大学に戻り臨床と研究に没頭し,さらにトップを目指すために米国マサチューセッツ州にあるBeth Israel Deaconess Medical Center, HarvardMedical Schoolの外科学講座,Acute Care Surgery部門に籍を置き日々敗血症の学識を頭のなかに詰め込む毎日であった.米国の生活は“崖っぷち”でのチャンレジの連続であり充実感に満ちた心地よい疲労感に浸れたが,気がついてみると私も医学部卒業後11 年が経過していた.
 今まで得た知識や経験を日本に還元できなければやっている意味がないと思い,日本に戻り順天堂大学大学院救急・災害医学の准教授となることに決めた.当時は縁のなかった大学であったためこの決断は医師キャリアで一番苦悩したが,いざ勤務してみると順天堂大学は三無主義(出身校,国籍,性による差別なく優秀な人材を求め活躍の機会を与える)を掲げており,とても風通しがよく,雰囲気の素晴らしい大学であった.また順天堂の救急災害医学は本院,浦安,練馬,静岡の4 病院を併せたスタッフからなる大所帯の診療科であり,首都圏内の救命救急センターということも相まって,力を発揮するには十分な環境であると思われた.赴任後は敗血症患者の予後向上のため,Acute Care Surgery チームの整備,研究グループの立ち上げ,ECMO チームの始動などに務めた.現在もなお新しい挑戦をしている最中であり,筆者は救急医として働いている間は挑戦することを止めない.
 教科書的なことはもちろんであるが,筆者が今までに独自に学んだことや敗血症に対する考え方を含めて,この本で読者の皆様に紹介したい.また本書を通じて,“敗血症には正解がない”というのが真実なのかどうか皆様と一緒に議論できたらこの上ない幸せである.

2019年7月
順天堂大学大学院医学研究科 救急・災害医学研究室 准教授
近藤 豊




推薦の序

 世界では年間約3,000 万人の敗血症が発生し,死亡者数は800 万人にものぼる.心臓の鼓動が3 回打つごとに,誰かが敗血症で亡くなっている.敗血症の発生率は心筋梗塞や脳卒中と同程度で,死亡率はより高く救命できても長期間の介護・療養を要し,社会的・経済的喪失は甚大である.また,あらゆる年齢層が罹患する重篤な疾患であり,その社会的影響は計り知れない.2017 年WHO でも重大な健康課題として取り上げられた.しかし,「敗血症」の言葉を知っている人は,成人の半分以下と言われている.一般臨床医の間でも,適切な対応法は十分に知られていない.救命センターに転送されてきた時には,すでに手遅れとなっていることも少なくない.
 いま敗血症をめぐる情勢が世界的に変化している.2010 年世界敗血症連盟(Global Sepsis Alliance: GSA)が活動を開始し,2012 年わが国でも日本集中治療医学会のGSA 委員会が発足した.そして2018 年,日本救急医学会および日本感染症学会の3 学会が日本敗血症連盟(Japan Sepsis Alliance: JaSA)を結成した.敗血症の予防・診断・治療・教育に関する種々の合同活動を積極的に推進し,死亡率の減少,合併症や後遺症を減らし患者の社会復帰につなげたい.
 本書は,敗血症診療に取り組む若い先生方に,現場で実際に役立つ臨床上のノウハウ,また,臨床に必要となるエビデンスを踏まえた知識について,教室の近藤 豊先生に,簡潔にまとめていただいた.若手医師の敗血症診療のバイブルとなることを目指す.本書では敗血症に対する教科書的な内容からAI などの最近のトピックス,ご自身が米国で学んだこと,現在順天堂大学医学部附属浦安病院の救急診療科で実践されていることまで,盛り沢山の内容が書かれている.敗血症の概念から実際の敗血症治療や診療のポイントや流れまでが,ブラッシュアップポイントとしてわかりやすく解説されている.
 “敗血症のことをもっと知りたい!”と臨床現場で活躍されている臨床医にこそ本書の愛読をお勧めする.

2019年7月
順天堂大学大学院医学研究科 救急・災害医学研究室 教授
田中 裕

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目 次

CHAPTER 1 敗血症とは何なのか?
 敗血症とは? 歴史から考える
 敗血症とは? メカニズムから考える
 敗血症治療とは?
 敗血症とは? 簡単にまとめると
  COLUMN 風邪も敗血症?

CHAPTER 2 メカニズム
 敗血症に関わるDAMPsとPAMPs
 SIRSとCARS
 メカニズムの解明に関する未来像

CHAPTER 3 敗血症の定義
 敗血症の定義の変遷
 qSOFAはICUで使用可能でしょうか?
 病院前診療でのqSOFA
 敵か,味方か,qSOFA! qSOFAの限界と可能性とは?
  COLUMN qSOFAは肺炎に有効か?

CHAPTER 4 疫学・予後・認知度
 敗血症の現況を知る
 敗血症は肺の病気? 世間で知られていない敗血症
 敗血症の公衆衛生的課題
  COLUMN 世界敗血症連盟とは?

CHAPTER 5 診療ガイドラインの比較からみる諸外国の敗血症事情
 Dr近藤の視点からみたSSCG 2016(米国と欧州合同の敗血症診療ガイドライン)
 Dr近藤の視点からみたJ—SSCG 2016(日本版敗血症診療ガイドライン)
 その他の敗血症ガイドライン

CHAPTER 6 敗血症とメタ解析
 システマティックレビューとは?
 実際にSRやメタ解析をやってみよう
 敗血症とメタ解析の実例
  COLUMN 重症患者における28日死亡と90日死亡の意義

CHAPTER 7 診断・重症度マーカー
 CRP(C反応性タンパク)
 プロカルシトニン(PCT:Procalcitonin)
 プレセプシン(P—SEP:Presepsin)
 インターロイキン6(IL—6)
  COLUMN CRPで敗血症を診断していませんか?

CHAPTER 8 敗血症の身体所見
 呼吸を評価しましょう
 身体所見だけで血圧を推定する
 肺の異常が推定できる身体所見とは?
 肺雑音では雑音の聴こえる時期を意識する
  COLUMN 敗血症の動脈圧波形

CHAPTER 9 敗血症の問診・カルテの書き方
 敗血症の問診・カルテ記載で重要なポイント
 敗血症における家族への問診の重要性
 敗血症のカルテは“by system”で
  COLUMN 妊娠と尿路感染性敗血症

CHAPTER 10 外傷後敗血症
 外傷後敗血症とtwo—hit
 体幹部の外傷後敗血症の予後は悪い
 頭部外傷後の敗血症は?
 外傷の疫学からみた敗血症
 外傷後敗血症の未来

CHAPTER 11 熱傷後敗血症
 熱傷の初期は敗血症にならない?
 熱傷と水道水
 熱傷後敗血症と栄養管理
 熱傷後敗血症はなぜ治療が難しいのか?
 敗血症管理を意識した熱傷のエキスパート的治療法
  COLUMN 本当に熱傷の急性期には敗血症にならない?

CHAPTER 12 軟部組織感染による敗血症
 軟部組織感染から敗血症に移行しやすい?
 人食いバクテリアとは?
 壊死性筋膜炎による敗血症
 壊死性筋膜炎診断のTIPS;身体所見,finger test,そしてLRINECスコア
 Fournier症候群
  COLUMN Waterhouse—Friderichsen症候群を知っていますか?

CHAPTER 13 敗血症関連心停止
 敗血症関連心停止の発症メカニズム
 敗血症性心筋症とは?
 敗血症関連心停止の治療
 敗血症関連心停止の心拍再開後の治療
  COLUMN 敗血症における体温

CHAPTER 14 敗血症関連脳症
 敗血症関連脳症の病態
 どのように診断するのか?
 その治療法は?
 その予後は?
 敗血症関連脳症のトピックス

CHAPTER 15 モニター
 モニターの特徴と弱点
 血管内ボリュームの評価
 目標血圧

CHAPTER 16 輸液
 フルイドチャレンジは敗血症に有効か?
 輸液をして血圧が上がればショック?
 敗血症に適した輸液の量と種類は?

CHAPTER 17 抗菌薬治療
 経験的抗菌薬投与
 デエスカレーションが可能な状態を見極める
 培養陰性の時にデエスカレーションは可能か?
 病院前抗菌薬投与
 細菌培養検査のピットフォール
  COLUMN 抗菌薬投与で敗血症性ショックになる,ヤーリッシュ・へルクスハイマー反応を知っていますか?

CHAPTER 18 抗ウイルス薬治療
 ウイルスによる敗血症の特徴
 どのウイルスが敗血症を引き起こすのか?
 各ウイルスの特徴と抗ウイルス薬
 ウイルスが原因の敗血症の予後

CHAPTER 19 抗真菌薬治療
 真菌による敗血症の診断
 真菌の種類
 侵襲性カンジダ血症
 侵襲性アスペルギルス症
 抗真菌薬による治療

CHAPTER 20 ドレナージ治療
 膿瘍形成とドレナージ
 感染性膵壊死とドレナージ
 肝膿瘍とドレナージ
 婦人科疾患のドレナージ
 外科的ドレナージとカテーテルを用いた経皮的ドレナージ
  COLUMN 不明熱と敗血症

CHAPTER 21 循環作動薬
 循環作動薬の使い方
 バソプレシンは使用すべきか?
 腎保護目的の低用量ドパミン投与は有効か?
 循環作動薬の最近のトピックス
  COLUMN 敗血症で初発の心房細動の意義

CHAPTER 22 ECMO
 ECMOの種類
 敗血症性ショックに対するVA—ECMOの歴史
 ガイドラインでの推奨
 敗血症に対するECMOの適応基準
 ECMOの禁忌
 “これは敗血症性ショックに対するECMOでしょう!”

CHAPTER 23 敗血症性ARDSと人工呼吸管理
 敗血症性ARDS
 好中球エラスターゼ阻害薬
 人工呼吸管理
 ドライビングプレッシャー
 敗血症性ARDSと気胸

CHAPTER 24 鎮痛と鎮静
 鎮痛と鎮静の目的
 最適な鎮静とは?
 最適な鎮痛とは?
 敗血症に合併するせん妄のマネジメント
 新しいPADISガイドライン

CHAPTER 25 腎代替療法
 RRTが敗血症にどう影響するのか?
 RRTは早めにやるべきか?
 High flow CHDFは有効か?
 RRTは何を改善するのか?
 Renal indicationにおけるRRTの日本の未来

CHAPTER 26 造影剤腎症と敗血症性腎障害
 敗血症における造影CTの意義
 造影CTの危険性
 造影剤腎症にならないためには?
 実はほとんどの敗血症は単純CTで十分?
 薬物による造影剤腎症の防止は可能か?

CHAPTER 27 サイトカイン・エンドトキシン吸着
 そもそもサイトカイン・エンドトキシンは吸着したほうがよいのか?
 結局,PMX‒DHPは有効なのか?
 セプザイリスって何?
 エンドトキシン・サイトカイン吸着療法の未来
  COLUMN ウロセプシス!

CHAPTER 28 輸血
 赤血球と敗血症
 凝固因子と敗血症
 血小板と敗血症

CHAPTER 29 栄養
 栄養が敗血症に及ぼす影響
 敗血症患者には栄養が必要か?Permissive underfeedingを理解しよう
 栄養はいつ,どこから投与するの?
 栄養療法は予後を変えるか?
 敗血症と栄養のトピックス

CHAPTER 30 血糖コントロール
 敗血症と血糖
 なぜ血糖を調節する必要があるのか?
 至適血糖値はどのくらいか?
 どのような方法で血糖をコントロールするか?
 敗血症に人工膵臓を用いるか?

CHAPTER 31 敗血症と補体
 補体経路と敗血症病態における変化
 敗血症における補体活性化によるDICの発症
 敗血症性DICと血栓性微小血管症
 補体制御による新規治療薬の可能性

CHAPTER 32 敗血症性DIC
 敗血症性DICの病態
 敗血症性DICの診断
 敗血症性DIC治療の変遷
 ヘパリン類投与
 リコンビナント・トロンボモジュリン補充療法
 アンチトロンビン補充療法
 敗血症性DICの未来
  COLUMN 重症患者と成長ホルモン

CHAPTER 33 ステロイド補充療法
 なぜ敗血症にステロイドなのか?
 ステロイド補充は有効か? 無効か?
 ステロイド投与による副作用
 実際にステロイドを投与するか?

CHAPTER 34 高気圧酸素療法
 高気圧酸素療法とは?
 敗血症に高気圧酸素療法は有効か?
 敗血症に高気圧酸素療法を行う場合,その設定はどうする?
 高気圧酸素療法の安全性を意識しながら

CHAPTER 35 深部静脈血栓症予防
 DVT発生のメカニズム
 敗血症はDVTができやすいのか?
 D—DimerでDVTを早期発見する?
 敗血症にDVT予防は必要か?
 DVT予防のためにすべきこと
  COLUMN DVTの身体所見と超音波検査

CHAPTER 36 上部消化管潰瘍の予防
 敗血症と潰瘍形成のリスク
 抗潰瘍薬投与による敗血症患者への影響
 抗潰瘍薬投与は敗血症患者に必要なのか?
 抗潰瘍薬の種類による違い(PPI vs H2受容体拮抗薬)
  COLUMN アカデミックキャリアの築き方

CHAPTER 37 社会復帰と再発
 敗血症とPICS
 敗血症とICU—AW
 社会復帰に向けた取り組み
 社会復帰後の敗血症の再発率
 敗血症生存者のがんリスク
  COLUMN 敗血症で認知機能障害は悪化する?

CHAPTER 38 小児敗血症
 小児敗血症は何が難しい?
 小児敗血症の定義はSepsis—3を使用すべき?
 小児敗血症の1時間バンドル
 小児敗血症のカテコラミンは何を使用すべき?
 小児の敗血症は呼吸の評価が重要
  COLUMN 小児敗血症の初期治療って誰がやるの?

CHAPTER 39 人工知能と敗血症治療
 AIって何?
 AIと敗血症
 敗血症治療戦略においてAIドクターは人間を上回るか?
 AIが人間を俯瞰する
  COLUMN エンターテイメント エデュケーションと敗血症教育

CHAPTER 40 敗血症バンドル治療の変遷
 EGDTとは?
 EGDTからELGTヘ
 敗血症とHour—1 bundle(1時間バンドル)

CHAPTER 41 医学英語論文の書き方
 医学論文を書く前に準備すべきこと,大事なこと
 論文のどこから手をつければいいの?
 敗血症の臨床論文作成の特徴と注意点
  COLUMN ナッジ理論を用いた臨床研究

CHAPTER 42 これからの敗血症の行く先
  COLUMN 海外留学で世界と競う力をつける

索引

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執筆者一覧

近藤 豊 順天堂大学医学部附属浦安病院救急診療科准教授 著

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