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書籍詳細

明日のアクションが変わる ICU輸液力の法則

明日のアクションが変わる ICU輸液力の法則

川上大裕 著

A5判 328頁

定価5,940円(本体5,400円 + 税)

ISBN978-4-498-16612-7

2019年09月発行

在庫あり

これまでの「輸液の本」と言えば、腎臓内科医の書いた電解質や血液ガスの解釈を含めたバイタルサインの“安定した”入院患者の輸液を対象としたものが多く、救急外来や集中治療室における「蘇生輸液」に関する本は、ほとんどないといってよい。そこで本書では、蘇生輸液をテーマに輸液のノウハウを丁寧に解説。集中治療医はもちろん、非集中治療専門医、勉強熱心なICU看護師にも役立つ“輸液力の法則”について書き下ろした渾身の一冊。

【著者略歴】
川上大裕(かわかみ だいすけ)

神戸市立医療センター中央市民病院 集中治療部
Intensive Care Unit(ICU)専属医師
総合内科専門医.集中治療専門医
福岡県北九州市出身.大分大学卒
2009年 飯塚病院 初期研修医
2011年 同院 内科専修医,総合診療科
2013年 神戸市立医療センター中央市民病院 初代集中治療フェロー
2016年 現職

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目指すは甘く実った赤リンゴではない.
未熟で酸っぱくとも明日への希望へ満ち溢れた青りんごの精神です.
安藤忠雄

 本書は,集中治療医を志す若手医師だけでなく,急性期の輸液・循環管理に携わるすべての医師に向けて書きました.新しいエビデンスが次々と乱立していく現在,それらに振り回されることなくそれらを使いこなすことができるようになることを本書は目指しています.そのためには,根っこである循環生理をしっかり理解することが大切です.
 ICUでは様々なモニターが装着されています.モニターの数値は安心感を与えてくれます.しかし一方で,いたづらにそれらの値に振り回されてしまうということにも陥りがちです.どういう時に,どういうモニターが有効で,どういう時にエラーが出るのか,モニターの原理から理解する必要があります.モニターの数値だけを見ていませんか? モニターの声に耳を傾けてみましょう.そして,治すのはモニターの数値ではなく患者です.本書で循環生理から理解した暁には,急性期の循環輸液管理の理解が深まり,明日からの臨床でのみえる景色が変わることでしょう.
 本書の執筆を行ったのはちょうど卒後10年目の時分でした.私の尊敬する指導医の言葉に,「卒後10年までは自己研鑽,10年経ったら社会に還元する方法を考えよ」というものがあります.たかだか卒後10年というまだまだ未熟な小生が,いっちょまえに本を出すということは大変恐れ多くはありますが,未熟であるからこそ初学者にも寄り添える一面があると信じ,本書を出版させていただきました.そして何年経っても「未熟で酸っぱくとも明日への希望へ満ち溢れた青りんごの精神」を持ち続けようと思います.熟れたりんごは食べられるか落ちるだけ.人生最後まで青く!
 本書を通じ「輸液力」を高め,読者の皆様が自信を持って急性期の循環管理が行えるようになることを願っています.
 また,私を集中治療の世界に導いてくださった飯塚病院時代の指導医である尾田琢也先生,同じく飯塚時代からことあるごとに相談に乗ってくださった“ストロング” 吉野俊平先生,集中治療(人生?)の師匠である神戸市立医療センター中央市民病院の瀬尾龍太郎先生,循環管理のカリスマ 下薗崇宏先生,いつも暖かく見守ってくださる美馬裕之先生,植田のアニキにこの場を借りて感謝を申し上げます.また,日々切磋琢磨している戦友である歴代神戸集中治療フェローのみんなにも.そして常に私の前を走り続ける循環器内科医である実兄,川上将司にも.本書の企画,編集において中外医学社の宮崎雅弘さま,沖田英治さまには大変お世話になりました.お礼申し上げます.
 
2019年,初夏の潮香る神戸,港島にて
川上大裕

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目次

第1章 輸液の基本
 どのコンパートメントにどの輸液製剤を入れるか?
  1●どのコンパートメントに水を入れるのかを意識する
  2●どの輸液製剤を入れるべきか,それが問題だ
   1)輸液製剤の体内分布(前編 〜水の移動の法則)
   2)輸液製剤の体内分布(後編 〜輸液製剤のキャラクター編)
   3)永遠のライバル,晶質液と膠質液 〜晶質液編
   4)永遠のライバル,晶質液と膠質液 〜膠質液編
  3●侵襲時に体液動態はどう変わるのか? 晶質液vs.膠質液
   1)サードスペースとは?
   2)輸液研究の金字塔 〜SAFE studyは従来の体液コンパートメントでは説明できない?
   3)Revised Starling式とグリコカリックスモデルで紐解くContext sensitiveという概念
   4)晶質液 vs. 膠質液の仁義なき戦い

第2章 循環管理の基本 1
 輸液の「目標」は何か?
  1●何のために輸液をするのか?
   1)ショックとは何か?
   2)酸素需給バランスとは?
   3)血圧はなぜ重要なのか?
   4)何のために輸液をするのか?
  2●静脈系=右室前負荷 〜静脈系は血液の巨大な貯蔵庫
   1)静脈系には循環に作用しない,ただ蓄えているだけのvolumeがある 〜stressed volumeとunstressed volume
  3●前負荷と動脈系 〜左室前負荷とCOのはなし
   1)Frank-Starling曲線とは
   2)右室の前負荷と左室の前負荷をイメージする
  4●輸液反応性と輸液必要性を考える
   1)輸液反応性とは? Frank-Starling曲線のどこにいる?
   2)輸液反応性があれば輸液をするのか? 輸液必要性
   3)大量輸液の害

第3章 循環管理の基本 2
 何を「指標」に輸液をするのか?
  1●何を「指標」に輸液をするのか?
  2●血行動態モニターを制すれば輸液を制す?
   1)PAC 〜血行動態モニター界のキング
   2)FloTracモニター 〜血行動態モニター界の若きエース
   3)PiCCOモニター 〜血行動態モニター界のクィーン
   4)その他の非侵襲的モニター 〜血行動態モニター界のニューウェーブ
   5)エコー 〜血行動態モニター界のジョーカー
  3●静的指標と動的指標
   1)静的指標とは何か.動的指標とは何か
   2)静的指標と動的指標.どっちを使う?
  4●“フェーズ”を意識する
   1)急性期輸液の4つの“フェーズ”を知っていますか?
   2)経験の積み重ねからクリニカルコースをイメージできるようになる
   3)モニターに踊らされるな 〜PACはなぜ消えた?
   4)イメージしたコースと異なる 〜なにかおかしいな? と思ったとき
   5)維持輸液とボーラス輸液 〜輸液管理の実際とコツ
   6)侵襲的モニターが使用できない環境下での輸液戦略

第4章 輸液管理の実際
 実践編
  1●敗血症性ショック
   1)敗血症の定義の変遷
   2)SSCG2016における輸液戦略
   3)カテコラミンを使い分ける
   4)敗血症のステロイド
   5)AKIの輸液戦略
  2●急性心不全
   1)急性心不全の分類
   2)PVループで循環管理を深める
   3)右心というもの
   4)弁膜症患者の循環管理
  3●ARDS 急性呼吸窮迫症候群
   1)ARDSとは
   2)結局変わらないARDSの輸液管理のコンセプト
  4●ACS 腹部コンパートメント症候群
   1)もう一つのACSを知っていますか?
   2)膀胱内圧とIAP
   3)ACSのマネージメント

終章 輸液管理のプロトコール
 1)急性期輸液療法のプロトコール
 2)プロトコールを採用すべきか?

COLUMN
 ●総体内水分量はみんな同じ?
 ●生理食塩液は等張? 生理的?
 ●高Na血症を伴うショック時には輸液は何を使う?
 ●ドナン効果はどんな効果?
 ●アルブミン製剤の有害事象
 ●輸血の血漿増量効果?
 ●投与した晶質液,膠質液はどれくらいの時間血管内にとどまるのか?
 ●血漿増量効果,膠質浸透圧維持以外のアルブミンの効果
 ●蘇生時に血中アルブミン濃度を目標にアルブミンを投与すべきか?
 ●蘇生輸液は等張アルブミン? 高張アルブミン?
 ●VO2の求め方
 ●ScvO2とSvO2
 ●PCO2ギャップ
 ●非観血的か観血的か
 ●SBPとDBP
 ●後負荷とは?
 ●輸液のトリガー
 ●いろいろなCOの測定法
 ●PAWPで心原性肺水腫と非心原性肺水腫は区別できるか?
 ●microcirculationを評価するモニター
 ●PLRの測定に関してのちょっとマニアックな話
 ●ショックの分類
 ●敗血症性心筋症にご用心
 ●前負荷,後負荷,心収縮力の相互依存性の変化
 ●ラシアル?
 ●ARDSと右心
 ●ARDSとECMO 〜VVとVA

索引

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川上大裕 神戸市立医療センター中央市民病院集中治療部 著

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