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書籍詳細

ER・ICU100のピットフォール

ER・ICU100のピットフォール

志馬伸朗  編著

A5判 310頁

定価4,180円(本体3,800円 + 税)

ISBN978-4-498-16604-2

2019年02月発行

在庫あり

救急集中治療での日常診療において,誰しもが陥りやすい穴,あるいは自覚がないまま陥ってしまう穴がそこかしこに存在する.本書ではピットフォールに焦点を当て,“落とし穴”に対してエキスパートがどのように対処しているか,14ジャンル,100項目で明快に解説した.穴に落ちないコツや穴の埋め方を理解し,より広い視野で質の高い診療を担保する力を身につけるための必読の一冊である.

穴を埋めること

 診療は難しい.いくら頑張ろうとも,下せない診断がある,治せない病態がある.限界を感じながらも,また明日頑張る.それが医療であり,医師の仕事であろう.
 限界だけではない.日々の診療には,“落とし穴(ピットフォール)”がある.誰もが陥りがちな穴もあれば,経験や知識不足の人が陥りがちな穴もある.そもそも穴だらけと言っても過言でない複雑系を我々は生きている.
 一方で,穴にはまっていることに気づかない場合すらある.穴の中から見る景色を当然として,山の向こうや地平線の存在に気づかないことは,意外とあるのではないか.狭い視野は,よい診療の障害となる.
 本書は,ピットフォールに焦点を当てた.臨床医が比較的頻回に遭遇しそうなもの,あるいは,認識できにくいものなどを中心に,達人達の知恵をもとに,穴に落ちないためのコツ,穴を埋めるコツを指南頂いた.
 医療は派手なものでなくてよい.地道な努力により,穴のない,隙間のない,切れ目のない診療を目指し,しっかりと守りきること.そしてその結果として,質の高い診療をつねに担保すること.これは救急集中治療医に求められる最重要課題であり,侍ジャパンのスモールベースボールにも通じる,勝利の方程式といえよう.

2019年1月
北山しぐれが近づく,三条大橋の袂にて
志馬伸朗

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目 次

I 診察
 1 診察時の言葉・服装  〈石井潤貴〉
 2 患者ニーズへの対応:意見が医療者と家族で異なるとき 〈舩越 拓 志賀 隆〉
 3 専門医・上級医へのコンサルテーション 〈鶴和幹浩〉
 4 適切なexposure:不必要に長時間裸にしてはいけない 〈林 実 志賀 隆〉
 5 本邦のみで保険診療上認められている治療法を日本で行う意義と判断基準 〈則末泰博〉
 6 集中治療におけるDNAR指示:それって安易な終末期医療? 〈細川康二〉
 7 後医は名医か,適切な返書作成 〈京 道人〉
 8 重症患者を他院へ転送することは後ろめたくない 〈大下慎一郎〉

II 処置・手技
 1 末梢ライン挿入の基本的作法と手技:A,V 〈竹下 淳〉
 2 超音波ガイド下中心静脈カテーテル挿入の落とし穴 〈竹下 淳〉
 3 縫合の基本:糸の太さや材質について知っておくべきこと 〈畑 啓昭 岡田はるか〉
 4 留置ドレーン・管類の管理:早期抜去に向け考えるべきこと 〈畑 啓昭 後藤健太郎〉
 5 胃管挿入の基本 〈畑 啓昭 大倉啓輔〉
 6 血液検査のルーチンオーダーの功罪 〈片岡 惇〉
 7 血液ガス:定時検査の必要性は? 〈佐藤仁信〉
 8 動脈血/静脈血ガス分析でわかること,わからないこと 〈佐藤仁信〉
 9 胸部X線写真はICUで毎日必要か? 〈三反田拓志 則末泰博〉
 10 造影CTの目的を明確にしよう 〈松本 敬〉
 11 救急エコー(FAST/RUSH/BLUE)の正しい使い方 〈松本 敬〉

III 気道・呼吸
 1 気管挿管前の準備 〈志馬伸朗〉
 2 気管挿管デバイスの差異を知る:ビデオ喉頭鏡を使おう 〈佐藤仁信〉
 3 緊急患者の気管挿管時の注意点 〈軽米寿之〉
 4 呼吸音の正しい聞き方と表現 〈大下慎一郎〉
 5 喘鳴=喘息ではない 〈大下慎一郎〉
 6 バイタルサインの適切な評価:頻呼吸評価と対応 〈軽米寿之〉
 7 カプノグラフィの活用:気管挿管時,人工呼吸時 〈軽米寿之〉
 8 非挿管呼吸管理(NPPV/HFNC)の注意点 〈京 道人〉
 9 COPD患者の急性呼吸不全に酸素投与を躊躇しない 〈大下慎一郎〉
 10 両側びまん性肺病変におけるARDSと非ARDSの鑑別 〈大下慎一郎〉
 11 救急・集中治療医のための間質性肺炎の正しい理解 〈石井賢二 則末泰博〉
 12 結核を見逃さない:疑診例の隔離方策も含める 〈大下慎一郎〉
 13 SpO2=100%は正常でも目標でもない 〈大木伸吾 志馬伸朗〉
 14 理想体重を知ろう 〈木田佳子〉
 15 人工呼吸管理において常に正常血液ガス値を目指さない 〈京 道人〉
 16 人工呼吸管理の落とし穴:強い自発呼吸,非同調の認識と回避 〈京 道人〉
 17 SBTを正しく使う:適応患者の選別,過度のウィーニング回避 〈石井潤貴〉
 18 気管切開のタイミング:なんでも早期気管切開? 〈細川康二〉

IV 意識・神経
 1 不穏=せん妄と決めつけない 〈軽米寿之〉
 2 人工呼吸中の鎮静中断:とにかく日々の鎮静中断? 〈細川康二〉
 3 小児の軽症頭部外傷に対する頭部CT検査:見逃しも医療被曝も減らすには 〈大木伸吾 志馬伸朗〉
 4 くも膜下出血後のtriple H療法は本当に有益か?スパズム期はあるのか? 〈軽米寿之〉
 5 高浸透圧製剤の功罪 〈軽米寿之〉

V 循環
 1 頻脈の適切な評価と対応 〈吉田拓生〉
 2 頻脈に対する抗不整脈薬の落とし穴 〈村上博基 西山 慶〉
 3 ショックの早期評価,血圧以外に評価すべきこと 〈吉田拓生〉
 4 心不全の評価:心収縮が良好な心不全(HFpEF)の評価 〈吉田拓生〉
 5 心不全への介入:クリニカルシナリオとその注意点 〈吉田拓生〉
 6 急性心原性肺水腫の患者に,安易にモルヒネを使用しない 〈吉田拓生〉
 7 急性心筋梗塞を見逃さないために 〈村上博基 西山 慶〉
 8 non-STEMIを見逃さないために 〈村上博基 西山 慶〉
 9 後壁梗塞を見逃さないために 〈村上博基 西山 慶〉
 10 冠動脈ステント留置前の出血検索 〈村上博基 西山 慶〉
 11 カテコラミンルートの管理:そのローカルルールはOKか?  〈細川康二〉
 12 ICUでのドパミン:とかく悪者にされがちですが…? 〈細川康二〉
 13 SGC・IABPの功罪 〈木田佳子〉

VI 感染
 1 感染防御策を遵守しよう:破綻しないコツ?! 〈鈴木秀鷹 安田英人〉
 2 末梢動/静脈ライン確保時の注意:感染防御策,皮膚消毒,部位など 〈河口拓哉 安田英人〉
 3 皮膚消毒薬:ポビドンヨードの問題点 〈大山裕太郎 安田英人〉
 4 耐性菌リスクとは何か? 〈志馬伸朗〉
 5 ICU入室患者におけるfever workup 〈志馬伸朗〉
 6 グラム染色の適正使用:微生物検査室とのコミュニケーション 〈伊藤健太〉
 7 培養検査結果を一歩先まで読めるようにする:MIC?ブレイクポイント? 〈樋口 徹 伊藤健太〉
 8 正しい血液培養採取法 〈京 道人〉
 9 抗菌薬はビールではない:「とりあえず○○」はやめよう 〈伊藤健太〉
 10 抗菌薬をde-escalationした患者が再び発熱したとき,抗菌薬を元に戻してはいけない 〈伊藤雄介〉
 11 広域抗菌薬は強力でも安心でも安全でもない:カルバペネム薬の出番とは? 〈伊藤雄介〉
 12 de-escalationのお作法 〈志馬伸朗〉

VII 腎臓
 1 尿量低下を腎前性腎不全と決めつけない:輸液負荷の罪 〈石井潤貴〉
 2 尿量低下あるいは腎機能低下=フロセミドでいいのか? 〈大木伸吾 志馬伸朗〉
 3 大量輸液と利尿薬(入れて出す)の投与は腎機能を良くしない 〈伊藤秀和〉
 4 持続腎代替療法=CHDFではない 〈伊藤秀和〉
 5 持続腎代替療法:目的(適応)を整理し,限界を知る 〈伊藤秀和〉
 6 腎障害をきたす薬剤に注意 〈伊藤秀和〉
 7 サイトカインは除去するもの? 〈伊藤秀和〉
 8 造影剤腎症はあり得るか 〈木田佳子〉

VIII 体液・電解質
 1 体液量評価:in-outバランスor体重測定 〈矢田部智昭〉
 2 IVC虚脱の意味を知る(=血管内容量不足ではない) 〈松本 敬〉
 3 脱水とハイポボレミア:用語の適切な使い分け 〈矢田部智昭〉
 4 侵襲患者への低張液 〈山賀聡之〉
 5 熱傷患者へのBaxter公式適応は本当に正しいのか? 〈木田佳子〉
 6 とりあえず生食,の害:高Cl 〈山賀聡之〉
 7 リフィリング期はあるのか? 〈勝又祥文 矢田部智昭〉
 8 アルブミンの適正使用:低アルブミン血症,ショック 〈山本良平〉
 9 EGDTを見直す:血清乳酸値は循環の指標となりうるか? 〈山本良平〉
 10 過剰輸液の弊害 〈矢田部智昭〉

IX 栄養・血糖
 1 侵襲期早期の過剰栄養回避 〈山本浩大郎 安田英人〉
 2 早期経腸栄養を妨げる因子:いかに除去するか 〈矢田部智昭〉
 3 急性膵炎患者の経腸栄養開始を遅らせない 〈山本浩大郎 安田英人〉
 4 低栄養患者への栄養療法の注意点:リフィーディング症候群と低リン血症 〈石井潤貴〉
 5 抗潰瘍薬は本当に必要か?必要であるとして,使い分けは? 〈山本良平〉

X 血液凝固
 1 FDPとD-dimerを同時に測る意義は? 〈片岡 惇〉
 2 各種DIC基準の違いと問題点を知る 〈江木盛時〉
 3 DVT予防策:適応と使い分け 〈太田浩平〉
 4 急性出血病態と慢性抗凝固薬中断:中断の問題点,拮抗薬の適応 〈太田浩平〉

Ⅺ 外傷
 1 外傷患者では内因性疾患を検索しよう 〈大木伸吾 志馬伸朗〉
 2 不穏で暴れる患者への対応 〈吉本 昭 志賀 隆〉

Ⅻ 小児
 1 子どもは小さな大人である 〈伊藤雄介〉
 2 子どもは小さな大人とは違う 〈伊藤雄介〉
 3 Not doing wellの見分け方 〈伊藤健太〉
 4 小児の輸液:輸液路確保の問題 〈竹下 淳〉
 5 児童虐待の可能性を忘れない 〈木田佳子〉
 6 小児の血液培養をちゃんと採る 〈伊藤健太〉

XIII 体温
 1 体温管理療法:目的と適応,管理上の問題,体温以外の注意点 〈京 道人〉
 2 発熱=氷クーリングはやめよう 〈江木盛時〉
 3 解熱鎮痛薬の罪:周術期オピオイドの有効な使い方を含めて 〈江木盛時〉

XIV その他
 1 ステロイドの適正使用:AERDの考慮,選択肢と用量 〈石井潤貴〉
 2 ステロイドパルス療法は存在するか 〈片岡 惇〉
 3 持続インスリン療法:血糖以外の観察を忘れない 〈江木盛時〉
 4 隠れた内分泌救急を見逃さない 〈山賀聡之〉
 5 アナフィラキシー:ステロイドではなくアドレナリン投与が優先 〈山賀聡之〉
 6 過呼吸の評価と対応:精神的要因だけではない 〈山賀聡之〉
 7 よくある処方間違い 〈太田浩平 吉川 博〉
 8 応時指示(発熱時,不穏時など),ドクターコール基準,の問題点 〈太田浩平〉
 9 何でもかんでも早期離床でいいの? 〈對東俊介〉
 10 人工呼吸患者は歩かせたらいいの?:その真の意義を知る 〈對東俊介〉
 11 体位療法は有効なのか:肺炎予防,脳浮腫予防,脊髄損傷 〈對東俊介〉

索引

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執筆者一覧

志馬伸朗  広島大学大学院医歯薬保健学研究科救急集中治療医学教授 編著
石井潤貴  広島大学大学院医歯薬保健学研究科救急集中治療医学 
舩越 拓  東京ベイ・浦安市川医療センター救急集中治療科(救急外来部門)部長,IVR科部長 
志賀 隆  国際医療福祉大学医学部救急科准教授 
鶴和幹浩  (株)指導医.com代表取締役 
林 実   福井県立病院救命救急センター医長 
則末泰博  東京ベイ・浦安市川医療センター救急集中治療科(集中治療部門)部長 
細川康二  広島大学大学院医歯薬保健学研究科救急集中治療医学講師 
京 道人  広島大学大学院医歯薬保健学研究科救急集中治療医学 
大下慎一郎 広島大学大学院医歯薬保健学研究科救急集中治療医学准教授 
竹下 淳  大阪母子医療センター集中治療科医長 
畑 啓昭  京都医療センター外科・感染制御部 
岡田はるか 京都医療センター外科 
後藤健太郎 京都医療センター外科 
大倉啓輔  京都医療センター外科 
片岡 惇  東京ベイ・浦安市川医療センター救急集中治療科(集中治療部門) 
佐藤仁信  国立循環器病研究センター病院麻酔科 
三反田拓志 東京ベイ・浦安市川医療センター救急集中治療科(集中治療部門) 
松本 敬  中頭病院集中治療科 
軽米寿之  亀田総合病院集中治療科医長 
石井賢二  東京ベイ・浦安市川医療センター救急集中治療科(集中治療部門) 
大木伸吾  広島大学大学院医歯薬保健学研究科救急集中治療医学 
木田佳子  広島大学大学院医歯薬保健学研究科救急集中治療医学 
吉田拓生  東京慈恵会医科大学麻酔科集中治療部講師 
村上博基  京都医療センター救命救急科 
西山 慶  京都医療センター救命救急科科長 
鈴木秀鷹  武蔵野赤十字病院救命救急センター 
安田英人  亀田総合病院集中治療科 
河口拓哉  武蔵野赤十字病院救命救急センター 
大山裕太郎 武蔵野赤十字病院救命救急センター 
伊藤健太  あいち小児保健医療総合センター総合診療科医長 
樋口 徹  あいち小児保健医療総合センター総合診療科 
伊藤雄介  兵庫県立こども病院感染症内科 
伊藤秀和  岡崎市民病院麻酔科 
矢田部智昭 高知大学医学部麻酔科学・集中治療医学講師 
山賀聡之  広島大学大学院医歯薬保健学研究科救急集中治療医学 
勝又祥文  高知大学医学部麻酔科学・集中治療医学 
山本良平  亀田総合病院集中治療科 
山本浩大郎 武蔵野赤十字病院救命救急センター 
江木盛時  神戸大学大学院医学研究科外科系講座麻酔科学分野准教授 
太田浩平  広島大学大学院医歯薬保健学研究科救急集中治療医学 
吉本 昭  箕面市立病院救急科部長 
吉川 博  広島大学病院薬剤部 
對東俊介  広島大学病院診療支援部リハビリテーション部門 

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ER・ICU100のピットフォール
   定価4,180円(本体3,800円 + 税)
   2019年02月発行
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