救急白熱セミナー 頭部外傷実践マニュアル 改訂2版
佐々木淳一 監修 / 並木 淳 著
A5判 144頁
定価2,860円(本体2,600円 + 税)
ISBN978-4-498-06679-3
2018年11月発行
在庫あり
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救急白熱セミナー 頭部外傷実践マニュアル 改訂2版
佐々木淳一 監修 / 並木 淳 著
A5判 144頁
定価2,860円(本体2,600円 + 税)
ISBN978-4-498-06679-3
2018年11月発行
在庫あり
改訂版の序
初版発行からの4年間,特に薬剤に関してはいくつかのトピックがあった.そのほか,2016年に米国brain trauma foundationのガイドラインの改訂があり,「実践マニュアル」として本書を実臨床に即して使っていく上ではupdateが必要不可欠となった.初版発行時には5年後を目途に改訂を予定していたが,その意味では頭部外傷診療の進歩は予想よりも速く,不断の勉強が欠かせないと言える.
今回の改訂に際して「抗凝固薬・抗血小板薬内服中患者に対する対応」と「抗てんかん薬の使い方」の項は大幅に書き改めた.抗凝固薬に対する中和薬の最新の知識は実臨床に不可欠であろう.また,新たな抗てんかん薬の登場により薬剤の選択肢を見直し,てんかん診療ガイドラインの2018年改訂を踏まえた記載に改めた.実践マニュアルとして必要最小限の内容に抑えるため新たな加筆によるページ数の増加はできるだけ避けたが,臨床でしばしば悩まされる飲酒酩酊した頭部外傷患者への「アルコール離脱反応への対応」をコラムに追加した.
改訂に際しても,初版のコンセプト「実際の診療で手に取って使えるようにコンパクトにまとめた実践マニュアル」を維持した.症例に応じたページを参照することで,「手術的治療を除く頭部外傷の患者管理のupdate」のリファレンスにお役立ていただきたい.記載した内容の元となるガイドラインやRCTなどの文献,添付文書などは,初版と同じくページ下の欄外に記した.本書の記載をそのまま鵜呑みにせず原典にあたって理解を深め,症例に応じて使いこなせる「実践マニュアル」として頂ければと思う.
本書の初版は,頭部外傷を専門としない外科系の救急医から,「頭部外傷が診られるようになった」,「頭部外傷合併例でも怖くなくなった」との声を頂いた.さらに救急外来の看護師が購入して下さり,「状況ごとにコンパクトに書かれているので診療の流れがわかった」とのコメントを聞けたことは望外の喜びであった.今回改訂された本書が,引き続き頭部外傷に関わる多くの皆様の日常診療の一助となれば幸いである.なお,慶應義塾大学病院救急科渋沢崇行先生には,本書のユーザーの立場から改訂の要望を頂戴し,臨床経験に即した貴重なご意見を頂きました.ここにあらためて感謝いたします.
2018年10月
国家公務員共済組合連合会立川病院
並木 淳
改訂版の監修者序
2013年の日本救急医学会総会・学術集会で企画された「若手白熱セミナー」における演者(著者)の頭部外傷診療に対する熱い思いをまとめたものが,2014年に出版された初版の「救急白熱セミナー 頭部外傷実践マニュアル」である.この中では,救急診療,ICU管理というsite specificかつ実践的な項目立てが行われ,解説と同じ箇所に参照すべき出典などを配すことにより,“救急科専門医を目指す専攻医”のみならず,“脳神経外科をsubspecialtyとしない”あるいは“頭部外傷を専門としない救急医”などから好評を博した.まさに,頭部外傷の症例に応じて使いこなせる「実践マニュアル」として,評価されていたといえる.
著者は,永年にわたり,日本救急医学会指導医・脳神経外科専門医として,軽症から重症まで膨大な数にのぼる頭部外傷患者の初療から手術,ICU管理まで全てを担当し,後進を育成してきた.この経験に基づき執筆された初版が,改訂2版としてupdateされ,より充実した「実践マニュアル」となった.改訂版の序で述べているように,「頭部外傷診療の進歩は予想よりも速く,不断の勉強が欠かせない」という視点で,最新の内容を漏らすことなく網羅している.特に「抗凝固薬・抗血小板内服中患者に対する対応」や「抗てんかん薬の使い方」などは大幅な加筆修正が行われており,読者は最新の知見を効率的に修得でき,さらには原典にあたって理解を深めることも可能であろう.
この改訂版が初版を超える好評を博し,引き続き頭部外傷診療に関わる多くの医療者にとって必携のマニュアルとなることを心より祈念したい.
2018年10月
慶應義塾大学医学部救急医学教室
佐々木淳一
序文
本書は,手術的治療を除く頭部外傷の患者管理のupdateについて,実際の診療で手に取って使えるようにコンパクトにまとめた実践マニュアルである.頭部外傷を含めたトータルな外傷全身管理を行っている救急医,救急外科/acute care surgeryを専門とする外科系救急医,さらには頭部外傷診療に日頃従事している脳神経外科医に,症例に応じたページを参照していただき診療の手引として,あるいは知識の整理や治療方針判断のリファレンスとして使っていただきたい.
研修医を対象としたいわゆるマニュアル本や虎の巻は多く出版されているが,後期研修医や中堅医師向けのすぐに診療に役立つ診療マニュアルを探すことは結構難しい.教科書やガイドラインを参照したり,文献を検索することになるが,それらの記載は必ずしも実践的ではない.本書では,日ごろ遭遇する軽症〜中等症頭部外傷患者の急性期治療から,重症頭部外傷患者の集中治療まで,日本脳神経外傷学会の2013年版ガイドラインと米国Brain Trauma Foundationの2007年第3版ガイドライン,さらにはエビデンスレベルの高い最近の大規模RCTの報告に基づいて,頭部外傷治療・管理の具体的なプロトコールのエッセンスを示し解説を加えた.
当施設では,救急科の後期研修医は一定期間病棟に配属され,担当医として指導医とともに頭部外傷を含めたすべての救急科入院患者の診療を行っている.本書は,当科後期研修医に毎年配布している頭部外傷診療マニュアルをもとに,頭部外傷の救急診療に必要な項目を網羅するように大幅に加筆したものである.2013年の日本救急医学会で「若手白熱セミナー」としてそのごく一部の内容を講演したが,会場に入りきらないほど多数の来場者に非常に熱心に聴講していただいた.本書が,皆様の日常診療のお役にたてれば幸いである.
なお,「若手白熱セミナー」の講演者に指名いただき,本書の出版の機会を与えていただいた当科堀教授,そして毎週のカンファレンスで主要文献の紹介やレビューをしてくれた教室員の先生方の力添えにより,本書を出版することができました.あらためて感謝いたします.
2014年9月
慶應義塾大学医学部救急医学教室
並木 淳
初版監修の序
2013年の日本救急医学会学術集会では,若手白熱セミナーに多くの若手救急医が集まり,文字通り白熱した講演が相次いだ.その熱気を受け止めた中外医学社から演者(著者)にお話をいただいたことが,本書が誕生する契機となった.「救急白熱セミナー頭部外傷実践マニュアル」は,救急科専門医を目指す後期研修医に必読の書である.そればかりか,脳神経外科をサブスペシャリティーとしないベテラン救急医にも,知識のセルフチェックに有用である.目次がsite specific(救急外来,およびICU)で,項目立てが実践的,解説と同じ場所に出典が明示されているので読み易い.マニュアルとはいうものの,本書の作成には膨大な作業を要したのではないだろうか?
救急医学は,疾病/外傷の別,罹患臓器,年齢,性別を問わずに対象とすることから,救急医が学ぶべき知識は,他の診療科の医師と比べて比較にならないほど多い.このために,膨大な情報量を咀嚼できずに欠落部分(弱点)が生まれ,医療レベルが浅くなり易い弊害がある.これを補完するには,その分野で指導的な救急医が,他の救急医のレベルアップのために生涯教育の資料を提供することが望まれるが,本書はその目的にも叶っている.
本書の著者は脳神経外科専門医のキャリアを経て,現在は救急医として活躍している.救急外来では頭部外傷以外の救急患者にも対応し,さらに頭部外傷の入院治療の指導にもあたってきた.この経験から,著者は頭部外傷について救急医がどこまで知るべきか,どこまで行うべきか,さらに大切であっても救急医がおざなりにしやすい知識を体感している.著者が救急外来や集中治療室で目にした事項が本書に反映され,そして静かだが白熱の内容となった.
高齢化社会では,頭部外傷の患者はさらに多くなるので,本書を一読することは,救急医にとって極めて効率の良い学びである.読者は,一つ一つエビデンスを確認しながら診療する面白さを見出すに違いない.
2014年9月
慶應義塾大学医学部救急医学教室
堀 進悟
目 次
略語集
I.救急診療
A.搬入から蘇生まで
1.重症度判定(GCS)
【コラム】正しいGCSの判定のための注意点
表1 Glasgow Coma Scale(解説付き)
2.運動麻痺の判定(MMT)
【コラム】末梢性顔面神経麻痺の定量的評価
表2 末梢性顔面神経麻痺の評価法(40点柳原法)
3.速やかに頭部CTを撮影する基準(成人)
【コラム】飲酒後酩酊患者に対する頭部CT撮影
表3 頭部CT撮影時の鎮静薬使用例(成人)
4.速やかに頭部CTを撮影する基準(小児)
◉Q&A:乳幼児の意識レベルをGCSで判定するには?
表4 Glasgow Paediatric Coma Score
5.軽症頭部外傷のCT検査適応除外基準
【コラム】抗血小板薬にはどのようなものがあるか?
表5 主な抗血小板薬
6.重症頭部外傷の救急蘇生処置
1)外傷primary survey
表6 気管挿管時のプロポフォール使用例とRSI薬剤使用例(成人)
【コラム】気管挿管時における喉頭展開のCormack分類
2)呼吸管理
表7 レスピレーターの初期設定条件(成人)
3)初期輸液と循環管理
【コラム】救急初期診療における重症頭部外傷患者の高血圧への対処
表8 重症頭部外傷患者の不穏・体動に対する鎮静・鎮痛薬の使用例(成人)
4)脳ヘルニア徴候の診察と緊急処置
◉Q&A:「切迫するD」と「切迫脳ヘルニア」の違いは?
B.診断と病態評価
1.外傷pan-scanの適応
表9 外傷pan-scanのプロトコール例
【コラム】受傷機転を高エネルギーと判断する基準
表10 鈍的外傷患者の受傷機転の重症(高エネルギー外傷)判断基準
2.CT読影ポイント(直接所見と間接所見)
◉Q&A:骨折線のほかに頭蓋底骨折や眼窩底骨折を疑う所見は?
表11 頭蓋底骨折や眼窩底骨折を疑う頭部CT所見
【コラム】頭部CTのmidline shiftと脳槽の描出の見かた
3.CTによる血腫量の計測
4.Traumatic Coma Data Bank(TCDB)のCT分類
5.外傷性頭蓋内血腫に対する手術適応
◉Q&A:日米の手術適応ガイドラインの違いは?
表12 外傷性頭蓋内血腫手術適応基準の日米ガイドライン比較
6.頭部外傷の損傷分類(Gennarelli分類)
◉Q&A:脳振盪と診断する症状は?
表13 脳振盪を疑う臨床所見
◉Q&A:びまん性軸索損傷に特徴的なMRI所見は?
表14 びまん性軸索損傷のMRI所見
7.抗凝固薬・抗血小板薬内服中患者に対する対応
【コラム】心房細動の脳卒中に対するリスク層別化:CHADS2スコア
表15 心房細動のリスク評価スコア(CHADS2,CHA2DS2-VAScスコア)
8.CTフォローアップのタイミング
表16 Talk and deteriorateの頻度と受傷からの時間
◉Q&A:フォローアップCTで3D-CTアンギオグラフィー(CTA)を追加するときは?
表17 3D-CTAによる早期の血管評価が必要な頭部外傷
9.脊椎・脊髄損傷の評価
1)診察と画像検査
表18 頸椎固定の継続が必要な場合
2)頸椎側面像(X線/CT再構成画像)の読影ポイント
3)損傷高位(運動・感覚障害)の診察
【コラム】ASIAの脊髄損傷神経診察シート
4)中心性脊髄損傷の受傷機転と臨床症状
5)重症度評価(Frankel分類)
◉Q&A:Frankel分類とASIAスケールの相違は?
表19 ASIA Impairment Scale (AIS)
6)環椎-後頭関節脱臼の計測(Power’s ratio, Harris criteria)
7)第1頸椎破裂骨折の計測(環椎輪の外側偏位)
8)歯突起骨折(Anderson分類)
10.合併する顔面外傷への対応
1)Le Fort骨折
2)Blow Out骨折(眼窩底骨折)
◉Q&A:Blow Out骨折で緊急手術となる場合は?
3)その他の顔面骨骨折(鼻骨・頬骨弓・顎関節突起)
【コラム】顔面縫合における真皮縫合
C.治療と入院・帰宅の判断
1.抗てんかん薬の使い方
1)予防的投与と治療的投与の適応と投与期間
表20 外傷性てんかんの発症時期による分類
2)抗てんかん薬の予防的投与
3)抗てんかん薬の治療的投与
【コラム】外傷性(晩期)てんかんに対する内服薬の選択
◉Q&A:抗てんかん薬の参考域(有効)血中濃度は?
表21 外傷性てんかんに対する抗てんかん薬の参考域血中濃度
4)難治性てんかん重積状態に対する抗てんかん薬治療
2.頭蓋内損傷に対する止血薬投与
3.重症頭部外傷に対する初療室治療
1)血腫除去までの緊急治療
2)緊急頭蓋穿頭・血腫除去
◉Q&A:初療室頭蓋穿頭ではどのような物品を用意すればよいか?
◉Q&A:手回しドリルを用いた頭蓋穿孔のコツとピットフォールは?
4.髄液漏・気脳症に対する抗菌薬治療
【コラム】外傷性髄液漏に対する予防的抗菌薬投与の当施設の方針
5.合併する脊髄損傷への対応
1)神経原性ショックの治療
表22 昇圧薬と経皮ペーシングの使い方
2)急性脊髄損傷患者に対するステロイド治療
6.頭部挫創に対する縫合処置
7.軽症頭部外傷の入院適応判断基準
表23 軽症頭部外傷後に頭蓋内出血が出現する相対リスク(成人)
8.スポーツ外傷による脳振盪の患者指導
II.ICU管理
A.急性期
1.CT有所見の軽症(GCS 14・15)頭部外傷の入院治療
【コラム】アルコール離脱反応への対応:CIWA-Ar
表24 CIWA-Ar(アルコール離脱症状評価スケール)
表25 長期多量飲酒の病歴のある酩酊後の軽症頭部外傷
入院患者に対する予防的ベンゾジアゼピン投与例
2.重症頭部外傷の入院治療
1)神経集中治療の適応
表26 従来の標準的“step-up” 治療
【コラム】当施設で行っている急性期“top-down”治療の実際
表27 急性期“top-down”治療の実施例
◉Q&A:血腫除去術の際には外減圧術を行うべき?
2)呼吸・循環管理
◉Q&A:気管切開はいつ行うか?
3)輸液管理と高浸透圧利尿薬
◉Q&A:マンニトールは頭蓋内出血に対して投与できない?
4)体温管理(積極的脳平温療法)
◉Q&A:体温冷却のためにはどのような装置があるか?
【コラム】重症頭部外傷に対する積極的平温療法と低体温療法の現状
5)バルビツレート療法
【コラム】重症頭部外傷に対するバルビツレート療法の現在の考え方
6)プロポフォール,デクスメデトミジン
7)栄養管理
8)静脈血栓塞栓症の予防
表28 未分画ヘパリン中和のためのプロタミンの投与
3.重症頭部外傷のモニタリング
1)水分バランス・血漿浸透圧・血糖値
2)ICPモニター
◉Q&A:ICPモニターがなくても神経集中治療はできる?
3)EtCO2モニター
4)補助的な脳循環代謝モニタリング(SjO2, TOS, PbtO2)
5)補助的な電気生理モニタリング(aEEG, BIS)
4.髄液漏・気脳症の入院治療
B.亜急性期
1.低Na血症への対処
2.深昏睡患者に対する脳幹機能の診察
表29 脳幹機能を診察するときに用意するもの
表30 「脳死とされうる状態」と判定するための前提条件
表31 「脳死とされうる状態」の判定項目
3.頭部外傷重症例の終末期医療
別表 AIS 2005 Update 2008頭部(抜粋日本語訳)
索 引
執筆者一覧
佐々木淳一 慶應義塾大学救急医学教授 監修
並木 淳 国家公務員共済組合連合会立川病院副院長・救急科部長、慶應義塾大学救急医学客員准教授 著
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