序 文
本書は中外医学社刊行グリーンノートシリーズの皮膚科版で,当初は主に皮膚科の初期研修医・修練医あるいは皮膚科診療に携わる一般医を対象に,外来で遭遇するcommon diseasesを中心に簡潔明快に解説する実践書として企画されました.したがって稀少疾患や入院の対象となる重症皮膚科疾患は除外されていますが,皮膚科標榜医の外来診療に必須の最新知識は整然と記載されています.
ところが,実際に入稿された力作の原稿をゲラで読むうちに,「この本は皮膚科専門医が最新の知識をアップデートして整理しながら再履修するのにも最適である」ことに気づかされました.皮膚科専門医歴35年になろうとする私にとっても日進月歩の皮膚科学の全領域を網羅的にフォローするのは容易ではありません.そのためどうしても不得手な領域の知識がビハインドになりがちです.今回,すべての原稿を読了してみて,こういうコンパクトな教書を完読することで皮膚科学の最新の進歩を要領よく取り入れることが可能なのだと実感しました.各項目では,冒頭にPOINTとして要点をまとめ,すべての記載は箇条書きにしていただきましたので,肩の力を抜いてどこからでも読むことができます.もちろん日常診療でふと疑問に思ったときにポケットやデスクから取りだして当該項目を読むという手法も可能ですが,編者としてはぜひ本書を完読し,皮膚科最前線の地平を見渡していただきたいと思います.きっと,初期研修医・修練医にあってはハンディーなクイックリファレンスとして役立つと思いますし,皮膚科専門医であっても知識がrenewalされて一段上の皮膚科学の高台に登った気分になると思います.
ぜひ,本書を手に取られたあなたの座右の書として,白衣のポケットに忍ばせたり,診察室の机の上に置かれて少しでも日常皮膚科診療のお役に立てれば編者としてこれにまさる喜びはありません.
平成30年7月
京都大学名誉教授 宮地良樹