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書籍詳細

臨床医のための腎病理読解ロジック

〜所見を「読んで」「考える」〜

臨床医のための腎病理読解ロジック

乳原善文 監修 / 柴垣有吾 監修 / 上野智敏 著

A5判 160頁

定価(本体4,200円 + 税)

ISBN978-4-498-22434-6

2018年06月発行

在庫あり

腎臓に関わる臨床医が理想的に病理標本を読めるようになるためには,正しい用語で所見を描写し、患者の病態や予後について考えることで「ただ見ていただけ」の読み方から脱却することが必要である.本書では臨床医として腎病理の臨床と研究を極めた著者が,メカニズムから丁寧にわかりやすく解説した.病変の成り立ちから学び,所見が意味するものを個々の患者ごとに考える力を身につけることができる一冊.

監修のことば

三村信英元院長が中心になり,腎不全患者に対する治療法としての透析が開始されたのが昭和38年でした.その後約20年を経た1985年に小生は腎臓内科医としてスタートを切りました.しかし軌道に乗ったとはいえ当時透析の問題はまだまだ山積であり透析室と病棟のピストン運動が小生の日課であり大部分の時間が透析に費やされました.その合間をぬって行う腎生検には不思議な魅力を感じました.腎不全になる原因が真っ黒な夜空の中に光り輝いて見えたからです.視覚に訴える臨床材料が好きな小生にとってはまさしくうってつけの分野でした.腎臓内科医の大部分の時間を奪った透析も,その技術の進歩,薬剤の開発により,多くの問題は解決され時間的にも余裕が生まれました.透析の治療対象は末期腎不全患者であるのに対し,末期腎不全に至らせない治療の開発はまだまだ発展の余地がある未開発領域でした.これこそが日本腎臓学会の責任領域であり,今後取り組んでゆかねばならない重要課題でもありました.そのためには腎症病態解明が第一歩であり,その大切な診断ツールが腎生検で得られる腎症の診断になります.この著書はそういう意味で将来の腎臓内科医の進むべき領域を扱っていますが,腎臓病の病態解明・診断・治療はまだまだ発展途上で,改定の余地を幾多も残しています.上野君は4年間腎病理研究に明け暮れた末に2013年に当院腎センターに入職しました.動物実験で習得した知識を持って見たヒトの腎臓組織,そして小生達が長年蓄積してきた腎生検材料はまさしく目からウロコが落ちる,そんな感激の毎日であったと語っています.その感動を,これから腎臓病学を学ぶ若手医師に伝えたいという気持ちで,「病変がなぜそのように見えるのか?」に徹底的にこだわって書いたのがこの著書です.読者諸兄には,この本を足掛かりに研鑽を積んで頂き,新知見を習得し,新規治療法を開発する一歩にして頂きたいと切に願っております.

2018年 春
虎の門病院腎センター内科,リウマチ膠原病内科部長
日本腎臓学会理事,日本腎臓学会腎生検ガイド改定委員会委員長
乳原善文




監修のことば

このたび,上野智敏先生の『〜所見を「読んで」「考える」〜臨床医のための腎病理読解ロジック』の監修をさせて頂く光栄に預かり,大変に感謝している.私自身,腎臓内科の教授という役職についているにも関わらず,また腎臓オタクを自認している身にも関わらず,未だに腎病理習得は道半ばと感じている.
個人的には腎病理読影のスキル習得には,1.まず腎病理の基本的リテラシ−を得て,2.兎にも角にも,自分の患者さんの腎病理を自分で読影し,その後にスキルのある病理医と供覧し,その後,再度,自分で見返す,というOn The Jobトレーニングを多数の症例で繰り返すしか無いと考えている.
1.の過程の習得にはいわゆる数多く出版されている腎生検アトラス本があり,又,よりわかりやすく初学者には必須と思われる片渕律子先生の「腎生検診断Navi」がある.2.の過程はOn The Jobトレーニングだから,特に,教科書がなくても仕方が無いと考えていたが,それでも病理医の思考プロセスを逐一確認することは困難であり,また,その思考プロセスを理解できたとしても,それをどのように臨床に還元すべきかに迷うことは非常に多いのが実情であった.最近,筑波大学の長田道夫先生の腎病理読影の思考プロセスを,類稀な教育的才能の持ち主である慶応大学の門川俊明先生が解説する『なぜパターン認識だけで腎病理は読めないのか?』というタイトルからして挑戦的で極めて読み応えのある本が出版され,大きな進歩があった.しかし,それでも病理が読める臨床医が,腎病理医の思考回路を臨床の言葉に書き換える本がもう1つ欲しいという所があったと思う.
上野智敏先生は若い先生でありながら,腎病理の1つ1つの所見に常に臨床医として真摯に向き合う人である.私が彼を知るきっかけともなっているのが,彼が発表した症例報告の数々であるが,いずれも腎病理所見を極めてしっかりと自分で解釈しないと出てこない発想を持っていた.彼は腎臨床のメッカである虎の門病院で臨床の研鑽を深め,さらに長田先生の下で腎病理の臨床と研究を極めた人である.私のいる聖マリアンナ医大でも非常勤講師としてその才能を多くの若手の指導に発揮してもらっている.そのような上野先生が腎病理本を書きたいということは彼の才能を多くの人に還元する意味で極めて意義深いと考え,私のような浅学の者でも手伝えることがあればと応援してきた.
出来上がったものを見て,まだ荒削りでまだ彼の頭の中が明快になる所までは行っていない可能性があるが,これは今度,読者の反応を見ながら追々改訂していくことに期待したい.多くの腎臨床医,それから臨床医の思考プロセスを知りたい病理医の先生に読んで頂き,批評を頂ければと思う.

2018年 春
聖マリアンナ医科大学腎臓・高血圧内科教授
柴垣有吾




はじめに

蛋白尿,血尿をはじめとした検尿異常や,腎不全の原因,腎移植後の拒絶反応の有無などを精査するうえで腎生検は欠かせないツールのひとつであり,臨床医であっても腎病理組織をある程度診断できることは必要なスキルとなっています.日本腎臓学会の腎病理コンサルテーション&レビュー,腎病理夏の学校,東京腎生検カンファレンスなど,腎病理のシンポジウムや研究会はいつ行っても会場は超満員です.参加者の9割以上は臨床医で,「病理をもっと読めるようになりたい」という臨床医のニーズの高さがよくわかります.私自身も臨床医としてたくさんの研究会に参加するたび,帰り道ではいつも「明日から腎病理読めそうな気がする!」と気分も盛り上がるのですが,翌日いざ顕微鏡の前に座ってみると,前とたいして変わってない,ということを何年も繰り返してきました.なぜ,これだけ本を読んでも,研究会にたくさん参加しても,「読める」ようにならないのか?そもそも「読める」って何なのか?まずそこから考え直してみることにしました.
多くの腎病理研究会やセミナーでは,診断が難しかった症例や,臨床像と病理像に乖離が見られた症例が取り上げられることが多く,診断を明らかにすることが主なテーマとなりがちです.病理医の先生方のディスカッションを受動的に眺め,終了時間になって「そういえば,この後の治療ってどう考えればいいのだろうか?」と疑問に思うこともしばしばです.もちろん,難解な症例の診断をつけることも大切ですが,加えて,その患者さんをずっと診ていく臨床医にとっては治療反応性や腎予後など,その後の臨床経過へフィードバックする情報をひとつでも多く病理像から得たいのです.そこまでわかることが,私たち臨床医が欲する「読める」というスキルではないでしょうか.
言うほど簡単に習得できるもではないことは百も承知ですが,臨床医がそれらの情報を少しでも読み取れるようになるためにはどんな学び方が必要なのか?
筆者なりに出した答えが,
「病変の成り立ちを意識しながら組織を見ること」
「所見の持つ臨床的意義を考えること」の2つのステップです.
所見の特徴を調べるためのリソースとしては腎生検病理アトラスをはじめとした数々の成書があり,診断の方法論としては腎生検診断標準化システマチックレビューシートなどがありますが,実際にそれらを使ってどのように学び,そして,もっと大切な「考える」ことについて明記された書物は意外にも少ないのです.
本書では,筆者が虎の門病院で若手の先生向けに行っていた腎病理レクチャーシリーズの内容をもとに,臨床医としての感覚を前面に出しながら病理の読み方と考え方について書いてみました.まず,「病変の成り立ち」という観点から所見をとらえ,(実際の症例の写真を用いながら)光顕や免疫蛍光染色でなぜそのような形態に見えるのかを理解することに重点を置きました.そして,ひとつひとつの所見が患者さんの病態診断に重要なのか,治療反応や腎予後予測に必要なのか,といった「臨床的意義を考える」ことにつなげていく構成にしました.
本書が,これから腎病理を学ぶ,あるいはもう一歩進んだ読み方を身に着けたいと考えている若手腎臓臨床医の先生方のスキルアップに少しでもお役に立てば幸いです.

2018年 春
上野智敏




あとがきにかえて

本書では,疾患縦割りの知識で押していくのではなく,その枠組みを超えて疾患横断的な考え方で,「病変の成り立ちを意識しながら組織を見ること」と,「所見の持つ臨床的意義を考えること」をテーマに進めてきました.
臨床医が病理を少しでも読めるようになるために,本当に伝えたいことだけを書いてきましたので,疾患それぞれの病理所見の詳細などの内容については多くの成書に比べれば言葉足らずのところも多いと思います.しかし,本書を読んだ後に成書にあたることで内容の理解度や,実際に病理標本を見たときの所見の感じ方が以前と比べきっと変わってくるはずです.
この本に書いた内容は,筆者が医学部を卒業して初期研修医となった日から今日に至るまでに出会ったさまざまな指導者から頂いた知識や言葉をひとつひとつ紡いできたものです.私は本当に指導者に恵まれていて,多くの知識や技術だけでなく,数え切れないほど多くのことを教えて頂きました.あとがきに代えて,感謝の意を述べたいと思います.
私が腎臓内科を目指すきっかけとなったロールモデルであり,将来に悩んでいた私に腎病理学への道を最初に切り開いてくださったのは飯塚病院腎臓内科部長の武田一人先生でした.私も武田先生のような,部下の幸せを自分のことのように喜び,真剣に考えてやれるような上司になりたいといつも目標にしています.
その後,筑波大学大学院ではScienceに打ち込むことの厳しさと楽しさを腎血管病理学の長田道夫教授から指導していただきました.私の病理に対する考え方やスライドの作り方,論文の書き方はすべて長田先生から教えて頂いたものです.
大学院卒業後,虎の門病院では乳原善文先生に(のちにこの本の原型になる)腎病理レクチャーや病理関連の研究会など,病理に関する発表の機会をたくさん与えていただきました.乳原先生は休みの日にも出てきて一緒に病理標本を見てくださり,先生の臨床と研究に対する情熱に刺激を頂き続けたからこそこの本が書けました.私が虎の門病院に入職した初日,乳原先生に見せて頂いた6,000例の腎生検台帳の迫力(と重さ)はいまだに忘れられません.
そして,「先生のような若手が情報を発信することに意味がある」という力強い励ましの言葉とともにこの本を書くきっかけを与えてくださり,監修もお引き受けいただいた聖マリアンナ医科大学の柴垣有吾先生,先生の一言がなかったらこの本は存在しませんでした.
本当に多くの恩師に育てていただいたことを改めて感じ,感謝の気持ちにあふれています.出版にあたり,御尽力くださった中外医学社の皆様にも重ねて御礼申し上げます.
そして何よりも,この本が形になることをいつも心待ちにしてくれ,心の支えになってくれた私の家族に大きな感謝の気持ちを表したいと思います.

2018年 春
上野智敏

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目 次

序章 染色の基礎知識と標本を見る手順 〜標本を「見る」だけでなく「考える」?〜
 病理標本を読むときの思考回路〜臨床医と病理医の違い〜
 基本となる染色の基礎知識
 PAS(periodic acid Schiff)染色
 PAM(periodic acid silver-methenamin)染色
 Masson(マッソン)染色
 HE(hematoxylin eosin)染色
 腎生検標本を見る手順 〜どの順番で見ていく?〜
 40倍
 100倍
 200〜400倍

CHAPTER 1 細胞増殖性病変の見方と考え方 ─「局在」と「基質産生の有無」に着目─
 増殖している細胞の局在を見る
 内皮細胞について
 内皮細胞増殖はさまざまな疾患で起こる
 メサンギウム細胞について
 メサンギウム細胞増殖のパターン?
 ボウマン嚢上皮細胞について
 ボウマン嚢上皮細胞増殖の時間経過
 増殖している細胞の基質産生の有無に着目
 増殖細胞を識別できることの臨床的意義は?
   A.内皮細胞増殖(管内増殖)の臨床的意義
   B.メサンギウム細胞増殖の臨床的意義
   C.ボウマン嚢上皮細胞増殖の臨床的意義
 まとめ:増殖細胞判別の重要性

CHAPTER 2 基底膜病変の見方と考え方 ─どの層の病変か?─
 基底膜病変を見るときのポイント
  1.上皮下病変
   A.上皮下沈着の時間的経過(スパイクから二重化へ)
   B.上皮下沈着とハンプ(hump)はどう違う?
   C.スピクラ(spicula)とスパイク(spike)は何が違う?
  2.基底膜内病変
   A.膜内沈着その1
   B.膜内沈着その2
   C.基底膜そのものの構造変化
  3.内皮下の病変
   A.内皮下浮腫
   B.メサンギウム陥入
   C.内皮下沈着
 まとめ:基底膜病変を評価する臨床的意義

CHAPTER 3 結節性病変・分節性硬化の見方と考え方 ─似ているようで全く違う─
 結節性病変の見方と考え方
 結節性病変が示す臨床的な意義は?
 分節性糸球体硬化の見方と考え方
  1.病変の成り立ちから見た分節性硬化
 分節性硬化は悪者か?
 組織学的バリアントはなぜできる?
  2.臨床的観点から見た分節性硬化
 症例検討
 他の腎疾患に合併した巣状分節性硬化を見つけたとき
 巣状分節性硬化を評価する臨床的な意義
 まとめ:分節性硬化を見逃さない

CHAPTER 4 免疫蛍光染色の見方と考え方 ─局在次第で形が決まる─
 IFを見るための3ステップ
  1.?どこに&?どのように沈着しているか? ー沈着の局在と形態ー
 メサンギウム沈着
 係蹄沈着
   C.特殊パターン
  2.何が沈着しているか? ー沈着の質ー
 〜問題〜次のIF沈着の局在を考えてみましょう
 まとめ:臨床医がIFを評価できることの意義は?

CHAPTER 5 尿細管間質病変の見方と考え方 ─「質」と「分布」で解釈する─
総論
 病態把握の前段階
 尿細管間質病変は「質」と「広がり」を見て考える
各論:尿細管間質病変の「質」を見る
  1.尿細管病変
   A.急性の尿細管病変
   B.慢性の尿細管病変
  2.間質病変
   A.急性の間質病変
   B.慢性の間質病変
  3.尿細管間質病変の「広がり」を見る
 「質」と「広がり」を総合的に評価
  4.尿細管間質病変が与える臨床的意義 
 尿細管間質障害の定量的評価と,臨床データとの関連
 まとめ:真の腎予後とは?

あとがきにかえて

索引

コラム1 Alport症候群と菲薄基底膜病をどう見分けるか?
コラム2 MCNSとFSGSは組織学的にどこまで鑑別できる?
コラム3 疾患特異的な尿細管間質病変?

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執筆者一覧

乳原善文 虎の門病院腎センター内科部長 監修
柴垣有吾 聖マリアンナ医科大学腎臓・高血圧内科教授 監修
上野智敏 中山駅前クリニック院長 著

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