序
この度,中外医学社より『糖尿病性腎臓病の診かた,考えかた』を上梓することになりました.
糖尿病性腎症・糖尿病性腎臓病の対策,克服は本邦だけではなく,世界共通の強い願いです.
最近では,diabetic kidney disease(DKD)という用語が用いられ,日本腎臓学会,日本糖尿病学会では平成29年に「糖尿病性腎臓病」という名称を用いることになりました.その定義などは今後の課題ですが,DKDは広い概念と考えられています.ここには超高齢社会を反映した腎硬化症を主体とする病態やいわゆる“古典的な”糖尿病性腎症など多くの病態が包括されることが推測されています.
こういった糖尿病性腎症・糖尿病性腎臓病の変遷がある中で,その病態,病理,臨床,そして治療,予後への最新の知見に基づく洞察力が求められています.特に,多様化する臨床病態,ことに古典的な腎症との相違を含めて,多くの英知の結集のもと,解明が一層進むとともに予後の改善,克服が達成されることを願ってやみません.
本書では第一線でご活躍をされている先生にそれぞれ「自分の診かた,考え方」を記載していただいたことが大きな特長だと思います.本書を通じて,議論が深まり,腎症の一層の理解が進むことができれば編集に携わった一同,心より嬉しく存じます.なお本書では,糖尿病性腎臓病の紹介以外は「糖尿病性腎症」に基本的に統一しました.
どうぞご一読いただき,忌憚のない建設的なご意見を伺えれば幸いです.また,本書が手にとっていただいた皆様に少しでもお役にたてば望外の喜びと一同考えております.
平成30年立夏 執筆者を代表して
和田隆志
柏原直樹