はじめに
実は、私たちは毎日のようにプレゼン(プレゼンテーション)をしています。[presentation]というのは、相手に対して、発表したり、披露したり、提示したりする行為の総称です。仕事をしている日、人と会っている日であれば、誰かに何も伝えず1日を終えることは難しいでしょうから、やっぱり私たちは日々「プレゼン」しているのです。
私のように医療に関わる人であれば、例えば、講演会や学会、講義はもちろんのこと、他の医療者に患者さんのことを紹介することも、患者さんやその家族に治療やケアの提案をすることも一種の「プレゼンテーション」です。同じことは、医療を、介護や福祉、教育や法律などの分野に置き換えても言えることでしょう。しかし、いかにプレゼンをするのかということは、学校では教えてもらえません。また、現場に出てからもプレゼンをトレーニングしたり、フィードバックをもらう機会はほとんどありません。
ビジネスの世界では、プレゼンの仕方が業績に関係するため、プレゼンテーションに関わる講座やセミナーが盛んに行われています。また、TEDに代表されるようなプレゼンテーション自体を楽しむような取り組みも増えてきました。プレゼンテーションに関わる本も多数ありますがそれらの多くはどういうプレゼン計画を立てるか、わかりやすいスライドはどう作るか、といったテクニックを紹介するに留まっています。
しかし、本当にいいプレゼンをしようと思うのなら、そもそも「プレゼンテーションとは何か」「よいプレゼンってどういうものか」ということを深く追求しておく必要があると私は考えています。それは、プレゼンの場面も内容も、目的も、人それぞれだからです。しかし、プレゼンを突き詰めて考えると、大切なことは共通しています。この本は、その共通する大切なことを書いたものです。これはすべてのプレゼンに通用する考えです。すなわち、今この本を読んでいるあなたにも絶対に必要なことですから、読んで損をすることはありません。安心して読み進めてください。
繰り返しますが、これは技術集ではありません。プレゼンとは何かを考えることから始め、プレゼンの本質を掴むことを目的としたものです。それゆえ、内容を自分のなかに落としこむのには、少々苦労するかもしれません。しかし、この本質を自分のものにできたとしたら、きっとあなたのプレゼンは根本から変わることでしょう。
皆さんの素敵なプレゼンを目にする日を楽しみにしています。