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書籍詳細

認知症の医学と法学

認知症の医学と法学

村松太郎 著

A5判 402頁

定価(本体4,800円 + 税)

ISBN978-4-498-22904-4

2018年05月発行

在庫あり

民事訴訟や刑事事件には「判例」というテキストが存在し,ある人間のある時点における行動及びその経緯が克明かつ客観的に記録されている.本書では,来るべき高齢化社会においてより重視されるであろう疾患「認知症」に焦点を当て,「法」の立場からまとめられた判例を症例報告として使用し,「法」「医」それぞれの見地を横断しながら認知症についての論考を重ねた.新たな視点を切り開く「医学と法学」シリーズ第三弾.

著 者 ● 村松太郎

精神科医。医学博士。米国National Institutes of Health(Laboratory of Molecular and Cellular Neurobiology)などを経て、現在、慶應義塾大学医学部精神・神経科准教授、司法精神医学研究室主宰。慶應義塾大学病院精神神経科診療副部長。専門は司法精神医学、神経心理学。

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序文

 法と医の様々な接点の中で、最も臨床医と関係が深く、最も医の役割が重く、最も法の変革を迫るものの一つが、認知症である。
 高齢化社会となった日本で、すでに患者数が400万人以上に達している認知症は、財産管理や遺言や自動車運転、そして犯罪に至るまで、医師が責任を持ってかかわらなければならず、時には訴訟当事者になるリスクまでもが隣合わせである事態がますます増えるという意味で、最も臨床医と関係が深い。そしてひとたび法的争いになったとき、正確な診断と認知機能の評価があってはじめて正義が行使されるという意味で、最も医の役割が重い。さらには古来から法の世界にある意思能力や責任能力といった概念が、脳科学の知見の導入によって見直される可能性があるという意味で、最も法の変革を迫っている。
 これらの現実の実践の場が裁判である。判決文には訴訟関係者の努力を基礎とした法と医の相互理解と誤解、そして融合と離反が生々しく映し出されている。
 本書はそんな判例の中から25例を抽出して解説した。一部は著者が鑑定人等として直接かかわった事件である。どの判例も、民事、刑事、それぞれの領域のランドマークとなる貴重なケースである。認知症について法廷に提出された医学的意見を、裁判所はどのように理解し判断を下したか。その事実は、認知症の日常臨床の進め方に直接影響しないではいられないであろう。本書ではさらに、今後の医と法のより良い協働作業のあり方を提示し、そして未来の予測までを示すことで、Neurolaw, Neuroethics, Neurocriminologyといった新しい学問分野の日本社会への適用の一端まで論じることを試みた。認知症は、医と法の接点であるとともに、自然科学と社会科学が出会う実践の場でもある。

2018年5月 著者

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CONTENTS

民事篇
 第1章 財産被害
  Case 1 意思能力 妻・長男 vs 長男の嫁
   解説 意思能力の相対性
  Case 2 公序良俗 保佐人 vs 不動産会社
   解説 これはさすがに許せない
  Case 3 錯誤 養子 vs 不動産会社
   解説 認知機能低下の波紋
 第2章 養子縁組
  Case 4 一審。縁組は有効。
  Case 5 二審、逆転。縁組は無効。
   解説 人間関係の機微
 第3章 遺言能力
  Case 6 長男 vs 次男。遺言有効。
   解説 死者の認知機能
  Case 7 甥vs他人。遺言無効。
   解説 人間関係の総合判断
  Case 8 母vs次女。遺言有効。
   解説 揺れる意思、揺れる認知機能
 第4章 徘徊事故
  Case 9 屋外での凍死
   解説 損害賠償論と医療・介護
  Case 10 他害としての鉄道事故
   解説 しかし責任は蒸発した
 第5章 自動車運転
  Case 11 症状としての自動車運転事故
   解説 二重の葛藤を越えて
 第6章 脳損傷
  Case 12 交通事故後のアルツハイマー病発症
   解説 原因も誘因も
  Case 13 交通事故後せん妄、そして認知症
   解説 因果の射程
  Case 14 高次脳機能障害
   解説 診断不能の判断根拠
  Case 15 画像所見なき脳損傷
   解説 司法的判断か医学的判断か
  Case 16 アメリカンフットボール選手集団訴訟
   解説 頭部外傷の遅発性後遺症―慢性外傷性脳症

刑事篇
 第7章 刑事責任能力
  Case 17 老老介護殺人 心神耗弱
   解説 刑事責任能力と精神鑑定
  Case 18 前頭葉障害と窃盗 心神耗弱
   解説 距離感の錯覚
 第8章 前頭側頭型認知症
  Case 19 夫殺し 完全責任能力
   解説 なぜ水はあふれたのか
  Case 20 漬物泥棒 心神喪失
   解説 脳科学にときめく刑事法廷
  Case 21 リンゴ泥棒 完全責任能力
   解説 一定の中の真実
  Case 22 大型ディスカウントショップ連続放火事件 完全責任能力
   解説 脳と倫理と責任能力
 第9章 訴訟能力
  Case 23 アルツハイマー病。公判停止。
   解説 訴訟能力とは
  Case 24 コルサコフ症候群。公判停止。
   解説 法廷を駆ける認知機能
  Case 25 公判停止19年、裁判打ち切り
   解説 永続する一時停止
 終 章 法と医を結ぶ認知機能

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執筆者一覧

村松太郎 慶應義塾大学医学部精神・神経科准教授 著

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