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書籍詳細

米国緩和ケア医に学ぶ医療コミュニケーションの極意

米国緩和ケア医に学ぶ医療コミュニケーションの極意

アンソニー・バック 著 / ロバート・アーノルド 著 / ジェームス・タルスキー 著 / 植村健司 訳

A5判 300頁

定価(本体2,800円 + 税)

ISBN978-4-498-05724-1

2018年05月発行

在庫あり

米国緩和ケア医が重病患者とのコミュニケーションの取り方についてまとめた『Mastering Communication with Seriously Ill Patients: Balancing Honesty with Empathy and Hope』を、気鋭の緩和ケア医が翻訳。重病患者に「重い話」をすることを避けてしまいがちな気持ちを解消してくれる実践的アドバイスにあふれた一冊です。



 重い病気の患者さんを相手にする時,医師は多くのコミュニケーション上の試練に遭遇します.医師が伝える悪い知らせに対して,患者さんや家族は悲しみ,絶望,怒り,拒絶などをもって反応することでしょう.この本では,そのような患者さんや家族との対話で生じうる,種々のコミュニケーションに関する課題を扱っています.すなわちそれらの課題とは悪い知らせを伝えること,緩和ケアへの移行,治療のゴールや心肺蘇生について話し合うこと,実存的・スピリチュアルな問題,家族ミーティング,医学的に利益が見込めないような治療,終末期における対立などを含みます.私たち,アンソニー・バック,ロバート・アーノルド,ジェームス・タルスキーの3人が,現存する研究結果や自分たちの実際の経験を織り交ぜながら,重篤な疾患にまつわる難しい会話を導くための枠組み(ロードマップ)を示していきます.あなた(臨床で活躍する医師やその他医療従事者)は,この本に示されているコミュニケーションの論理的原則と実践的なツールを学ぶことによって,コミュニケーション能力が高まり,仕事に対する満足度が向上し,さらに自分の仕事に新たなやりがいを見い出せるようになるでしょう.

著者紹介

アンソニー・バック(Anthony Back)はワシントン大学(シアトル)の内科教授(腫瘍学部門)であり,the Program in Cancer Communication at the Seattle Cancer Center Alliance and Fred Hutchinson Cancer Research Centerのディレクターでもあります(訳者注:緩和ケア専門医でもある).
ロバート・アーノルド(Robert Arnold)はピッツバーグ大学の内科教授(緩和ケア部門)であり,同大学におけるthe Institute for Doctor-Patient Communicationのディレクターでもあります.また米国ホスピス・緩和医療学会(American Academy of Hospice and Palliative Medicine)の元理事長でもあります.
ジェームス・タルスキー(James Tulsky)はデューク大学の内科教授(緩和ケア部門)であり,同大学におけるthe Center for Palliative Careのディレクターでもあります(訳者注:2015年よりハーバード大学教授).



訳者の序

 この本との出会いは,今から3年前のことでした.ニューヨークで内科レジデントとして働いていた私はその日,マウント・サイナイ病院から新しく派遣されてきた緩和ケア医のRachel Adamsと共に,ホスピス病棟の回診を行うことになりました.そこに入院中のほとんどの患者さんには死期が迫っており,私には何と声をかけたらよいのかわかりませんでした.しかし,Dr. Adamsは違いました.彼女はたくみな言葉がけによって,患者さんや家族の心をみるみる開いていきました.そして驚いたことに,半分以上の患者さんや家族がたった数分間の回診中に泣いてしまったのです.しかもそれは悲しい涙ではありませんでした.彼女の言葉によって「感情を見せてもいいんだ」と安心したことによる涙だったのです.さらに回診の最後の部屋には,夫に薬の副作用が起きたために激昂している婦人がいたのですが,ここでもまた,Dr. Adamsの数言によってたちどころに彼女の怒りがおさまっていきました.そして私たちが部屋を出る頃には,「ホスピスに来て本当によかったです」と口にするほどに婦人の態度が一転してしまったのです.彼女の言葉はまさに魔法でした.そして回診の後に「魔法」の秘密を尋ねた私に手渡されたのが,この元本である“Mastering Communication with Seriously Ill Patients”だったのです.

 私は日米両国で医学教育を受けてきましたが,重病患者へのコミュニケーションに関する教育は,その時までほぼ皆無でした.そのため日本にいる時から,悪い予後などの「重い話」をすることを無意識的に避けていました.アメリカに来てからはさらに英語ですから,それは恐怖でしかありませんでした.しかしこの本に出会ってからは,少しずつその恐怖が和らいでいったのです.話の全体像が見えるようになり,どのような状況で,どのようなことを言えばいいのかがわかるようになっていきました.泣き崩れる患者さんに対してうろたえることが少なくなりました.そして嬉しいことに「こんな風に話してくれる医者に会ったことがない」と言われるようになりました.その変化は明らかでした.

 医療コミュニケーションに置けるトップランナーである三人の緩和ケア医(うちDr. Backは腫瘍内科医でもある)によって書かれた本書は,米国内で非常に高い評価を得ています.それは実践的なアドバイスで溢れており,コミュニケーションを自己トレーニングできるように構成されています.その内容は非常に斬新ですから,みなさんの今までの常識が大きく覆されることでしょう.また本全体に患者さんに対する深い思いやりが満ちており,著者らの人間力の高さに感服せずにはいられないはずです.本書の内容を実践していくことで,自分のコミュニケーションが,そして医療のプロとしての姿勢までもが変わっていくでしょう.そしてもう,「重い話」から逃げなくてよくなるのです.

 本書は必ず日本の皆さんにも役立つはずだとの思いで,自ら志願し,ここまで翻訳を進めてきました.現代の医療では医療技術が複雑化するあまり,ともすると本来中心であるべき患者さんが置き去りになってしまい,誰のための医療なのか見えなくなってしまう危険性があります.本書のコミュニケーション技術によって各々の「大切にしているもの」が明らかにされ,その結果,一人でも多くの日本の患者さんに,価値観に沿った真の患者中心医療が提供されるなら,それは訳者として望外の喜びです.

 最後に,多くの助言を下さった亀田総合病院疼痛・緩和ケア科の関根龍一先生,米国日本人医師会を通じて寛大な援助をくださった村瀬悟様,そして編集校正を頑張ってくださった中外医学社の輿石祐輝さんに深く御礼申し上げます.

2018年春 ニューヨークにて
マウント・サイナイ病院 老年病・緩和ケア科
植村健司

〔訳者略歴〕

植村健司

2008年富山大学医学部卒.東大病院で研修の後,長野県で内科医として地域医療に従事.そこで病気中心・延命主義の高齢者医療に疑問を持つ.2013年に渡米し,ベス・イスラエル病院(ニューヨーク市)で内科レジデンシー修了.2016年より老年病科発祥の地であるマウント・サイナイ病院(同市)で,老年病・緩和ケア科フェローとして理想の高齢者医療を求めて修行中.日本内科認定医.米国内科専門医.

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目 次

はじめに 

第1章 あなたの技術を次の段階へ
  ●試練
  ●よりよいコミュニケーションは本当に役に立つのか
  ●本当にコミュニケーションを学ぶことができるのか
  ●よいコミュニケーションはどのように役に立つのか
  ●私たちの考え
  ●大事な原則のロードマップ
  ●感情について一言
  ●この本の使い方

第2章 幸先のよいスタートを切る
 ―議題を決めることで土台を固める―
  ●よくある過ち
  ●鍵となる原則
  ●医師側のゴール
  ●議題を決めるためのロードマップ
  ●信頼関係(ラポール)を築く
  ●注意するべき状況

第3章 悪い知らせについて話し合う
 ―感情が高ぶっている時に―
  ●脳は生命への危険をどのように処理するのか
  ●感情データを見過ごしてしまう
  ●なぜ苦労してまで感情を把握していくことが必要なのか
  ●鍵となる技術 ―感情を認識して,それに対して反応する
  ●悪い知らせを話し合うためのロードマップ
  ●なぜ医者は感情にもっと注意を払わないのか
  ●もしも家族が「本人には言わないでほしい」と言ってきたら
  ●医療過誤について伝える時

第4章 治療の選択について話し合う
 ―「どのような形で意思決定に関わりたいですか?」―
  ●情報は諸刃の剣
  ●患者さんに情報を与えつつ,しかも圧倒しないようにする
  ●患者さんに合った意思決定への参加
  ●どのように意思決定に関わりたいと思っているのかを話し合うためのロードマップ
  ●効果的な意思決定の補助法

第5章 予後について話し合う
 ―やってもやらなくても難しい状況になってしまう―
  ●現実主義,楽観主義,そして逃避主義
  ●話し合う内容を交渉するためのロードマップ
  ●詳しく知りたいという患者さんに対して
  ●知りたくないという患者さんの場合
  ●相反する感情をもった患者さんに対して
  ●家族が患者さんとは異なる種類や量の情報を聞きたいと言ってきた場合
  ●悪い予後は希望を打ち砕いてしまうのか

第6章 フォローアップでのありふれた会話のなかで
 ―ささいなきっかけを活かす―
  ●固定観念に捕らわれない
  ●あなたの臨床経験を活かして患者さんを導くためのロードマップ
  ●抗がん剤治療を終える日
  ●治療に伴う長期的な合併症とともに生きていく
  ●自分の将来の計画を再度立てていく

第7章 家族ミーティングを行う
 ―複数の人に対応するために,複数のことに気を配る―
  ●家族ミーティングが役立つ場面
  ●中立的な立場を築いていく
  ●家族が患者さんに代わって判断を下す必要があるとき
  ●家族ミーティングを行うにあたってのロードマップ
  ●家族ミーティングにおける困難な瞬間

第8章 意見の対立に対処する
 ―「誰が正しい」から「共通の利益は何か」へ―
  ●対立から逃げるのではなく
  ●意見の対立に気づく
  ●どのようにすればうまく対立に対処できるのか
  ●対立に対処するためのロードマップ
  ●他の医療者との対立は,患者さんとのそれとは異なる
  ●対立をめぐる話し合いがうまくいかなかった時
  ●相手が無礼である場合
  ●対立が解決困難な場合

第9章 終末期医療への移行
 ―不安と恐れに負けず,全体像へ目を向ける―
  ●治療方針の移行とは何か
  ●移行(transition)を話し合うためのロードマップ
  ●移行の話し合いに対する患者さんの反応の違い

第10章 死について話し合う
 ―DNRオーダーと別れの言葉について―
  ●死をどのように語るかによって大きな違いが生まれる
  ●なぜ死ついて話し合うことはこんなにも難しいのか
  ●死について語るためのきっかけとしてDNRオーダーを利用してはいけない
  ●「死を否定する文化」に対抗する
  ●死の影の中で
  ●心肺蘇生に関する意向について話し合うためのロードマップ(DNRについて話し合う)
  ●話し合いの例
  ●二度と再会しないと思われる患者さんに「さようなら」を言う
  ●「さようなら」を伝えるためのロードマップ
  ●会話の例

第11章 あなたの技術をさらなる高みへ
 ―ロードマップの向こう側―
  ●自分のストーリーを描いてみる ―仕事に意義を与えているもの
  ●停滞したり,調子が乗らなかったりする日もある
  ●自分がどこでつまずき,何を避けようとしているのかを気づくようにする
  ●感情インテリジェンスを磨いていく
  ●コミュニケーションの達人とはどのような人なのか―あなたが目指す像

ロードマップ一覧 
お礼の言葉 

●索引

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執筆者一覧

アンソニー・バック   著
ロバート・アーノルド   著
ジェームス・タルスキー   著
植村健司 マウントサイナイ病院クリニックフェロー 訳

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