序

　敬愛する恩師，故von Cezale Geine先生，故　永盛肇先生にこのアトラス臨床法医学を捧げます．

　von Cezale Geine先生にはローマ大学法医学研究所で臨床法医学の手ほどきをいただき，永盛肇先生には琉球大学での3年間にわたり法医学実務の薫陶をいただき，その際にお約束したハンディータイプの法医学アトラスを編纂することを，今日になり，やっと果たすことができることを嬉しく思います．

　本アトラスの企画に際して長尾正崇先生には甚大なるご協力をいただき，各項目は気鋭の先生方に担当していただきました．さらに，元科学警察研究所所長の?取健彦先生には貴重な事例をご提供いただき，衷心より感謝いたします．

　本書は，事例の解説，解剖・病理・分析・検査を簡明に記載して，法医専門医のみならず警察協力医として活動されている医師・歯科医師の先生方に心強い参考書となるように編集されているものと自負しております．また，警察関係では現場に臨場し，解剖に立ち会う検視官や司法警察員，検察官の必携アトラスとなるように願って編集を行っていると同時に，葬祭科学の前線で活躍しているエンバーマー（遺体衛生保全師）のための法医解剖の要点解説を加え遺体に関わる幅広い職種の方々に参考となるように編集しました．

　本書の編纂に当たって，多大な尽力をいただいた都築民幸先生，岩原香織先生に深甚なる謝意を表します．また，出版に協力をいただいた中外医学社の方々に心からの感謝を申し上げます．

2018年4月
佐藤喜宣

1章　検案
　Ａ．検案の現場
　Ｂ．検案の道具
　Ｃ．歯科検査の道具
　Ｄ．検案の書類

2章　死体現象
　Ａ．早期死体現象
　Ｂ．晩（後）期死体現象
　Ｃ．特殊（異常）死体現象
　Ｄ．死体の損壊

3章　内因死
　Ａ．心血管系疾患
　Ｂ．脳血管系疾患
　Ｃ．消化器系疾患
　Ｄ．呼吸器系疾患
　Ｅ．悪性腫瘍
　Ｆ．子宮外妊娠

4章　外因死
　Ａ．鈍的創傷
　Ｂ．鋭的創傷
　Ｃ．銃器損傷

5章　頭部損傷
　Ａ．頭蓋骨骨折
　Ｂ．頭蓋底骨折
　Ｃ．頭蓋内損傷

6章　交通損傷
　Ａ．運転者の損傷
　Ｂ．歩行者の損傷
　Ｃ．航空機事故

7章　窒息
　Ａ．頸部圧迫による窒息
　Ｂ．胸腹部圧迫による窒息
　Ｃ．溺水による窒息
　Ｄ．減圧症（潜水病・潜函病）

8章　異常環境による外因死
　Ａ．焼死
　Ｂ．凍死
　Ｃ．熱中症

9章　その他の外因死
　Ａ．感電死
　Ｂ．爆死

10章　子ども虐待
　Ａ．身体的虐待
　Ｂ．ネグレクト
　Ｃ．嬰児殺
　Ｄ．生死産の鑑別

11章　その他の虐待
　Ａ．ドメスティック・バイオレンス
　Ｂ．高齢者虐待

12章　中毒
　Ａ．一酸化炭素
　Ｂ．硫化水素
　Ｃ．乱用薬物
　Ｄ．農薬
　Ｅ．神経剤

13章　個人識別
　Ａ．形態による個人識別
　Ｂ．遺伝情報による個人識別

14章　エンバーミング
　Ａ．エンバーミング
　Ｂ．遺体修復

15章　人体の主な部位・名称

執筆者一覧

佐藤喜宣　杏林大学医学部名誉教授　監修・著
岩原香織　日本歯科大学生命歯学部歯科法医学講座准教授　編・著
都築民幸　日本歯科大学生命歯学部歯科法医学講座教授　編・著
井濱容子　横浜市立大学大学院医学研究科法医学教授　
小片　守　鹿児島大学大学院医歯学総合研究科健康科学専攻社会・行動医学講座法医学分野教授　
北村　修　杏林大学医学部法医学教室教授　
桐生京佳　杏林大学医学部法医学教室准教授　
高木徹也　東北医科薬科大学医学部法医学教室教授　
高篠　智　杏林大学医学部法医学教室講師　
長尾正崇　広島大学大学院医歯薬学総合研究科展開医科学専攻病態情報医科学講座法医学教授　
林　紀乃　東京都監察医務院部長監察医　
向井敏二　聖マリアンナ医科大学医学部法医学教授　
山田良広　神奈川歯科大学大学院災害医療歯科学講座法医歯科学教授