監修の序
本書籍は,株式会社中外医学社企画部の鈴木様にお声がけいただいたところから企画立案が開始されました.「臨床現場で本当に必要な情報を凝縮したポケットマニュアル」というコンセプトに惹かれ,「内容に統一性を図るため,一施設で実施されている臨床内容で構成する」というシリーズの対象に本教室を選んでいただいたことが光栄であり,二つ返事で承諾いたしました.あれからたった一年で,監修の序を記載できるようになったスピード出版に,編集者・執筆者・出版社企画者の皆様には感服の至りです.
項立てを行う際に,麻酔科領域に存在する数多くの研修マニュアルを拝読し,全ての書籍が「非常に洗練されて,臨床に役立つ書籍」であることを再認識しました.そこで,どのような書籍を目指すかと考え,「シンプルなのに一網打尽」というキャッチフレーズを編集者と企画者にお伝えしました.麻酔を実施する場合には広い分野の知識が必要で,時に特殊疾患の概要を知っている必要もあります.麻酔科医には「バランスと調和」が必要であると常に思っています.ある一つの事象に捕らわれて全体を見られなくなっても困りますし,かと言って,理論に裏付けられた知識なしに,妥協からの選択をすることも許容されません.故に,今回目指した専攻医のためのマニュアルは,知りたいことがすぐわかる書籍でありながら,重要事項を網羅している必要がありますし,結果として,専門医でも手にしたくなるマニュアルにもなると感じております.
「マニュアル世代」と揶揄されることもありますが,マニュアルがない時代の医療は,「指導者からの教え」や「書籍・論文などの情報」を断片的につないで,個人が体系化することが多かったと思います.これは,時に,多様な臨床や秀でた手法に繋がるかも知れません.しかし,私を含めた指導者は,「同じ所」を強調し,時に,伝え忘れたり,誤った情報や古い概念を伝えたりする可能性もあります.マニュアルで標準化された医療を習得した上で,そこから発展させることに,確実な医療の進化があると感じています.
今回,編集作業を担当した岩崎 肇先生は,視野が広く,全体を把握した上で細部にまで気を配ることに長けているので,私の無茶なコンセプトを理解し,理想的な書籍に仕上げてくれました.この書を手にした皆様,周りの医療スタッフにとって,臨床に役立つことが一つでも多くありますこと,一人でも多くの患者様と御家族がその恩恵を受けられることを願いつつ,出版に関わられた全ての皆様に感謝申し上げ,監修の序といたします.
2018年3月
旭川医科大学 麻酔・蘇生学講座
国沢卓之
編集の序
『麻酔科グリーンノート』は,麻酔学を学ぶ初期研修医や後期研修医向けの教科書を目指して編集を始めました.執筆は旭川医科大学 麻酔・蘇生学教室の医局員と同門の先生方のみで担当し,総論・各論共にそれぞれの分野のスペシャリストに依頼しました.結果として,麻酔科専門医を取得後も十分使える教科書になったと思います.総論では,一般的な内容に加え,経食道心エコーや脳代謝モニタリングなどの周術期モニタリングの内容を充実させました.近年話題の肺エコーや,今後注目されるかもしれない眼底血流など,まだ一般的な書籍には掲載されていないような内容も含めました.当教室が得意とする神経ブロックに関しても,手技だけではなく,実際に用いたらよい薬剤の濃度・量などの一例も記載しました.各論では,内容を術前・麻酔・術後に分けて記載することにより,手術中だけではなく,周術期の管理を理解できるようにしました.
紙面構成においては,すべての項目の冒頭にPOINTを配置し,特に重要なことが一目でわかるようにしました.また,memo,注意,Adviceなどで知っておくべきポイントを抽出しました.薬物名はなるべく一般名と商品名の両方を記載し,商品名を調べる手間を省きました.予期せぬ合併症が発生した場合も,本書でそれを調べ,すぐに対処できるはずです.
最後に,本書を編集する機会を与えて下さいました旭川医科大学 麻酔・蘇生学講座 国沢卓之教授をはじめ,分担執筆者の先生方,中外医学社社長 青木 滋様,企画部・編集部の皆様に深く感謝申し上げます.
2018年3月
旭川医科大学病院 麻酔科蘇生科
岩崎 肇