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書籍詳細

アトラス脳腫瘍病理

アトラス脳腫瘍病理

中里洋一  編著

B5判 500頁

定価22,000円(本体20,000円 + 税)

ISBN978-4-498-22864-1

2017年10月発行

在庫あり



 脳腫瘍の病態を理解し,患者の診断・治療を適切に進める上で脳腫瘍の病理診断は極めて重要な意味を持っていた.ところが今世紀に入り脳腫瘍の遺伝子異常に関する膨大な知見が集積し,遺伝子異常の観点から脳腫瘍を分類整理することにより,腫瘍の発生メカニズム,生物学的特性,治療反応性,予後予測などがより明快に説明され,臨床的にも有用であることが明らかになってきた.2016年5月,脳腫瘍WHO分類において「病理・遺伝子分類」が導入されたことは,90年以上にわたって脳腫瘍病理の基盤であり続けた「組織発生学的分類」からのまさにパラダイムシフトと言うべき大変革であった.

 このような時流の中で純粋に形態学的な観点から脳腫瘍をみつめようとする本書『アトラス脳腫瘍病理』を出版することにいかなる意義があるのかと疑問視される方もおられると思う.しかし,我々病理医は脳腫瘍の形態に内在されている情報のはたして何パーセントを認識して病理診断を行っているのか実はよく解っていない.形態情報の中には染色体異常や遺伝子変異さらにはepigeneticな異常などによってもたらされる細胞・組織の粗大なあるいは細やかな変化がしっかりと織り込まれているはずであり,それを観察し,有益な情報として理解し,病態解析や病理診断に生かすことがこれからも病理医にとって大切な責務であると考えている.本書に掲載した数々のマクロ画像,組織写真,電顕写真は脳腫瘍の真の姿であると私は信じており,将来いかなるパラダイムシフトが起ころうとも,それはこれらの画像の見方を変えることはあっても,画像そのものの価値は不変であると考えている.そこでこれまで収集してきた脳腫瘍画像をまとめて出版し,現に脳腫瘍に取り組んでいる病理医や脳神経外科医,あるいは将来の医学徒,医療者,研究者の参考に供したいと考えるに至った.

 群馬大学医学部病理学第一講座は川合貞郎初代教授から石田陽一教授そして私へと引きつがれ,脳腫瘍の病理を主要な研究テーマとしてきた.この間に集められた大学病院及び関連病院の脳腫瘍症例を基礎とし,さらにコンサルテーションなどの目的でお預かりした症例も一部借用しながら本書はまとめられた.群馬大学の症例の利用を可能としてくれた横尾英明病態病理学分野教授および好本裕平脳神経外科学分野教授に御礼申し上げます.また,関東脳神経外科病院清水庸夫院長には多数のMRI画像を提供いただき,さらに山形大学先進がん医学講座(脳神経外科)嘉山孝正教授には多数の脳腫瘍症例をコンサルテーションとして提供いただいたことに篤く御礼申し上げます.群馬大学において脳腫瘍病理をともに学んだ同僚はこの目的に全面的に賛同して,分担執筆を快く引き受けてくれました.本書の企画より3年半という長い時間が経過してしまい,途中で脳腫瘍WHO分類が改訂されたため,多くの章の書き直しが必要となるなど予想外の事態にも遭遇したが,この間辛抱強く私達を励まし続けてくれた株式会社中外医学社の企画部鈴木真美子さんと編集部上村裕也さんに深く感謝いたします.

2017年9月
中 里 洋 一

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目 次

CHAPTERI 脳腫瘍病理の基礎

1.脳腫瘍病理の歴史〔中里洋一〕
 脳腫瘍病理の黎明期
 形態学的技術の進歩
 WHO分類の樹立

2.脳腫瘍の分類〔中里洋一〕
 脳腫瘍の歴史的分類
 脳腫瘍のWHO分類
 WHO分類の改訂
 WHO分類第4版改訂への道のり
 新WHO分類の特徴

3.脳腫瘍の臨床
【疫学・症状・徴候】〔堀口桂志〕
 脳腫瘍の疫学
 脳腫瘍の症状

【画像診断】〔堀口桂志〕
 CT
 MRI
 造影撮影
 MRS(magnetic resonance spectroscopy)
 PET
 SPECT

【治療】〔石内勝吾〕
 グリオーマの治療
 胚細胞性腫瘍
 悪性リンパ腫
 髄膜腫
 シュワン細胞腫
 下垂体腺腫

4.脳腫瘍の肉眼像〔石澤圭介,佐々木 惇〕
 神経外胚葉性腫瘍
 胎児性腫瘍
 脳神経および脊髄神経腫瘍
 髄膜の腫瘍
 悪性リンパ腫と造血器腫瘍
 転移性脳腫瘍

5.脳腫瘍の組織細胞像〔平戸純子〕
 細胞形態の特徴
 基質の特徴
 組織構築のパターン
 間質の特徴
コラム1 Clear cell tumorの鑑別診断〔横尾英明〕

6.脳腫瘍の細胞診〔伊古田勇人〕
 細胞診応用のための基本的知識
 細胞診を応用した脳腫瘍の迅速診断

7.脳腫瘍の免疫組織化学〔横尾英明〕
 細胞分化マーカー
 細胞増殖マーカー
 分子遺伝学的代替指標
コラム2 IDH1の免疫染色〔伊古田勇人〕

8.脳腫瘍の遺伝子異常〔信澤純人〕
 成人の浸潤性神経膠腫
 毛様細胞性星細胞腫
 小児の低悪性度浸潤性神経膠腫
 小児の悪性浸潤性神経膠腫
 上衣腫
 髄芽腫
コラム3 遺伝子発現による成人glioblastomaの分類〔信澤純人〕

9.脳腫瘍病理診断の実際〔本間 琢,佐々木 惇〕
 実際の脳腫瘍病理診断の流れ
 病理組織診断において組織型・WHO gradeの決定に苦慮しうる症例の実際


CHAPTER II 脳腫瘍の組織型と病理

1.びまん性星細胞性および乏突起膠細胞性腫瘍〔中里洋一〕
 びまん性星細胞腫
 退形成性星細胞腫
 膠芽腫
 H3 K27M変異型びまん性中心性膠腫
 乏突起膠細胞系腫瘍
 乏突起膠腫
 退形成性乏突起膠腫
 乏突起星細胞腫,退形成性乏突起星細胞腫
コラム4 Rhabdoid glioblastomaとepithelioid glioblastoma〔平戸純子〕
コラム5 GliosarcomaとEMT〔永石雅也〕
コラム6 1p/19q codeletion〔横尾英明〕
コラム7 オリゴ系腫瘍における神経細胞分化〔田中優子〕
コラム8 Refractile eosinophilic granular cells〔吉田孝友,中里洋一〕

2.限局性星細胞性腫瘍〔中里洋一〕
 毛様細胞性星細胞腫
 上衣下巨細胞性星細胞腫
 多形黄色星細胞腫
 退形成性多形黄色星細胞腫
コラム9 星細胞腫の変性構造物〔佐々木 惇〕
コラム10 脳腫瘍のBRAF遺伝子異常〔信澤純人〕

3.上衣系腫瘍〔中里洋一〕
 上衣下腫
 粘液乳頭状上衣腫
 上衣腫
 RELA融合遺伝子陽性上衣腫
 退形成性上衣腫
コラム11 上衣腫のgrading診断基準〔佐々木 惇〕
コラム12 Vacuolated ependymoma(空胞化上衣腫)〔平戸純子〕

4.脈絡叢腫瘍〔中里洋一〕
コラム13 脈絡叢腫瘍の多様性〔伊古田勇人〕

5.その他の膠腫〔中里洋一〕
 第三脳室脊索腫様膠腫
 血管中心性膠腫
 星芽腫

6.神経細胞および混合神経細胞・膠細胞系腫瘍〔中里洋一〕
 異形成性小脳神経節細胞腫(レルミット・ダクロス病)
 線維形成性乳児星細胞腫・神経節膠腫
 胚芽異形成性神経上皮腫瘍
 神経節細胞腫
 神経節膠腫
 退形成性神経節膠腫
 中枢性神経細胞腫
 脳室外神経細胞腫
 乳頭状グリア神経細胞腫瘍
 ロゼット形成性グリア神経細胞腫瘍
 傍神経節腫
 その他の腫瘍
コラム14 Glioneuronal tumorの鑑別診断〔松村 望〕

7.松果体部腫瘍〔中里洋一〕
 松果体細胞腫
 中間型松果体実質腫瘍
 松果体芽腫
 松果体部乳頭状腫瘍

8.胎児性脳腫瘍〔中里洋一〕
 髄芽腫
 中枢神経系胎児性腫瘍
 多層ロゼット性胎児性腫瘍
 非定型奇形腫様ラブドイド腫瘍
コラム15 髄芽腫の遺伝子分類〔平戸純子〕
コラム16 ETMRの概念〔信澤純人〕
コラム17 Atypical teratoid/rhabdoid tumorとINI1異常〔平戸純子〕

9.脳神経・脊髄神経腫瘍〔中里洋一〕
 シュワン細胞腫
 神経線維腫
 悪性末梢神経鞘腫
コラム18 シュワン細胞腫と酸化ストレス傷害〔横尾英明〕

10.髄膜腫〔中里洋一〕
コラム19 髄膜腫の遺伝子異常〔信澤純人〕

11.間葉系腫瘍〔中里洋一〕
 孤立性線維性腫瘍・血管周皮腫
 血管芽腫
 脊索腫
コラム20 STAT6と孤立性線維性腫瘍/血管周皮腫〔安倍雅人〕
コラム21 孤立性線維性腫瘍/血管周皮腫の新しいgrading〔安倍雅人〕

12.メラノサイト系腫瘍〔中里洋一〕
 メラノサイト腫瘍
 神経皮膚メラノーシス

13.リンパ腫と組織球性腫瘍〔中里洋一〕
 中枢神経系びまん性大細胞型B細胞リンパ腫
 その他のリンパ腫
 ランゲルハンス細胞組織球症
 その他の組織球症

14.胚細胞腫瘍〔中里洋一〕

15.トルコ鞍部腫瘍〔中里洋一〕
 頭蓋咽頭腫
 トルコ鞍部顆粒細胞腫
 下垂体細胞腫
 紡錘形細胞オンコサイトーマ
 下垂体腺腫
 下垂体癌

16.転移性腫瘍〔中里洋一〕


CHAPTER III 参考資料
1.脳腫瘍病理に有用な抗体一覧表〔横尾英明〕
2.Gunma—LIを用いたKi—67(MIB—1)LIの測定〔中里洋一〕
3.Gunmetryによる脳腫瘍画像からのデジタル情報抽出〔中里洋一〕

索引

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執筆者一覧

中里洋一  群馬大学名誉教授 編著
堀口桂志  群馬大学大学院医学系研究科脳神経外科学部内講師 
石内勝吾  琉球大学大学院医学研究科脳神経外科学教授 
石澤圭介  埼玉医科大学医学部病理学准教授 
佐々木 惇 埼玉医科大学医学部病理学教授 
平戸純子  群馬大学医学部附属病院病理部・病理診断科准教授 
横尾英明  群馬大学大学院医学系研究科病態病理学分野教授 
伊古田勇人 群馬大学大学院医学系研究科病態病理学分野准教授 
信澤純人  群馬大学大学院医学系研究科病態病理学分野助教 
本間 琢  日本大学医学部病態病理学系人体病理学分野准教授 
永石雅也  獨協医科大学越谷病院脳神経外科准教授 
田中優子  国立病院機構高崎総合医療センター病理診断科 
吉田孝友  公立藤岡総合病院病理診断科部長 
松村 望  群馬大学大学院医学系研究科病態病理学分野助教(部内講師) 
安倍雅人  藤田保健衛生大学医療科学部臨床検査学科病理学教授 

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   定価22,000円(本体20,000円 + 税)
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