序
このたび,認知症診療のポイントをわかりやすくまとめた認知症診療 実践ハンドブックを発刊する運びとなりました.社会の超高齢化に伴い認知症の人は急増しています.認知症の早期診断・早期治療を推進するため,本書は認知症の前段階である軽度認知障害の診かたから,原因疾患ごとの症例提示と解説までを行い,認知症診療に関わる全ての臨床医に向けた実践的な認知症診療のハンドブックとして企画・執筆されました.本書は,認知症専門医,専門医をめざす医師,地域で認知症診療に積極的に取り組む臨床医(認知症サポート医やかかりつけ医の先生方),さらには認知症診療に関わるさまざまな職種(看護,介護など)の方々にとりまして,軽度認知障害から重度認知症に至るまでの認知症診療全体を知るための格好の書です.
本書の執筆にあたりましては,私がプロジェクトリーダーをつとめる文部科学省の課題解決型高度医療人材養成プログラム「北陸認知症プロフェッショナル医養成プラン」(認プロ)で認知症プロフェッショナル科目をご担当いただいている先生方を中心にご尽力をいただきました.ご多忙な先生方に短期間でご執筆いただき心より感謝申し上げます.このプログラムでは,神経内科,精神科,老年科などで認知症診療に携わる多数の先生方が,専門科間や施設間の垣根を越え一体となってウェブ上でe—learning講義,セミナー,デメンシアカンファレンス(症例検討会)などを行い,認知症のプロフェッショナル(認プロ!)の育成にあたっております.認プロ(http://ninpro.jp)にご登録いただきますと,本書の内容の一部は執筆者によるe-learning講義として聴講することも可能です.
本書の執筆にあたり,用語等につきましては「認知症疾患診療ガイドライン2017」(日本神経学会・監修,認知症疾患診療ガイドライン作成委員会・編集,医学書院,2017年8月発刊)に準拠し,最新情報(2017年6月に公表されたLewy小体型認知症の改訂診断基準など)を可能な限り取り入れております.新しい診断法や治療法の開発など,認知症診療は日々進歩しております.本書が認知症に悩む方々の診療のお役に立つことができれば誠に幸いに存じます.
2017年10月
山田正仁