序文
日本の新生児死亡率は,先進国の中で最も少ない国のうちの一つである.したがって,現在の日本の新生児医療の目的は,ハイリスク新生児の救命だけではなく,障害なき生存(intact survival)を目指すことに変わってきている.
ハイリスク新生児のintact survivalのためには,それぞれのスタッフが独自の方法で治療やケアを実施するのではなく,全てのスタッフが共通の認識を持って診療に携わることが重要である.新生児疾患について深く理解するためには,成書を紐解くことが有用であるが,スタッフ間で共通の認識を持つためのツールとして臨床の現場で頻回に用いるのは現実的ではない.
本書は,ポケットに入るコンパクトサイズでありながら,現場で役立つ内容を,可能な限り簡潔に記載することを心がけて作成されている.この理由は,現場で必要な時に,いつでも手にとって短時間でスタッフ間での情報共有を可能とするツールの一つとして役立ててもらうためである.
本書の執筆は,東京女子医科大学母子総合医療センターNICUで実際に診療に携わっている多職種のメディカルスタッフにお願いした.忙しい中,快く執筆を承諾してくれた各位に,この場を借りてお礼申し上げたい.
本書は単一施設の診療内容から構成されているため,その内容には一貫性があると考えている.しかし,単一施設の診療内容であるため他施設の現状にそぐわない部分があるかも知れない.その場合には,忌憚のないご意見を頂きたいと考えている.本書がスタッフ間で共通の認識を持つためのツールの一つとして利用され,ハイリスク新生児のintact survivalのための一助となれば幸いである.
2017年10月
東京女子医科大学母子総合医療センター新生児医学科
准教授 内山 温