序
本書は,主に臨床研修医・総合診療医(家庭医)・一般内科医・各科医師を読者対象として,「外来や病棟で遭遇する頻度が高い症候・疾患」および「頻度は低いが絶対に見逃してはいけない症候・疾患」に的を絞り,臨床的に重要なポイントを解説したポケットサイズのマニュアルです.糖尿病だけ,内分泌内科だけではなく,両者を統合してコンパクトな1冊にまとめました.この度,中外医学社の定評ある「グリーンノート」シリーズの1冊として刊行させていただきます.
内分泌代謝内科は,「難しそう,取っ付きにくい」「稀な疾患ばかりでしょう?」とよく言われますが,けっしてそんなことはありません.糖尿病,脂質異常症,高尿酸血症などはもちろんですが,甲状腺機能低下症,甲状腺機能亢進症,原発性アルドステロン症,骨粗鬆症,副腎インシデンタローマ(偶発腫瘍)なども,病棟や一般外来でよく遭遇するcommon diseaseです.
一方,頻度は低くとも見逃すと致命的な甲状腺クリーゼや副腎クリーゼなどは,「つねにその可能性も念頭におくこと・疑うこと」が重要になります. ご執筆は,臨床の第一線でご活躍されている経験豊富な先生方にお願いいたしました.本書の特徴は,以下の通りです.
1)総論では,身体所見も重視し,身体診察の第一人者徳田安春先生に「フィジカルから内分泌疾患を診断する!」をご執筆していただきました.
2)各論では, 最初に重要な「POINT」を箇条書きで列記しました.
3)「フローチャート」を提示し,診断・治療の流れが一目でわかるようにしました.
4)適宜,具体的な「症例」も提示しました.
5)疫学や病態生理は教科書に譲り,「何を考えるべきか?」「何をすべきか?」を優先して解説いたしました.
6)「総合診療医と専門医の一問一答」では,特に重要な5つの疾患について,第一線の総合診療医(南郷栄秀先生)が日常診療で感じているさまざまな疑問点についてのQ&Aを収録しました.教科書や類書にはない実践的なQ&Aになったと自負しております.
なお,本書では省略しました頻度の低い疾患や,さらに詳しい内容につきましては,ぜひ私どもの「ここが知りたい!内分泌疾患診療ハンドブック」と「ここが知りたい!糖尿病診療ハンドブック」もご参照いただければ幸いです.
本書を白衣のポケットに入れていただき,当直や病棟・外来での診療でお役に立てていただければ,執筆者一同の大きな喜びです.
最後になりますが,ご多忙な中迅速にご執筆していただいた分担執筆者の先生方,企画の段階から刊行までずっとサポートしていただいた中外医学社企画部の五月女謙一さんに厚く御礼を申し上げます.
2017年4月
船橋市立医療センター代謝内科 岩岡秀明