2版の序にかえて
「メディカルスタッフのための腎臓病学」は,2013年に出版され,今日に至っています.この間に診療ガイドラインの改訂版や新病期分類が発表され,さまざまな面で進歩がみられます.初版の刊行にあたっては,順天堂大学医学部付属順天堂醫院で働くメディカルスタッフに腎臓内科領域の外来・病棟診療(診断と治療)でどのようなことを知りたいかのアンケート調査をおこない,その結果を参考に頻度の高い腎疾患を選んで解説しました.これまで,多くのメディカルスタッフならびに学生,医薬情報担当者(MR)の皆さまにご活用いただいていることを知り,大変嬉しく思っています.
腎臓には腎小体(糸球体)と尿細管からなるネフロン(Nephron)という最小機能単位があり,腎臓学は英字でNephrologyと表現されています.これは,Nephronに関し学問(…ology)するという意味です.腎臓は,尿を作り老廃物を体外に排泄する外分泌作用と,血圧調整(昇圧・降圧)や造血に関与する内分泌作用の大きく2つの作用をもっています.また,腎臓に一次性(原発性)に病変が起こる疾患と腎臓以外に原因となる疾患があり,それにより腎臓に二次性(続発性)に病変が起こる疾患があります.そのため,腎臓病はなかなか複雑で理解しにくいと言われることがありますが,腎臓病の診断と治療には,正しい知識をもったうえでの医師とメディカルスタッフによるチーム医療の充実がとても大切です.
今回,看護師や薬剤師,栄養士,臨床検査技師とそれらを目指して勉学に励んでいる学生たちのために,新知見を加えた「メディカルスタッフのための腎臓病学」改訂2版を上梓することにいたしました.前回同様,職種ごとに知ってもらいたい腎臓病のポイントと各職種に共通する知識のメモを充実させました.また,学生の講義で担当することの多い電解質の異常,酸塩基平衡の異常と代表的泌尿器科疾患を追加し簡潔に解説しました.各腎疾患が進行し末期腎不全に進行した場合には,血液透析などの腎代替療法が必要になりますが,その分野につきましては他の成書(拙著:これだけは知っておきたい透析療法.中外医学社;血液透析導入と言われたときから腎移植まで.保健同人社;これだけは知っておきたい透析ナーシングQ&A.総合医学社など)をご活用ください.
本書が,メディカルスタッフの皆さんと学生諸君のお役に立てれば望外の喜びです.しかし,内容については難解な個所や過不足,未熟な点もあろうかと思われますので,忌憚のないご意見をいただければ幸いです.
最後に,本書の刊行にご協力いただきました中外医学社の皆さまに厚くお礼申し上げます.
2017年 初春
都庁舎を眺めつつ
富野康日己
初版の序
チーム医療とは,よく聞かれる言葉ですが医師同士だけではなく看護師や薬剤師,栄養士,臨床検査技師,作業療法士らのメディカルスタッフが協力し患者さんの治癒・社会復帰に向け安心で安全な医療を行うことです.私が医師になりたての頃は,医師が医療の中心でピラミッドの頂点であり,一方方向の指示系統での医療がなされていたように記憶しています.また,患者さんや家族に対する病態や治療方針などについてのインフォームド・コンセントも十分ではなかったと思います.しかし,現在の医療は患者さんが中心にあり,メディカルスタッフは互いの役割や立場を尊重し横の繋がりをもって患者さん本位の医療がなされています.チーム医療のリーダーは医師ですが,医師同士も診療科の壁をなくし医療に参加しています.
私は,腎臓病・高血圧を専門とし長い間医療にあたってきました.これまで,多くのメディカルスタッフと出会い,共に仕事をしてきました.そのお陰で,多くの友人を得ることができました.大変感謝しています.
今回,看護師や薬剤師,栄養士,臨床検査技師の皆さんに腎臓内科領域の疾患についての理解を一層深めてもらいたいとの想いから,「メディカルスタッフのための腎臓病学」を刊行することに致しました.まず,スタッフから腎臓内科領域でどのようなことを知りたいかのアンケートをいただきました.それらを参考に,腎・高血圧内科の外来・入院診療で特に頻度の高い疾患を選び,わかりやすく解説しました.特に,職種ごとに知ってもらいたいポイントもコンパクトに記載してありますので,活用していただきたいと思います.
本書がメディカルスタッフの皆さんのお役にたてれば大変嬉しく思います.また,私たちに医薬情報を正しく速やかに知らせてくれている医薬情報担当者(MR)の皆さんにも腎臓内科の参考書としてご利用いただきたいと願っています.アンケートにご協力いただいたスタッフの皆さんと諸事ご協力いただいた順天堂大学腎臓内科の大澤勲准教授ならびに清水芳男准教授に厚くお礼申し上げます.しかし,物足りない解説もあろうかと思いますので,読者の皆さんの忌憚のないご意見をいただければ幸いです.
最後に,本書の刊行にご理解・ご協力いただきました中外医学社の皆さまに厚くお礼申し上げます.
2013年 春
神田川のほとりにて
富野康日己