刊行にあたって
本書の前身である『よくわかる透析療法』は,2011 年に出版され,これまで5 年が経過しました.月日の経つのは実に早いものです.当時私は,順天堂大学医学部腎臓内科学教授として,何とか末期腎不全への進行を抑制できないものかとさまざまな基礎研究と臨床研究を行い,診療の場で少しでも多くの患者さんに生かしていくように努力していました.しかし,透析療法患者さんは全国的にみても右肩上がりに増え,現在では32 万人を超える患者数になっています.その患者さんの95%以上は,血液透析を受けています.透析患者さんが安心・安全な透析ライフをより長く送ることができるようにとの思いから「よくわかる透析療法」を刊行しました.この5 年間で,多くの医療スタッフにお読みいただいているとお聞きし,大変うれしく思っています.
今回,その後の透析療法の目覚ましい進歩,エビデンスの蓄積と多くの経験をもとに,改訂版として本書『これだけは知っておきたい透析療法』を上梓するに至りました.これは,私にとって望外の喜びです.
近年,透析療法分野では,急性腎障害(AKI)の分類・新規バイオマーカーの検討や治療法の開発,慢性腎臓病(CKD)では「慢性腎臓病患者における腎性貧血治療のガイドライン」や「慢性腎臓病にともなう骨ミネラル代謝異常(CKD―MBD)診療ガイドライン」などの作成が盛んに行われています.また,高齢化社会における認知症の合併や終末期透析医療のあり方についても問題になっています.
本書では,腎疾患・透析療法の基本的知識をまとめたうえで,血液透析開始時期の対応と血液透析に慣れてきた時期の対応について記載されています.実臨床の必須事項について,Q & A 形式でわかりやすく解説していただきました.透析療法に関わる多くの医療スタッフにご活用いただければ幸いです.執筆は,現在透析療法の現場で活発に携わっている多くの職種の仲間達にお願いしました.大変お忙しいなかご執筆いただき,心から感謝申し上げます.内容については,やや難解な個所や過不足もあろうかと思われますので,読者の皆様の忌憚のないご意見をお願いいたします.
最後に,本書の出版にあたりご尽力いただいた中外医学社の方々にお礼申し上げます.
2016 年春 都庁舎を眺めつつ
富野康日己