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書籍詳細

ここが知りたい 強心薬のさじ加減

ここが知りたい 強心薬のさじ加減

北風政史 編著

A5判 456頁

定価7,480円(本体6,800円 + 税)

ISBN978-4-498-13642-7

2016年03月発行

在庫あり

「循環器病医療での必要性はあるのだが,科学的evidenceを得るのが困難だ」というのが,強心薬と心不全の関係.しかし,間違いなく強心薬が必要となる場面はある.そのような状態を打破するため,あえて時代に逆行しガイドラインやEBMの真逆をいく「さじ加減」について本邦の第一線で活躍する先生方にご自身の標準作業手順すなわちSOP(standard-operating-procedure)を披露していただいたのが本書である.

緒言

 本書のタイトルは,「強心薬」と「さじ加減」という2つのキーワードから成り立つ.この2つの言葉の「どこを知りたい」というのか? といぶかる方もおられよう.そのお気持ちはよくわかる.というのも,この2つの言葉は,医学・医療の世界においては時代遅れであるからだ.「強心薬」に関しては,多数の大規模介入臨床試験において,慢性心不全の生命予後を改善するどころかかえって悪化させてしまうことが知られている.また,「さじ加減」は,ガイドラインやevidence-based medicineとは真逆をいく概念である.それは,医師個人の判断で,その患者さんの病態や様子により薬剤を投与したりしなかったり,量を増減させようというものであるからだ.でも,今回,私はあえてこのタイトルをつけた慢性心不全の治療に関する成書を企画したのには,2つの理由がある.
 その1つ目の理由は,心不全の病態は,特に急性または重症心不全では,強心薬がなければ患者さんの生命を救えないことが少なからずあるからだ.以前私が行っていた心臓移植部の病棟回診において,強心薬を長期間静脈内投与しないと生命が維持できない心臓移植の待機重症心不全患者さんを診るにつけその感を強くしてきた.急性心不全の治療現場においても,利尿薬やhANPだけで乗り切ることが難しく,強心薬を使って救命できた症例に出会うことはよくある.しかし,この臨床現場での事実に対する科学的なエビデンスがないのも事実である.急性・慢性心不全のどのような病態において,どれぐらいの期間,どのような強心薬を投与するべきかについてはコンセンサスがない.強心薬は両刃の剣であり,その使いかたを大規模研究で明らかにすることはきわめて困難であるからだ.2つ目は,ガイドラインのもとになる大規模臨床研究では,慢性心不全にβ遮断薬・ACE阻害薬・ARB・アルドステロン拮抗薬を投与するべきであるかを教えてくれたが,高血圧・心筋症・弁膜症・心筋虚血などによる異なる原因による心不全に対して,強心薬をどのように使うべきか,もしくは使わないべきかについて,誰も教えてくれない.でも,強心薬は慢性心不全の長期予後に対して効果がないから,その用量が不明だから,使いかたがわからないからといって,急性・重症心不全の患者さんを助けないわけにいかない.まさしく「さじ加減」の世界である.実は「さじ加減」という単語のなかに使われている「おさじ」とは,江戸時代,将軍または大名の侍医のことを指す.つまり「さじ加減」とは,将軍または大名の侍医の虎の巻のようなもので,narrative-based medicineと密接に関係する.でも,narrative-based medicineはevidence-based medicineの対極に立つもので科学的ではない.一方,我々医療関係者は,科学的に正しいと考えられることを患者さんに施行する責務がある.つまり「循環器病医療での必要性はあるのだが,科学的evidenceを得るのが困難だ」というのが,強心薬と心不全の関係であり,このような状態をどのように打破し,なるべく正確な情報を循環器病の診療に携わっておられる方に届ける必要があると感じていた.どうすれば,いいのであろうか?
 そこで考えたのが,一流の循環器医師のなかでも特に臨床経験が豊富でしかも科学的思考のできる先生方に,強心薬の使いかたをその病態に分けてなるべく科学的見地から語っていただくことである.この試みが無茶なことは百も承知の上であり,実際,執筆をご依頼させていただいた先生のなかには,自分の分担部分に対して明確なエビデンスがないことを理由に,ご執筆を断ってこられた方もおられた.でも,一流の循環器医師は,自分の頭のなかで科学に基づいた治療に関するSOP(standard operating procedure,標準作業手順書)をもっており,それらを本書でご披露していただいた次第である.熱心な先生方のご尽力で,かけがえのない良い本ができたと自負している.ご執筆いただいた先生方に深く感謝するとともに,本書が,心不全の治療に携わっておられる先生方の御役に立てることができれば,編者の大きな喜びである.そして最後に,より多くの患者さんとその心臓を救える理想的な強心薬が創薬されることも心から祈念したい.

2016年春寒の頃
北風政史

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目 次

第1章 心臓の収縮と弛緩のメカニズム
  1.生理学的観点から 〈杉町 勝〉
  2.心筋細胞のカルシウムハンドリング 〈木原康樹〉
  3.高エネルギーリン酸の観点から 〈高島成二〉
  4.分子生物学的観点から 〈瀬口 理〉
  5.臨床の観点から 〈筒井裕之〉
第2章 強心薬とは
  1.強心効果のメカニズム 〈朝倉正紀〉
  2.経口強心薬 〈中本 敬 坂田泰史〉
  3.ドパミンとドブタミン 〈佐藤幸人〉
  4.ノルエピネフリン・エピネフリン 〈肥後修一朗〉
  5.PDE III阻害薬 〈塚本 蔵〉
  6.薬理学的視点からみた各種強心薬の特徴 〈柳澤輝行〉
第3章 強心薬を投与すべき病態とは
  1.強心薬が必要な病態とは? 〈高濱博幸〉
  2.どのような病態に強心薬が必要か? ―血行動態の観点から 〈大西勝也〉
  3.どのような病態に強心薬が必要か? ―心エコー図からわかること 〈長谷川拓也〉
  4.急性心不全―虚血性,非虚血性の病態と治療の差異 〈猪又孝元〉
  5.クリニカルシナリオ3の病態と強心薬 〈高濱博幸〉
  6.急性心不全―いかに強心薬をweaningするのか? 〈猪又孝元〉
  7.慢性心不全の病態と治療 〈絹川真太郎〉
  8.慢性心不全―いかに強心薬をweaningするのか? 〈絹川真太郎〉
  9.心不全患者の血行動態と神経体液性因子の関連性―強心薬により是正は必要か? また,可能か?
   〈市来智子〉
 10.心不全患者の血行動態と交感神経活性化の関連性―強心薬の投与はどのような影響を及ぼすのか?
   〈坂本隆史 岸 拓弥〉
第4章 急性心不全における強心薬の使いかた
  1.Forrester分類からみた考えかた 〈橋村一彦〉
  2.クリニカルシナリオからみた考えかた 〈橋村一彦〉
  3.Nohria-Stevenson分類からみた考えかた 〈橋村一彦〉
  4.腎不全を併発しているとき 〈吉原史樹〉
  5.肺高血圧症を合併するとき 〈大郷 剛〉
  6.心機能が極端に低下しているとき 〈安村良男〉
  7.心機能が保たれているとき 〈安斉俊久〉
  8.電撃性肺水腫での使いかた 〈舟田 晃〉
  9.左心不全が主体のときの使いかた 〈神崎秀明〉
 10.右心不全が主体のときの使いかた 〈福井重文 中西宣文〉
 11.COPDを合併したときの使いかた 〈佐田 誠〉
 12.強心薬の効果が十分でないときの対応 〈朝野仁裕〉
第5章 慢性心不全における強心薬の使いかた
  1.HFrEFでの強心薬の使いかた 〈木原康樹〉
  コラム:HFpEFでの強心薬の位置づけ 〈高濱博幸〉
  2.NYHAが悪化してきたときに強心薬を用いるべきか? 〈橋村一彦〉
  3.腎機能が悪化してきたときにどのように強心薬を用いるのか? 〈上田友哉 斎藤能彦〉
  4.BNPが上昇してきたときに強心薬を使うべきか? 〈橋村一彦〉
  5.EFが低下してきたときに強心薬を使うべきか? 〈橋村一彦〉
  6.心拡大が生じてきたときに強心薬を使うべきか? 〈坂根和志 石坂信和〉
  7.虚血性心疾患による心不全に強心薬を使うべきか? 〈田巻庸道 中川義久〉
第6章 強心薬と他の薬剤との併用のさじ加減
  1.強心薬と利尿薬 〈永井利幸〉
  2.強心薬とβ遮断薬 〈安村良男〉
  3.強心薬とRAS阻害薬 〈浅沼博司 北風政史〉
  4.強心薬と血管拡張薬 〈佐々木英之 橋村一彦〉
第7章 病態による強心薬の使いかた
  1.拡張型心筋症による心不全と強心薬 〈高濱博幸〉
  2.肥大型心筋症による心不全と強心薬 〈舟田 晃〉
  3.大動脈弁疾患における強心薬 〈天木 誠〉
  4.僧帽弁疾患による心不全と強心薬 〈天木 誠〉
  5.三尖弁疾患による心不全と強心薬 〈大原貴裕〉
  6.頻脈性および徐脈性心不全における強心薬の使いかた 〈山本博之 橋村一彦〉
  7.心筋梗塞後の心不全と強心薬 〈川上将司 野口暉夫〉
第8章 強心薬についてのワンポイントレッスン
  1.臨床で強心薬を用いると心筋細胞は傷害されるのか? 〈高濱博幸〉
  2.強心薬使用による心筋傷害は検出できるのか? 〈中野 敦〉
  3.強心薬と内皮機能は関係するのか? 〈塩島一朗〉
  4.強心薬とアディポネクチンは関係するのか? 〈岩嶋義雄〉
  5.呼吸機能に強心薬は関係するのか? 〈山本博之 橋村一彦〉
  6.強心薬は耐糖能異常と関係するのか? 〈佐々木英之〉
  7.強心薬は小児にどう使うのか? 〈白石 公〉
  8.強心薬は高齢者にどう使うのか? 〈菅野康夫〉
第9章 重症心不全患者の強心薬の使いかた
  1.重症心不全患者の強心薬の使いかた 〈大谷朋仁〉
  2.カテコラミンの導入・離脱の実際 〈瀬口 理〉
  3.IABPとの併用・IABP weaning時の使いかた 〈花谷彰久〉
  4.PCPS/VASとの併用・weaning時の使いかた 〈花谷彰久〉
  5.植込み型補助人工心臓時代の強心薬の使いかた 〈瀬口 理〉
第10章 強心薬の将来像 〈和泉 徹〉


索 引

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執筆者一覧

北風政史 国立循環器病研究センター臨床研究部 部長 編著
杉町 勝 国立循環器病研究センター循環動態制御部 部長 
木原康樹 広島大学大学院医歯薬保健学研究院循環器内科学 教授 
高島成二 大阪大学大学院医学系研究科医化学 教授 
瀬口 理 国立循環器病研究センター重症心不全・移植医療部 
筒井裕之 北海道大学大学院医学研究科循環病態内科学 教授 
朝倉正紀 国立循環器病研究センター臨床研究部 室長 
中本 敬 大阪大学大学院医学系研究科循環器内科学 
坂田泰史 大阪大学大学院医学系研究科循環器内科学 教授 
佐藤幸人 兵庫県立尼崎総合医療センター循環器内科 科長 
肥後修一朗 大阪大学大学院医学系研究科循環器内科学 助教 
塚本 蔵 大阪大学大学院医学系研究科医化学 助教 
柳澤輝行 東北大学大学院医学系研究科・医学部分子薬理学分野 教授 
高濱博幸 国立循環器病研究センター心臓血管内科 
大西勝也 大西内科ハートクリニック 院長 
長谷川拓也 国立循環器病研究センター心臓血管内科 
猪又孝元 北里大学医学部循環器内科学 講師 
絹川真太郎 北海道大学大学院医学研究科循環病態内科学 講師 
市来智子 Mayo Clinic Associate Professor of Medicine 
坂本隆史 九州大学病院循環器内科 
岸 拓弥 九州大学循環器病未来医療研究センター未来心血管治療学共同研究部門 准教授 
橋村一彦 阪和記念病院 副院長/心臓血管センター長 
吉原史樹 国立循環器病研究センター高血圧・腎臓科 医長 
大郷 剛 国立循環器病研究センター心臓血管内科 医長 
安村良男 大阪警察病院循環器内科 部長 
安斉俊久 国立循環器病研究センター心臓血管内科 部長 
舟田 晃 金沢大学大学病院救急部 講師 
神崎秀明 国立循環器病研究センター心臓血管内科 医長 
福井重文 国立循環器病研究センター心臓血管内科 
中西宣文 国立循環器病研究センター肺高血圧先端医療学研究部 部長 
佐田 誠 国立循環器病研究センター呼吸器・感染症診療部 医長 
朝野仁裕 大阪大学大学院医学系研究科循環器内科学 助教 
上田友哉 奈良県立医科大学第1内科学 診療助教 
斎藤能彦 奈良県立医科大学第1内科学 教授 
坂根和志 大阪医科大学内科学III教室・循環器内科 助教 
石坂信和 大阪医科大学内科学III教室・循環器内科 教授 
田巻庸道 天理よろづ相談所病院循環器内科 
中川義久 天理よろづ相談所病院循環器内科 部長 
永井利幸 国立循環器病研究センター心臓血管内科 
浅沼博司 京都府立医科大学循環器内科学 特任准教授 
佐々木英之 阪和記念病院心臓血管センター 副部長 
天木 誠 国立循環器病研究センター心臓血管内科 
大原貴裕 国立循環器病研究センター心臓血管内科 
山本博之 千葉西総合病院心臓病センター 副部長 
川上将司 国立循環器病研究センター心臓血管内科 
野口暉夫 国立循環器病研究センター心臓血管内科 部長 
中野 敦 国立循環器病研究センター臨床研究開発室 室長 
塩島一朗 関西医科大学内科学第二講座 教授 
岩嶋義雄 国立循環器病研究センター高血圧・腎臓科 医長 
白石 公 国立循環器病研究センター小児循環器科部 部長 
菅野康夫 国立循環器病研究センター心臓血管内科 医長 
大谷朋仁 大阪大学大学院医学系研究科循環器内科学 助教 
花谷彰久 大阪市立大学大学院医学研究科循環器内科学 講師 
和泉 徹 新潟南病院 統括常勤顧問 

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ここが知りたい 強心薬のさじ加減
   定価7,480円(本体6,800円 + 税)
   2016年03月発行
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