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書籍詳細

看護学生のための神経内科学

看護学生のための神経内科学

平田 幸一 編著

B5判 376頁

定価(本体4,800円 + 税)

ISBN978-4-498-07596-2

2016年02月発行

在庫あり

これから看護の仕事を志す学生が神経内科領域について学ぶ意義は大きい。認知症や多くの運動機能障害は本領域に属するところであり、これからの超少子高齢化社会においてそれらの患者と接する機会は非常に多くなる。ともすれば家族がそうした病気に直面する機会さえあるだろう。本書は、神経内科領域の各疾患に関する基礎知識と看護の基本、読者の今後の看護人生にとって有益となるであろう情報をまとめた学生向けテキストである。



 皆さんがこれから看護しようとしている患者さんも,いや,あなた自身さえもあなたの脳が神経系を介し指令が手足をはじめとした運動器に伝え,体が動くことは知っていると思います.また,あなたが痛いとか痒いとかいう感覚もすべて神経系を伝わって脳に信号が送られます.神経系は人間の体にはなくてはならない重要なネットワークですが,神経内科はその神経系の異常,すなわち神経の病気を診る科ということになります.
 そもそも,神経内科は内科,場合により精神科のから発展,分化してきたもの,脳神経外科は外科を基盤に分化してきたものです.
 特にこれからの専門医制度のありかたにおける指針では神経内科は内科の修練を得たうえで,神経内科の専門医となります.一方,脳神経外科は,初期臨床研修のあとすぐさま脳に関する外科処置の専門家となります.
 巷では神経内科とは,神経科と間違えられやすいのですがまったく違います.繰り返しますが,脳・脊髄・末梢神経などに起こる病気,たとえばパーキンソン病やアルツハイマー病といった疾患を治療するための診療科です.脳や神経への治療になるため,非常に高度な診断・治療が行われることが多く,脳卒中やてんかんなど緊急入院も珍しくありません.
 脳外科との大まかな区分けとしては,頭部外傷,頭部・頸椎の手術を伴う疾患は脳神経外科で,神経変性疾患,脱髄性疾患,脳神経系すべての感染症や筋肉,末梢神経に関わる疾患は神経内科です.すなわちパーキンソン病,運動ニューロン疾患,脊髄小脳変性症,筋ジストロフィー,髄膜炎は神経内科で診療しています.またいわゆるcommon disease(非常に多い病気)のアルツハイマー病などの認知症,てんかん,片頭痛などはどちらかといえば神経内科の守備範囲です.ただパーキンソン病やてんかんの場合,機能外科という立場から外科的手術が行われることもあります.同じcommon diseaseでも脳外科・神経内科のどちらでも診療対象としているのは,脳梗塞・脳出血などの脳卒中です.
 神経内科に勤める看護師の仕事内容は,患者さんの検査の準備,治療法を含めた家族への説明,診察の介助のほか,患者さんの介助・介護が主です.神経内科で診る患者さんは,往々にして体の自由を奪われています.そのため治療を行った段階でもまだ体の自由がきかず,介助を受けながらリハビリテーションを行い,徐々に通常の生活に戻していくこともしばしばあります.寝たきりだったり,意志疎通ができない患者さんも多く,看護師がその意思を汲み取って動くことも求められます.患者さんが何を望んでいるのかを判断するのは難しいのですが,慣れてくればある程度わかるようになりますし,たとえば言葉のない状態で意思の疎通ができると,一気に患者さんとの距離が縮まり,看護師としてのやりがいが形成される場合も多いようです.
 一方で,寝たきりの患者さんの介助も必要でもあり,神経内科の看護師はある程度腕力も必要です.また,看護の本質に則った,食事や排せつなども看護師がサポートすることが多くなり看護師自身が疲れてしまうこともあるようです.
 せん妄や認知症の患者さんを看護する場合,離棟に対する注意を払ったり,場合によっては家族へのインフォームドコンセントの後,身体拘束を余儀なくさせられることもあります.
 さらには運動ニューロン疾患,脊髄小脳変性症,筋ジストロフィーなどの難病では医師と同席のうえ,たとえば治癒の可能性のない人へ人口呼吸器を装着するか否かなどの,いわゆる究極のインフォームドコンセントになくてはならない存在になるケースもしばしばあります.
 神経内科を学ぶことの意義は,これからの超少子高齢化において非常に多くなる(場合によっては50%を超える試算もあります)神経疾患の診断・治療・看護を学べることにあります.実習では神経疾患患者に対する高い看護スキルを身につけることができるということです.前述したとおり脳や神経を扱う神経疾患は今後どんどん増え続けるばかりでなく,医療の最先端ともいうべきところで,常に最新の技術が導入されています.当然看護師もこのような技術や医療に関する勉強会が行われるなど、新しいスキルを身につけることが求められるのです.大変ですが,将来最先端医療に関わることができ,やりがいを感じやすいといえます.
 基本的な知識を得たうえで,臨地実習が始まってから経験することですが,患者さんの回復を実感しやすいのも神経内科の特徴です.たとえば,脳卒中で緊急入院,t-PAという血栓を溶解するお薬を緊急投与した患者さんで,最初は体もほとんど動かせず,喋るのもままならない状態だったのが,治療やリハビリテーションを進めていくにつれて喋れるようになり,歩けるようになって徐々に元気になって退院していくのを見たとき,看護師になるモチベーションが最も高まるという人もいます.
 神経内科で働く看護師になった際には,体力的にハードだったり,患者の病状の急変が起こりやすかったり,さらには,どうしても残業が多くなってしまうなどの問題が生じます.しかし,これこそが,あなた方の未来の糧となることは確実であると信じます.
 本文でも述べていますが,超少子高齢化を迎えるこれからの日本で,最も重要な疾患のひとつであり,かつ最新技術がどんどん開発される神経内科疾患を学んでおくことは,日本全体の医療を見渡すだけでなく,あなた方の家族がこの病気に恐らく直面することから,絶対に重要ですので,ぜひこの教科書で学んでください.



2016年1月
獨協医科大学神経内科 平田幸一

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目次


I.総論

1.神経解剖の基本〈上田秀一〉
 神経組織の構成細胞とシナプス
 神経組織の区分
 髄膜
 脳脊髄液と脳室系
 中枢神経の構造
 重要な神経路(伝導路)
 末梢神経系
2.神経生理学の基本〈橋本律夫〉
 神経生理学とは
 神経生理検査の実際
3.神経薬理学の基本〈大谷直由 大内基司 安西尚彦〉
 中枢神経系疾患に対する薬物
4.神経遺伝学の基本〈松浦 徹〉
 遺伝病とは
 遺伝性神経筋疾患
5.神経免疫学の基本〈舩越 慶〉
 神経免疫学とは
 免疫系の成立
 胸腺内選択と自己免疫
6.神経系の発達と加齢(老化)〈青柳閣郎 相原正男〉
 神経細胞の分化
 シナプスの形成
 髄鞘化
 情動の発達
 認知の発達
 前頭葉機能の発達
 発達障害
 生理的老化
 神経系の病的変化
7.神経筋疾患とリハビリテーション〈杉田之宏〉
 神経筋疾患とリハビリテーション
 神経筋疾患の障害の特徴
 神経筋疾患のリハビリとは
 神経筋疾患のリハビリの考えかた
 神経筋疾患のリハビリの実際
 回復期リハビリ病棟と神経筋疾患


II.各論

症状
 1.意識障害・失神〈栗田 正〉
 2.頭痛〈辰元宗人〉
 3.めまい,難聴,耳鳴り〈城倉 健〉
 4.認知症〈渡邉由佳 星野雄哉 田中秀明〉
 5.高次脳機能障害〈尾関祐二 下田和孝〉
 6.精神発達遅滞〈加賀佳美 相原正男〉
 7.運動機能障害〈小川朋子〉
  A.運動麻痺〈山崎 薫〉
  B.筋萎縮〈狩野 修 澤田雅裕 岩崎泰雄〉
  C.けいれん〈永島隆秀〉
  D.不随意運動〈池田将樹〉
  E.運動失調〈池田佳生〉
  F.歩行障害〈伊崎祥子 野村恭一〉
  G.構音障害〈新藤和雄〉
  H.嚥下障害〈新藤和雅〉
 8.感覚異常〈瀧山嘉久〉
 9.視力・視野障害〈瀧山嘉久〉
 10.髄膜刺激症状〈森田昭彦 亀井 聡〉
 11.頭蓋内圧亢進症状と脳ヘルニア〈藤岡俊樹〉
 12.自律神経障害〈山元敏正〉
 13.睡眠障害〈宮本智之 宮本雅之〉
検査
1.病歴聴取と診察の方法〈小出玲爾〉
2.検査の方法〈美原 盤〉
診察
 1.主な治療薬〈三瀧真悟 山口修平〉
 2.脳血管障害〈竹川英宏 塚原由佳 平田幸一〉
 3.変性疾患〈森田光哉〉
 4.感染症・炎症性疾患
  A.総論〈辻 貞俊〉
  B.各論:感染症,炎症性疾患の診療〈森田昭彦 亀井 聡〉
 5.機能性疾患〈赤松直樹 辻 貞俊〉
 6.腫瘍性疾患〈宇塚岳夫 植木敬介〉
 7.末梢神経の疾患〈国分則人〉
 8.神経筋接合部の疾患〈高橋一司〉
 9.筋肉の疾患〈清野智恵子 米田 誠〉
 10.神経系の代謝・中毒性疾患〈松永晶子 米田 誠〉
 11.頭部外傷〈小黒恵司〉
 12.脳脊髄液の圧・還流障害〈小黒恵司〉
 13.一般内科疾患に伴う脳・神経障害〈鈴木圭輔 齋木美佳 平田幸一〉
 14.神経系の先天奇形・形成障害〈山内秀雄〉


III.脳・神経疾患患者の看護

1.看護の基本〈峠 哲男 清水裕子〉
 身体への援助
 意識障害への援助
 認知の水準別の看護方法
2.主な症状に対する看護〈宮本雅之〉
3.主な検査・治療に伴う看護〈宮本雅之〉
 主な検査
 治療
4.脳・神経疾患をもつ患者の看護〈峠 哲男〉
 看護の概要
 個々の神経疾患に対する看護

索 引

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執筆者一覧

平田 幸一 獨協医科大学神経内科教授 編著
上田秀一 獨協医科大学解剖学(組織) 教授 
橋本律夫 国際医療福祉大学病院神経内科 教授 
大谷真由 獨協医科大学薬理学 助教 
大内基司 獨協医科大学薬理学 准教授 
安西尚彦 千葉大学大学院医学部薬理学 教授 
松浦 徹 自治医科大学神経内科学 教授 
舩越 慶 獨協医科大学内科学(神経) 講師 
青柳閣郎 山梨大学医学部小児科 
相原正男 山梨大学大学院総合研究部 教授 
杉田之宏 赤羽リハビリテーション病院 院長 
栗田 正 帝京大学ちば総合医療センター神経内科 教授  
辰元宗人 獨協医科大学内科学(神経) 准教授 
城倉 健 横浜市立脳卒中・神経脊椎センター 部長/副病院長/センター長 
渡邉由佳 獨協医科大学日光医療センター神経内科 准教授 
星野雄哉 白澤病院 部長 
田中秀明 田中医院 院長 
尾関祐二 獨協医科大学精神神経医学講座 准教授 
下田和孝 獨協医科大学精神神経医学講座 診療部長 
加賀佳美 国立病院機構甲府病院小児科 
小川朋子 国際医療福祉大学病院神経内科 医長 
山崎 薫 東京医科大学茨城医療センター神経内科 教授 
狩野 修 東邦大学医学部内科学講座神経内科学分野 講師 
澤田雅裕 東邦大学医学部内科学講座神経内科学分野 
岩崎泰雄 東邦大学医学部内科学講座神経内科学分野 教授 
永島隆秀 獨協医科大学内科学(神経) 講師 
池田将樹 群馬大学大学院医学系研究科脳神経内科学 准教授 
池田佳生 群馬大学大学院医学系研究科脳神経内科学 教授 
伊崎祥子 埼玉医科大学総合医療センター神経内科 
野村恭一 埼玉医科大学総合医療センター神経内科 教授 
新藤和雅 山梨大学医学部神経内科 准教授 
瀧山嘉久 山梨大学医学部神経内科 教授 
森田昭彦 日本大学医学部内科学系神経内科分野 准教授 
亀井 聡 日本大学医学部内科学系神経内科分野 教授 
藤岡俊樹 東邦大学医療センター大橋病院神経内科 教授 
山元敏正 埼玉医科大学神経内科 教授 
宮本智之 獨協医科大学越谷病院神経内科 教授 
宮本雅之 獨協医科大学看護学部看護医科学(病態治療)領域 教授 
小出玲爾 自治医科大学神経内科学 講師 
美原 盤 美原記念病院 院長 
三瀧真悟 島根大学医学部内科学第三 助教 
山口修平 島根大学医学部内科学第三 教授 
竹川英宏 獨協医科大学内科学(神経) 准教授 
塚原由佳 獨協医科大学内科学(神経)  
平田幸一 獨協医科大学内科学(神経) 教授 
森田光哉 自治医科大学神経内科学 講師 
辻 貞俊 国際医療福祉大学福岡保健医療学部 学部長 
赤松直樹 国際医療福祉大学福岡保健医療学部 教授 
宇塚岳夫 獨協医科大学脳神経外科 講師 
植木敬介 獨協医科大学脳神経外科 教授/獨協医科大学病院腫瘍センター センター長 
国分則人 獨協医科大学内科学(神経) 准教授 
高橋一司 埼玉医科大学医学部神経内科 教授 
清野智恵子 福井総合病院リハビリテーション科 
米田 誠 福井県立大学看護福祉学部看護学科 教授 
松永晶子 福井大学医学部附属病院神経内科 
小黒恵司 自治医科大学脳神経外科 准教授 
鈴木圭輔 獨協医科大学内科学(神経) 講師 
齋木美佳 獨協医科大学内科学(神経) 
山内秀雄 埼玉医科大学小児科 教授 
峠 哲男 香川大学医学部看護学科健康科学 教授 
清水裕子 香川大学医学部看護学科慢性期成人看護学 教授 

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