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書籍詳細

Annual Review  循環器 2016

Annual Review 循環器 2016

【編集】 編集 / 小室一成  東京大学教授 編集 / 佐地 勉  東邦大学教授 編集 / 坂田隆造  神戸市立医療センター中央市民病院院長 編集

B5判 286頁

定価12,100円(本体11,000円 + 税)

ISBN978-4-498-13424-9

2016年01月発行

在庫なし

注目すべきトピックを厳選し,その分野の第一人者が内外の文献を踏まえて最新の進歩を展望する.定評あるシリーズの最新年度版である.




“Annual Review循環器”は希望の光である

 最近我が国の循環器領域における基礎研究が明らかに落ち込んでおり,大きな問題になっている.海外への留学や海外の学会での発表は目に見えて減っており,それは循環器の中でも,特に基礎研究において顕著である.循環器基礎研究の代表的なジャーナルに米国心臓協会が出しているCirculation Researchがあるが,私は長年その副編集長をしている.編集長会議で各種の成績が発表されるのだが,日本からの投稿数の減少がよく問題となる.確かに10年前と比べると投稿数は半減し,採択数も年に2,3報しかなくなっている.以前投稿数は米国に次いで2位,採択数も10報以上あり,トップ3であったものが,現在では,投稿数,採択数とも10位前後である.なぜこのような結果になったのであろうか.一つは,国立大学の法人化により,本来先進医療や教育,研究を目的としていた大学病院にも収益の向上が要求されたことがあろう.内科の中では,最も収益性の高い循環器内科がそのしわ寄せを受けたことは想像に難くない.またこの20年あまり,臨床研究が奨励されたことも影響していよう.患者数が多く,新薬も出ていた循環器領域において,多くの臨床試験が行われた.しかしこれを行ったのは,主にそれまでは基礎研究を行っていた大学の大学院生やスタッフであった.大規模臨床試験となると多くのスタッフが数年以上かけて行うことになり,その分基礎研究を行う者は減ることになる.アカデミア創薬も同様である.大学でphase Iまで持っていくことは大変であり,多くの人材が必要である.また循環器は臨床が高度に進歩し続けているために,トレーニングに必要な時間が長くなり,大学院に入る人が少なくなっていることも関係していよう.我が国から,新しい治療法や診断法を開発し,世界に発信するには,臨床研究や創薬が重要であることは言うまでもないが,そのために基礎研究が犠牲になっては,本末転倒である.良い基礎研究の成果なくして,その上に立つ,臨床研究や創薬はあり得ないであろう.
 Annual Review循環器は,基礎,臨床を問わず,主にその1年に発表された,最新の注目すべき話題を取り上げている.その中には,すぐには臨床に結びつかないまでも,将来大きく発展する可能性を秘めているものが多く,読者の循環器領域に対する興味を大いに掻き立てることであろう.単に欧米の後塵を拝するのではなく,我が国から新しい医療を発信するためにも,各自の興味を大事にしていただき,新しいチャレンジにつなげていっていただきたいものである.本書が,読者の興味を掻き立て,少しでも心に火をつけることができれば,編者として望外の喜びである.


2016年1月
小室一成 

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I.循環器の生物学

1.心筋再生の細胞ソースは何か?
〈永井敏雄〉
  細胞移植治療
  骨格筋芽細胞
  骨髄単核球細胞
  間葉系幹細胞
  心臓幹前駆細胞
  Pluripotent stem cell(PSC)由来心筋細胞(ES細胞/iPS細胞由来心筋細胞)
2.脂肪酸の心臓における新しい役割
〈佐野元昭〉
  心筋細胞への脂肪酸代謝の概要
  lipid droplet(脂肪滴)
  Perilipin 5
  ATGL
  lipotoxicity/lipotoxic cardiomyopathy
  脂肪酸(FA)の質の違いと心臓における新しい役割
  新規抗炎症性脂質メディエーター18-HEPEの発見
3.アンギオクライン因子と臓器の再生修復
〈横山真隆〉
  アンギオクライン因子とは?
  造血幹細胞の維持・増殖における骨髄血管内皮細胞の役割
  肝臓障害後の修復過程におけるアンギオクライン因子の作用
  肺の発生・再生におけるアンギオクライン因子の作用
  心筋再生におけるアンギオクライン因子の可能性
4.ホスホジエステラーゼファミリーによる心肥大の新しい制御機構
〈瀧本英樹〉
  cGMPシグナリング経路とPDE
  心筋細胞におけるcGMP-PDE
  PDEと心肥大リモデリング
  PDE5阻害による心肥大リモデリングの抑制とエストロゲン
  心肥大リモデリング抑制のメカニズム
5.冠動静脈形成の分子機構
〈中岡良和〉
  心外膜前駆組織からの冠血管内皮の発生
  静脈洞からの冠血管の発生
  心内膜からの冠血管の発生
  生後の冠血管の発生
6.心臓線維芽細胞の組織修復の新しい機序
〈小山雄広 武田憲彦〉
  線維化の機序としてこれまで知られていること
  心臓線維化の主役―心臓線維芽細胞とは何か―
  心臓線維芽細胞における表面マーカー
  病的状態における心臓線維芽細胞の由来
  線維化の機序として今後明らかにすべきこと


II.心不全

1.心不全のエピジェネティック変化
〈金田るり〉
  心不全におけるヒストン修飾変化
  DNAメチル化変化
  非コードRNA −long non-coding RNA:lncRNA−
  非コードRNA −microRNA−
  DNAリピート領域
  核内高次構造変化
  心筋代謝異常とエピジェネティック制御
  心不全におけるエピジェネティック治療の可能性
2.老人性全身性アミロイドーシスの病態と治療
〈高橋政夫 赤澤 宏 小室一成〉
  SSAの疫学
  SSAの病態生理
  SSAの診断
  SSAの治療
3.Angiotensin II receptor-NEP inhibitor(ARNi)の心不全薬物治療におけるインパクト
〈川上利香 斎藤能彦〉
  PARADIGM-HFとは
  ARNiの予後改善効果と安全性について
  バイオマーカーに対する効果
  予後改善の機序
  SOLVD-T,CHARM-Alternative研究との比較
4.急性心不全治療におけるセレラキシンの可能性
〈佐藤直樹〉
  薬剤特性
  治験結果
5.心不全に対する遺伝子治療の可能性-CUPID試験
〈河原崎秀一 小室一成〉
  ベクターの種類について
  遺伝子導入の手段について
  治療ターゲットについて
  心筋におけるCaイオンのハンドリングについて
  治療ターゲットとしてのSERCA2aの開発状況
  その他の治療ターゲットの開発状況
  CUPID試験について(第I相試験)
  CUPID試験について(第IIa相試験)
  CUPID2試験について(第IIb相試験)


III.虚血性心疾患

1.生体吸収ステント(BVS)による冠動脈疾患の治療選択
〈川嶋秀幸 上妻 謙〉
  ABSORBの安全性と有効性
  BVSの後拡張についてのデータ
  BVSとDESの比較
  心筋梗塞に対するBVS
  リアルワールドのデータ
  現状の問題点と本邦での今後の展望
2.抗血小板療法の継続:短縮? 延長?−抗凝固との併用
〈中川義久〉
  DES留置後のDAPT期間をめぐる議論の背景
  DES留置後のDAPT期間,short DAPTで十分か?
  本邦におけるshort DAPTを示唆する研究: STOPDAPT研究
  DAPT使用の延長?
  DAPT研究
  心房細動例のDAPT,ワルファリン/NOACとの併用
3.非侵襲的冠動脈イメージングの進歩と新たなエビデンス
〈元山貞子 皿井正義 松本有司 田原宣広〉
  冠動脈狭窄評価とSubtraction CT
  CTによる予後評価
  MRIにおけるHIP
  PETによる不安定プラーク評価
4.心筋虚血診断の新たな展開
〈塩野泰紹 久保隆史 赤阪隆史〉
  FFRガイドPCIの確立
  新たな虚血診断法 iFR・FFRCTの可能性と展望
  虚血診断に基づく冠血行再建の時代からvirtual PCIで治療効果を見据えた冠血行再建の時代へ
5.冠動脈内イメージングの融合
〈亀山剛義 西條芳文〉
  NIRS-IVUS
  OCT- IVUSの開発と展望
  NIRS-OCTの可能性
  OCT spectroscopyの開発と可能性
  光音響イメージングの開発
  angio-OCT(co-resgistration)のメリットと可能性
6.Molecular imagingによる冠動脈プラークの評価
〈田原宣広 田原敦子 本多亮博 新田良和 井形幸代 福本義弘〉
  炎症と動脈硬化
  動脈硬化プラークの画像診断
  FDG -PET
  FDG-PETを用いた冠動脈病変の炎症活動性の評価
  FDG-PETを用いた冠動脈病変に対する治療効果の判定
  冠動脈の石灰化とNaFによる石灰化代謝活性の評価


IV.不整脈

1.デバイス感染の診断と治療
〈関口幸夫〉
  診断
  治療
2.心房細動アブレーションの最近のエビデンス
〈宮崎晋介〉
  発作性心房細動に対するアブレーション
  持続性心房細動に対するアブレーション
  バルーンテクノロジーの進歩と動向
  その他
  アブレーション周術期抗凝固
3.不整脈診断・治療における画像診断の進歩
〈藤野紀之 池田隆徳〉
  EnSiteシステム
  CARTO®3システム
  心腔内超音波カテーテル(intracardiac echocardiography;ICE)
4.期待される新たな不整脈診療
〈草野研吾〉
  着用型自動除細動器(Wearable Cardioverter Defibrillator:WCD)皮下植込み型除細動器(Subcutaneous - Implantable Cardioverter Defibrillator:S- ICD)
  リードレス・ペースメーカー
  左心耳閉鎖デバイス
  植込み型不整脈診断デバイス(REVEAL LinQ)
  遠隔モニタリング


V.高血圧・肺高血圧

1.PVOD/PCHの病理所見・診断・治療法の再検討
〈小川愛子〉
  PVOD/PCHについて
  PVODの病因
  PVOD/PCHの病理所見
  PVOD/PCHの診断
  PVOD/PCHの治療法
2.呼吸器疾患に伴うPHに対する治療戦略
〈花岡正幸〉
  呼吸器疾患に伴うPHの分類と定義
  呼吸器疾患に伴うPHの病態と特殊性
  呼吸器疾患に伴うPHの治療に関する最近の知見
3.PAH-IV群慢性血栓塞栓性肺高血圧症に対する治療 BPAかPEAか
〈荻野 均〉
  CTEPHの診断・検査
  BPA/PEAの適応
  PEAの実際
  PEAの成績
  BPAの実際
  BPAの成績
4.中枢性血圧調節機構
〈廣岡良隆〉
  新たに着目された高血圧と慢性炎症における免疫系異常の研究
  自然免疫の役割
  獲得免疫としてのT細胞の役割
  脳内免疫担当細胞としてのミクログリアの役割
  炎症性サイトカインが中枢で交感神経活性化を生じる機序
  腎除神経と免疫細胞活性化抑制
  高血圧と制御性T細胞
5.高血圧に対するワクチン治療
〈中神啓徳 森下竜一〉
  ワクチンによる免疫応答
  レニン・アンジオテンシン系を標的としたワクチンの開発の歴史
  DNAワクチンの応用
  臨床試験での成績および今後の展望
6.膠原病性肺高血圧症の診断と治療
〈波多野 将〉
  CTD-PAHの疫学と予後
  SScによるPH
  SSc以外のCTD-PAHの治療


VI.先天性心疾患・小児

1.先天性心疾患の術前・術後における右室機能不全の画像解析 −心エコー,MRIを中心に
〈増谷 聡 岩本洋一 先崎秀明〉
  心エコー
  MRI
  その他の画像解析
2.小児重症心不全への新しい補助循環の種類と適応について
〈市川 肇〉
  補助循環の種類
3.成人先天性心疾患に対する再手術,re-doの問題点
〈平松健司〉
  対象
  結果
  考察
4.先天性心疾患へのInterventionに使用する新しいdevice
〈馬場健児〉
  近年国内で使用可能となったdevice
  現在国内で治験を行っているdevice
  日本での早期認可が望まれるdevice
5.成人先天性心疾患に合併する致死的不整脈―新しい視点から
〈宮崎 文〉
  ACHDの致死性不整脈の特徴
  心室性頻拍
  心房性頻拍
  カテーテルアブレーション
  ICD治療
6.次世代シーケンサーを用いた小児期心筋症,先天性心疾患の最新遺伝子診断
〈小垣滋豊 馬殿洋樹〉
  従来の心筋症遺伝子解析
  次世代シーケンサーの登場
  次世代シーケンサー利用の実際と問題点
  肥大型心筋症と遺伝子変異
  拡張型心筋症と遺伝子変異
  不整脈原性右室心筋症と遺伝子変異
  小児期心筋症における遺伝子変異の検索
  先天性心疾患における遺伝子変異の検索


VII.心血管外科

1.肺動脈狭窄を伴う完全大血管転位症,両大血管右室起始症の外科治療
〈山岸正明〉
  定義,病型分類
  外科病型分類(Van Mierop)と選択術式
  PSを伴うTGAおよびTGA型DORVの術式選択
2.TEVAR,EVARの長期予後と遠隔期合併症
〈坂口元一〉
  EVARの中長期成績
  EVARのIFUについて
  TEVARの中長期成績
  急性B型大動脈解離に対するTEVAR
  胸部大動脈瘤に対するTEVARの成績
  TEVAR後の重篤な合併症:逆行性上行大動脈解離
3.Sutureless Aortic Valve
〈碓氷章彦〉
  sutureless aortic valves
  autureless aortic valvesの利点
  有効弁口面積 (EOA)
  心虚血時間,人工心肺時間
  臨床成績
  臨床応用
  sutureless aortic valvesの問題点
4.CABG vs PCI (ESCガイドライン)
〈大野貴之 高本眞一〉
  CABGの治療効果
  CABG vs PCI
  CABG適応
  両側内胸動脈を使用したCABGによる治療効果持続期間
5.心筋再生医療の進歩
〈升本英利 坂田隆造〉
  心筋再生医療への期待
  細胞移植による心筋再生の試み
  骨髄由来幹細胞を用いた臨床研究
  心筋幹細胞を用いた臨床研究
  これまでの幹細胞移植治療の限界
  多能性幹細胞を用いた心筋再生
  ダイレクトリプログラミング法による心筋再生


索 引

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執筆者一覧

【編集】  編集
小室一成  東京大学教授  編集
佐地 勉  東邦大学教授  編集
坂田隆造  神戸市立医療センター中央市民病院院長  編集
赤阪隆史  和歌山県立医科大学教授  
【著者】  
永井敏雄  佐野元昭  横山真隆  
瀧本英樹  中岡良和  小山雄広  
武田憲彦  金田るり  高橋政夫  
赤澤 宏  小室一成  川上利香  
斎藤能彦  佐藤直樹  河原崎秀一  
川嶋秀幸  上妻 謙  中川義久  
元山貞子  皿井正義  松本有司  
田原宣広  塩野泰紹  久保隆史  
赤阪隆史  亀山剛義  西條芳文  
田原敦子  本多亮博  新田良和  
井形幸代  福本義弘  関口幸夫  
宮崎晋介  藤野紀之  池田隆徳  
草野研吾  小川愛子  花岡正幸  
荻野 均  廣岡良隆  中神啓徳  
森下竜一  波多野 将  増谷 聡  
岩本洋一  先崎秀明  市川 肇  
平松健司  馬場健児  宮崎 文  
小垣滋豊  馬殿洋樹  山岸正明  
坂口元一  碓氷章彦  大野貴之  
高本眞一  升本英利  坂田隆造  

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