序
腎移植は泌尿器科医だけのものでありました.しかし,いまや泌尿器科医と腎臓内科医が共有していくものとなりつつあります.そして,今後は今以上に腎臓内科医が腎移植に携わることが求められるでしょう.この本は,腎臓内科医が泌尿器科医と協力して腎移植患者を診るために必要な知識をまとめた入門の書です.初学者を対象として,わかりやすく,そして読みやすくしてありますので医師のみならず腎移植医療に携わるすべての医療関係者の方の役に立つものとなっています.
各章の執筆は,聖マリアンナ医科大学の腎臓高血圧内科と泌尿器科の先生を中心に多大な御協力を頂きました.そして,その内容に関しましては各章でなるべく重複がないように編集させて頂きました.レシピエントとドナーの両者に同じように重きをおき,腎臓内科医が特に重要な役割を果たす術前評価と移植外来を行う上で必要な知識に重点をあてています.
腎臓病の領域の中で何故か腎移植だけは“食わずぎらい”をされていることが少なくありません.米国の腎臓内科フェローも最初は同様です.しかし“慢性腎臓病患者が免疫抑制薬を内服しているだけ(もちろん実際は異なります)”などと指導医より言われて移植外来をするうちに苦手意識を克服していきます.本書をきっかけに腎移植に興味を持ち,腎臓内科医が積極的に腎移植医療に携われる施設にて腎移植の研修を受けられる先生が一人でも増えることにつながれば幸いです.
この本の出版にあたりましては門川俊明先生(慶応義塾大学医学部医学教育統括センター教授)より多大なる御厚意を頂いております.そしてまた,私の所属しております聖マリアンナ医科大学の柴垣有吾先生(腎臓高血圧内科教授)や力石辰也先生(泌尿器科教授)をはじめとした先生方よりこの本の内容には多大なフィードバックを頂戴しました.
最後になりますが,本書の最初から最後までおつきあい頂いた企画部の鈴木真美子氏,そして丁寧に編集をして頂いた編集部の高橋洋一氏に,この場をお借りして御礼を申し上げます.
2015年7月
今井直彦