序
医療においてセカンドオピニオンを受けることは,患者さんにおける当然の権利として認められるようになり,医療者もセカンドオピニオンを希望する患者さんを特別視することなく,対応していただける時代になりました.私は,愛知県がんセンター中央病院乳腺科部長に就任後,当院のセカンドオピニオン外来を担当し,既に延べ1,000人以上のセカンドオピニオンを受けています.数年前から,当科のレジデントを対象に,私がセカンドオピニオンを受けた患者さんを題材に,週1回の勉強会を開催していました.セカンドオピニオンで受け取った紹介状から,レジデントに自分ならどのような治療を選択し,どのように患者さんに説明するかを自ら発言し,最後に私がどのように答えたかを渡しています.セカンドオピニオンの内容は多岐にわたり,乳がんの診断から,手術方針,術前・術後薬物療法の考え方,再発治療まで,乳がん診療全般にわたります.1回3〜4例を題材にしますが年間100例を超える症例を経験することになり,レジデントには貴重な勉強の機会のようであり,是非この勉強会の題材を本にしたらどうかと提案がありました.そして,今回出版社から,先生監修での本を出さないかと提案をいただき,この企画を話したところ,快くお受けいただき,今回の出版に至りました.
本書は,セカンドオピニオンを出す側の先生,受ける側の先生,そしてこれから乳がんを専門にされようとする先生,今乳がんを専門にされている全国の先生方すべてにお役に立てるようにと構成させていただきました.
また,セカンドオピニオンに対する私の回答は,その時点で実際に回答した内容を記載させていただきました.時代によって,承認された薬剤やエビデンスの蓄積によって,現時点での標準的な考え方と,若干相違があることは承知いただきたいと思います.また回答の内容は,あくまで私のセカンドオピニオンとしての意見であり,保険診療や,エビデンスとは若干ずれがあるかもしれません.ガイドラインとは異なることを承知の上で,一読いただければ幸甚です.
2015年6月
岩田広治