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書籍詳細

目からウロコ! 外科医のための感染症のみかた、考えかた

目からウロコ! 外科医のための感染症のみかた、考えかた

岩田 健太郎 著

A5判 214頁

定価(本体3,400円 + 税)

ISBN978-4-498-05044-0

2015年03月発行

在庫あり

感染症がわかればオペもはかどる!

医療の進歩と共に知識の細分化が進む現代において、オペに専念したい外科医を悩ませる専門外の問題のひとつが「感染症」。院内に感染症のプロがいなければ、いかに専門外といえども術後感染症や抗菌薬の適正使用について正しい知識を知っておく必要があります。本書は感染症診療の大原則や各科でよく診る感染症のピットフォールについてわかりやすい語り口で解説し、また巻末には対談「外科と感染症科のはざまで」を収録しました。

■著者紹介

岩田 健太郎(いわた・けんたろう)

神戸大学大学院医学研究科教授
神戸大学医学部附属病院感染症内科診療科長

島根県生まれ
1997年 島根医科大学(現・島根大学)卒業
1997〜1998年 沖縄県立中部病院研修医
1998〜2001年 コロンビア大学セントルークス・ルーズベルト病院内科研修医
2001年 米国内科専門医
2001〜2003年 アルバートアインシュタイン医科大学ベスイスラエル病院感染症フェロー
2002〜2006年 ロンドン大学熱帯医学衛生学校感染症修士コース(通信制)
2003〜2004年 北京インターナショナルSOSクリニック家庭医
2003年 中華人民共和国一般医師免許
2004年 米国感染症科専門医
2004年 アイオワ州医師免許
2004年 亀田総合病院診療部・感染症内科部長代理
2005年 同部長
2006〜2008年 同総合診療・感染症科部長
2008年〜 神戸大学大学院医学研究科微生物感染症学講座感染治療学教授
(現職)

著者公式サイト「楽園はこちら側

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序 なぜ外科医のための感染症なのか

 さて,この本書は「外科医のための感染症」と銘打っています.なぜ,このような本を作るに至ったのでしょう.

 それは,かつてないほどのスピードで医学・医療が進歩しているからです.

 1950年時点で,医学知識が倍になるには50年かかっていました(doubling time).1980年にはこれが7年になり,2010年には3.5年になっています.2020年には,なんとたったの73日で医学知識は倍になると見積もられています(Densen P. Challenges and Opportunities Facing Medical Education. Trans Am Clin Climatol Assoc. 2011; 122: 48–58.).

 我々はDr. コトーのような「何でもできる」医者に憧れますが,どんなに博覧強記の天才的な頭脳を持っていても,メフィストフェレスに魂を売り渡しても,すべての領域において医学知識を最新の状態にキープしておくことは原理的に不可能なのです.そういう時代に我々は生きているのです.

 岩田が医学生のとき,「医学部は4年間では学びきれないほどの知識を詰め込まねばならない.だから6年制なのだ.医学生は卒業するまでに,積むと自分の身長と同じくらいの高さの教科書を読まねばならない」と何かの本に書いてあったのを読んだことがあります.「そうか,俺背が低くてよかったな」なんて思ったわけです.その「身長分だけ」の真偽はともかく,昔の医学部の勉強の仕方は,「知識の詰め込み」でした.大量の知識を詰め込むのが医学の勉強だったわけです.それは,受験戦争とよばれた当時の受験勉強とも非常に親和性が高く,受験を得意とする医学生はスルスルとそのような勉強の仕方を受け入れたのです.

 が,もはやこのような「知識の量」で学問する方法は通用しません.知識の増えるスピードの方がずっと速いからです.我々は根本的に方法論から変えなければならないのです. 外科領域も近年は細分化が進んでいます.例えば,整形外科は,「膝の」グループ,「脊椎」のグループ,「肩の」グループというように.それぞれのパーツにおける医学進歩も目覚ましく,最新の医学知識,医療技術についていくのは簡単ではありません.そしてそれは今後どんどん難しくなっていくでしょう.

 かつて,医局制度が良くも悪くも充実していたときは,その医局の内部だけで医療はすべて完結していました.外科医は手術はもちろん,周術期の栄養管理や血糖,血圧コントロール,感染症の予防や治療,疼痛管理などすべて自分たちで行い,術後の化学療法も全部自分たちでやっていました.薬を詰めることすら医者の仕事だったのです.今でもそうだ,というところもあるかもしれませんが.

 しかしながら,外科領域のそれぞれの専門領域が進歩したのと同じように,各セクションの専門性も飛躍的に進歩しました.患者ケアの質の向上も目覚ましく,医療面接にたっぷり時間をとり,膨大な書類やカルテの記載もかつてないほど大変です.おまけに最近はワークライフバランスにまで配慮して,若手医師の外科離れを食い止めなければなりません.「全部自分で完結する」医療は,もはやできない相談なのです.

 とはいえ,現在ではそういう外科の先生たちをサポートするチームも少しずつ充実してきています.人工呼吸器調節や栄養管理,化学療法や感染症治療の専門家たちが,最新のノウハウを勉強し,外科の先生たちを支援します.薬剤師さんの現場参加もだんだん進んできており,我々の診療を支援してくれています.外科の先生たちが好きな手術に邁進し,集中できるよう,ぼくらは一所懸命「手術以外のこと」をサポートするのです.献身と専門性を持って.
「お前さんは内科医だろ.内科医が外科の患者のことがワカンのか?」そういう御指摘もあるかもしれません.
 もちろん,わかります.

 ぼくは沖縄県立中部病院で研修医をしていたとき,たくさんのことを外科ローテートから学びました.中部病院はコテコテの野戦病院で,外科系の病院でした.

 もちろん,各科数カ月に過ぎないローテートで外科医になるノウハウや技術が身に付くわけはありません.しかし,短期間ながらも集中的なトレーニングのおかげで,外科医のメンタリティーや大切にしている価値観,思考プロセスや「踏んではならない地雷」みたいなものはたくさん学ぶことができました.そういう意味では,スーパーローテートって本当によい仕組みです.

 ぼくはアメリカで感染症のトレーニングを受けましたが,アメリカでは内科医か小児科医しか感染症専門医にはなれません.彼等の研修はストレート研修で外科系の研修を受けませんから,外科医のメンタリティーをあまり理解していないことが多かったです.ぼくは日本の中部病院で初期研修を受けて本当によかったと思ったものです.
 中部病院の外科医たちもまた,全員初期研修で内科をローテートします.感染症(infection team)も必須です(名物でもあります).なので,中部病院の外科医たちは基本的な熱のワークアップや抗菌薬使用の原則を心得ています.マニアックな感染症やマニアックな抗菌薬を使いこなしたりはしませんが,「いろは」はできているんです.絶対やっちゃいけない禁忌も心得ています.例えば,血液培養も取らずにポンッと抗菌薬を出しちゃう,みたいな.

 そんなわけで,岩田は外科医の先生がどのような価値観でもって患者を診療しているのかについては,ある程度理解しているつもりです.

 さて,確かにぼくは内科医です.しかし,外科の患者さんの術後感染症について言うならば,実はたいていの外科の先生よりもたくさんの知識と経験値を持っています. それは,たとえて言うならば,F1レーサーとサーキットの救助隊にたとえられるかもしれません.

 外科の先生はたとえて言うなら,F1レーサーです.サーキットにおいて速く運転することにかけては,抜群の知識と技術を持っており,それは他の追随を全く許しません.もちろんぼくには真似はできません.

 しかし,もし運悪く交通事故が起きたとき,その後の対応方法については,レーサーは必ずしもエキスパートとは言えません.「そういう訓練」をあまり受けていませんし,個々のレーサーにとって,事故はしょっちゅう経験するものではないからです.

 しかし,サーキットの救助隊はF1事故に特化した専門性を持ち,そのための訓練も受けています.経験値もずっと高いです.だから,レーサーよりも事故後の対応については上手に処理するのです.

 ぼくら感染症屋は手術の知識や技術は全然持ち合わせていません.当たり前です.しかし,術後の感染症コンサルテーションは毎日のように受けており,それを病院のすべての病棟で見ています.実際,ぼくらが見ている患者さんの半分以上は外科の患者さんなのです.ぼくら以上に術後の感染症を経験している外科医は存在しません.「いやいや,おれが執刀すると感染症必発だから,おれのほうが経験値は高いね」なんていう奇特な先生にはまだお目にかかったことがありません.

 神戸大学病院においては,ぼくらは外科系の先生が術後の感染管理などに煩わされることがないよう,いつもお手伝いしています.患者も診察せず,培養検査やCTだけ見て「なんとかマイシン出したらどうでしょ」なんて中途半端なサービスはいたしません.治療がうまくいくめどが立つまで数日,ときには数週間,診療を継続します.ぼくらの目標は患者さんがよくなることであり,外科の先生が好きなオペに邁進していただくことです.チーム医療の要諦は,「皆が同じ目的のために,同じ方向を向いていること」ですから,複数の職種が集まっているだけではチーム医療とは言えません.

 しかしながら,日本感染症学会認定専門医の数は千人ちょっと.日本の病院数の半分にも達していません.兵庫県はもちろん,県外からも「専門家を紹介してほしい」という依頼を受けており,パートタイムの医師派遣などそれなりのお手伝いはしていますが,需要と供給のバランスはまったく取れていないのが現状です.

 そこで,本書では院内に感染症のプロがおらず,気軽に相談できる人もいない,という現場の先生がたのために,できるだけわかりやすく,手早く感染症診療の基本みたいなところをお伝えするために用意しました.たしかに感染症領域はややこしいのですが,例えば発熱時の対応や抗菌薬選択の「基準」など,基本的なところを抑えておくと患者マネジメントの質は飛躍的に改善します.ここでも「ゼロ」と「ゼロではない」には天と地ほどの差があるのです.

 本シリーズが,少しでも先生がたが「オペに邁進できる」環境作りに役立ち,術後の感染症が減ったり「さくっと治ったり」してくれれば,これ以上の幸いはありません.

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目 次

序 なぜ外科医のための感染症なのか

 I 感染症診療大原則
  1 術後感染症診断は意外に簡単 診断の大原則
  2 術後感染症予防の大原則 術中抗菌薬とSSI予防
  3 これだけは知っておこう 細菌検査,感受性試験の解釈法
  4 抗菌薬使用の大原則 基礎編 その1:βラクタム薬
  5 抗菌薬使用の大原則 基礎編 その2:その他の抗菌薬たち
  6 抗菌薬使用の大原則 臨床編
  7 創部感染(深部SSI含む)の診断と治療
  8 カテ感染(CRBSI)の診断と治療
  9 術後院内肺炎(HAP/VAP)の診断と治療
  10 術後院内尿路感染の診断と治療
  11 術後下痢症の診断と治療
  コラム❶ 血液培養はなぜ2セットか(と感度,特異度についてのちょっとした考察)
  12 予防接種も忘れずに

 II 各論編 
  A 整形外科医のための感染症診療
   1 化膿性関節炎・滑液包炎,腱滑膜炎
   2 急性・慢性骨髄炎,椎間板炎,硬膜外膿瘍,糖尿病足感染
   3 壊死性筋膜炎とガス壊疽
   4 人工関節関節炎
   コラム❷ 「エビデンスないんでしょ」「いや,エビデンスは常にある」
  B 泌尿器科医のための感染症診療
   1 前立腺炎とその周辺
   2 フルニエ壊疽,黄色肉芽腫性腎盂腎炎,気腫性腎盂腎炎,気腫性膀胱炎
   3 腎移植と感染症
   4 男性性感染症
   コラム❸ サーベイランスはなぜ必要か(とICN, ICDの話)
  C 心臓血管外科医のための感染症診療
   1 感染性心内膜炎
   2 胸骨骨髄炎
   3 血管の感染症
   4 ICD, ペースメーカー感染
   コラム❹ CRPはどこまで役に立つか
  D 耳鼻科医のための感染症診療
   1 耳鼻科術後の感染症診療
   2 中耳炎,副鼻腔炎の抗菌薬使用
   3 意外に難しい咳と鼻水
   4 耳鼻科緊急事態
   コラム❺ 感染症専門医について
  E 歯科・口腔外科医のための感染症診療
   1 予防的抗菌薬は誰に,何のために? 何を?
   コラム❻ 経口3世代セフェムはなぜいけないのか
  F 産婦人科医のための感染症診療
   1 産婦人科,術後感染症大原則
   2 妊婦と抗菌薬,そして感染症
   コラム❼ よくわかんない,クラミジア・淋菌試験
  G 肝胆膵外科医のための感染症診療
   1 急性胆管炎と胆嚢炎
   2 肝移植後の感染症
   コラム❽ 終末期医療と感染症について
  H 呼吸器外科医のための感染症診療
   1 呼吸器外科関連のピットフォール
   コラム❾ 画像品評会にしてはならない,結核審査協議会
  I 脳神経外科医のための感染症診療
   1 術後髄膜炎診断治療の大原則
   2 脳膿瘍,脳占拠性病変の診断・治療の大原則
   コラム❿ できる,できないの狭間で
  J 皮膚科医のための感染症診療
   1 皮膚軟部組織感染症診療の基本
   コラム⓫ 感染症屋は皮膚科医が頼り
  K 救急医のための感染症診療
   1 熱傷,外傷患者の感染症予防と治療
   コラム⓬ 日本型救急と北米型ER その感染症診療への影響
  L 眼科医のための感染症診療
   1 結膜炎,角膜炎診療の原則
   2 予防的抗菌薬は役に立つか
   コラム⓭ できているという自信,できていないという自覚
 ―対談― 外科と感染症科のはざまで(窪田忠夫×岩田健太郎)
 索引 

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執筆者一覧

岩田 健太郎 神戸大学教授 著

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