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書籍詳細

病院前救護のための産科救急トレーニング

病院前救護のための産科救急トレーニング

―妊娠女性・院外分娩に対する実践的な対処法

新井隆成  監訳

A5判 244頁

定価5,280円(本体4,800円 + 税)

ISBN978-4-498-06070-8

2014年02月発行

在庫あり

2014年4月からの救急救命士の処置拡大に対応!
・心肺機能停止前の静脈路確保および輸液
・血糖測定並びに低血糖発作症例へのブドウ糖溶液の投与

英国発の病院前産科救急シミュレーション教育コーステキスト「POET(Pre-hospital Obstetric Emergency Training)」を、ALSO-Japan認定インストラクターを中心とした有志が日本の実情を鑑みつつ丁寧に翻訳しました。産科医、救急医、助産師、救急救命士、看護師……その他産科救急に関わる可能性のある全医療従事者にとって役立つ知識が満載です。

《訳者序文》

 今回、ALSO-Japan認定インストラクターの有志が中心となって翻訳したのは、英国で開発された病院前産科救急のシミュレーション教育コースPOETの教科書である。

 昨今、心肺蘇生、外傷、災害医療など、救急医療に関わる医療従事者を対象としたシミュレーショントレーニングが常に全国で開催されている。ACLS、BLS、PALS、NCPR、JATEC、JPTEC、DMATなど、様々な医療状況に応じて標準化されたシミュレーション教育が日本国内にしっかり定着している。それらの教育コースは、すべての救急プライマリケアにおいて、対応する医療従事者間にチーム医療に必要な共通言語を提供し、医療の質を維持向上させるために役立っている。

 「女性の生命を脅かす状態」の中に、「妊娠に関連したもの」が存在していることは広く認知されているところであり、それに関わる可能性のある医療従事者を対象とした標準化されたシミュレーション教育も、日本国内においてここ数年急速に普及し始めている。現在日本で普及している産科救急に関わるシミュレーション教育はALSO(Advanced Life Support in Obstetrics)とBLSO(Basic Life Support in Obstetrics)である。ALSOは、1991年米国で開発され、現在、世界63カ国で導入され、16万人以上がこのコースを修了した。POETの中には、ALSOプロバイダーコースの教科書からの引用が多くあり、英国と米国が、産科救急の教育コースをグローバルスタンダードとして標準化する上で、その内容を共有し合っていることがよく理解できる。NPO法人周生期医療支援機構(本部石川県)が行っているALSO-Japan事業においても、2011年より、病院前や救命救急センターにおける産科救急への対応訓練を目標としたBLSOコースが始まった。日本国内においては、2010年調査で推定1,200例の病院前出産があり、それに関わる救急隊の多くが産科救急に関する教育の必要性を認識しているということが報告されたからである。

 日本で行うBLSOコースの内容を検討するにあたり、我々は日本における産科医療の背景を十分に考慮し、日本国内で今最も必要とされる病院前産科救急の内容やグローバルスタンダードの両面から調査を行った。その際、ALSO Internationalの示すBLSO素案を元に、このPOETの内容についても研究を行なった。

 BLSOコースは、現在地域3次救急医療施設、県の産科医療対策、離島医療における開催をはじめ、日本プライマリケア学会の教育セミナー、東北メガバンクが行っている東日本大震災の復興事業などで導入され、コース開催数が増加してきている。

 POET翻訳版は、産婦人科以外でも産科救急に関わる可能性のある全医療従事者の教育教材として役立つだけでなく、産婦人科医や助産師にとっても病院前産科救急という観点で多くの有益な情報を提供するものと期待している。産科救急に関わる医療従事者間の共通言語としてPOETをぜひ活用していただきたい。

 救急医療は、「助けられた命」という観点で常に振り返ることを義務づけられている。「助けられた二つの命」という特殊性から供給の追いつかない医療領域として問題を抱える産科医療であるが、より広い医療従事者を対象としたプライマリケア教育の推進によって新たな連携構築の可能性が広がり、産科医療の維持向上につながることを願って止まない。
 
 訳者代表
金沢大学大学院医薬保健学総合研究科
周生期医療専門医養成学講座
特任教授
新井隆成



《翻訳の序(救急医の立場から)》

 病院で「おめでとうございます!」と患者さんが言われるのは産科をおいて他にそんな科はない。特殊で神秘的な生命の営みに触れることができるのは産科の醍醐味であろう。一方、救急の世界では心筋梗塞、くも膜下出血、大動脈解離、髄膜炎などなど致死的な疾患は枚挙にいとまがない。「おめでたくない」まさかの疾患のオンパレードだ。そんな中、現実問題として産科救急だけは置き去りにされてきた事実は否めない。神秘の領域の産科救急に素人の他科の医療者が手を出していいはずもなく、「妊婦」と聞くや『逃げ』の態勢に入ってしまう医療者は多いのではないだろうか。医療者に逃げられ、患者さんがどこにも行けない『たらい回し』が世間で問題になって久しい。なんと悲しいことか。挙句、最前線で戦う産科医が疲弊し、転帰が悪いと当然の如く、刃が医師に向くのでは「逃げ得」 vs 「受け損」という奇妙な構図が出来上がってしまう。不幸の連鎖の始まりだ。

 我々医療者は本来チームとして産科救急を支える必要がある。患者さんが途方に暮れるのを指をくわえてみているのでは医療者の沽券に係わる。救急隊、救命士、ナース、そしてプライマリケア医が底支えをして、産科医にいい状態で命のリレーをしないといけない。ただ今まで神秘のベールに隠れていた産科救急の基本的なことすらあまり系統だてて教育される場がなかったのも事実。「やる気はあるけど、わからない」、そんな悩みを解決すべく、ここにPOETという素晴らしいテキストができあがった(パチパチパチ)。日頃産科を専門としない医療者でも “must NOT miss” の疾患を整理し、初動の基本を学ぶことができることになったのは、産科救急の夜明けとも言えるのではないだろうか(あ、大げさですみません)。

 各章では大事なところは囲み記事でわかりやすくなっており、初学者はここだけ読んでおいても損はない。少ない労力、最大効果もとりあえずOKだ。また訳者達が日本の実情にあわせてうまく改編してあるので、ただの訳本ではないところもいい。本書は基本的にはBLSO(Basic Life Support in Obstetrics)という産科救急のトレーニングコースのテキストとしても使われるものであり、その気になった読者は是非とも理論武装をして、実際のBLSOコースにも挑戦してみて欲しい。知識と技術が融合して初めて臨床現場で使えるものになってくるはずだ。そうなると産科救急が待ち遠しくなってしまうから、アラ不思議。みんなで勉強すれば産科救急も恐くない。お産って通常は正常な営みだから、それをきちんと助けることができるようになるだけでも結構嬉しいものだ。ヌルヌルの人形を使った実習はリアルで興味深い。そんな喜びを産科からおすそ分けしてもらいつつ、いざという時には産科救急の初動をしっかりできるようになれば鬼に金棒ってもんだ。この本を手に取ったあなたへの社会の期待やニーズは無限に広がっている。さぁ、勇者よ(アレ?いつの間にか勇者になっちゃった)、是非POETを熟読し、BLSOやALSOの標準化コース受講で生きた知識と技術を獲得して、あなたの目の前の患者さんを助けよう。本書はドラえもんの「どこでもドア」、ワンピースのゾロの「三刀」、名探偵コナンの「腕時計型麻酔銃」、進撃の巨人の調査兵団の「立体機動装置」、イヤミの「シェー」・・・あ、もういい?・・・に匹敵する産科救急必携の書なのだ。さて、まずは囲み記事から読み始めますか、テヘッ。

福井大学医学部附属病院 総合診療部 林 寛之

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第1章 産科医療サービス
 産科医療サービスの組織,産科と婦人科の救急の疫学と救急サービス,GP,そして助産師の役割

第2章 妊娠に関連した法律,倫理と統治(ガバナンス)
 A.同意  
 B.秘密保持  
 C.死の宣告  
 D.医療過誤と過失  
 E.文化的問題  
 F.専門家の説明責任  
 G.薬剤管理  
 H.職場における健康と安全管理

第3章 妊娠における解剖学的および生理学的変化 
 妊娠における解剖学的および生理学的変化と臨床管理における関連 

第4章 正常分娩  
 A.正常分娩と娩出  

第5章 妊婦患者に対する体系的なアプローチ  
 A.産科的初期評価(Primary obstetric survey)  
 B.産科的全身観察(Obstetric secondary survey)  
 C.産科的な病歴の聴取と評価  
 D.産科患者の引き継ぎ

第6章 妊娠初期の救急と婦人科手術の合併症
 A.婦人科術後患者の評価と管理
 B.流産
 C.子宮頸部ショック
 D.異所性妊娠

第7章 妊娠後期における産科救急疾患
 A.妊娠中の高血圧
 B.早産
 C.分娩前出血
 D.常位胎盤早期剥離
 E.前置胎盤
 F.子宮破裂
 G.胎児先進部と母体・胎児の長軸位置関係(プレゼンテーション,ライ,ポジション)
 H.多胎妊娠
 I.肩甲難産
 J.臍帯脱出
 K.臍帯破裂
 L.他の臍帯疾患
 M.羊水塞栓

第8章 分娩後の緊急疾患
 A.産道損傷
 B.一次性分娩後大出血
 C.子宮内反症
 D.二次性分娩後大出血
 E.産褥感染(産褥敗血症)
 F.敗血症

第9章 出生時の新生児処置
 A.病院外出産
 B.病院への搬送

第10章 非産科救急のマネージメント
 A.周産期精神疾患
 B.静脈血栓塞栓症
 C.てんかん
 D.妊婦の糖尿病
 E.妊婦の外傷
 F.妊娠中の心疾患
 G.妊娠中の呼吸器疾患
 H.妊娠中の薬物不正使用
 I.一酸化炭素中毒
 J.妊娠中の強姦と性的暴行

第11章 妊娠中の心停止とショック
 A.妊娠中の心停止
 B.死戦期帝王切開
 C.妊婦のショック 

略語
用語解説
文献

索引

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執筆者一覧

新井隆成  金沢大学大学院医薬保健学総合研究科周生期医療専門医養成学講座特任教授 監訳
伊藤雄二  公益社団法人地域医療振興協会西吾妻福祉病院病院長 
藤岡洋介  静岡家庭医養成プログラム森町家庭医療クリニック所長 
吉岡哲也  けいじゅファミリークリニック院長 
伊達岡 要 金沢大学大学院医薬保健学総合研究科周生期医療専門医養成学講座 
鈴木大輔  済生会宇都宮病院産婦人科 
菅原準一  東北大学東北メディカル・メガバンク機構地域医療支援部門教授 
深澤宏子  山梨大学大学院医学工学総合研究部産婦人科 
平田修司  山梨大学大学院医学工学総合研究部産婦人科教授  
中山 理  聖隷浜松病院産婦人科部長  
小川正樹  東京女子医科大学病院母子総合医療センター准教授 
鈴木 真  亀田総合病院総合周産期母子医療センター長 
吉本英生  富山県済生会高岡病院産婦人科部長 
林 寛之  福井大学医学部附属病院総合診療部長・教授  
加藤一朗  隠岐広域連合立隠岐病院副診療部長  
村井 隆  愛仁会高槻病院総合診療科・産婦人科医長 
飯塚 崇  富山県済生会高岡病院産婦人科 
鏡 京介  金沢大学大学院医薬保健学総合研究科周生期医療専門医養成学講座 
高多佑佳  金沢大学大学院医薬保健学総合研究科周生期医療専門医養成学講座 
牧 尉太  金沢大学大学院医薬保健学総合研究科周生期医療専門医養成学講座 

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